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『ベケット Beckett』感想(ネタバレ)…Netflix;手にハートマークを描くだけの役ですか!

ベケット

手にハートマークを描くだけの役割でいいんですか!…Netflix映画『ベケット』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Beckett
製作国:イタリア・ギリシャ・ブラジル(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にNetflixで配信
監督:フェルディナンド・シト・フィロマリノ

ベケット

ベケット

『ベケット』あらすじ

休暇で訪れたギリシャ。カップルはその穏やかな景観の中でロマンチックな時間を過ごす。しかし、その平穏はいきなり絶望へと変わる。悲劇的な事故に遭ったことで男は失意のどん底に叩き落される。周りは言葉も通じない世界。しかも、なぜか危険な政治的陰謀に巻き込まれ、命を狙われる身となった彼は、決死の逃走劇を繰り広げることになってしまう。愛する者はもういない。頼れる者はいるのだろうか。

『ベケット』感想(ネタバレなし)

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今度は逃げる!

プロアメリカンフットボール選手としてバリバリに活躍していたけど、9歳の時に父親の主演する映画にちょこっと出てしまったばかりにスポーツの世界から俳優の世界へと転身。

そこからは白人至上主義団体「KKK」に潜入したり、時間を逆行するというわけのわからない体験を強制させられたり、諸事情で外に出られないので家でずっと恋人と喧嘩したり、それはもうなかなか味わえないあれこれを経験しつつ、今に至る。

そう、“ジョン・デヴィッド・ワシントン”の俳優キャリアは忙しいです。順調と言えばそうかもしれません。『ブラック・クランズマン』のような賞レースに絡む作品や、『TENET テネット』のようなウルトラ級の大作に主演で出られたりするなんて、ましてや黒人という立場では今もそうそうあることではありません。

もちろんそれは親の七光りなどではなく、ドラマ『ballers ボーラーズ』で演技の実力を着実に見せていった結果なのだとは思いますが。それにしても“ジョン・デヴィッド・ワシントン”、まだ俳優としては若手の部類かもしれませんが、今後はどんなコースを歩んでいくのでしょうかね。今のところ、父親っぽい渋みよりも天性の愛嬌みたいなほうが目立ってる気もするけど…。

そんな“ジョン・デヴィッド・ワシントン”の最新主演作が登場。それが本作『ベケット』です。

本作では“ジョン・デヴィッド・ワシントン”は何をするのか。逃げます。異国の地でひたすらに逃走します。なぜか。それは映画を観て確認してほしいですが、とにかく逃げまくっています。ほぼそれだけをする物語です。事実上の「“ジョン・デヴィッド・ワシントン”を捕まえろ!」みたいな番組企画…ってほどにバカバカしくはないですが、本当に逃げているだけですからね。気のせいかもしれないけど、“ジョン・デヴィッド・ワシントン”、なんかいっつも追い詰められてない?

共演は、『LOGAN ローガン』『ザ・プレデター』、ドラマ『ナルコス』でおなじみの“ボイド・ホルブルック”、『ファントム・スレッド』での演技も素晴らしかった“ヴィッキー・クリープス”

また、『トゥームレイダー ファースト・ミッション』『アースクエイクバード』の“アリシア・ヴィキャンデル”も少しだけ出演(ほんとにちょっとですけどね)。

『ベケット』の監督は“フェルディナンド・シト・フィロマリノ”というイタリアの人なんですが、私はこの人の作品をこれで初めて観ました。なので作家性云々は全然わかりません。まだ若手で、『君の名前で僕を呼んで』の“ルカ・グァダニーノ”監督のもとで映画を学んだようで、セカンドユニットの監督とかをやってたみたいですね。でもこの『ベケット』は全然“ルカ・グァダニーノ”監督っぽくもないけど。ちなみに『ベケット』の製作には“ルカ・グァダニーノ”もクレジットされています。本作『ベケット』が“フェルディナンド・シト・フィロマリノ”監督のキャリアアップ作になるかと言われると、どうだろうな…。

なお、『ベケット』の音楽はあの“坂本龍一”が手がけていますが、これもそんなに目立つ音楽性はなかったと思う…。いや、私がちゃんと聴いていなかっただけかもしれない。走って逃げて隠れる“ジョン・デヴィッド・ワシントン”にしか注意が向いてなかった…。

撮影は“ルカ・グァダニーノ”監督作品ではおなじみの“サヨムプー・ムックディプローム”。1回で絶対に覚えられそうにない名前ですが、タイの人で、あの『ブンミおじさんの森』の撮影の人ですね。

