バンブルビー
映画『バンブルビー』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Bumblebee
製作国:アメリカ(2018年)
日本公開日:2019年3月22日
監督:トラヴィス・ナイト

あらすじ

父親を亡くした悲しみから立ち直れずにいる少女チャーリーは、18歳の誕生日に小さな廃品置き場で廃車寸前の黄色い車を見つける。すると突然、その車が人型の生命体へと変形。驚くチャーリーを前に逃げ惑う生命体は、記憶と声を失って何かに怯えていた。チャーリーは生命体を「バンブルビー」と名づけるが…。

ネタバレなし感想

まさかの高評価

2018年12月。この時期は映画界もド派手な商戦が始まります。日本は比較的平穏だったのですが、アメリカでは“海を暴れまわる男”がいたり、“次元を超える蜘蛛集団”がいたり、“派手に爆走する城”がいたり、それはもう大混戦でした。

その中で予想外の高評価で迎えられた一作がこの『バンブルビー』だったと思います。ご存知あの変形ロボット玩具の映画化としてすでに5作も大作が造られている「トランスフォーマー」シリーズ。日本でも大ヒットしており、知名度は抜群に高いコンテンツです。

その最新作である『バンブルビー』は、なんと「Rotten Tomatoes」で90%超えの高評価を獲得。シリーズ最高クラスの称賛を受けています。

これの何が凄いって、あの「トランスフォーマー」映画シリーズの低落っぷりを知っている映画ファンにはおわかりのはず。新作が出るたびに評価が下がっていき、逆にこれはどこまで“下”に行くのか好奇心が湧いてくる、そんな下り坂ジェットコースターを轟音とともに滑り降りていたわけです。もはや評価の低さをネタとして楽しみ、とりあえず映像を目から流しこむだけでいいんだと開き直って鑑賞するのが通のスタイルにすらなっていました。爆発大好きマイケル・ベイの娯楽作なんてこんなものだよ…そんな広い心で。
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なので『バンブルビー』の評価の高さは、映画ファンを驚かせるもので…。え、何があった!?と鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をすることに。

でもこれはあれです。「普段粗相の悪いことをしている奴が急に捨て猫を拾うとか良いことをすると人格評価が急上昇する」という“映画のジャイアン”現象が起こっているんですよ。たぶん、そうに違いない。

本作はシリーズを支え続けてきた豪快を得意技とするマイケル・ベイが監督から降り、アニメーション制作会社ライカのCEOである“トラヴィス・ナイト”が実写映画監督デビューを飾りました。この人と言えば、日本を舞台にして多くの映画ファンの心を鷲掴みにした『KUBO クボ 二本の弦の秘密』の監督。
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実写での実力は未知数でしたが、この実績ということでやっぱり才能、あるんですね(あれ、やっぱりマイケル・ベイが元凶だったんじゃ…あ、いや、なんでもないです)。実際、作品のテイストはガラリと変わっています。それは予告動画なんかを見れば一目瞭然なので、語るまでもないと思いますが。

ただ、若干混乱するのが本作の位置づけ。本作はこれまでの映画シリーズにも登場していた人気ロボット「バンブルビー」を主役にした作品なのですが、最初は「スピンオフ」みたいな言われ方をしていましたが「リブート」みたいな話もあり、どっちかあやふやでした。プロデューサーの話によれば、今作から新しいスタートを切る「新機軸の物語」みたいですね。なので前日譚として過去作と繋がりもできる余地を残しつつ、直接的な繋がりを意識しない、極めて緩いユニバースなんですね。よってシリーズ初心者でも問題なく理解できるようになっています。すでに本作の続編企画も動いているとのこと。

そうか、これで「トランスフォーマー」映画シリーズも一旦リセットか…でもインフレしすぎていたし、ちょうどいい頃合いかな。そう思っていましたが、どうやらそれもまた違うようで。マイケル・ベイが築き上げた初代シリーズもまだ続編を作るみたいな話も出ています。なんかイマイチ方向性が見えないのですが、玩具コンテンツは版権の問題もあり、いろいろと大人の事情があるんでしょうね。

とりあえず心機一転の一作なので、「トランスフォーマー」映画シリーズを一度も観たことがないとか、すっかり遠ざかっている人とか、そんな方にも難なくオススメできます。上映時間は2時間以内におさまり、久しぶりに目が疲れない&体も疲れない、気楽な「トランスフォーマー」が観れます

オススメ度のチェック
ひとり◯(バンブルビーと一緒)
友人◯(バンブルビーが友達)
恋人◯(バンブルビーが可愛い)
キッズ◎(子どもでも全然OK)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

アニメの才能が光る“顔”表現

本作は観ればおわかりのとおり、これまでの「トランスフォーマー」映画シリーズからコンセプトがフルチェンジしているので、最初は“他人の空似”な作品の感じで不思議な気分だったのですが、どちらかといえば原点回帰しました。だからこっちが本来は本家の作品性を色濃く引き継いでいます。

とくにそれがハッキリわかるのがデザイン。冒頭、いきなりサイバトロンでの激しい戦争シーンから始まり、おなじみのオートボットとディセプティコンが入り乱れて戦っています。この各ロボットたちのデザインが、シリーズを重ねるたびにリアル路線でゴチャゴチャしていった過去作と異なり、明らかにおもちゃっぽい見た目になっています。体を構成するパーツも極力、数も複雑さも減らしており、こじんまりした雰囲気です。

この変化は個人で好き嫌いが分かれる部分だと思います。過去作のメカメカしいゴテゴテした鈍重なデザインが好みという人もいるでしょうし、おもちゃ愛の強い人は本作の方がベストだと手を叩いて喜ぶでしょう。

