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『ザ・バブル The Bubble』感想(ネタバレ)…Netflix;コロナ禍で映画業界はもっとバカになる

ザ・バブル

コロナ禍で映画業界はもっとバカになる…Netflix映画『ザ・バブル』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Bubble
製作国:アメリカ(2022年)
日本では劇場未公開:2022年にNetflixで配信
監督:ジャド・アパトー
性描写

ザ・バブル

ざばぶる
ザ・バブル

『ザ・バブル』あらすじ

新型コロナウイルス(COVID‑19)のパンデミックによって窮地に立たされたのは映画業界も同じ。そんな感染症対策が徹底されている中、話題作の続編撮影が敢行される。入念な隔離期間を経て、集結した俳優たちはいざ撮影に臨むものの、思わぬトラブルが続出。映画のキャストとクルーは案外と脆いメンタルを崩壊させつつ、なんとかこの仕事を乗り切ろうとする。本当にこの映画は完成するのだろうか…。

『ザ・バブル』感想(ネタバレなし)

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ビンタ事件を批判したジャド・アパトー

もう散々ニュースで見聞きして飽き飽きしていると思いますが、2022年3月27日に授賞式が行われた第94回アカデミー賞にて映画よりも話題になってしまった「ビンタ事件」の話をしましょう。ざっくり説明すると、長編ドキュメンタリー部門のプレゼンターとして舞台に上がった“クリス・ロック”が最前列に座っている“ウィル・スミス”の妻である“ジェイダ・ピンケット・スミス”を意識して「G.I.ジェーンの続編が楽しみだよ」というジョークを言ったことが始まりです(「G.I.ジェーン」の主人公は丸刈りの女性で、“ジェイダ・ピンケット・スミス”は脱毛症ゆえに同じようなヘアスタイルをしている)。このジョークの直後、“ウィル・スミス”は突然ひとりでステージに上がり、“クリス・ロック”に歩み寄って渾身の平手打ちを浴びせたのでした。

日本でもこの事件は報道されましたが、世間の反応を見ていると「“クリス・ロック”と“ウィル・スミス”のどっちが悪いか」というスキャンダルな話題性でばかり語られがちです。

“クリス・ロック”の冗談は病気の人を中傷するものなので問題だという意見も当然です。ただ、そうであれば授賞式が終わった後にスミス夫妻はアカデミー賞側に抗議の声明を出すなりするのが健全なやり方であり、慈善活動を多数展開する“ジェイダ・ピンケット・スミス”ならなおさらそうした適切なアプローチをとれたはず。問題はそれなのに夫の“ウィル・スミス”が独断先行で暴力を、しかも公の場で振るってしまったことにあり、これが事態をかなり深刻な状況に陥らせました。

「たかが1発のビンタでしょ?」と思う人もいるかもですが、それでは済まない背景がいくつもあります。そのひとつは人種問題なのですが、今回はこのテーマは別の機会にとっておきます。

もうひとつの背景はやはりコメディの在り方です。コメディのジョークの内容が問題性を問われるのは珍しいことではありません。それはコメディの歴史上ずっと続いていることであり、それこそコメディの本質だとさえ言えます。そしてそのコメディの良し悪しを決めるのは他ならぬコメディアンの権利であり、批評家や観客の反応に影響を受けながら合意形成がなされます。それがコメディの健全なシステムです。これがあるから検閲に対抗したりもできるし、コメディがコメディであり続けることもできます。今回のビンタ事件はそのコメディの健全なシステムを暴力でぶっ壊す異例の事態であり、コメディ業界にとっても笑えない状況となりました。

その今回のビンタ事件を公然と真っ先にSNSで批判したコメディ業界のひとりが“ジャド・アパトー”でした。ハリウッドのコメディ映画を先頭で引っ張ってきたベテランです。インタビューでも“ジャド・アパトー”は自分の例の事件に対する素直な気持ちを語っており、やはりコメディアンの立場が脅かされることを危惧していました。

“ジャド・アパトー”は放送禁止用語を多用して歯に衣着せぬ容赦なさで批判と笑いを提供してきた大物コメディアンである“ジョージ・カーリン”を題材にしたドキュメンタリーを手がけて2022年5月に公開するので、いろいろ思うこともあったのでしょう。

とりあえずビンタ事件はこれくらいにして、今回はその“ジャド・アパトー”監督の最新作を紹介したいと思います。

それが本作『ザ・バブル』です。

“ジャド・アパトー”監督はこれまでは『40歳の童貞男』(2005年)、『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(2007年)、『エイミー、エイミー、エイミー! こじらせシングルライフの抜け出し方』(2015年)などを手がけてきましたが、今やすっかり監督ではなく製作をしている印象が強いです。2020年には『The King of Staten Island』という監督作もあったのですが、日本では公開されておらず、余計に活躍が目につきづらくなっていました。