『ベケット』はNetlix配信となったので、家でのんびり観られます。“ジョン・デヴィッド・ワシントン”が必死に逃げているのに、こっちはソファやベッドでリラックスしながら眺めるなんて、なんだか申し訳ないですけど、悪気はないんです…ごめんよ…。

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『ベケット』を観る前のQ&A

Q:『ベケット』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2021年8月13日から配信中です。

オススメ度のチェック

ひとり3.0:俳優ファンは注目
友人3.0:盛り上がる感じではない
恋人3.0:ロマンスは冒頭だけ
キッズ2.5:子どもは退屈か
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『ベケット』予告動画

『ベケット』予告編 – Netflix
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ベケット』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):幸せな休暇が絶望に…

ひとりの男、ベケットはベッドで恋人のエイプリルとイチャつきながらも「悪かった」と呟きます。ガールフレンドのエイプリルも「喧嘩しても一緒」と囁き、甘い会話。エイプリルはベケットの掌にハートマークを描きます。

2人はギリシャで休暇を過ごしていたアメリカ人観光客のカップルです。今日も北部の岩肌に囲まれた遺跡を眺めつつ、ゆったりとした時間の中で、愛を確かめ合っていました。その後はのんびり食事。テレビではアテネでの政治集会の騒がしいニュースが流れていましたが、自分たちには関係ありません。2人っきりを満喫します。

それも終わり、ギリシャ北部をたっぷり堪能した2人は車で宿まで夜道を走ります。宿に電話していないというベケットに代わりエイプリルがスマホで電話をかけます。車内でもべったりな2人。エイプリルは助手席で眠りにつきました。一方のベケットは真っ暗な道をひたすらに車で走らせますが、眠気に襲われていき…。

気が付いたときにはどうしようもできませんでした。車は道を外れて派手にクラッシュ。民家に突っ込んでひっくり返った車内でかろうじてあたりを見渡すベケット。一瞬、人が見えましたがすぐに引っ込んでしまいます。女性と男の子だったような…。

シートベルトを外し、車の外に這い出ると、車外にはエイプリルが放り出されており、大量の血が…。おそるおそる声をかけるも返事はなく…。

再度気づくと病室のベッドの上です。自分だけ。エイプリルの姿はありません。起き上がろうとすると女性が駆け付けますが言葉がわかりません。すると男が来ます。看護師っぽい女性は「お気の毒に」と言い、男はパスポートを置いて行きました。

その時点で察しがつきました。エイプリルはもう…。

その後に警察署で担当者らしき男と通訳を介して面談。ここがどこなのかも曖昧です。エイプリルには会えず別の町で出会えるらしく、「今、会いたい」と訴えても意味はなし。「誰かに電話する必要はありますか?」と聞かれ、ベケットはエイプリルの両親に電話することに。

事情をたどたどしく説明するベケット。しかし、肝心の事実は伝えられません。「娘に意識はあるのか? 場所は? 娘に寄り添っていてくれ。娘にすぐ行くと伝えてくれ」…そう言われるのを耳にするだけ。

別の年配の男が話しかけてきます。突っ込んだ民家に誰かいたと話すベケットに、男は興味を持ったようですが、「移民だろう」と話を流します。

ひとり悲しみに暮れるベケット。向精神薬をポケットに入れ、トボトボ歩くとたどり着いたのは事故現場。木はなぎ倒され、ぽっかりと壁が破壊された民家を見つけます。

中にはエイプリルの血の痕。もう生きる意味もない…。その前で座り込み、向精神薬を大量に飲もうとするベケット。

しかし、何者かにいきなり発砲され、慌てて逃げます。直後に警察のあの男が駆け付けて「誤解があった」と呼びかけますが、立ち上がるとやはり発砲してきます。

一体なぜ自分なんかを攻撃してくるのか。わけがわからないままに現地の警官から逃げ惑うしかなくなったベケット。そこには政治的な暗躍があるとも知らずに…。

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もしも海外で事故を起こしたら

『ベケット』の冒頭は何ともロマンチックなムード漂うカップル旅行。コロナ禍になって以降、こういう海外旅行なんて遠い昔の慣習に思えてきてしまう…。それにしても“ジョン・デヴィッド・ワシントン”は『マルコム&マリー』でもそうでしたけど、彼女に甘えまくって絡んでくるボーイフレンド系なんですかね。

