エンドですよね?…映画『ハロウィン THE END』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2022年)
日本公開日:2023年4月14日
監督:デヴィッド・ゴードン・グリーン
ゴア描写 恋愛描写
ハロウィン THE END
はろうぃん じえんど
『ハロウィン THE END』あらすじ
『ハロウィン THE END』感想(ネタバレなし)
ハロウィン(今度は4月)
4月になりましたね。トリック・オア・トリート!
え? 4月なのに? そうなんです。日本の映画界はちょっと事情が特殊で、2月がクリスマスになったりするんです。だから4月がハロウィンになってもおかしくないです。
そんな2023年の4月に日本で劇場公開される、めちゃくちゃハロウィンな映画はこれです。
それが本作『ハロウィン THE END』です。
それにしてもタイトルがもうハロウィンを盛り上げるというよりは、終わらせにかかっているな…。4月に公開しておいてハロウィン終了宣言とはなかなか大胆なやつだな…。
本作『ハロウィン THE END』は2021年に公開された『ハロウィン KILLS』の続編です。
問題はこのシリーズの展開のややこしさで、初心者に説明するのに苦労します。前作のときも解説しましたけど、もう1回繰り返しますね。
始まりは1978年公開の“ジョン・カーペンター”監督の出世作である『ハロウィン』。スラッシャー映画(殺人鬼が現れて死体だらけになるジャンル)の代表作で、ハロウィンである10月31日に謎の正体不明の殺人鬼(ブギーマン)が町に出没し、容赦ない殺戮を繰り広げ、町の人々を恐怖のどん底に突き落とす…という物騒なお話。
この1978年の『ハロウィン』はジャンルの代表作となり、その後も続編が作られまくったのはいいのですが、厄介なことに「この作品はあの作品の続編」「今度はあの作品と関係あるけどこの作品とは無関係」「新しくリメイクで再始動しよう」などと繰り返した結果、類似のタイトルが乱立する大混乱なラインナップとなってしまいました。
そこで一旦仕切り直してあらためて初代1作目の続編として原点回帰を狙った作品として公開されたのが2018年の『ハロウィン』。タイトルは完全に同じですけど1作目の続編です。逆にそれ以外の作品とは物語が接続しません。
そしてこの2018年の『ハロウィン』の続編となったのが『ハロウィン KILLS』。さらにその『ハロウィン KILLS』の続編が本作『ハロウィン THE END』。
だから順番としては『ハロウィン』(1978年)⇒『ハロウィン』(2018年)⇒『ハロウィン KILLS』(2021年)⇒『ハロウィン THE END』(2022年)です。
『ハロウィン THE END』は初代から物語接続性の流れで数えると4作目ですし、「Legacyquel」として始まった近年の流れとしては3作目であり、シリーズ全部を集計すればフランチャイズの第13作目にあたります。ついてこれてる?
監督は前々作&前作から“デヴィッド・ゴードン・グリーン”が続投。
主演は、最近も『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』でアカデミー助演女優賞をとって勢いに乗っている“ジェイミー・リー・カーティス”。『ハロウィン』シリーズは“ジェイミー・リー・カーティス”にとってのマルチバースかな。
初代映画からあのキャラを演じたあの人がカムバック!というのは今回はあまりないです。もうほとんど前作でやり尽くした感じがありますからね。
一応、この『ハロウィン THE END』は新しく始動したシリーズの完結編ということですが、どう完結するのかはその目で確かめてください。
日本では『ハロウィン KILLS』はちゃんと10月公開だったのに、『ハロウィン THE END』が4月公開になってしまったのは惜しかったですけどね。とは言え、今作は実はそんなにハロウィンっぽさがあるわけでもなく、意外と薄いので、もう別にどうでもいいかとなったのかもしれない…。
マイケル・マイヤーズさんは、ポカポカ陽気で眠気を誘う4月でも頑張ってくれます。
『ハロウィン THE END』を観る前のQ&A
A:1作目の『ハロウィン』(1978年)とその新たな続編の『ハロウィン』(2018年)、続く『ハロウィン KILLS』(2021年)を鑑賞するのがオススメです。ストーリーは一貫して連続しています。
オススメ度のチェック
ひとり | :シリーズ好きなら |
友人 | :ジャンル好き同士で |
恋人 | :好みに合うなら |
キッズ | :残酷な暴力描写満載 |
『ハロウィン THE END』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):またまたハロウィンの日が来る
2019年10月31日のハロウィンの夜。イリノイ州ハドンフィールドにて、コーリー・カニンガムという青年は子守のためにとある家を訪れました。ここに住むジェレミー・アレンという少年の面倒を一夜だけみることになっているのです。去年のハロウィンにこの町で起きたマイケル・マイヤーズという凶悪な惨殺な男による事件のせいで、ジェレミーはショックを受けていると母親は教えてくれます。
