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『ザ・ベビーシッター』感想(ネタバレ)…少年は大人になる

ザ・ベビーシッター

少年は大人になる…Netflix映画『ザ・ベビーシッター』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Babysitter
製作国:アメリカ(2016年)
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信
監督:マックG
ザ・ベビーシッター

ざべびーしったー
ザ・ベビーシッター

『ザ・ベビーシッター』物語 簡単紹介

臆病で甘えてばかりの少年・コールは、この年齢になっても美人のベビーシッターのビーに世話されていた。そんなビーはコールに優しく接してくれて、どうしてもその居心地よさを遠ざけたい気持ちにはならない。しかし、ある日、寝る時間を過ぎても起きていたコールは、ちょっとした下心と好奇心によって、その信頼していたビーの衝撃の素顔を目撃してしまう。もはや甘えられる相手はいない。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ザ・ベビーシッター』の感想です。

『ザ・ベビーシッター』感想(ネタバレなし)

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ベビーシッターのバイトはいかが?

日本の高校生の定番アルバイト先といえば、どこにでもある「コンビニ」か、ファストフードなどの「軽飲食店」ですが、ところがアメリカだと全然違います。そのアメリカでポピュラーなアルバイト先としてよく挙がるのが「ベビーシッター」です。

日本人感覚的には、“よく子どもを高校生に預けるな”と驚いてしまいますけど、これにはアメリカらしい事情があるようで…。なんでも、ある一定の年齢以下の子どもを家で一人にしてはいけないという法令がある州も存在しているらしいです。もちろんこの他にも家族観の文化的違いがあるのでしょうけど。日本では保育士・保育所不足が社会問題ですが、きっと高校生をバイトで雇うようなことにはならないだろうなぁ…。

アメリカ映画でもこういうベビーシッターはよく登場しますが、もしそのベビーシッターがとんでもない正体を隠していたら…という作品が本作『ザ・ベビーシッター』です。

監督は“マックG”。あの監督デビュー作『チャーリーズ・エンジェル』で一躍、成功をおさめ、『ターミネーター4』の監督をつとめるなどしましたが、まあ、その後の作品も含めて低迷し続け…。そんな“マックG”の最新作がNetflixオリジナルで配信となりました。

出演は、主人公となる少年役に“ジュダ・ルイス”(最近だと『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』に出演)、美人ベビーシッター役に“サマーラ・ウェイビング”(サマラ・ウィービングとも)が抜擢(最近だと『モンスタートラック』に出演)、他には“ロビー・アメル”、“ハナ・メイ・リー”らが揃っています(ちなみに“ハナ・メイ・リー”、よく菊地凛子と間違われますよね。“ハナ・メイ・リー”は『ピッチ・パーフェクト』で有名になった、韓国系のアジア女優です)。

物語はちょっとエロティックで、かなりバイオレンスな少年成長譚。でも重々しいものではありませんし、基本はギャグです。このどうしようもないほどに痛快なセンスはさすが“マックG”監督。『チャーリーズ・エンジェル』の頃から全然変わっていないのが逆に凄いですよ。普通だったらB級映画にとどまりそうなところを意外にもキャリアを伸ばせてしまうあたりは監督の運なのか、実力なのか…。

85分と短く、とても気軽に観られて、観た後は爽快感で満たされる気持ちの良い映画になっていますので、ぜひちょっとした時間があるときにどうぞ。

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『ザ・ベビーシッター』を観る前のQ&A

Q:『ザ・ベビーシッター』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2017年10月13日から配信中です。
日本語吹き替え あり
室元気(コール)/ 小松由佳(ビー)/ 白石涼子(アリソン)/ 阪口周平(マックス)/ 土田大(ジョン)/ 真壁かずみ(ソーニャ)/ 宮中はるか(メラニー) ほか
参照:本編クレジット
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ザ・ベビーシッター』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):お姉さん!?

コールという名の少年は予防注射を打つのが怖くて10分も抵抗していました。こんなヘタレ野郎ですからイジメの格好の餌食になります。イジメっ子の野郎(14歳)は16歳の女性とヤったと自慢。コールは何も言い返せません。

そこへ颯爽とやってきた年上女子。ビーはコールのベビーシッターです。イジメをしてくる奴らを華麗に追い払い、自分を労わってくれます。「股間を蹴り飛ばせばいい」とアドバイスしてくれます。

ビーはいつも気楽に話しかけてきますし、素を曝け出すことができます。思わずビーの胸に目がいってしまうこともありますが…。

ビーが家まで車に送ってくれた後、母に「僕はプッシーかな?」と聞きます。「大きくなれば怖くはなくなる」と慰めてくれました。

父から車の運転を教えてもらいますが、ドライバーの死亡率が怖くてアクセルを踏めません。父は「準備ができてからでいい」と言ってくれます。

ラジコンカーが趣味で、包丁で解体するくらいに夢中ですが、実物の車は動かせないのです。

コールにとってビーこそが自慢の存在。自分がベビーシッターのお世話になっていると言っても、ビーを見れば嫉妬して黙ります。同級生のメラニーという女の子だけはビーに疑いの目を向けていました。

