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コロナ禍の中、最も映画館に味方した、またはネット配信に傾いた映画会社は?【劇場vs配信】

劇場vsネット配信

映画を題材にその年を振り返る「調べてみた」シリーズ企画を1年に1回実施することにしている、私。

2018年は「日本映画業界に男女格差はあるのか」をテーマに監督と脚本に参加する女性の割合を自分なりにざっくりと調べ、2019年は「最近の映画は続編やリメイクばかり…は本当なのか」をテーマに大手海外企業の作品の傾向を調べました。

では2020年は何をするか。

これはもう春先には心の中で決めていました。「コロナ禍と映画業界」をテーマにしよう、と。

2020年は大多数の人にとって散々な年だったと思いますが、最も大打撃を受けた業界のひとつが「映画」です。2020年を語るうえで、これを無視するわけにはいきません。

ただ、当初は2020年のパンデミックを振り返って「これだけ影響を受けたね~」と被害をまとめる記事にしようと思っていました。それがどうです、2020年12月になっても全然収束していないどころか、世界的な感染拡大が止まる気配がないじゃないですか。むしろ最初の春よりも酷い。正直に白状すると私は2020年の夏過ぎには収束しているものだと高を括っていました。甘かった…。

どうしよう…と思っていたのですが、長引くコロナ禍のせいで映画業界に起きそうな天変地異を題材にするしかないかなと結論に至りました。

それは「映画館での劇場公開か、動画配信サービスでのネット配信か」という二者択一論争です。

いろいろなニュースが流れて知っている人も多いでしょうし、実際に劇場公開予定だった映画がネット配信に移ってしまい、複雑な気持ちになった人もたくさんでしょう。「あの企業は劇場に冷たい!」「ネット配信ばかりになっちゃった気がする」…そんな不満不平もよく聞こえてきます。

でも実際の全容をちゃんと理解しているでしょうか。残念ながらSNSでは偏った情報しか拡散しないので、ネットに浸っているだけでは正確な全体像を理解できません。テキトーに流れてきた断片的情報を鵜呑みにして一部の映画会社に文句をぶつけているだけになっていませんか?

一体、どの映画会社が劇場に味方したのか、もしくはどの映画会社がネット配信に一番傾いたのか…。

ということで簡易的ですが調べてみました。

調査方法

さっそく調査したいところですが、やっぱり全部の映画を分析するのは個人でやるにしては到底無理です。

そこでアメリカの一部の大手企業の配給作品を対象にすることにします。具体的には「Universal Pictures」「Paramount Pictures」「Columbia Pictures(Sony)」「Warner Bros.」「Walt Disney Pictures」の5つです。他にも大手映画会社は存在しますが、申し訳ないのですが今回は除外とさせてください。なお「Walt Disney Pictures」には、「Pixar」「Marvel Studios」「Lucasfilm」を含んでいます。2020年の段階では完全に「20th Century Fox」も買収となりましたので、「Searchlight Pictures」も合わせて「Walt Disney Pictures」に含めています。

まずコロナ禍で本格的に映画業界が影響を受け始めたのが3月だったので、2020年3月~12月のそれら企業の劇場公開予定で実際に何らかのかたちでリリースされた作品をリストアップします。基準にしているのはアメリカでの公開時期です。作品リストはWikipediaと各映画会社公式ウェブサイトを参考に作成しました。たぶん大幅な漏れはないと思いますが、ミスがあったらすみません。

そして、その映画が「劇場公開」だったのか、「ネット配信に移行」したのか、それとも「劇場とネット配信を同時展開」することになったのか、その3タイプに分類しました。映画館での公開から数週間後にネット配信がすぐに始まった作品もとりあえず「劇場公開」ということにしておきました。2021年に延期になった作品に関しては、この記事を執筆している時点でどうなるか確定していないので対象外としています。

2019年時点からネット配信のみをスケジュールにしていた映画はコロナ禍の影響を受けたとは言えないので対象外です。ただし、あやふやな映画も一部にあって、そこは内部事情がわからないので少し不正確になってしまうのですが、申し訳ありません。