2人きりとなり、ジェレミーと一緒にホラー映画を観ていると、「マイケルは子どもじゃなくて大人を殺すんだ」とジェレミーは強きに言い放ちます。
子ども向けとは言い難い映画だったので、かくれんぼをしようと提案するコーリーでしたが、ジェレミーは随分と口汚く反発してきます。
コーリーが少し目を離したとき、物音がしてジェレミーが忽然と消えます。表のドアが開いていたので外で呼びかけるも返事なし。家の中をもう一度探すと、キッチンの包丁が無くなっていることに気づきます。階段に包丁が落ちており、ゆっくりと声の聞こえた屋根裏へ…。
すると屋根裏のドアが閉じられて中に閉じ込められます。ドアの外からは生意気なジェレミーの声。どうやらジェレミーがふざけてやったようで、マイケル・マイヤーズの真似をして揶揄っているのでした。
さすがに怒ったコーリーはドアを「ぶっ殺すぞ」と蹴飛ばします。しかし、ドアが倒れた勢いでジェレミーは後ろに突き飛ばされて階段を落下し、死亡。ちょうど両親が帰ってきて、凄惨な現場に絶叫します。
コーリーは手に刃物を握っていて、しかも殺害の意思を示す言動を両親が聞いていたので誰しもが故意の殺人を疑いました。その場で逮捕されます。
2022年。4年前の事件以来、ハドンフィールドではマイケル・マイヤーズは姿を現していません。
1978年10月31日に高校生だったときにマイケル・マイヤーズに狙われたローリー・ストロードはおぞましいほどの恐怖を体験し、40年後の2018年10月にも精神病棟から脱走したマイケル・マイヤーズと対峙し、娘のカレンと孫娘のアリソンと一緒に撃退を試みるも、カレンは刺殺されてしまいました。
今、ローリーは新居を購入し、孫娘のアリソンと暮らしています。カレンの死から立ち直れていませんが、回顧録を書きながら、過去を受け止めようとしていました。
一方、コーリーは無罪となって釈放されていましたが、町では嫌われ、車の解体場でひっそり働いていました。上司のロナルドから古いバイクをプレゼントされ、少し気分が晴れます。
夜、コーリーはコンビニで、テリー、ビリー、ステイシー、マーゴの若い4人組に揶揄われ、「サイコ・ベビーシッター」「ペド」と屈辱的に罵倒されます。そして押し倒され、割れた瓶の破片がざっくり刺さって手に怪我します。
そこへローリーがたまたま通りかかり、助けてくれます。アリソンが働いている病院まで連れていってくれますが…。
あの映画との異色合体
ここから『ハロウィン THE END』のネタバレありの感想本文です。
2018年の『ハロウィン』から始まったこの3部作。どんな展開を見せるのかと当初は思いましたけれど、終わってみれば3作品それぞれでかなり味の異なる映画になっていました。
1発目の2018年の『ハロウィン』は原点である1978年版の正統的な続編という面構えで、あの惨劇に対する明確な反旗を翻すカウンター的な一作でした。
2発目の『ハロウィン KILLS』は恐怖と憎悪に突き動かされた集団心理による群衆パニックを風刺しており、派手さが増量し、惨劇の幅が拡大しました。
では3発目の『ハロウィン THE END』はどうくるのか? 時間軸が連続していた1発目と2発目と異なり、3発目の本作は2022年が舞台で年数が経過しています。コロナ禍もあったからか、マイケル・マイヤーズもお休みで、今作自体にもあまり登場しません。
その代わりに「ザ・シェイプ」として恐怖を形作るのが、コーリー・カニンガムという若い男。マイケル・マイヤーズの意思を受け継ぐ存在の登場です。
で、このコーリーは明らかにインスピレーション元があって、それが1983年公開の“ジョン・カーペンター”監督作の『クリスティーン』。こちらの映画の主人公の姓も「カニンガム」で、イジメられる気弱さや、そこから復讐するかのように狂気に憑りつかれていく過程、さらには車両を使った殺害など、この『ハロウィン THE END』のコーリーというキャラクターの造形に多大な影響を与えています。
まさしく『ハロウィン THE END』は『ハロウィン』と『クリスティーン』という2つの“ジョン・カーペンター”作を魔合体させたような怪物です。
さらに『ハロウィン THE END』はそこからベタなほどクラシカルなロマンス・ストーリーへと舵を切っていきます。コーリーとアリソンの交流が愛へと発展し、しかしコーリーは危険すぎる刃物でもあり…。
コーリーは典型的な劣等感に沈んだ結果に暴力性に開花する男性です。序盤で幼い子どもにすら嘲笑される、しかもホラー映画というものがその引き金になる…その皮肉な描き方もキツさがあります。こうして暴力性に目覚めていくほどに男性的な魅力が増したように錯覚させられるというあたり含め、本作はブギーマンというのはマスキュリニティの歪みの最悪形態であるという視点に立っているのが伝わってきます。
たぶん作り手の狙いとしては、マイケル・マイヤーズというひとりの得意な男を特別視させるのではなく、また何か精神疾患のスティグマを増大させる後味にさせたくもないので、ここはマスキュリニティで無難にオチをつけ、誰でもこうなりえますよと提示することにしたのかな。
コロナワクチンを打ったら勝てる!
