昨日の敵は今日の友…映画『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』(キャプテンアメリカ3)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2016年)
日本公開日:2016年4月29日
監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ
シビルウォー キャプテンアメリカ
しびるうぉー きゃぷてんあめりか
『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』物語 簡単紹介
『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』感想(ネタバレなし)
アベンジャーズ「2.5」
喧嘩だ!乱闘だ!なんだって、どこどこ、誰がそんな馬鹿なことしてるんだ? チンピラ? 不良? 酔っ払い? いや、ヒーローたちです! えっ…。
そんな映画が本作『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』。
本作は「マーベル・コミック」の実写映画として『マーベル・シネマティック・ユニバース』シリーズの第13作品目の作品です。内容としては簡単に言ってしまえば、ヒーローどうしの仲間割れが描かれます。といっても、『アベンジャーズ』の時点でも仲間割れしてたので、今さらといった感じです。でも今回はガチで殴り合いします。
DCコミックの仲間割れ映画『バットマンvsスーパーマン ジャスティスの誕生』とどうしても比較してしまいますが、本作には本作らしい独自性があります。
本作の魅力はキャラの多さでしょう。ヒーローキャラクターだけで、なんと恐ろしいことに12人もいます(『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』を上回ります。“ハルク”と“ソー”だけ登場しません)。
キャプテン・アメリカ(スティーブ・ロジャース)
アイアンマン(トニー・スターク)
ブラック・ウィドウ(ナターシャ・ロマノフ)
ウィンター・ソルジャー(バッキー)
ファルコン(サム・ウィルソン)
ウォーマシン(ジェームズ・“ローディ”・ローズ)
ホークアイ(クリント・バートン)
ブラックパンサー(ティ・チャラ)
ヴィジョン
スカーレット・ウィッチ(ワンダ・マキシモフ)
アントマン(スコット・ラング)
スパイダーマン(ピーター・パーカー)
素晴らしいのはこれらのヒーローたちが、ちゃんと個性がハッキリしていて一目でわかるということ。見た目も武器も性格もバラバラ。むしろこの面々が一緒に世界を救う仕事をしていることが奇跡なくらいなんですが…。
本作は一応、「キャプテン・アメリカ」シリーズの第3弾。しかし、タイトルに“キャプテン・アメリカ”とありますが、もはや『アベンジャーズ2.5(ver. キャプテン・アメリカ)』みたいなものと考える方がいいです。でも、ちゃんとキャプテン・アメリカの物語としても成立しているので、過去作も観ておくことでよりこの「喧嘩」に発展するまでの感情の変化がわかりやすくなると思います。
もうひとつの特徴はスパイダーマンの参戦です。スパイダーマンはマーベルではなくソニー・ピクチャーズが映画化権を保有しているのですが、今回特別に参加が決定しました。スパイダーマンがアベンジャーズの面々にどう絡むのかも見どころです。ちなみに今までの「スパイダーマン」シリーズの映画は関係ありませんし、キャラも別なので、忘れてください。
正直いってマーベル映画を見ていない人には「?」が多くなる内容かもしれません。それでも難しい映画ではないので全く楽しめないということはないし、頭をすべて無にしてもまるで遊園地のアトラクションのように満喫できるエンタメです。
喧嘩という名のお祭りにぜひ参戦しましょう。
『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):分断するヒーローたち
1991年、ヒドラの秘密施設。第二次世界大戦中に捕らえられたジェームズ・ブキャナン・“バッキー”・バーンズは「ウィンター・ソルジャー」として改造され、洗脳を受けていました。
「熱望。錆びつき。17。夜明け。灼熱。9。温情。帰郷。1。貨物車両」
この単語の羅列で完全に洗脳は強化されます。
そしてある暗殺命令を受け、1台の車を襲い、とある品を盗んできます。
月日は流れ、アベンジャーズがソコヴィアでウルトロンと激戦を交わしてから約1年後。ナイジェリアのラゴスでアベンジャーズは任務についていました。探していたのはかつては「S.H.I.E.L.D.」の特殊部隊「S.T.R.I.K.E.」のリーダーであり、その正体はヒドラの戦闘員だった男であるラムロウです。
ナターシャ・ロマノフ(ブラック・ウィドウ)、ワンダ・マキシモフ、サム・ウィルソン(ファルコン)、スティーブ・ロジャース(キャプテン・アメリカ)は配置についており、感染研究所に突っ込むトラックを察知。すぐさま武装隊と戦闘に突入します。
追い詰められたラムロウは自爆を図りますが、それを間一髪で阻止しようとしたワンダの魔力は周辺の建物の一部を爆破させることになってしまい、民間人に犠牲者がでます。
この件でアベンジャーズは国際的に責められることになりました。アイアンマンとして活動していたトニー・スタークもソコヴィアでの犠牲者の母親から叱責され、自分が好奇心で開発してしまったウルトロンがそもそもの原因なので猛省します。
強大なパワーを持つアベンジャーズを自由に世界中で展開させるわけにはいかなくなりました。各メンバーを国際連合の管理下に置くことを規定とする「ソコヴィア協定」が決定します。アメリカ国務長官サディアス・ロスは行方不明になっているソーとブルース・バナーを除くアベンジャーズのメンバー全員に協定への署名を迅速に求めます。
そしてこの協定の賛否をめぐってアベンジャーズは分断してしまうことに…。
楽しい、可愛い、面白い
『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』は予告での印象とは違って、キャプテン・アメリカvsアイアンマンといったわかりやすい構図で収まるような話ではありませんでした。なにせ12人もキャラがいれば立場もバラバラです。それなのに各キャラの立ち位置がしっかりしており、見せどころもあるというのは凄いことです。
