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『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』感想(ネタバレ)…ネタが豊富すぎる!

チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ

ネタが豊富すぎる!…映画『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Chip ‘n Dale: Rescue Rangers
製作国:アメリカ(2022年)
日本では劇場未公開:2022年にDisney+で配信
監督:アキヴァ・シェイファー

チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ

ちっぷとでーるのだいさくせん れすきゅーれんじゃーず
チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ

『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』あらすじ

アニメーションシリーズをきっかけに世界中で大人気を博し、一世を風靡したチップとデール。しかし、その栄光は長くは続かなかった。シリーズは突然打ち切られてしまい、その後チップは郊外で保険会社のセールスマンとして勤め、デールはCG手術を受け、懐かしのスター達が集まるノスタルジア・コンベンション・サーキットで働きながら、かつての栄光に思いを馳せていた。ところがある事件に巻き込まれてしまい…。

『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』感想(ネタバレなし)

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リメイク? リブート? パロディです!

ディズニー初期の人気キャラクター、その中であなたが好きなものはどれですか?

ミッキー、ドナルドダック、グーフィー、プルート、ミニー…。

いや、あの小さい2匹も忘れてはいけません。チップデールです。シマリスのコンビである「チップ&デール」。このキャラクターも今も大人気で愛されています。

その初登場は案外と古く、1943年の『プルートの二等兵』という短編アニメで初お披露目しました。といっても今の私たちがよく知っているチップとデールの見た目とは少し違います。犬のプルートを邪魔するリスという出番であり、2匹に個体差としてハッキリとした特徴はないです。でもイタズラ好きで、いつも何かを引っ掻き回してくるという立ち位置はすでにそこにありました。

名前が初登場したのは1947年の短編『リスの住宅難』。原題は「Chip an’ Dale」です。ちなみに名前の由来はイギリスの家具デザイナーの“トーマス・チッペンデール”からとられています(シマリスは英語で「Chipmunk」という)。この作品では2匹の見た目に特徴がつき、鼻や目などで区別しやすくなりました。デールの方が少し大きめの楕円の赤茶色の鼻をしていると覚えておけばいいです。

そのチップとデールですが、2匹が堂々の主役となったアニメーション・シリーズがありました。それが『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』で、1989年から1990年までに全65話が放送されました。日本でも放送されていたので、観た人もいると思います。

その物語は、おなじみのチップとデールがレスキュー・レンジャーに属しており、ハツカネズミの女の子であるガジェット、最年長ネズミのモンタリー・ジャック、ハエのジッパーを仲間にして、一緒に様々なトラブルを解決していく…という子どもでも楽しめる話です。

最近は『チップとデールのパークライフ』という新しいアニメーション・シリーズも始まっているのですが、やはり昔ながらのファンは『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』が心に残っているという人も少なくないはず。

その『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』が2022年になんと実写映画化されました。タイトルはそのまんま『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』

けれどこの2022年の映画『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』は一筋縄ではいかない異色中の異色の一作です。まずリメイクやリブートではなく、かといって続編とも少し違う。公式では「カムバック」と言っているのですが、要するにパロディなのです。

本作は『ロジャー・ラビット』と同じノリで、カートゥーンのアニメキャラクターたちが実社会に普通に存在しているという設定です。チップとデールはその世界で役者として『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』という番組で大成功をおさめたことになっており、しかし番組打ち切りで関係は悪化してしまい、数十年ぶりに再会してまたコンビを組む…というのが基本のあらすじの開幕部分。公式が二次創作を作っちゃったみたいなもんです。

チップはカートゥーンの姿ですが、デールはCG整形で3Dになっており、もう見分けるのに迷うことはなくなった!という自虐もあり…。というか本作はメタなギャグが満載で、ディズニー映画史上でも最もふざけまくっている作品と言っていいでしょう。ディズニーの作品ネタだけでなく、他社のネタまで弄り回し放題で遊んでいますからね。こういうアメリカのパロディへの許容力、いいもんですよね…。

このハチャメチャな映画を生み出したのは、『サタデー・ナイト・ライブ』でも活躍したコメディアンの“アキヴァ・シェイファー”。『俺たちポップスター』(2016年)を監督したりもしていましたが、今回はお仲間の“ダン・グレゴール”“ダグ・マンド”に脚本を担当してもらい、ディズニーのおもちゃ箱をひっくり返しています。

だいたいが2Dか3Dのアニメ・キャラクターで展開するのですが、生身の人間のキャラクターも主要な活躍をするものがいて、そのひとりを『ビール・ストリートの恋人たち』『オールド・ガード』の“キキ・レイン”が演じています。