そんな甘い空気も一瞬で戦慄する最悪の事態。母国でもああなりたくはないですけど、異国の地ならなおさらのショック度でしょう。なにせ情報がないのですから。

ちなみになぜベケットが運転中に睡魔に襲われたのか。単純に疲れていたからというのもあるでしょうけど、向精神薬を服用していたようですし、その副作用でしょうかね。この時点でベケットには実生活でかなりストレスを抱えており、その気分転換も兼ねた旅行だったこともわかります。

ここで具体的に役立つ豆知識。海外で運転していて事故に遭ったらどうするか。まず現地の緊急通報用の電話番号に連絡、レンタルカーならレンタル会社にも連絡。そして現場待機。これが基本。なお、日本で加入した自動車保険は海外で起こした自動車事故にはほぼ無力なのだそうで、期待をしない方がいいようです。つまり、海外旅行保険の契約しか頼みの綱がないわけです。

しかし、この不幸のベケットには保険ですらもどうしようもできない事態が追い打ちをかけます。異国の地で政治的暗躍に巻き込まれてしまった…。つまり、本作は『クーデター』(2015年)のような外国で政治的パニックに翻弄されるスリラーなのでした。

本作配信の直後もアフガニスタンがタリバンに政権を奪われて大混乱が起きるという衝撃のニュースがありましたが、実際、ありうる話。

『ベケット』の場合は国家転覆の騒ぎまでには発展していないものの、地元警察はグルで、しかもアメリカ大使館さえもその陰謀に加担しているという最悪な状況。これは確かに絶望的です。ほんと、映画に出てくるアメリカの公共組織は揃いも揃って役に立たないものばかりだ…。

なお、本作の政治的騒動は架空のものですが、ギリシャは政治腐敗も深刻だと言いますし、そういうのを反映してのストーリーなのでしょう。

それからの主人公はもう逃げるしかできません。蜂にもスタンガンにも対抗し、あげくには飛び降り車着地というトム・クルーズみたいなことまでしないといけなくなる

とことん不幸の連発で、見ていてすっかり可哀想になってくるのですが、映画は少年の救出で一応のエンディングになっていましたけど、これ、この後が一番大変だと思うのです。だってアメリカ政府は正しく対応してくれるかもわからないのですよ。ここからも地獄だよ、ベケット…。

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かなり残念な「冷蔵庫の女」

そんな『ベケット』ですが、作劇としてはかなり無理やりなシナリオだった部分も否めない気も…。

まずベケットの恋人であるエイプリルの扱いが相当に雑です。いわゆる「冷蔵庫の女(フリッジング)」状態ですよ。

「冷蔵庫の女(フリッジング)」とは、男性主人公の成長や動機づけのために女性キャラクターが悲惨な目に遭うということです。

今作のエイプリルの役割は本当に薄いです。若干のロマンチックな雰囲気を出すための飾りでしかなく、彼女の存在として残るのはベケットの手に描いたハートマークだけですからね。これなら別にカップルという設定もいらないような…。ベケット単体で旅行に来てトラブルに巻き込まれるでもいいような…。

演じた“アリシア・ヴィキャンデル”もこれで良かったんですかね。『エクス・マキナ』で賞をたくさん受賞し、『リリーのすべて』でアカデミー助演女優賞を受賞した俳優です。キャリアとしてなら、“ジョン・デヴィッド・ワシントン”よりもはるかに上ですよ。明らかに男女格差をひしひしと感じる…。

他にもベケット単独でのサスペンスも微妙に緊迫感に欠けます。何かのタイムリミットがあるわけでもなく、あてもなく逃げながら、かなりの行き当たりばったり感があるので、観客がどこに注意を向ければいいのかもあやふや。“ジョン・デヴィッド・ワシントン”の困り顔を見つめているしかできない…。

活動家の人たちの出番も何とも言えない地味なものにとどまっていたし…。“ヴィッキー・クリープス”もすごい実力を持った俳優なんですけどね。もったいない。

『ベケット』をどうしたらもっと面白くできたのか。そうですね、時間逆行とかしていればスリリングだったかもしれない…(どんなつまらない物語も時間逆行すれば面白くなる説)。

『ベケット』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 51% Audience 34%
IMDb
5.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
3.0
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関連作品紹介

ジョン・デヴィッド・ワシントンの出演作品の感想記事です。

・『マルコム&マリー』

・『TENET テネット』

・『ブラック・クランズマン』

作品ポスター・画像 (C)Netflix ジョンデヴィッドワシントン

以上、『ベケット』の感想でした。

Beckett (2021) [Japanese Review]