結果

「劇場公開」「ネット配信に移行」「劇場とネット配信を同時展開」のそれぞれの割合を会社別に数値化すると、ユニバーサル以外の3社は「ネット配信」が「劇場公開」を上回り、ディズニーは五分五分です

「劇場とネット配信を同時展開」を除外し、「ネット配信」の割合が多い順に並べると…

「Paramount」>「Disney 」=「Warner Bros.」>「Columbia(Sony)」>「Universal」

…となります。

「劇場とネット配信を同時展開」を除外し、「劇場公開」の割合が多い順に並べると…

「Universal」>「Columbia(Sony)」>「Disney」>「Paramount」=「Warner Bros.」

…となります。

なお、「劇場とネット配信を同時展開」を順並べの際に除外したのはアメリカでも地域で実情が異なるからです。表向きは劇場公開とネット配信を同時に展開していても、州によっては劇場が全面閉鎖しているせいで事実上「ネット配信」しか観客にとってアクセスする手段がないケースもあるためです。

詳細は以下の円グラフのとおりです。

以下にさらに各社ごとに説明していきます。各社ごとに個性があって興味深いです。

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ユニバーサル(Universal)

劇場公開が多く、ネット配信が少ないという映画館フレンドリーな結果が見られたユニバーサル。しかし、最初に映画館と対立の火花が散ったのはユニバーサルでした。

4月、ユニバーサルが『トロールズ ミュージック★パワー』の劇場公開を取りやめ、ネット配信に踏み切り、さらに、ユニバーサルのCEOが「映画館営業の再開後は、映画を劇場とネット配信で同時展開していきたい」と発言したことからアメリカの大手映画館チェーン店「AMCシアターズ」が激怒。「今後ユニバーサルの作品は劇場公開しない」とまで宣言して大騒ぎとなります。しかし、7月には「劇場公開から17日間を経て配信可能に」という新ルールで両社が和解。報道によればユニバーサル側は配信によって得る収益の一部を「AMC」にも与えることになったようです。

ユニバーサルは世界的大ヒットが予想される『ワイルド・スピード ジェット・ブレイク』をどの企業よりもいち早く2021年に公開を延期して、これまた業界をびっくりさせもしました(結果的に正しい判断だったのですが)。

その後は一部の作品をプレミアム配信として提供しましたが、映画館が再開され始めると上記のAMCとの合意に基づいて『ザ・スイッチ』『The Croods: A New Age』『オール・マイ・ライフ』などの作品を劇場公開、17日後にネット配信…というスタイルをとっています。ネット配信のみに頼ることはしていません。なお、ポール・グリーングラス監督の最新作『News of the World』はアメリカでは劇場公開されますが、それ以外の国ではNetflix配信となります。

ユニバーサルが最も「劇場公開」の割合が高かったのもこのように早期の映画館側との話し合いがあったからこそでしょう。

なお、ユニバーサルは独自の動画配信サービス「Peacock」を2020年にローンチしています。

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パラマウント(Paramount)

パラマウントは自社で絶好調なタイトルをあまり抱えていません。そんな中、『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』を3月に公開しかけ、プレミアイベントまで開催しますが、すんでのところで公開延期。大事なヒットが期待できる自社IPをここで台無しにせずに良かった…といった感じでしょうか。

また、パラマウントは自社の動画配信サービスを持っておらず(「CBS All Access」というサービスを「Paramount+」へとリニューアルする計画は進行中)、結果、多くの作品を他者の動画配信サービスに売るという選択をとらざるを得ませんでした。『ラブバード』はNetflix配信されましたし、一番のビックタイトルは『シカゴ7裁判』でしょう。本作はNetflix配信となり、高評価を得ているためアカデミー賞レースでも有力視されています。なんかもったいない手放しをしてしまいましたね。

自社の地盤の弱さがそのままコロナ禍でも響いてしまった結果に。

『Top Gun: Maverick』といった大作を2021年に延期し、そこでなんとか挽回したいと考えているはずですが…。

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コロンビア;ソニー(Columbia; Sony)

