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『名探偵ピカチュウ』感想(ネタバレ)…実写映画化のこうかはばつぐんだ!

名探偵ピカチュウ

実写映画化のこうかはばつぐんだ!…映画『名探偵ピカチュウ』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Pokemon Detective Pikachu
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年5月3日
監督:ロブ・レターマン

名探偵ピカチュウ

めいたんていぴかちゅう
名探偵ピカチュウ

『名探偵ピカチュウ』あらすじ

子どもの頃にポケモンが大好きだった青年ティムは、父ハリーが原因で、ポケモンを遠ざけるようになっていた。ある日、ハリーの同僚だったヨシダ警部から、ハリーが事故で亡くなったとの知らせが入る。父の荷物を整理するため、人間とポケモンが共存する街ライムシティへ向かったティムは、自分にしか聞こえない人間の言葉を話すピカチュウと出会う。

『名探偵ピカチュウ』感想(ネタバレなし)

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めざせポケモン実写映画化!

世界中にその名が轟くビック・ネームバリューな日本発コンテンツ、それが「ポケットモンスター」…縮めて「ポケモン」

私もポケモンをその誕生初期から知っている人間なので、その怒涛のムーブメントが日本各地、そして全世界に拡大していく光景を肌で実感してきました。その全ての原点となったは、1996年2月に発売されたゲームボーイ用ソフト「ポケットモンスター 赤・緑」。またスマホもSNSもなく、インターネットも普及していなかった時代。“交流”をテーマにしたゲーム性は子どもたちの心を掴み、誰に言われるまでもなく自発的に学校や地域を飛び越えてコミュニケーションの輪を広げました。漫画、アニメ、カード、その他…いろいろな拡張性を見せましたし、アニメの映画化第1弾『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』(1998年)は大ヒットし、これが初めての映画体験だという人も一定数いるのではないでしょうか。

私の“思い出”的にはテレビ放送されたアニメのある話数における通称「ポケモンショック事件」が印象的。ちなみに私が一番好きなポケモンは「ポリゴン」です。

まさに「ポケモン現象」とも言うべき熱狂が世界中で席巻したわけですが、あらためてポケモンが産声を上げてから約23年経過し、これに匹敵するコンテンツが出現していないあたりを見ると、凄いことだったんだなと痛感します。

いまだに今の子どもたちに愛されていますし、驚いたのはスマホアプリ「PokémonGO」の話題性で、子ども時代にポケモンにハマった世代がカムバックしているのが原動力になっており、廃れる気配がありません。

しかし、ここまであらゆる展開に手を出したかに見えるポケモンがまだ未着手だったものがひとつありました。それが「実写映画化」です。

おそらく以前よりハリウッドなどから実写映画化の企画オファーはあったのだと思われますが、権利を持つ「株式会社ポケモン」が首を縦にふらなかったのかもしれません。その理由は私の推測ですが、キャラクターを破壊されてしまう恐怖があったのでないかな、と。というのも、ポケモンが初期にアメリカ展開を検討した際に悪い意味で「アメリカナイズされたデザイン」をアメリカ側から再提案されて文化の違いを思い知らされたという苦い経験があるそうで、その出来事が今の日本の「株式会社ポケモン」の中には教訓として残っているのかも…。絶対にブランドを台無しにはさせないぞ、と。

ところが、2019年、ついにポケモンのハリウッド実写映画が公開されました。それが本作『名探偵ピカチュウ』。そして、その中身を観た方ならわかるように、大方の不安を吹き飛ばす、ファンも大満足の一作になっていました。

そこにはファンがずっと愛してきたキャラクター&世界がリアルに息づいていました。それが意味するのは、ポケモンを「商業的に売れるコンテンツ」ではなく「敬愛すべき存在」として大事にしてくれる“愛”がこの20年以上で世界のクリエイティブな人たちの心に芽生えたという証明ではないでしょうか。たぶんポケモンが生まれて2~3年後に実写映画化していたらこうはならず、悲惨な改変で終わっていたでしょう。クリエイターの中にもポケモンを経験して育った人がいるというのも大きいでしょうね。

そんなポケモン愛に満ちた作品を作ってくれた監督は“ロブ・レターマン”。『モンスターVSエイリアン』のような3DCGアニメから『グースバンプス モンスターと秘密の書』のようなファンタジー映画まで、多才にこなす彼ならではの仕事ぶりが『名探偵ピカチュウ』の成功を支えたのでしょう。