そんな中での本作『ザ・バブル』は久しぶりに徹頭徹尾くだらない“ジャド・アパトー”のユーモアが満載です。最初に言っておきますけど、本当にどうしようもないほどのアホさなので、映画に意義とか求めると時間を無駄にします。それでもいい!と言い切るツワモノだけがこの映画に挑んでください。

内容は、新型コロナウイルスのパンデミックの最中に映画撮影に臨んでいる俳優やスタッフを描くもので、ご想像のとおり、映画業界を自虐するバカ騒ぎが展開。たぶん“ジャド・アパトー”監督的にもコロナ禍なんてギャグにしないとやってられないと思ったんでしょうね…。

俳優陣も全く無意味に豪華です。まず『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』『ガンパウダー・ミルクシェイク』の“カレン・ギラン”。そしてドラマ『マンダロリアン』の“ペドロ・パスカル”。さらに『Don’t Think Twice 僕たちの成功』の“キーガン=マイケル・キー”、『バッド・スパイ』の“ケイト・マッキノン”、『続・ボラット 栄光ナル国家だったカザフスタンのためのアメリカ貢ぎ物計画』の“マリア・バカローヴァ”、『天使たちのビッチ・ナイト』の“フレッド・アーミセン”、『ザ・クラフト: レガシー』の“デイヴィッド・ドゥカヴニー”など。

また、“ジャド・アパトー”監督の妻である“レスリー・マン”と、その2人の娘である“アイリス・アパトー”もしっかりメインキャラクターで出演しています。

そしてサプライズであんな俳優やこんな俳優まで…。これはぜひ実際にその目で確かめてください。

『ザ・バブル』はNetflixで独占配信中。この茶番劇を再生するかはあなたしだい…。

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『ザ・バブル』を観る前のQ&A

Q:『ザ・バブル』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2022年4月1日から配信中です。
日本語吹き替え あり
白石涼子(キャロル)/ 間宮康弘(ショーン)/ 鶴岡聡(ディーター)/ ニケライ・ファラナーゼ(ポーラ) ほか
参照:本編クレジット

オススメ度のチェック

ひとり3.0:俳優ファンなら
友人3.0:暇を潰したいなら
恋人3.0:くだらなさすぎるけど
キッズ3.0:やや性描写と暴力描写あり
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『ザ・バブル』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ザ・バブル』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):「Cliff Beasts 6」公開予定!

『崖のビースト(Cliff Beasts)』という新たなアクション映画の誕生は新時代の幕開けとなりました。大絶賛となった本作は続編が立て続けに作られ、今や5作目。そして6作目『Cliff Beasts 6: Battle for Everest: Memories of a Requiem』の制作企画が進行します。

しかし、そんな人気作に強敵が立ちはだかる…。それは小さなウイルス。

イングランドのとある施設。ここは隔離バブルとなっており、厳重な感染症対策のもと、俳優たちの一時隔離宿泊所となる予定です。スタッフとして雇用されたピッパガンサーの若い2人にエグゼクティブ・プロデューサーのギャビンは告げます。「俳優は動物だと思え。俳優を褒めろ、俳優と寝るな」

その頃、キャロル・コップは『崖のビースト』6作目に出演しないかとエージェントから打診されていました。実は5作目には出なかったのです。今はカレシのジョシュもいるので躊躇しますが、パレスチナ人とイスラエル人のハーフを演じた自身の直近の出演作『エルサレムの朝日』の映画は大酷評だったので、挽回するためにもやることになります。

1日目。ついて早々PCR検査。まずは隔離です。豪華な部屋で14日を過ごすだけと言われますが、2週間をひたすら部屋で、食べて飲んで寝て錯乱してひとり過ごす時間は苦痛。隔離は終わり、放心状態。

俳優たち参加のパーティーが開かれていました。出演者の顔触れもわかります。ディーター・ブラボー、ローレン・ヴァン・チャンス、ハウィー、クリスタル・クリス、ショーン・ノックス、ダスティン・マルレイ…。監督のダレン・アイゲンは「コロナを忘れさせるような傑作になる」と明言。

15日目。リハーサルの開始です。ギャビンは配給担当のポーラとビデオ通話しますが、彼女はリゾート地でスキーをして楽しそうです。自分でなんとかするしかありません。

31日目。撮影初日。身体接触は禁止され、ゾーン分けされる中、グリーンバックで撮影は始まります。多少の揉め事はありますが、もう6作目です。慣れたもの…。

ところがギャビンが「問題が起きた」と宣言。コーヒー係が陽性だったので、撮影は一時中断。また隔離すると言い出し、俳優たちは苦情を言いますが、逆らえません。

またもや暇な隔離生活の2週間。この撮影は終わるのか…。

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バブルはいつもバカ騒ぎ

『ザ・バブル』という題名の由来は作中でも言及されていますが、感染症対策における隔離のことです。厳重な対策が施され、検査と隔離期間をしっかり通過した人だけがそのバブル内で過ごせるので、その空間はマスク無しでも平気。そういう限定的な場所のことですね。日本ではあまり「バブル」なんて言い回しは使われなかった気もします(「療養」とか「待機」とか、隔離を匂わせない用語は使うけど、そもそも日本にはバブルは存在したのだろうか…)。

