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『キャプテン・マーベル』感想(ネタバレ)…荒らしをぶっとばせ!

キャプテン・マーベル

見下し男も荒らしもぶっとばせ!…映画『キャプテン・マーベル』(キャプテンマーベル)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Captain Marvel
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年3月15日
監督:アンナ・ボーデン、ライアン・フレック

キャプテン・マーベル

きゃぷてんまーべる
キャプテン・マーベル

『キャプテン・マーベル』あらすじ

1995年、ロサンゼルスのビデオショップに空からひとりの女性が落ちてくる。彼女は驚異的な力を持っていたが、身に覚えのない記憶のフラッシュバックに悩まされていた。やがて、その記憶に隠された秘密を狙って正体不明の敵が姿を現し…。

『キャプテン・マーベル』感想(ネタバレなし)

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嫌がらせで映画はコケたりしない

フィクションである映画の中の世界のヒーローは、毎回、あらゆる悪役と戦うのが宿命ですが、最近のヒーローはリアルである現実に存在する“悪”とも戦わなくてはいけなくなったようです。

ここ近年ではいくつかの映画が差別的な誹謗中傷のターゲットとなり、レビューサイトが荒らされる事件も珍しくなくなってきました。『ゴーストバスターズ(リブート版)』や『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』と災難に見舞われた映画に続いて、本作『キャプテン・マーベル』もまた、その鬱陶しい悪に直面しました。

アメリカ大手の映画レビューサイト「Rotten Tomatoes」ではまだ公開前だというのに異常な数の低評価が集中、公開後も大量の否定コメントが連発(中にはボットと見られる自動投稿が疑われるものも)。また、「IMDb(インターネット・ムービー・データベース)」でも同じようなネガティブ・バッシングが確認されました。結果、レビューサイトの観客評価が信用できない状態になってしまいました。

最近のこうした差別的な誹謗中傷のマトとなった映画はどれも「女性」が攻撃対象になっているという共通点があります。『キャプテン・マーベル』もMCU初となる女性主役ヒーロー映画。どうやら「女性」というだけで気にくわない人たちがいるようです。ほんと、やっていることが「ロキ」以下ですよ…。

こんなもの無視すればいいのですが、こうした状況が常態化すれば、映画の感想を自由に言い合う文化自体の存続が危ぶまれます。映画を“真面目に”批判したい人が風評被害を受けますし、ギスギスするだけです。

もちろん反ポリコレ・反フェミニズムに基づくネットの活動は、最悪の場合、人の命にかかわる事件を助長することもありえます(『7月22日』で描かれていたような)。

ヤレヤレでは済まされないことであり、映画業界の未来のためにも絶対に映画ファンはこうした動きを許してはならないと思います。

ただ、この「キャプテン・マーベル荒らし事件」で良かったことがあります。

それは、こんな荒らし行為で作品をコケさせることはできないと証明したこと。『キャプテン・マーベル』はヒーロー映画としては『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』に次いで歴代第2位となる興行成績を記録。荒らしなんぞ軽くひねりつぶしました。

むしろ本当の意味で評価を落としたのは、荒らしを行った人たちとその思想を共有するお仲間です。これじゃあ、悪役にもならない雑魚…『アベンジャーズ』の「チタウリ」以下の弱さですね。

ともあれ『キャプテン・マーベル』の面白さを評価するのはあなた自身。評価していいのは実際にその目で見た人だけ。

『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』で物語のいく末にハラハラしたファンにとっては救世主の登場。シリーズ終章『アベンジャーズ エンドゲーム』に臨むためにも「観ない」という選択肢はないのは言うまでもないですね。本作では冒頭からファンは感無量になれる演出があるのでお見逃しなく。

また、その一方で本作に限って言えば過去作とのつながりは気にするほどでもないので、例のマーベル・マラソン(MCU作品を振り返って全部鑑賞する作業)は必要なし。本作が初マーベル映画でも全然OK。それとアメコミ映画史上屈指の「“猫”映画」でもあるので猫好きは必見。

本作を観れば、ネット世界にたむろする荒らし連中や差別主義者をぶっとばすエネルギーがもらえるかもしれません。

オススメ度のチェック

ひとり ◎(幅広い世代が楽しめる)
友人 ◎(ワイワイ盛り上がって)
恋人 ◎(女性はとくに楽しい)
キッズ ◯(話も難しくはない)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『キャプテン・マーベル』感想(ネタバレあり)

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女性パイロットの存在

すでに20作を積み重ねてきた「マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)」。本作はその21作目にして初の女性ヒーロー単独主演作です(MCU以外だとマーベル映画では『エレクトラ』がありましたが)。こんなにたくさん映画が生まれてきたのに、これが初というのもあらためて考えると不思議な気分ですが、それだけガラスの天井があったという証拠でしょう。

ただ、マーベルはこの20作の間に何もしなかったわけではなく、実は着実に女性ヒーロー単独主演映画を作る下地を整えていました。これまでは男性主人公の恋人役くらいでしか出番がなかった女性を、『アベンジャーズ』(2012年)でチームメンバーに入れたり、『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017年)や『ブラックパンサー』(2018年)では男性ヒーローを上回るほどの強さを発揮する女性ヒーローとして登場させたり、直近の『アントマン&ワスプ』(2018年)では完全に男女対等のバディとなっていました。

そしてついに満を持しての『キャプテン・マーベル』です。監督は“アンナ・ボーデン&ライアン・フレック”の初女性監督作になり、他にも脚本や音楽など女性の多い製作陣。アメリカでの公開日は3月8日の「国際女性デー」に合わせるという気合いの入りよう。

