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『トランスフォーマー ビースト覚醒』感想(ネタバレ)…ハズブロ商魂が結合する

トランスフォーマー ビースト覚醒

ハズブロ商魂が結合する…映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Transformers: Rise of the Beasts
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年8月4日
監督:スティーブン・ケイプル・Jr.
トランスフォーマー ビースト覚醒

とらんすふぉーまー びーすとかくせい
トランスフォーマー ビースト覚醒

『トランスフォーマー ビースト覚醒』物語 簡単紹介

オプティマスプライム率いるトランスフォーマーたちが地球に来て間もない1994年。あらゆる星を食べ尽くす、惑星サイズの規格外な最強の敵「ユニクロン」が地球に持ち込まれたあるアイテムを探そうとしていた。その鍵となるアイテムを守っていたのがビースト戦士たち。この未曽有の危機に立ち向かうべく、プライムの仲間たちとビースト戦士たちは協力し合い、人間のノアとエレーナと共に立ち上がる。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『トランスフォーマー ビースト覚醒』の感想です。

『トランスフォーマー ビースト覚醒』感想(ネタバレなし)

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ビーストウォーズ、実写映画化!

1984年に発売された変形ロボット玩具も随分と派手に進化したものです。

何のことかと言えば「トランスフォーマー」の話です。

日本国内で「タカラ」(現在の「タカラトミー」)から販売されていた変形ロボット玩具の後継を、アメリカの「ハズブロ」側が独自の設定でアレンジして販売しだした「トランスフォーマー」シリーズ。

2007年に“マイケル・ベイ”監督が『トランスフォーマー』として映画化して以降、すっかり「トランスフォーマー」は映画のコンテンツなんだと思っている人も多そうです。それも無理もないですけどね。あれだけド派手な大作になってしまえば…。

その「トランスフォーマー」フランチャイズですが、日本人の一部の中でカルト的に心に刻み込ませたとんでもないアニメシリーズが1990年代後半から存在しました。知る人ぞ知る『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』です。

これはカナダで制作された当時はまだ珍しいCGアニメシリーズなのですが、この日本語吹き替え版があまりに特異すぎて話題騒然となりました。というのも声優陣がわりと自由にアドリブをかまし、世界観もいじくるようなメタなセリフもぶっこんだり、好き放題だったからです。結果、『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』とその続編シリーズ群は、今なお伝説の珍作として語り継がれています。

その『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』を愛する古参「トランスフォーマー」ファンにしてみれば、今回の新作映画はちょっと心ざわめくものです。

それが本作『トランスフォーマー ビースト覚醒』

タイトルのとおり、本作はあの『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』の世界観を素材にしている新作実写映画となります。

もちろん影響を受けているといっても、さすがに日本語吹き替え版のあのふざけまくったノリの話ではないので、変な心配は要りませんが、でも『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』日本語吹き替え版を知っている人はフラッシュバックしちゃいますよね…。ちなみに『トランスフォーマー ビースト覚醒』の一部吹替声優陣は『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』と同じにしているというファンサービスも…。

アニメの話はさておき、今回の『トランスフォーマー ビースト覚醒』はこれまでの「トランスフォーマー」映画群とどういう関係の立ち位置なのかという疑問が湧きます。一番最近の前作は2018年の『バンブルビー』。それまでの“マイケル・ベイ”シリーズ群を仕切り直して新たな出発点となった映画で、批評家評価も高く、ファンも魅了しました。

『トランスフォーマー ビースト覚醒』はその『バンブルビー』の明確な続編…というほどに接続点はありませんが、やはり仕切り直したシリーズに連なる1作となっており、配給のパラマウントいわく、本作は新しい三部作の1作目になるそうです。

『バンブルビー』と比べると登場キャラクターが格段に増えているので、初心者向けという感じはなくなりましたが、トランスフォーマーをいっぱい見たかった人には嬉しいボリュームですね。

『トランスフォーマー ビースト覚醒』を監督するのは、『クリード 炎の宿敵』に抜擢された“スティーブン・ケイプル・Jr.”(スティーヴン・ケイプル・Jr)。

トランスフォーマーのいざこざに巻き込まれる今回の可哀想な貧乏くじをひいた人間を演じるのは、『イン・ザ・ハイツ』“アンソニー・ラモス”『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』やドラマ『キラー・ビー』“ドミニク・フィッシュバック”

『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』はとりあえず忘れて楽しんでいきましょう。

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『トランスフォーマー ビースト覚醒』を観る前のQ&A

Q:『トランスフォーマー ビースト覚醒』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくにありませんが、初心者は『バンブルビー』を観ておくと背景が理解しやすくなります。
✔『トランスフォーマー ビースト覚醒』の見どころ
★ビーストたちがタイトルを背負う。
✔『トランスフォーマー ビースト覚醒』の欠点
☆物語は既視感がある。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:気楽にエンタメを
友人 3.5:気軽に観られる
恋人 3.5:シリーズ好きなら
キッズ 3.5:子どもも楽しい
↓ここからネタバレが含まれます↓