今日も両親が出かけるのでビーと家にいます。「今夜はお前が家の主だ」と言って両親は出かけました。

家ではビーと好きなように大はしゃぎ。プールではセクシーな水着のビーとひと泳ぎ。夜は理想の宇宙船チームを妄想してどっちが凄いか語り合います。野外で映画を鑑賞。一緒にセリフを言い合って大満喫。

寝る前にアルコールを飲もうと言ってくるビー。自分は飲んだふりでビーにだけ飲ませ、眠いパフォーマンスをします。

コールは考えていました。自分が寝ている夜中、ビーは何をしているのか。きっとそんな変なことはしていない。「変わり者は好きよ」と言ってくれるあんな素敵な人なら…。

夜、チャイムがなります。メラニーとスマホでやりとりしつつ、彼女はきっと乱交だと断言。ゆっくり部屋を出て1階を覗きに行くことに。

ビーは数人の若者たちと何やらゲームをしていました。真実か挑戦か。ここにいる全員とキスをするということになり、ビーは気軽にやってみせます。ビーが女性とねっとりキスする姿に見惚れてしまうコール。

若者参加者の中でひときわ臆病そうなサムという青年ともキス。すると包丁で頭をグサ! しかもダブル。血をダラダラと流して死んでいく青年。

「あなたは大いなる目的のために犠牲になる」

なぜか血を器に集め始める集団。悪魔と取引などと言っており、これは何かしらの悪魔崇拝の儀式らしい…。若者たちは全く殺しを気にもしておらず、お気楽に会話を続けています。教典という本を開き、「コールから無垢な血をとる準備をしよう」と語るビー。

急いで部屋に戻り、スマホで警察に通報しますが、自分の身を自分で守ろうと行動に出ます。手にしたのはポケットナイフ。

しかし、そこに例の集団が。血を注射で抜くらしい。それはヤバい。針は嫌だ。でも喋ったら殺される。よし、耐えた。

みんな部屋からいなくなった。あとは窓から逃げるだけ。シーツを結んで脱出用の降りるルートも作った。
よし、いくぞ。後ろにビーがいる。

後ろに…?

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乱交(悪魔的な意味で)

12歳のコールは注射が嫌い、クモも嫌い、車はエンジンをかけるまでしかできない、すごく気弱な男子。いじめてくる同級生にも何も言い返せません。しかも、両親はコールを放置気味。そんなコールの強い味方がベビーシッターのビーでした。いじめっ子もぶっ倒してくれるし、オタクトークにも付き合ってくるし、性格も良いし、美人だしで、こんなベビーシッターいるのかよというくらいの完璧さ。当然、べったり甘えてしまいます。

ところが、同級生の女の子に「ベビーシッターなんてあんたが寝た後は、男を連れ込んでヤってるよ」と言われてしまい、疑心か好奇心か、寝たふりをして夜にビーの様子を覗いてみると…。そうしたら確かに若者同士でパーティゲームをしており、なんと仲間らしき女とディープキスしている姿を目撃。ヤってるって、そっちか!と興奮する中、続いてさらなる衝撃が。メガネ男にビーが近づいたと思ったら、ナイフで脳天グッサー! 血、ブワッシャー! ヤ、殺ってるー!

はい、ビーたちは悪魔崇拝集団だったのでした。コールは無垢な血を安定して手にいれるためにいいように生かされていただけだったのです。

そんなこんなで少年vs悪魔崇拝集団の対決が火蓋をきる…というストーリーでした。

雰囲気としてはグロめの『ホーム・アローン』。ツッコミどころは多々ありますが、スピード感とバイオレンスのテンポの良さがいいです。キャラも愉快で、あの血をやたら浴びることになる黒人の逆ギレ芸と、ビーとねっとりキスする女の“おっぱい気にしすぎ芸”とか、ほんとアホでいいですね。

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もうベビーシッターはいらない

でも、この映画、全体的にはアホなんですけど、お話の主軸ではちゃんとコールの成長が描かれており、意外と言っては失礼ですが、しっかりしてました。

注射嫌いだけど注射されても声をあげずに耐え、クモ嫌いだけどなぜかいるタランチュラにも耐え、イジメ野郎には攻撃をし返した(効かなかったけど)。エンジンしかかけられなかった車はジャンピングアタックをぶち込めるまでに成長。それは私でもしたことないよ…。

ちょうどコールは12歳。ベビーシッターを卒業するならギリギリの年齢。悪魔崇拝集団の出現は大人への試練としてはグッドタイミング。Queenの「We Are the Champions」をバックに彼の大人への変貌が実に馬鹿々々しくも勢いよく描かれる姿は爽快です。こうやって少年は大人になっていくんです(断言)。

とまあ、単なるバカ映画とは馬鹿にできない脚本。それもそのはず、この映画の元シナリオ、なんと優れた脚本を選ぶ「ブラックリスト」に選出されていたそうです。これがあの名作シナリオと並んでいるのか…なんかスゴイ顔ぶれだ…。

私は悪魔崇拝集団に出会えなかったから大人になれてないんだなぁ。…そういうことにしよう。だからといって今さらそんな集団には出会いたくはないのでこっち来ないでくださいね。

『ザ・ベビーシッター』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 72% Audience 61%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

©Netflix

以上、『ザ・ベビーシッター』の感想でした。

The Babysitter (2016) [Japanese Review] 『ザ・ベビーシッター』考察・評価レビュー