制作は怪獣からロボットまでサブカルにやたら強い「レジェンダリー」。もう日本のコンテンツの実写化は全部この会社に任せていいんじゃないかな。

俳優陣は、『ジュラシック・ワールド 炎の王国』の“ジャスティス・スミス”、『ブロッカーズ』の“キャスリン・ニュートン”、最近ゴジラに散った男である“渡辺謙”、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズで顔が触手な怖キャラを演じた“ビル・ナイ”、そしてピカチュウの声を『デッドプール』でおなじみ“ライアン・レイノルズ”が熱演。ピカプールですね。

ポケモン好きなら子どもも大人もみんな楽しめますし、ポケモンを知らないという人も、本作からポケモン・ワールドに足を踏み入れるのもOK。

「ポケットモンスターの世界へ ようこそ!」

オススメ度のチェック

ひとり ◯(昔からのファンなら感動)
友人 ◎(ポケモン・トークで熱狂)
恋人 ◎(ポケモン・トークで仲良く)
キッズ ◎(ポケモン好きなら大興奮)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『名探偵ピカチュウ』感想(ネタバレあり)

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父を探す相棒は、きみにきめた

ポケモンという不思議な生き物が存在する世界。人々はそんな野生のポケモンをモンスターボールというアイテムで“捕獲”して所有し、“コレクション”したり、他の人のポケモンと“バトル”させたりするなど、生活に欠かせない存在になっていました。

ティム・グッドマンは友人に連れられて、草むらにいる〔カラカラ〕というポケモンをモンスターボールで捕獲するように促されます。しかし、かなり弱腰。結局、失敗。実はティムはある理由でポケモンが嫌いなのでした。その原因は父親。父のハリーは探偵でしたが、ポケモン絡みの仕事に夢中で家にも帰らず、すっかり疎遠に。父を奪ったのはポケモンであると責任転嫁し、嫌悪感情を溜め込んでいました。

ある日、ティムは、長い間会っていなかった父が事故で亡くなったという連絡を警察署から受け、人間とポケモンが共存する街「ライムシティ」を訪れることになります。このライムシティはクリフォート・インダストリーズ会長のハワード・クリフォードが築き上げた街で、自身の難病の治療法を探している時にポケモンとのパートナーシップによって「自分自身が進化できる」という悟りに到達。この街内では、モンスターボールは禁止され、ポケモンは常に放し飼いのような状態。そしてポケモン同士を戦わせることも厳禁で、まさに共生に特化した環境です。

行きの電車内で〔ベロリンガ〕に舐められつつ、警察署に向かうとヨシダ警部補と相棒の〔ブルー〕がお出迎え。父への不信を消せていないハリーは悲しむ素振りも見せず、そのまま父の住んでいたアパートの部屋へ行きます。

その今は誰もいないはずの部屋。そこで出会ったのは帽子をかぶった〔ピカチュウ〕。しかも人の言葉をやたら軽快に喋っており、どうやら自分にしか聞こえないようです。パニックになっていると、窓から狂暴化した〔エイパム〕の群れが襲ってきます。ついさっき部屋で見つけた試験管から発生した紫の煙を吸って暴走状態になった様子。一目散に逃げだすティムと〔ピカチュウ〕。

〔プリン〕が歌い、〔ルンパッパ〕が店員のカフェでコーヒーを飲みながら事態を整理。この〔ピカチュウ〕は父のパートナーだったらしく、でも記憶喪失なのだとか。自分が生きているなら父も生きているだろうと考える〔ピカチュウ〕に半ば強引に流されるように父の捜索を開始。

警察はあてにならないので、手がかりは偶然出会った父を知っているらしい〔コダック〕を連れた女性ルーシーだけ。とりあえず彼女が働くテレビ局「CNM」へ行くと、父は紫の煙を発生させる試験管「R」を追っていたようでした。

パントマイム大好き〔バリヤード〕から「R」の出どころを聞きだしたコンビ。その場所は違法なバトルを行っている闇闘技場。「R」で狂暴化した〔リザードン〕と戦うことになり、得意なはずの電気技を使えない〔ピカチュウ〕はそのへんで跳ねていた〔コイキング〕を〔ギャラドス〕に進化させて大混乱を脱出。