『トランスフォーマー ビースト覚醒』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):集まれ、どうぶつの森

マクシマル星に惑星並みの巨大さのトランスフォーマー「ユニクロン」が迫ってきます。ユニクロンの目的は侵略と破壊。部下のスカージ率いるテラーコンたちを送り込み、タイムワープキーを奪うように命令します。

しかし、マクシマルには戦士たちがおり、エイプリンク、プライマル、エアレイザー、ライノックス、チーターは連携してテラーコンを撃退。それでも敵の猛攻は続きます。

リーダーのエイプリンクは「これは私の戦いだ」と足止めするためにここに残り、他の仲間にキーを託すことにします。そしてプライマルをオプティマスプライマルとして新たなリーダーに任命。星を脱出させます。

エイプリンクはスカージと対峙。飛び掛かりますが、胸を貫かれ、倒れます。力の差は圧倒的です。しかし、時間稼ぎはでき、星を飛び立つマクシマルの仲間を見送ります。

1994年、地球、ブルックリン。ノア・ディアスは部屋で得意な機械いじりをしていました。11歳の弟のクリスと無線で連絡するなど、家計は苦しいものの、兄弟で力を合わせて暮らしています。母のブレアナは出かけ、ノアに仕事が見つかるようにプレッシャーをかけます。

一方、エレーナ・ウォレスは車を降り、飲み物を持って職場の博物館へ。インターンとして雑用を必死にこなしていましたが、同僚のジリアンはそっけないです。遺物の中でも鳥のかたちをしたものに関心を持つエレーナ。何か模様が刻まれていますが、スーダンだかで見つかったとジリアンは興味なさげ。博識なエレーナでも詳細不明なので、エレーナは手にその模様をメモして調べだします。

その頃、ノアはクリスの治療代もろくに払えず苦戦。せっかくスーツでばっちり決めてきましたが、仕事は手に入りません。

やむを得ず、その夜、悪友のリークとポルシェを盗む計画に参加。企業のビルに保管されているのだそうです。単独で侵入すると、車のハンドルには見慣れないエンブレムが…

遅くまで残って分析していたエレーナは鳥の像にX線をあてるとそれが崩れ落ちてしまいます。仕事を失った…と茫然とするエレーナ。しかし、中から不思議な物体が出現。それからエネルギーが上空に放出されます。

その光を気づいたものがいました。惑星サイバトロンからこの地球に飛来して、以後はこの地でひっそり住んできたオプティマスプライムです。オプティマスプライムは各地に潜む仲間のオートボットに通信で呼びかけ、招集をかけます。母星に戻る鍵となるタイムワープキーを感知したと…。

そのとき、ノアの車は急に勝手に走り出します。ノアは知りませんでしたが、その車はミラージュというオートボットでした。

ノアはミラージュに流されるままにこのオートボットたちの戦いに巻き込まれていくことになり…。

この『トランスフォーマー ビースト覚醒』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2024/04/11に更新されています。
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オモチャを売るためなら

ここから『トランスフォーマー ビースト覚醒』のネタバレありの感想本文です。

『シャザム!神々の怒り』『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』に続いて、またしても博物館や博物学的な遺物保管場所が酷い目に遭う大作が現れてしまいました。映画ではこういう場所はとことん荒らされる運命ですね…。

『トランスフォーマー ビースト覚醒』の場合は前半で木っ端微塵に建物が半壊しますけど…。

それにしても今作を見ていて、人間代表のノアやエレーナはかなり物分かりがいいなと思いました。だって今作は結構世界観がごちゃごちゃしていますよ。

そもそも3勢力が乱れるんですね。

まずマキシマルのトランスフォーマーたち。ゴリラ型のエイプリンクとプライマル、ハヤブサ型のエアレイザー、サイ型のライノックス、チーター型のチーター(チータスじゃないよ)。なんでこいつらは地球のわざわざペルーに隠れ潜んだのですかね…。ペルーにはゴリラもチーターもサイもいないのに…。

次に惑星サイバトロンのトランスフォーマーで、地球に一足先に逃げてきたオートボットたち。オプティマスプライム、バンブルビー、アーシー、ホイルジャック、ストラストフェア、そして主役となるミラージュ。毎度のことながら招集かけるとどこからともなく現れるな…。

そしてユニクロンの命でキーを探すテラーコンたち。スカージがリーダーで、ナイトバードやバトルトラップを従えています。なお、スカージの声を演じたのは“ピーター・ディンクレイジ”で、ナイトバードの声は“MJ・ロドリゲス”です。