対立理由もいいですね。『バットマンvsスーパーマン』は「なんだそれ?」という正直ガッカリなオチで仲直りするのですが、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』はソコヴィア協定をめぐる極めて政治的な理由でヒーローたちが分断します。要するに「管理を求めない自由派」と「管理を容認する規制派」で分かれることになり、これは今のアメリカの縮図でもあります。
特に空港での大決戦は純粋に楽しいです。絵作りに関しては『バットマンvsスーパーマン』と同様に文句なしですが、本作はそれに加えて見ていて楽しいというのが高評価につながります。個人的に好きなのは、スパイダーマンとアントマンのふたり。完全に空港大決戦の主役でした。スパイダーマンの戦闘中にもベラベラしゃべりまくる未熟な感じ、アントマンの巨大化以降の子供っぽい戦い方といい、可愛いです。こいつらは世界の命運がかかっているとか、仲間どうしの傷つけ合いとかそういうシリアスなことは一切気にしてません。「ヒーロー」といえるのか微妙ですが、そこがいいですね。このふたりには、今後もこのままのノリでいってほしい…。
ギャグも相変わらずキレがよく、一番のツボはヴィジョンでした。もう服をきているだけで面白いというおいしいキャラです。しかも、ワンダとのまるでイチャイチャしているようにみえなくもない人間臭いシーンがいい(このふたりは原作では結婚して子どもまでいるんですね)。バッキーとサム・ウィルソンも漫才コンビ化しそうな未来が見えます。本作は最終的に仲間割れするバットエンドなわけですが、それでも希望があるように見えるのはこういう何気ない意思の共有が描かれるからでしょう。きっとどこかで仲良くなれる…というか喧嘩するほど仲が良い? まさに昨日の敵は今日の友です。
ヒーローがヒーローをつくる
不満もないわけではないです。やはりヴィジョンとスカーレット・ウィッチは他の超人と比べても突出して強いため、戦闘でもあまり本気を出していませんでした。空港での大バトルにおいても、積極的に戦闘に参加せずに俯瞰している感じでしたが、無難にこれくらいにするしかないでしょう。それでも、スカーレット・ウィッチの力でもっと楽に解決できるのではという余計なツッコミがどうしても頭に浮かびます。例えば、バッキーは自身の洗脳を解く方法が見つかるまで冷凍睡眠する道を選びますが、スカーレット・ウィッチに頼れば洗脳くらい解けそうでは?
あとは、これはいつものことですが、やっぱり政府がアホというのは変わらないんですね。ニセ精神鑑定医にあっさり侵入されてるあたり、失態続きです。これではアベンジャーズにとやかくいう資格はないでしょう。
そして、気になるのは、政治家や被害者の立場の人たちは登場してヒーローに否定的である様子を見せていましたが、一般の人々はあまり描かれなかったこと。あえていうなら、序盤のトニー・スタークがMITの学生の前で講演していましたが、あそこで描かれているMIT学生はちょっと単純すぎる気もします。金さえもらえれば仮にも人的犠牲を出したヒーローに全員が拍手を送るということはさすがにないでしょう。『バットマンvsスーパーマン』のほうがこの点についてはちゃんと向き合っていました(わかりにくいですが)。
ヒーローがその活動において少なからず周囲に犠牲を出してしまうこと(コラテラル・ダメージ問題)については、結局、本作も『バットマンvsスーパーマン』も明確な答えを出さずに映画を終えてしまっています(本作の場合、後半は完全に忘れ去られたのか、空港大決戦では市民の交通の要である空港を盛大に破壊しており、大損害です)。
これはヒーロー映画最大の課題のひとつであり、簡単に回答はだせないというのはわかります。私の個人的答えは、それでも人を救い続けることが大切だと思っています。本作も本作なりに「ヒーローとはどうあるべきか」という問いに解答案を提示してきているようにも感じました。スパイダーマンの「人助けがしたい」という純粋な気持ち、アントマンのヒーローに対する純粋な憧れ、ブラックパンサーの復讐を否定する選択…。これらを総合するに、ヒーローとは“復讐など利己的な動機ではなく、他者のために力を使い、人から憧れられる存在”であるべきでしょう。
そう考えると本作のラストでキャプテン・アメリカは答えを出せたんじゃないかと思います。「君が困っていたら必ず駆けつける」それが彼の意思です。まさに本作が彼のナンバリングタイトルであることの動かぬ証明ですね。
一方、アイアンマンことトニー・スタークはまだヒーローになりきれていない。正確には『アイアンマン3』で愛する人のために最後のヒーロー活動を行って自分を確立したはずだったんですが、諸事情なのか元のダメ人間に戻ってしまいました。彼にも救いが必要ですが…それは出演が確定している『スパイダーマン』最新作に期待していいのでしょうか。
ヒーローどうしの連鎖反応が楽しみです。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 91% Audience 89%
IMDb
7.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★
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・『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』
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作品ポスター・画像 (C)2016 Marvel All rights reserved. シビルウォー キャプテンアメリカ
以上、『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』の感想でした。
Captain America: Civil War (2016) [Japanese Review] 『シビル・ウォー キャプテン・アメリカ』考察・評価レビュー
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