なお、チップとデールの声はいつもの甲高いやつではなく、“ジョン・ムレイニー”“アンディ・サムバーグ”が演じているのですが、でも甲高い声もでてくるという…。ほんと、自由ですよ…。

本作はいくつネタに気づけるかというファンによるネタ探しで盛り上がるタイプの作品ですので、ディズニーファンのみならず、カートゥーンやアニメのファンは情報の洪水になっている映像をじっくり目で追って機銃掃射のようなネタの乱発に追いついていってみてください。

『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』は「Disney+(ディズニープラス)」で配信中です。

日本語吹き替え あり
石川界人(チップ)/ 野島裕史(デール)/ 大橋彩香(エリー)/ 落合弘治(スウィート・ピート)/ 浦山迅(パテ警部)/ 松井菜桜子(ガジェット)/ 楠見尚己(モンタリー) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:気楽に観られる
友人 3.5:ネタ探しで盛り上がる
恋人 3.5:ファン同士で愉快に
キッズ 3.5:子どもでも楽しい
↓ここからネタバレが含まれます↓

『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):チップとデール、解散

1982年。ユニオンビル小学校。この学校にシマリスのデールが転入してきます。しかし、教室での自己紹介で早々に大失態をしてしまい、クラスメイトからは嫌われ、友達もできずにひとりで食堂でご飯を食べるしかなく…。そんなデールに気楽に話しかけてきた子がいました。チップです。2匹はたちまち気が合いました。

チップとデールは高校ではタレントショーで優勝し、自分たちのパフォーマンスに自信を持ちます。そして、卒業後はカリフォルニアへ向かい、ハリウッドで成功することを夢見ました。

何度かの脇役を経験しながら、ついに冠番組「チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ」という大役をゲット。チップとデールはこうして人気者になったのでした。

しかし、転機が訪れます。1990年。シーズン3の撮影も完了し、現場で番組が末永く続きますようにと祝っていた頃。デールは「00デール」という新番組に挑戦するとチップに事後報告しました。「なんで相談してくれなかったんだよ」とチップは文句を言いますが、デールはマヌケな役に飽きており、「二番手は嫌だ」と不満を述べます。「お互い1番手だろ」というチップの言葉も虚しく、いつも一緒だった2匹の絆にヒビが入ってしまい…。

「チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ」は打ち切りとなり、デールの新番組もパイロット版で終了。2匹の縁は完全に切れます。

そして年月が経過し…。

デールはまだエンタメの世界で頑張っており、CG整形で容姿も一新していました。けれども人気はすっかり消え失せ、チップとは連絡を取っていません。

一方のチップは保険のセールスマンになっており、最優秀社員になるほどに勤勉。家では愛犬のミリーと過ごし、俳優業だった時代は昔のことになっていました。

そんなある日、チップのもとにかつて番組「チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ」で共演していたモンタリーから電話があり、トラブルがあって助けてほしいと言われます。さっそく向かうとモンタリーはチーズ依存が悪化したらしく、しかもバレーギャングからかなり借金があり、払えないと海賊版にされると怯えていました。

そこにデールもやってきます。彼も呼んでいたとは知らず、気まずい空気が流れます。2匹は仲違いをしたまま、その場を後にします。

ところが次の日、モンタリーが誘拐されたと一報があり、パテ警部と部下のエリー・ステックラーの捜査に協力します。なんでもギャングのボスのスイート・ピートが怪しいようですが、警察には手を出せないとか。

これはレスキュー・レンジャーズを再結成するときなのか…?

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ネタの解説なんてできない!

あらためて言うことでもないですし、観れば一目瞭然ですけど、映画『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』はパロディネタの大洪水が全編にわたって起きています。ツッコミ不在なので、観客がツッコむしかないですが、一時停止でもしないと追いつきようがないですよ。

もちろん一番に目立つのはディズニーネタです。

リブートで一気に返り咲いた『ジャングル・ブック』の熊のバルーが陽気にマイクパフォーマンスしているかと思えば、『美女と野獣』のルミエールがゲストを迎え、オキアミ借金を返せなくなった『リトル・マーメイド』のフランダー、他にもスクルージ・マクダック、ピート、アラジンのじゅうたん、ラプンツェル、くまのプーさん、ダンボ、バンビ…。もちろんやさぐれてオッサン化したピーターパンも強烈ですし、ダークウィング・ダックもエンドクレジットで登場。『ちいさいおうち(The Little House)』ネタとか今の子どもはわからんだろうに…。

