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『アッシュ 孤独の惑星』感想(ネタバレ)…異常な活動を検知しました

アッシュ 孤独の惑星

繰り返します、検知しました…映画『アッシュ ~孤独の惑星~』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Ash
製作国:アメリカ(2025年)
日本では劇場未公開:2025年にAmazonで配信
監督:フライング・ロータス
アッシュ 孤独の惑星

あっしゅ こどくのわくせい
『アッシュ 孤独の惑星』のポスター

『アッシュ 孤独の惑星』物語 簡単紹介

とある惑星の探査ステーションでリヤは目覚める。なぜここにいるのか不自然なほどに記憶が欠落しており、警報の鳴る施設内には無残な死体が転がっていた。状況を把握するために付近を調べ、手がかりを集めていくが、不意に思い出したのはミッションの中で苦楽を共にする仲間の顔だった。そして困惑するリヤの目の前に、ある人物が現れる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『アッシュ 孤独の惑星』の感想です。

『アッシュ 孤独の惑星』感想(ネタバレなし)

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もっと静かにパニックになろうよ…

世界が経済無知の一国の王による関税乱発のせいで大混乱に陥る中、当の愚王は自分のミームコインをたくさん買ってくれた人をプライベートディナーの招待し、満足感に浸っていましたThe Daily Beast。一方、島国の庶民は、外国の転売屋を排除してくれたぞと微笑みながら国内の転売屋が大挙して「Nintendo Switch 2」を手に入れるべく抽選申し込みページに群がっていました。

2025年…もうパニック映画よりもパニック味がある…。

これだけ現実がパニックのジャンルになっていると、肝心のフィクションのパニックものが物足りなくなるという、謎の感覚に陥る…。「なんだ、リアルのほうがもっと酷いじゃないか…」と冷めた気持ちに…。

それでも映画を観るのはやめない私。この映画は現実よりも恐ろしいだろうか、それとも現実を忘れさせてくれるだろうか…そんな面持ちで今日も映画を眺めるのでした。

今回紹介する映画『アッシュ 孤独の惑星』は、現実社会よりはだいぶ静かな環境でのパニックを淡々と描いてくれます。

あまり映画内で最初は情報が明かされないタイプの語り口なので、事前のネタバレ無しの状態ではそこまで前知識を入れずに観たほうがいいかもしれません。とりあえず宇宙の惑星にある科学ステーションが舞台だということだけ知っておけばいいです。

主人公はそこである恐怖を体験していくことに…。

狭い施設内での宇宙ホラーというと、どうしたって『エイリアン』のような代表作を思い浮かべますが、それと同じかどうかは…。恐怖は恐怖でもどういうジャンルなのかは見てのお楽しみです。

この『アッシュ 孤独の惑星』、成り立ちがやや変わっていて、監督が“フライング・ロータス”という人物となっています。「誰?」と思った人も多いはずで、かくいう私もよく知らなかったのですが、この人は音楽プロデューサー、DJ、ラッパーといった肩書で活躍してきたアメリカ人で、実はいろいろな映像作品向けに楽曲を作ることもよくやっていたそうです。最近だとアニメ『Yasuke -ヤスケ-』の音楽を手がけていました。

その“フライング・ロータス”、2016年から映像制作の部門を自分で立ち上げて、2017年に『Kuso』という映画で長編映画監督デビューを果たします(クレジットは“スティーブ”となっている)。

さらに2022年のオムニバス『V/H/S/99』『Ozzy’s Dungeon』のエピソード監督を担当。活躍の幅を拡大させます。

そして2025年に『アッシュ 孤独の惑星』を監督した…と。今作でも自分で音楽を手がけ、独自の才能をフルに発揮しています。

インディーズ映画的なスタイルが濃く、製作費も110万ドルとハリウッド大作と比べるとはるかに小規模(ちなみに『エイリアン ロムルス』の製作費は約8000万ドルです)。

だからと言ってチープな映像というわけでもなく、こだわりが随所に感じられ、“フライング・ロータス”監督の「こうしたい!」というクリエイティブ魂が終盤は炸裂します。

前半はやや地味なのですけど、ぜひ後半の展開を楽しみにしてください。

俳優陣も、『アンビュランス』でも迫真の熱演をみせた“エイザ・ゴンザレス”を主人公に据えつつ、『デュアル』“アーロン・ポール”『シャドー・オブ・ナイト』“イコ・ウワイス”『シャドウ・イン・クラウド』“ビューラ・コアレ”、ドラマ『Austin』“ケイト・エリオット”と、しっかり揃っています。なお、監督の“フライング・ロータス”も出演しています。