ともあれそのバブル内で撮影に挑む俳優たち。これはコロナ禍の新しいノーマルな姿。実際にそうやって撮影された大作もたくさんあったという話をよく目にしました。例えば、『ザ・バブル』の『崖のビースト』になんとなく近い気もする『ジュラシック・ワールド 新たなる支配者』も相当に大変な撮影現場だったそうで、500万ドルを投じて感染症対策を徹底し、幾度も中断をしながらの必死の撮影だったとか。

こういうコロナ禍に翻弄される人々を描くドタバタ劇を映画化したものも多く見られるようになってきましたが、本作『ザ・バブル』は「死」という暗い話は一切描くことなく、ひたすらにおバカなノリで突っ走ります

個人的には、セックス依存症でなんか気の抜けたように佇んでいるディーターを演じた“ペドロ・パスカル”がアホだったなぁ…。

逆に『続・ボラット』であんなに破廉恥にアホ全開で体を張っていた“マリア・バカローヴァ”ですが、今作ではホテルの従業員役で、結構クールな佇まいを見せていて、こんな役もハマるんだなと違う一面が見られましたね。

一方で今作のアホ女担当だったのでは、“アイリス・アパトー”が熱演するTikTokのスーパースターであるクリスタル・クリス。同世代的なキャスティングなので、やっぱりこのへんのギャグのしかたが“アイリス・アパトー”自身よくわかっているなと…。

サプライズ俳優枠もしょうもない登場ばかりで実に愉快でした。唐突に顔が浮かび上がる“ベネディクト・カンバーバッチ”、なんかエクササイズを教えてくれる“デイジー・リドリー”、リモートなのでさっぱりわからないスタントコーディネーターの“ジョン・シナ”、そしてフラっと現れる“ジェームズ・マカヴォイ”。みんな、なんでこの映画にでようと思ったのかな…。

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みんな結末しか覚えていないからOK

『ザ・バブル』は元も子もない言い方をすればただの自虐ネタ

まずはとことん俳優をディスります。スタッフに対する「俳優を動物扱いしろ」という指示もそうですが、俳優なんて基本は面倒くさい奴らですよ…という呆れ顔の姿勢が滲み出ます。

まあ、実際にはどうかは知りませんけど、俳優は個性の強い人が多そうですし、こういう厳格なコントロール下で手綱をつけておくのは大変そうですけどね。部屋に缶詰め状態にされるのが苦手な俳優だっている。でもいざ撮影が始まるとそれはそれで上手くいかない。この大人の幼稚園状態のパニック…。

そこにグリーンバック撮影の現実の光景としてのダサさも加わるので余計にシュールです。

でも同時に「もう規制とか管理とかクソくらえだ!」という俳優の雄たけびにも同調してあげる本作。降板するなら大金を払わないといけないとか、製作プロデューサーはリモートでのんびりバカンスしながら仕事しているとか、頑張って仕事しているわりには脚本がマヌケすぎるだろとか、いろいろとふざけるんじゃないよ!という叫び。脱走者を容赦なく撃ち抜くセキュリティに痺れを切らして、俳優たちは決死の抵抗を勃発させます。上昇と下降しかできない俳優のヘリ操縦テクニックに身を任せて…。

これも本作ではコテコテのギャグにしていますけど、多少なりとも俳優の本音が混じっているでしょうしね…。

結局は映画は完成しなかったけどドキュメンタリー映画としてはきっちり完成し、それも話題の大好評となり、結果オーライな雰囲気でエンディングを迎えます。「みんな結末しか覚えていない」というあの自嘲的なセリフはまさしくこのコロナ禍の混乱に陥った私たちに向けられた言葉でしょうし、ちゃっかりあのアカデミー賞にだって当てはまる、普遍的な人間性の愚かさのひとつですね。

こうやって映画業界を風刺する“ジャド・アパトー”監督には、ぜひともあのアカデミー賞の狂乱もコメディ映画にしてほしいものです。きっと表にあまり出てこずコソコソしている映画芸術科学アカデミーの面々も引きずり出してくれることでしょう。

こんな茶番劇はフィクションの中だけにしてね。

『ザ・バブル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 23% Audience –%
IMDb
4.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
4.0
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作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『ザ・バブル』の感想でした。

The Bubble (2022) [Japanese Review] 『ザ・バブル』考察・評価レビュー