ただ、ディズニー以外のパロディも盛沢山。ディズニーに近いあたりから羅列していくと、マーベルからはなぜかティグラが序盤から登場。ザ・シンプソンズ、スター・ウォーズ、パイレーツ・オブ・カリビアン、フィニアスとファーブ…シマリスつながりで「アルビン 歌うシマリス3兄弟」も取り上げられます。あと“ポール・ラッド”ね…。

さらにライバル企業まで何でもあり。「バットマン vs ET」なんて意味不明なネタもあれば、マスターズ・オブ・ユニバース、「カンフーパンダ」のマスター・カマキリ、レゴ、ボルトロン、サウスパーク、ビッグマウス、マイリトルポニー、ジュラシック・パーク、ターミネーター、MC・スキャット・キャット、Mr. Natural、セーラームーンまで。ニコロデオンのスタジオに突入したらパウ・パトロールに襲われて…というエピソードも酷いもんですよ(褒めてる)。

CGネタでも嘲ってきます。不気味の谷のエリアで徘徊する2000年代初期の微妙なCGキャラクターたち。そして最近のCG大失敗事例として今作のサブキャラで登場してしまった「アグリー・ソニック」(いいのか?これ?)。あと『キャッツ』ね…。

ゲームのネタもあります。春麗に、ポケモンに、整形マシーンの強奪パーツ室の中にはゲーム「キングダムハーツ」のキーブレードまである。

本作のカオスを象徴するのが、終盤に登場するキメラ・モンスター。体格はオリジナルの『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の悪役であるファットキャットそのものですが、顔(リボン)は『おしゃれキャット』のマリーで、腕は『シュガー・ラッシュ』のラルフと『ティーンエイジ・ミュータント・ニンジャ・タートルズ』のシュレッダー、足は『トイ・ストーリー』のウッディと『トランスフォーマー』のオプティマスプライム…。マリオのキラー大砲みたいなものまで撃ってくる。

肝心の暗躍の目的にいたっては海賊版で儲けることが狙いですからね。健全なイメージを表の顔にして裏で悪事をこっそりしているアニメキャラたち、売れ残った大量のオモチャの闇とか、業界の暗部を徹頭徹尾笑いに変えていきます。

パロディの悪趣味度と見境の無さで言えば、『レディ・プレイヤー1』なんて可愛いものです。

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チップとデールの関係の変化

その膨大なパロディはさておき、映画『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』はありていに言えば、中年の危機を描いた物語であり、同時にブロマンスの定番である解散と復活をベタどおりに展開しています。

チップとデールという、暗黙の了解として年を取らないことになっていた永遠のキャラクターをあえてキャリアという重責を感じさせる存在にスケールダウンしたことは、「夢を壊す」アレンジいじりではあるのですが、でも一方で別の親近感を与えることにもなっている。ディズニーの初期のキャラクターにもこんなアプローチをしていいんだという道を開拓したのは結構デカい偉業じゃないでしょうか。

興味深いのは、チップとデールの女性への色恋要素が完全に消失していること。もともとチップとデールは兄弟でもないのに一緒に暮らしていてなんだかんだで仲良く、見ようによってはゲイ・カップルにも受け取れたわけです。でも昔の作品ではチップとデールは女性のキャラクターに恋をする展開がたびたびあって、それがこの2匹がゲイではないことを説明するひとつの言い訳になっていました。

ところが今作では、オリジナルの『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』ではガジェットに恋をしていた設定があったはずなのに、そのガジェットはまさかのジッパーと結婚して子だくさん状態であり、チップとデールは全く恋感情を1ミリも表しません。チップなんて登場時は妻でもいるのかと思ったら愛犬だったというオチでズッコけさせますからね。

結果、本作はチップとデールの関係がブロマンスを飛び越えてゲイっぽい雰囲気が増しており、ゲイとはいかずとも、プラトニック・リレーションシップはじゅうぶん感じ取れる間柄です。別に女性キャラへの恋感情が2匹を引き裂いたという設定にしても良かったのにそうはしない。

こういう恋愛要素をバッサリ排除してしまうあたりを見ても、やはり昨今の作り手は少なくともキャラクターがクィアに見られかねないことを全然気にしてないんだろうなと感じさせます。チップとデールの関係のこういうさりげない変化も時代を反映しているのかもしれません。

この映画『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の続編も観てみたいですね。

『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 80% Audience 84%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)Disney

以上、『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』の感想でした。

Chip ‘n Dale: Rescue Rangers (2022) [Japanese Review] 『チップとデールの大作戦 レスキュー・レンジャーズ』考察・評価レビュー