ミス・ノーマンというサングラス女性に連れていかれ、ハワード・クリフォードのもとへ。そこでホログアムで見せられたのはハリーの車が吹き飛ぶ瞬間。そこには〔ピカチュウ〕がいて、それを見下ろしていたのは最強のポケモン〔ミュウツー〕でした。

点が次の点へつながり、ハワードの息子ロジャーのパソコンからPCLというポケモン遺伝子研究施設が怪しいと睨み、ルーシーと調査に向かう一同。そこにはまだ知らないさらなる秘密が隠されており…。

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この映画にはポケモン愛がある

『名探偵ピカチュウ』を鑑賞して真っ先に驚嘆するのは世界観。

あのポケモンが、本当に、私たちと一緒にいる…! 実写なんだから当たり前なのですが、それでもそこに驚いて、感動してしまうのは、それだけクオリティが高いという証拠。

とくにライムシティが初登場時のワクワク感は格別です。数多くの多種多様なポケモンたちひしめき合っており、それぞれの役割に応じて人間と一緒に働いていることも。〔カイリキー〕は交通整理をし、〔ゼニガメ〕は消防活動をし、〔ガーディ〕は警察犬になり、〔カビゴン〕は寝ている…。

こういう世界観、最近観たなという気分になるのは『ズートピア』ですね。多様性溢れる生き物の街並みと、加えて謎の捜査するコンビ、さらには狂暴化するという要素まで、ちょっと似すぎですけど…。

また、多くの海外批評家が言及していますが、1988年の映画『ロジャー・ラビット』に通じるものがあります。この映画は実社会にトゥーンアニメのキャラクターが実在しているという架空のハリウッドが舞台で、こちらも事件解決モノ。

『名探偵ピカチュウ』はその系譜を受け継ぐ最新アップデート版といった感じでしょうか。

ただ、そんなことはさておき、多くのポケモンのファンが歓喜するのは、随所に散りばめられたポケモン愛だと思います。それはエンディングクレジットの直球なファンサービスだけではない、わかる人にはわかるお楽しみ要素の数々にイチイチ顔がスマイルになってしまいます。

『名探偵ピカチュウ』は同名ゲームが原作になっているのですが、それを題材にしたのも功を奏した感じですね。ポケモン初心者にも易しい入り口ですし、マニアックな側面もいくらでも入れられる…ぴったりな作品です。まあ、株式会社ポケモンはかなり厳しくコントロールしていたらしいので、許可が下りたのがこの「名探偵ピカチュウ」だけだったのかもしれないですけど。

ゲームの実写化はインタラクティブが導入できないので難しいと口を酸っぱくして書いてきた私ですが、それでも実写化を無難に成功させるには、やっぱり愛を詰め込むのが正攻法。『名探偵ピカチュウ』はそこに100点満点中120点でクリアしてみせたのでした。

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このピカチュウもげんきでちゅう

もちろん『名探偵ピカチュウ』の最大の注目ポイントは、主人公であるポケモンたちの描写です。

正直、誰もが映画企画発表時は「どうなるんだ?」とハラハラした部分ですが、本作のポケモン再現のバランスは本当に絶妙でした。

例えば、〔ピカチュウ〕を例に挙げると、これまで〔ピカチュウ〕が3DCG化されたのは普通にありました。それこそ2019年に本家の毎年恒例のアニメ映画がCG化して『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』として公開。それも含めて〔ピカチュウ〕たちポケモンは基本ツルっとした体で描かれているのがデフォルトでした。いわゆる体毛などのフォトリアルな要素は避けてくるのが恒例。

しかし、それだとどうしても実写映像の人間と並べると浮いてしまいます。かといって本当の動物みたいに超リアルにするとポケモンじゃなくなります。これは難題。『名探偵ピカチュウ』の製作陣も相当に苦戦したことでしょうけど、結果、ベストな解答例を見せてくれました。

まず体毛表現は普通にやる。一番いいなと思ったのは表情。例として〔ピカチュウ〕がわかりやすいですが、本来のピカチュウは黒目です(白い反射点がある)。でも本作の〔ピカチュウ〕は虹彩がちゃんとあって白目もあるのですが、限りなくその虹彩を目一杯大きくすることで元々の雰囲気を壊さないようにしています。加えて、眉毛がないので、そのぶん顔のしわを効果的に使って多彩な表情を表現。これがいわゆる「しわしわピカチュウ」となったのでした。その工夫の成果もあって、独自の愛らしさを持つピカチュウが完成。これはこれで可愛い。