コロンビア(ソニー)も我慢することになった2020年でした。『Peter Rabbit 2: The Runaway』『Ghostbusters: Afterlife』『Morbius』といったヒットが期待される大作をすっぱり2021年延期を決めて諦め、2020年は耐え忍ぶことに春の段階でシフトしたようです

結果、2020年はそもそも作品を全然展開していません。小粒の作品をちょっと劇場公開していたので、それで「劇場公開」の割合が上がっています。

自社の動画配信サービスもないので、これを機に成長させるネット配信の収益システムもありません。かろうじてトム・ハンクス脚本の『Greyhound』を「AppleTV+」に売ったり、他の映画を他の大手ライバル企業に売ったりして、収益を少しだけ確保した程度。

一応、12月に大作映画『モンスター・ハンター』を勇んで劇場公開しましたが、人種差別セリフという全く別の炎上騒ぎを見せるヘマをしてしまいました。

コロンビア(ソニー)もパラマウントと同じく2021年に怒涛のごとく頑張っていく計画なのでしょう。

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ワーナー(Warner Bros.)

ワーナーと言えば映画ファンはワクワクしたであろう『TENET テネット』がありました。こちらはコロナ禍の中、劇場公開に専念するという大英断をし、劇場での体験に飢えていた多くの映画ファンを喜ばせました。

このビックプレゼントがあったおかげで、映画ファンの中には「ワーナーは映画館に優しい」という印象を抱かせたと思います。しかし、2020年冬に突然に発表された「2021年の公開映画を劇場とネット配信を同時に行う」という衝撃のニュース。今や最も映画館と製作者に嫌われる映画会社になってしまった感じです。

実はそのフラグは2020年の初めから漂っていました。実際にワーナーは『TENET テネット』だけが異例だったのであって、他はネット配信が意外にも多いのです。

この理由は明白で「HBO Max」の存在です。ワーナーは2020年に自社の動画配信サービス「HBO Max」をスタートさせ、有利に立つライバルを猛追すべく焦っていました。なので「HBO Max」のコンテンツを充実させたくて仕方がなかったはずです。このコロナ禍は不幸中の幸い、良い顧客獲得のチャンスと考えたかもしれません。

結果、かなりの数の作品を「HBO Max」で展開しました。ただし、ワーナーはもともと「HBO Max」を想定して作った映画なのか、ちょっと不明瞭なタイトルもあるので、このへんの数値は私も自信がないです。どちらにせよコロンビア(ソニー)から『An American Pickle』『Charm City Kings』を買い「HBO Max」のオリジナル映画にしたり、劇場公開予定だった『魔女がいっぱい』を「HBO Max」に移動したり、とにかく「HBO Max」偏重の年だったのは否めません(日本では「HBO Max」が展開されていないのでその雰囲気が全然伝わってきませんけど)。なお、『エノーラ・ホームズの事件簿』だけはNetflixに売っています。

それでも12月には『ワンダーウーマン 1984』を劇場とネットの同時リリースで展開。コロナ禍の最高のオープニング記録を叩きだし、「HBO Max」内でもユーザー視聴率が高かったそうで、両得を達成しています。

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ディズニー(Disney)

ディズニーと言えば2020年の最大の話題作であった『ムーラン』を「Disney+」でのプレミアム配信にするという決断に業界がざわつきました。なんだかそれしか話題がない感じではありますが、しかし、他にもいくつかの映画を「Disney+」に移動させています。『アルテミスと妖精の身代金』『ゴリラのアイヴァン』、そしてピクサーの『ソウルフル・ワールド』です。このうち『ソウルフル・ワールド』をネット配信オンリーにしたのはおそらく賞レースに間に合わせたかったからだと思いますが…。

ではディズニーは「Disney+」ありきだったのかというとそうでもないです。実はディズニーはどの企業よりもギリギリまで劇場公開を粘っている傾向があります。公開延期判断も先んじて決めてしまうことはなく、劇場公開をできればしたい意地がみえます。結果、劇場公開できたのは『The New Mutants』『The Empty Man』『The Personal History of David Copperfieldの小規模作のみだったのですが。