『アッシュ 孤独の惑星』は日本では劇場公開されず、「Amazonプライムビデオ」で独占配信中です。

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『アッシュ 孤独の惑星』を観る前のQ&A

Q:『アッシュ 孤独の惑星』はいつどこで配信されていますか?
A:Amazonプライムビデオでオリジナル映画として2025年4月24日から配信中です。
✔『アッシュ 孤独の惑星』の見どころ
★監督の作家性が徐々に炸裂していく展開。
✔『アッシュ 孤独の惑星』の欠点
☆序盤はやや地味なので関心が離脱しがち。
日本語吹き替え あり
山村響(リヤ)/ 阪口周平(ブライオン)/ 小松史法(ケヴィン) ほか
参照:本編クレジット

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 2.5
ややグロテスクな描写があります。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『アッシュ 孤独の惑星』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

「異常な活動を検知」とシステム音声が告げます。警告音声が止まない中、部屋の床で倒れていた状態から目覚めるリヤ。痛みに呻き、立ち上がります。体はところどころ血がついており、怪我をしたのか…。しかし、記憶がありません

どうして自分はここにいるのか、なぜこんな状態になっているのか、このエラー音声はそもそも何なのか…。わからないことだらけです。

ここは科学ステーションのようですが、システムがダウンしているのか照明も機能せずに真っ暗です。自分は研究者だったのでしょうか。何を研究していたのか、思い出そうとしますが、ハッキリしません。

痛みを我慢しつつ、ライトを手に探索すると、衝撃的な光景がそこにありました。他のスタッフはみんな無残に死んでいました。それは明らかに何かに襲われたような姿です。普通はこんな死に方はしません。争ったにせよ、襲った存在は今のところ、見当たりません。警戒しながら前に進みます。

あのスタッフたちも自分の仲間だったのでしょうか。何か心がざわつきます。

予備電源をオンにすると、やっと施設の電力が復旧し、最低限の機能が使えるようになります。

施設のドアが開き、ここはどこか遠い惑星だということがわかりました。リヤはそのままの身で外を歩き回って、誰かを探しますが、視界の悪い荒れ地のような世界でした。

空は赤紫色で、不気味な空間の歪みがあります。この惑星を探索するためにここに来たのでしょうか。そうだとしたらこの星に住む何かに襲撃された可能性もあります。

急に息が苦しくなり、這いつくばってステーションへ戻ります。大気は毒だったようです。

意識が朦朧とする中、リヤは昔の細切れな記憶が戻ります。

仲間と談笑している自分。周りにいるのは、クラークアディケヴィンデイヴィスで、合わせて5人でミッションに向き合いつつも楽しんでいました。

そうです。そう言えば、自分は仲間と何かをしていました。あの死体になっているのは、大切な仲間…。とくにケヴィンは恋人だったような…。遺体を思い出すと、クラークだけは見つかりません。どこかに行ったのでしょうか。

そのとき、ゾーン1のエアロックで動作を検知というシステム音声の通知が流れます。つまり、何かが外からやってきたということです。

恐る恐る確認をしに行くと、船外スーツ姿の男が立っていました。ブライオンと名乗り、何でも軌道の通信担当だそうです。よく思い出すと、先ほどの記憶でも仲間の口から名前がでていたような…。

ブライオンいわく、「クラークが正気を失った」という救難信号を受け取ったそうで、確かめにきたとのこと。

もし彼の言っていることが真実なら、異常事態が起きたのかもしれません。

しかし、リヤはまだ確信を持てません。曖昧で恐ろしい記憶がフラッシュバックするばかりで…。

この『アッシュ 孤独の惑星』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/04/29に更新されています。
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お前、やっぱり強い!

ここから『アッシュ 孤独の惑星』のネタバレありの感想本文です。

「一体これは何? どういうこと? 私は誰? あなたは誰? 真実はどこ?」という右も左もわからないスタートで始まる『アッシュ 孤独の惑星』。

映画を最後まで観た人は、この最初のシーン(主人公のリヤが目覚めるシーン)がちゃんと真相を密かに提示していることがわかりますが…。

簡単におさらいすると、リヤたちは地球から「居住可能な惑星を探す」という目的で地球に似た惑星を見つけるべく出発した6隻の船のひとつに乗っていて、リヤたちが担当したのがこの「KOI-442」、別名「アッシュ」と呼ばれる星なのでした。その名のとおり、灰のようなものが降り注いでいるこの星は大気には毒性があるようですが、調査隊はそこで人工的な穴のようなものを発見し、この星の大気が浄化されているらしい痕跡を確認します。つまり、高度なテクノロジーを有する生命体がいる可能性が高いのでした。