ゲームやアニメよりも出来がいいくらいの存在感を放っていたのが〔バリヤード〕ですね。これは実写だからこその複雑な表現ができることを最大限に活かしてパントマイム芸を披露。なんでも株式会社ポケモンは〔バリヤード〕の登場に消極的だったらしいですけど、完全にゲームやアニメ側が参考にすべきくらい、本作の〔バリヤード〕は満点です。

個人的に惜しいのは〔ミュウツー〕かな。そもそも〔ミュウツー〕はゲームやアニメでも「強い」以外の特徴を出しづらく、表現としての見せどころが薄い(無表情で語りかけてくるし)のがネック。逆のその無表情を堂々とやりきった〔メタモン〕はトリッキーな味が出ていましたね。

強いて言えば、全体を通してハッキリ映るポケモンの種類が少なく、何度も同じポケモンが映り込むのが気になるかな、と。なんでも60種類くらい登場しているらしいですが、まあ、作るのも大変だし、しょうがないか。

“ライアン・レイノルズ”版ピカチュウのトークも良かったです。笑っちゃうのが、ポケモン自虐ネタを言わせているところ。くすぐられると喜ぶのはたぶん「ピカチュウげんきでちゅう」というゲームネタでしょうし、歩数に関する話題をぼやくのは「ポケットピカチュウ」(歩数計機能で遊ぶゲーム)のメタなジョークです。こんなの本家は絶対にできない…。

なお“西島秀俊”の吹替も良かったです。でも最後に“ライアン・レイノルズ”本人が出てくるというインパクトに繋がらないのが吹き替え版の欠点ですが…。

ちなみにポケモンが人間と合体して喋るというのは、初代ゲームからあるネタ要素です。

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ポケモンに欠かせない「家」

ストーリーは大半の人が思うところでしょうけど、単純すぎる部分は否めません。

〔ピカチュウ〕の正体はさておき、〔ミュウツー〕の倒し方もあっさりすぎですし、中盤に大胆に出てきた異常巨大化した〔ドダイトス〕とか、なんて中途半端な登場なんだ、と。主人公の成長譚としても弱く、そもそもこの事件、主人公だから解決できたという決定的な要がない気がする(もともとのハワードの計画がずさんだというのもあるけど)。ルーシーのキャリアアップも結局はロジャーという捕まっていただけのような奴に認められるという、不甲斐ない終わりとも受け取れるし…。ヨシダは働け。

でもポケモンらしい大事なストーリーの主軸はしっかり存在していました。

ポケモンの主要ゲームをプレイしていない人には全然わからないと思いますが、ポケモンは初代から一貫して「家」で始まり、「家」に終わる物語でやってきたという伝統があります(多少の変化球はあれど)。それは子ども時代の原体験をベースにしているからであり、皆さんも経験あるように、子どもは家がスタート地点であり、そこから学校に行ったり、友達の家や公園に遊びに行ったりして、また家に帰ってきます。それがゴール。そして1日のルーチンワークです。ポケモンはこの子ども感覚を重要視しているジュブナイル作品でした。

『名探偵ピカチュウ』もそのフォーマットに則っており、家庭に迷っていた主人公ティムが父の残した家にたどり着き、自身の部屋を確認し、そこから冒険が開始。そして、最後は父を見つけ、本当の家に帰るというオチ。

こういう一番の定番を押さえているからこそ、ストーリーの穴はあっても、最後までファンを傷つけず着地して穏やかに終われる。製作陣の手際の勝ちかな。

ぜひこのまま一作で終わらせないで、挑戦を続けていってほしいです。株式会社ポケモンもこのクオリティに安心してさらに自由な制作を許してくれるかもですし。

私の要望は、冤罪で囚われの身になった〔ポリゴン〕を救うべく、インターネットの世界に旅立った〔ピカチュウ〕たちが、タイムトラベルをしてしまい、ポケモンのゲーム誕生時点の時代に到達、なぜか全然売れていないポケモンを人気にさせるべく奮闘する…このアイディアでお願いします。うん、絶対に許可でないな…。

『名探偵ピカチュウ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 68% Audience 80%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2018 Legendary and Warner Bros. Entertainment, Inc. All Rights Reserved. (C)2018 Pokemon

以上、『名探偵ピカチュウ』の感想でした。

Pokemon Detective Pikachu (2019) [Japanese Review] 『名探偵ピカチュウ』考察・評価レビュー