ディズニーが意外にも劇場公開を粘る原因は、おそらくビジネスモデルがあると思われます。ディズニーは他者と違って作品ブランドで勝負しており、グッズ販売もかなり大事です。映画館はその宣伝の場としてやはり格好のシチュエーション。簡単には捨てられないのでしょう(テーマパーク事業も心停止状態ですし…)。

ディズニーはもともと劇場公開とネット配信を明確に分ける企業方針だったようで、それは「Disney+」に移動することになった劇場予定だった映画の扱いを見るとわかります。例えば『アルテミスと妖精の身代金』や『ムーラン』は別に「Disney+オリジナル」とラベルされていません。妙に中途半端な扱いです。ディズニーは最初からネット配信を想定していた作品以外は、外的理由で配信しかできない状態で移ってきた作品であっても「Disney+オリジナル」と銘打たないようです。

しかし、このディズニーのある意味融通の利かない方針はどうやら変更になるようで、ディズニーは劇場公開ありきでスケジュールしないと発表がされました(これが「ディズニーは劇場公開しない」と誤解されて一部で拡散されましたが…)。

考察

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劇場vsネット配信

今となっては懐かしい感じもありますが、コロナ禍の前はNetflixの存在によって「ネット配信された映画は映画と呼べるのか」論争が勃発していました。

コロナ禍を経験した今、その論争は過去のものになり、映画館という存在自体が消滅の危機にあります。映画文化を活かすには映画館を切り捨ててネット配信に移るしかないのか。1918年設立、映画史と常に共にあったワーナーが発表した「2021年の公開映画を全て劇場とネット配信を同時に行う」という判断は、映画史を揺るがす出来事でした。それをめぐるクリストファー・ノーランやドゥニ・ヴィルヌーブなど監督勢のワーナーに対する激しい怒りの表明からも、これまで培ってきた信頼関係の破壊が心配されます。

また、劇場公開日から90日間あけないとデジタル配信してはいけない業界内ルールがありましたが(以前からこれを3週間にしようという提案はあった)、それもこの2021年の恒常的な同時展開の決定で雲散霧消したかたちです。

とにかく今までなんだかんだで「伝統」を盾に優位にあった劇場側が一気に不利になってしまったことを明確に浮き彫りにさせました。

ここで私たち映画ファンが覚えておきたいのは、もはや大手映画会社は「映画の会社」でないということです。

ワーナーは「AT&T」、ユニバーサルは「コムキャスト」、パラマウントは「バイアコムCBS」、それぞれ情報通信・メディアを担う特大コングロマリットの傘下です。コロンビアもご存知「ソニー」の下にあります。

つまり、映画館なんてアナログなものに目をかける上層部ではありません。ましてや情報通信・メディアを主戦場とする大企業なのであり、動画配信サービスの方が相性がいいです。劇場を捨てることに躊躇いはないだろうとも識者からは指摘されています。

一方で動画配信サービスも順調で安泰とも言えません。なぜなら群雄割拠の時代に突入し、競争が激しくなるからです。もともと動画配信サービスは「ネットワーク効果」を利用して収益をあげます。要するに時間をかけてサービスを充実させないと価値が高まりません。Netflixはパイオニアとして積み重ねがあるので有利ですし、ディズニーの「Disney+」は抜群のブランド・コンテンツが豊富でこっちも幸先のいいスタートです。後方で追いかける他者には追いつくのも大変な相手です。

しかし、先頭を走る者も楽観視できません。動画配信サービスはそもそも1ユーザーあたりの収益が低く、徐々に値上げしても限度があります。今のところNetflixなどは値上げをしてもユーザー離れは起きていません。でも魅力的な他社サービスが揃ってくると話は別。俗に言う「Premium VOD(プレミアム配信)」も各社で実施しましたが(コロナ禍以前から少数作品で実施されてはいた)、そんなに定着していません。
今後は過熱する競争でピリピリした睨み合いになるかもしれません。動画配信サービスも有頂天ではいられないのです。

では映画館はどうなってしまうのか。ここに気になるのは「パラマウント同意判決」廃止のニュースです。実は以前は大手映画会社はシネコンなど映画館を所有できないという決まりがありました。市場の独占を防ぐためです。しかし、2020年8月、それが廃止。