個人的には『ハロウィン THE END』は3部作の締めとしては、いささかいきなり変化球すぎたかなとは思いました。
コーリーのエピソードもわかると言えばわかるし、アプローチとしては悪くないのでしょうけど、どうしても終盤はみんな「マイケル・マイヤーズvsローリー」を観たくなりますよね。コーリーのことなんて頭の片隅に忘れてしまう…。実際、本作の終盤はコーリーは完全に放置でしたよ。
あとラブストーリーもいかんせん唐突すぎるんじゃないか、と。アリソンがコーリーに惚れる要素がどこにある?と終始私はよくわからなかったですけど、アリソンってこんな男ありきのキャラクターで終わっていいのかとも思いましたよ。
また、肝心のマイケル・マイヤーズが本作では弱体化しており(やっぱりコロナワクチンを打たなかったせいだな…コロナ後遺症だよ…)、完結編なのにシリーズ最大の大暴れをしてくれるわけでもなく、ちょっとパフォーマンス目当てだと物足りないですね。まあ、こんな襲う側も襲われる側も老老の組み合わせになるのも珍しいのだけど。
逆にローリーは相変わらず異様に強くて、そこだけは楽しいです。もうこのシリーズ、ローリーがマイケル・マイヤーズをどうぶっ倒すのかを楽しみにするしかない感じでもありますから。
今作のローリーはマイケル・マイヤーズ検知能力が衰え知らずで抜群で、凶悪化したコーリーのオーラにさえ敏感に気づくレベルです。野生動物の本能みたい…。
そして終盤での家での大乱闘。ローリーが全く互角か、それ以上の猛烈な気迫で圧倒しているのが普通に考えると凄すぎる…。ローリーはコロナワクチンじゃなくて超人血清でも打ったのかな…。
エンディングにはいろいろな案が検討されたらしいですけど(ローリーの自死、コーリーとアリソンの生存による『ナチュラル・ボーン・キラーズ』化などの候補があったとか)、完成に採用されたのはわりと希望溢れる着地でした。でもマイケル・マイヤーズの遺体を粉砕機に入れるまでのあの妙に重々しい葬列状態とか、なんかあそこで一気にシリアスさが増してましたね。だったら恋愛要素抜きにしてもっと町の人のトラウマにずっとフォーカスしてた方が良かった気もするんだけど…。
『ハロウィン』シリーズは今後も作られるのかは不明ですが、権利はこれまでのシリーズを展開させてきた“マレック・アッカド”に移っているそうなので、また何か始めそうではありますね。
『スクリーム』みたいにこの手のスラッシャー映画をネタにした作品の方が近年は若い客層のウケがいいので、ちょっと『ハロウィン』シリーズは不利になっていると思うのですが、マイケル・マイヤーズさんの復帰はそんな遠い未来ではないと私の直感は告げています。その前にワクチンは打っておいてください。マイケル・マイヤーズさんが全力だせるようになるためにも…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 40% Audience 57%
IMDb
5.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)2022 UNIVERSAL STUDIOS ハロウィンENDS エンズ ジ・エンド
以上、『ハロウィン THE END』の感想でした。
Halloween Ends (2022) [Japanese Review] 『ハロウィン THE END』考察・評価レビュー