しかし、どうやらその探査中にデイヴィスが死亡したのをきっかけに、恐ろしい存在と直面するハメになったようで…。

その世界観をゆっくり明かしていく展開を、“フライング・ロータス”監督のお得意のアプローチなのか、独特なサウンドスケープをたっぷり駆使しながらじっくりと見せていきます。あの惑星の空が象徴的ですが、まるでこの惑星そのものがミュージッククラブのようなライティングとサウンドでコーディネートされており、自然と雰囲気に飲まれてきます。

わざとらしく緊迫感を煽るようなジャンプスケアなどの演出を前半は控えめにしており、冒頭の死体でいっぱいだった施設のわりには、意外なほどにリラックスもできなくもない空気がありました。

その中には、やけに日本の要素もあって、これは“フライング・ロータス”監督の趣味なのかな。盆栽っぽいものもあれば、医療装置まで日本製なのか日本語システム音声が流れてきます。この医療装置、ラストまで大活躍することになりますが…。

そんなこんなでわりと定番のジャンルを求めていた観客には退屈に感じやすい前半も、“フライング・ロータス”監督流の映像と音楽のハーモニーで感覚を引っ張ってくれ、個人的には「何が起きるのか、とりあえず観ておかないとな…」と引き寄せられてしまいました。

それでオチになるわけですが、主人公のリヤには寄生生物がもうすでに映画冒頭の段階で体内に侵入していたんですね。だから記憶も曖昧で、誘導されるように行動することになり、ご丁寧に死んだはずのブライオンの幻覚までみせられて、乗っ取られかけていたのでした。

でも完全には乗っ取られておらず(青酸カリは効いたらしい)、リヤの本来の意思と寄生生物との意識下のバトルが繰り広げられていた、と。

実はあの前半こそ激しい戦いが起こっていたというのが真相でした。

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穴はもっと減らそう

それにしても『アッシュ 孤独の惑星』、寄生パニックからのボディホラーな展開を眺めていると、「人間の顔って穴が空きすぎだなぁ…」とあらためて思いましたよ(なんだその感想)。

でも穴、多いよね? 耳も鼻の穴も2つがいらなくないか? もっと上手いことデザインできなかったのか?

そう言いたくもなるくらい、本作において穴は寄生生物の格好の侵入経路になっていました。強引にグニョグニョ入っていきます。こういう作業時はフルフェイスヘルメットは大切だということがよくわかる…。

そして寄生されるとなぜかやたら強くなります。笑っちゃうのが“イコ・ウワイス”演じるアディが寄生されたときですね。“イコ・ウワイス”って知っている人はもうわかっていますが、めちゃくちゃ格闘技に長けている俳優で、今作でも寄生された瞬間に、アクション映画並みのバトルが勃発するわけです。強い、強すぎる。“イコ・ウワイス”もアクション・コーディネートをしたのだろうか。凄まじい体技で攻めていました。

お次の見どころが、ブライオンの変化でしょうかね。『バイオハザード』並みの頭がパカっとなってのモンスター化です。こちらも強い。でもなんでしょう…以前の寄生覚醒アディのほうがまだ脅威だった気がする…。“イコ・ウワイス”がやっぱり最強なんだ…。

終盤になればなるほど前半のサウンドスケープはどこへ行ったんだというくらいの豹変は、ちょっとあっけにとられはしましたけど、“フライング・ロータス”監督の「やりたいことは全部やりたい」という精神は嫌いじゃないです。

基本的に演出上の仕掛けが明確なので、それゆえにキャラクターの描写を深掘りできないのは残念ではありますが、主人公のリヤにもう少しの物語上のボリュームがあると良かったかなとは思いました。ブライオンと戦ってもそんなに盛り上がらないですからね。まだケヴィンと戦うほうが葛藤が溢れるのでサスペンスフルだったかもしれません。

私だったら、アディをもう一度蘇らせて、自分が高次元な知生体だと自称するわりには寄生生物同士の仲違いが発生しているという設定にして、「格闘アディ vs 異形ブライオン」で戦いが起こって、リヤがそのどさくさでからくも逃げ出す…みたいな展開が観たかった…かな。

みんな争い合い、奪い合う…それが現実だからさ…(遠くを見つめながら私は感想を書き終えるのです)。

『アッシュ 孤独の惑星』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

作品ポスター・画像 (C)XYZ Films

以上、『アッシュ 孤独の惑星』の感想でした。

Ash (2025) [Japanese Review] 『アッシュ 孤独の惑星』考察・評価レビュー
#アメリカ映画2025年 #フライングロータス #エイザゴンザレス #アーロンポール #イコウワイス #宇宙ホラー #地球外生命体