これによって映画館の経営に乗り出す大手映画会社が現れる可能性があります。もしかしたらAmazonやGoogleなどITの巨人が手を挙げるかもしれません。しかし、明らかに将来性が見えない映画館ビジネスに手を付ける者はいるのか、それも疑問です。

面白いのはソニーで、ソニーは自社の動画配信サービスを持っていませんが、劇場とネットの同時リリース方式を採用しないと最近も関係者が発言しています。一方で、ゲームという独自の自社システムの土台があり、2019年にゲームを映画・テレビ番組化する「PlayStation Productions」を設立。映画とゲームを連動させることで自社の利益をあげる戦略のようです。

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日本は?

ずっとアメリカの話をしてきましたが、少し日本の映画業界の話題もしましょう。

日本もコロナ禍で映画館は窮地に陥いりました。パンデミックが最初に猛威を振るった3月末にはたくさんの映画が公開延期になり、一時はどうなることかと思いました。

しかし、『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の前代未聞の特大ヒットで興行収入が塗り替えられ、一見すると日本の映画業界は異例なほど元気に見えます

しかし、これもそうは喜んでいられないでしょう。

まずアメリカの映画業界のビジネスモデルの変革の影響はやはり日本にも及ぶはずです。アメリカの映画会社は経営が苦しくなるとたいていは海外の配給の予算が縮小されたりするので、小中規模の海外映画が見づらくなるかもしれません。

日本のコロナ禍をものともしない大ヒット映画の暴れっぷりも、逆の味方をすれば「売れる映画」が一人勝ちしているだけとも言えます。そうなると今後は大手の映画会社は「売れるコンテンツ」と「売れる監督・俳優」だけを贔屓する傾向が強まるでしょう。実際にそうなっています。

ただでさえ日本の映画業界は「東宝」一強です。アメリカと違って東宝はシネコンも運営しています。日本の動画配信サービスは映画会社や映画製作に手を出すテレビ企業や通信企業ともべったり仲がいいです。もはや寡占状態です。言い過ぎだと思うかもしれませんが、2020年の邦画の興収ランキングTOP10のうち7作品が東宝の配給で、興収の額の割合で言えば約89%を占めています。日本の映画館の存続は東宝の手のひらの上にあると言ってもいいでしょう。

日本がネット配信に傾いたように見えないのはそんなことをしなくても儲かる大手企業の輪があるからです。でも小さなミニシアターや業界の底辺で働く労働者には一向に利益は還元されず、苦しい状況が広がっています。「SAVE the CINEMA」といった活動が実りある結果を生むのか、いまだにハッピーエンドは見えません。

つまり、今後の日本の映画業界は嫌みな言い方になりますが、競争の無い漫然とした馴れ合いのもと、一部の特権企業がカネを儲けていく状態がさらに深まっていくと思われます。

これはどんな映画業界の未来をもたらすのでしょうか…。日本も日本で不安です…。


どの映画会社が劇場に味方したのか、もしくはどの映画会社がネット配信に一番傾いたのか…。

その答えは「どの映画会社もネット配信に傾いた」が正解でしょう。少なくともアメリカは。

遅かれ早かれこうなる未来は推測されていました。ただ、コロナ禍のせいでそれが地道な合意形成もなく唐突に到来してしまったゆえに、各所で混乱と不安を勃発させています。ここまで急ぎ過ぎる状況は誰も望んでいなかったでしょうし、まだこの動揺は続きそうです。

ただ長期的に見ると「劇場vsネット配信」という対立構図で考えるのは不適切かもしれません。VOD競争に敗れそうになった企業が映画館ビジネスで再起を狙う可能性もありますし、映画館ビジネスがVOD競争で勝敗を決める大技になることもあり得ます。

映画館のカタチも変わるかもしれません。テーマパークみたいになったり、ファンコミュニティ・ゾーンに生まれ変わったり…。進化の余地はまだまだあります。人と接するからこその意義というものも私たちはコロナ禍で学びました。

どうか映画に幸せな未来が待っていますように…そう願うしか今はできません。