私としては、キャラクター表現というテクニカルな面において、本作は従来のシリーズにないことをしているのでそこは評価したいところです。

それはメインキャラであるバンブルビーが最たる例としてわかりやすい部分。YouTubeにあったこれまでの映画シリーズのバンブルビーの描かれ方の変化をまとめた動画を観ていても思いましたが、このキャラは基本シリーズを通して“可愛い”存在として描かれているので一貫しています。

ただその“可愛い”を表現するアプローチが大きく異なります。本作では見た目がビートルに変形するということもあり、これまでより丸っこくなり、より名前である「バンブルビー(マルハナバチの意味。「プーさん」に出てくる丸っこい蜂です)」に近づいたのはもちろん。それ以上に印象的なのは「顔」です。

過去作のバンブルビーは感情を表すとき、やたらと大仰なジェスチャー(アメリカ人的なアレ)を使うのが定番でした。ところが本作は顔、とくに「目」で感情を繊細に表現しています。そのためやたらと顔のアップが多く駆使されていたりもします。

これはアニメーターである“トラヴィス・ナイト”監督らしい演出ですよね。アニメーションでは顔や目が命を吹き込む大事なパーツですから。本作のバンブルビーは子犬みたいに描かれていますが、ちゃんと顔だけで「あ、今、傷ついたな」「ちょっと心を許したかも」みたいな心の機微を上手く表していました。逆に巧みな感情表現が完成されているからこそ、作中である気に入らない曲のカセットを吹っ飛ばすような急に無機質なロボット的行為を行うギャグも引き立ちます。無論、お話の主軸であるチャーリーという少女との二人だけの交流もグンと魅力が増すことが大きな収穫ですけど。

原点回帰な懐かしさに終わらず、アニメーションの技術が輝くためのデザインでもあるのでした。

バンブルビー

現代目線で1980年代をいじくる楽しさ

物語面では非常にシンプルというか、手垢のついたお決まりのストーリーで、正直、意外性を期待した人には残念かもしれません。

子ども(ティーン)が地球外生命体と心を通わせていく…という基本軸は、スティーヴン・スピルバーグ監督の『E.T.』(1982年)に代表されるように、1980年代イズムを感じさせる定番。本作の時代設定が1987年ということでこのストーリーになったのか、それはわかりませんが、ジョン・ヒューズ監督の『ブレックファスト・クラブ』(1985年)が直接引用されたりと、随所に1980年代要素は散りばめられています。

一方で、それらは背景に過ぎません。決して1980年代マニアな大人たちを興奮させるために狙った映画にはなっていないのがミソだと思います。本作はあくまで子どもたちをターゲットにできるように作られており、当然、1980年代なんて知らない子どもでも楽しめます。だから1980年代要素もサラリと流すだけ。ノリとしては、1980年代を知らない今の子どもがその時代の創作物を見て触ってハシャいでいる感じですかね(今の子どもたちが『ブレックファスト・クラブ』を観ても、古すぎるキャラ描写に苦笑でしょうけど、ガッツポーズはなんか気に入ってマネして、「Don't You」を聴く…みたいな)。

ここもアニメーターである“トラヴィス・ナイト”監督らしい側面ですが、シナリオもシンプルなデザインにして親しみやすくする。そこに徹しているのはとてもクレバーな姿勢だと思います。

本作の物語のベースになっているのはどう考えてもブラッド・バード監督のアニメーション映画『アイアン・ジャイアント』(1999年)ですけどね。子どもとロボットと交流、敵となる大人、兵器としての自分の役割に悩むロボット…後半のワンシーンで怒りで我を忘れて目が赤くなって攻撃をし始めるバンブルビーなんてまんまアイアン・ジャイアントです。

工学系女子に期待大

1980年代要素がふんだんにある本作ですが、主人公組はその限りではありません。主人公の家庭に居場所を感じられずにいる工学系少女のチャーリーや、そのチャーリーに密かに想いをよせる黒人青年のメモとか。二人ともかなり現代的、いや完全にミレニアム世代の若者像です。

対するチャーリーに嫌がらせしてくる同期のティーンたちが、コテコテのそれこそ『ブレックファスト・クラブ』から飛び出してきたような男女観をまとった若者像になっているのが対比的。

なんでこうなっているのか考えてみると、やっぱりこれまでの「トランスフォーマー」映画シリーズからの脱却があるのでしょうか。従来の過去作は、主人公組が“モテない系ボンクラ男子orマッチョ男”&美女という、古臭いテンプレそのまんまでした(最新作の『トランスフォーマー 最後の騎士王』はその流れを変えようと若干努力している形跡がありましたけど)。

『バンブルビー』はそこから現代の若者に感情移入してもらいやすい主人公にリニューアルし、だからこそ1980年代要素もちょっと現代目線で客観視している…そういうスタンスなのでしょうね。

チャーリーを演じた“ヘイリー・スタインフェルド”は『スウィート17モンスター』に引き続き、相変わらずのやさぐれ女子をさせたら天下一。でも『スパイダーマン スパイダーバース』でグウェンの声を演じていましたし、だんだんとクールな工学スキル持ちレディに進化していってくれると嬉しいなと続編に期待しています。
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でも、なんでしょうか。これはこれで凄く良作なのに、なぜかマイケル・ベイ成分が足りない気がして物足りなくなってくるような…。え、これって…依存症じゃないのか。やだ、怖い…。私、知らないうちにマイケル・ベイを過剰摂取してたのかもしれない。気をつけよう…。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 93% Audience 77%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

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↑『トランスフォーマー 最後の騎士王』…初代シリーズ最新作。正直、オプティマス・プライムが敵になる以外、全然覚えていない。
作品ポスター・画像 (C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. HASBRO, TRANSFORMERS, and all related characters are trademarks of Hasbro. (C)2018 Hasbro. All Rights Reserved.