この入り乱れるトランスフォーマー戦乱。前作『バンブルビー』のシンプルさとは大違い。MCUに例えるなら『アイアンマン』1作目の次がいきなり『アベンジャーズ エンドゲーム』になったみたいなものです。

もちろんこうなった理由は察しがつきます。やっぱりオモチャを売りたいからでしょう。キャラクターの数だけオモチャを売りだせる以上、映画にはなるべくトランスフォーマーをたくさん登場させてほしいのがハズブロの本音でしょうし…。

この急激なシリーズ世界観拡大はさすがに“マイケル・ベイ”級の豪快さとまではいきませんが、ファンにとっては「トランスフォーマー」の映画っぽくなったと喜ぶ人もいるでしょうし、逆にいつもどおりすぎると残念に思う人もいるのかなと思います。

あらためて思うところとしてはこの「トランスフォーマー」フランチャイズは、“マイケル・ベイ”の残した固定観念が強すぎて、大作化の運命に束縛されている感じはありますね。

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まさかのラストの賭け

個人的には前作『バンブルビー』がティーン・ガールムービーとしてフランチャイズの新しい開拓をしてみせたように、この『トランスフォーマー ビースト覚醒』も何か新しいチャレンジをしてほしかったのですが、あまりそういうものは無かったのが残念ではあります。

人間側の主人公とオートボットとの初対面。そこから関係性をじっくり描いていく余裕はなく、一気に物語はトランスフォーマーだらけの大乱闘に突入。エレーナの博物学知識も謎パズル解明とかの役割として機能するだけなので、なんとも道具的なキャラクターです。

そう、“マイケル・ベイ”の「トランスフォーマー」もこんな感じだった…。蘇る、あの体験…。

唯一違うのは、戦闘面のボリュームは今作は心なしかあっさりしていること。なんでだろう?と思ったら、実は本作、CGI制作がかなり追いついていなかったようです。

とくに最終決戦シーン(もろに『アベンジャーズ エンドゲーム』でしたけど)は、相当に制作に苦労したようで、映画内で戦っているトランスフォーマー以上にVFXクリエイターが苦労していたのだと思われます。あのオープニングのマキシマル星のシーンも後から追加して作ったものだとか。

バンブルビーの退場から復活など見せ場を用意はしているものの、エアレイザーの途中出番終了といい、単にCGI制作が間に合わないからキャラクターを出し続けられなかったようにも思えてくる…。

だったらいっそのこと、やっぱり『バンブルビー』みたいに少ないキャラクターに絞って描くことに徹すればよかったのに…。

しかし、パラマウントとハズブロは止まる気はないようです。本作のラストでまさかのサプライズ。ノアが就職面接にやってきたその企業。そこには裏の顔があり、渡された名刺には「G.I.ジョー」の文字。

同じハズブロの「G.I.ジョー」シリーズとクロスオーバーを本格的にするつもりなのか? 今回だけでもキャラクターが多すぎて制作がてんてこ舞いだったのに? いや、でも「G.I.ジョー」のほうがVFX面では作る負担は少ないか…。

『G.I.ジョー 漆黒のスネークアイズ』の興収面での低調をカバーし、それでいてマンネリ化する「トランスフォーマー」シリーズの打開策として、この「ハズブロ・シェアード・ユニバース」は救世主になるのか…。ちょっと賭けすぎる…。新しいチャレンジをしてほしかったって言ったけども、こんな博打で来るとは思わなかった…。

また、「トランスフォーマー」シリーズとしては2024年にはCGアニメーション映画『Transformers One』の公開も待機しています。こちらは普通にオプティマスプライムたちオートボットの母星での序章を描くのではないかなと推察されるので、そんなに変化球はないはず…。

現実世界の「トランスフォーマー」ファンダムは、フロリダのLGBTQ規制法のせいで異性装をともなうコスプレがしづらくなったりPinkNewsThe Mary Sue、アニメにノンバイナリーのトランスフォーマーキャラが登場したらそれだけで一部から差別的な文句を言われたりKotaku、いろいろとこっちも大変ですが、なんであれ、「トランスフォーマー」が愛され続けるように発展することを応援はしています。

『トランスフォーマー ビースト覚醒』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 53% Audience 91%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0
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関連作品紹介

「トランスフォーマー」シリーズの感想記事です。

・『トランスフォーマー 最後の騎士王』

作品ポスター・画像 (C)2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS ライズ・オブ・ザ・ビースト

以上、『トランスフォーマー ビースト覚醒』の感想でした。

Transformers: Rise of the Beasts (2023) [Japanese Review] 『トランスフォーマー ビースト覚醒』考察・評価レビュー