ただその作品の背負う表向きの“女性映画”然としたルックの一方で、中身自体はそれほどフェミニズム的社会派な側面は薄めな感じを漂わせています。少なくとも一足お先に女性主役ヒーロー映画を生み出したDCの『ワンダーウーマン』ほど「男女」対立軸はあまり目立っていなかったように見えます。

でも実際は強烈に愚鈍な男と差別を吹っ飛ばす映画です。

例えば、本作は「パイロット」という職業が男性のものと考えられていた時代に生きる女性を描くものです。第2次世界大戦期を過ぎ、女性権利運動を経た時期である本作の1990年代とは言っても、まだまだジェンダー差別は平気な顔をして横行しています。本作の主人公キャロル・ダンバースが地球のレンタルビデオ店に落下したときにふと手に取る『ライトスタッフ』(1983年)や、猫のグースの名前の由来になっている『トップガン』(1986年)など映画でも表されているように、パイロットは男の世界。そう思われていました。一応、強調しておきますが、実際はそんなことなく、女性パイロットは昔から存在します。キャロルがフューリーと会うバー「Pancho’s Bar」の由来である「パンチョ・バーンズ」(1901-1975)や、キャロルのパイロット仲間だったマリアの娘が写真で見せるコスプレのモデルになっていた「アメリア・イアハート」(1897-1937)とか。ちゃんと作中でもさりげなく言及されています。

それでも本作はそれを露骨に説教臭く提示しないです。逆にそれが「女性が活躍している? そんなの当たり前でしょ? だからなに?」というクールなスタイルになっていて、ごく普通にフェミニズムを内包する本作の見やすさにもつながっています。

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本作が開拓した斬新な展開

ということで、フェミニズム的側面はさておきといった感じで、あとは本作はアクションエンターテインメントとして頭を空っぽにして満喫できる娯楽作。

ユニークなのがジャンルをまたいでいく展開

最初は、クリー人の星でエリート特殊部隊スターフォースに所属するキャロル(この時点ではヴァース)がチームと任務に挑むという、典型的なスペースオペラで始まります。クリー人は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』にも登場してますし、ファンにはおなじみ。

ところがスクラル人に捕まり、地球に落下してからは、『ボーン・アイデンティティー』的な「私は誰?」な自分探し&スパイアクションに早変わり。レンタルビデオ店の場面で、キャロルが『トゥルーライズ』のPOP広告を敵だと思って攻撃してしまいますが、まさにその映画と同じジャンルへ変わりましたよと示す目配せですね。スクラル人は他人になりすませるという能力がSF的にも物語のサスペンスを面白くしています。それにしてもおばあちゃんとか中高年のおっさんがかっこよくアクションしている姿はいいもんですね。

そして中盤を過ぎたあたりから自分の正体が判明し、敵だと思っていた存在が味方に変わり、味方だと思っていた存在が敵に変わるという反転。このへんはスパイ映画あるあるで古典的ですらあるのですが、戦争における正義の揺らぎや、異種族の許容という、現代的なテーマにもなっていて、メッセージ自体は全く古さを感じさせません。

最後は全ての溜まった“もの”を放出するような、気持ちよすぎるド派手アクション大暴れ。スペースオペラによく出る大艦隊も単独撃破するオーバーパワーで粉砕。自分の立場が悪くなったら“対等”を訴え始める男に鉄拳制裁(こんな小物な“ジュード・ロウ”も久しぶりに見た気がする)。まあ、こうやってヤバくなったら「だ、男女平等だぞ」と保身に走る男は現実にうようよいるしね…。

全体を振り返ると、『キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー』のような「力のない者が特殊な力を得てヒーローになる」というテンプレに沿うことなく、「力はあるが認めてくれない(もしくは隠蔽された)者が当たり前に力を発揮してヒーローになる」という新機軸となっており、恋愛要素もないことも鑑みれば、斬新な開拓をしたアメコミ映画ではないでしょうか。

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猫は強い(真理)

シナリオの他には映像面は相変わらず素晴らしく、四次元キューブ並みに凄い技術を持つVFXチームの努力の結晶でした。

どうしても終盤のキャプテン・マーベル大暴れシーンが印象に残りがちですが、やっぱり一番びっくりなのは、役者を若返らせてしれっと登場させるあの技術です。

本作では“サミュエル・L・ジャクソン”演じるニック・フューリーと、“クラーク・グレッグ”演じるフィル・コールソンがデジタル技術によって若い姿で登場。これまでのMCU映画でもたびたび登場した技術ですが、今作ではフューリーはずっと若いままで最初から最後まで出っぱなし。俳優に詳しくない人が本作を観ていたら、普通にこういう顔の俳優がそのまま出演しているんだと思ってしまうでしょうね。それくらい自然に溶け込んでいます。

ちなみに主役を見事に演じた“ブリー・ラーソン”は猫アレルギーだそうで、猫のグースと一緒に映っているシーンは合成だとのこと。だからあんまり一緒に行動していないんですね。

その“ブリー・ラーソン”は大役を果たし、完全にキャプテン・マーベルにハマっていました。厳しいトレーニングを積んで本当に強靭な肉体をに入れ、プライベートでも素晴らしい人間性を持っている彼女は、文句なしのヒーローです。

「猫映画」としても良かったんじゃないですか。猫を飼っている人なら、猫の秘めたる凶暴性の正体がわかって溜飲が下がるし。とりあえずフューリーは猫に敗北したこともわかったし。

ただ、本作を観ていて痛感したのは、1990年代はすっかりレトロなんですよね。作中でも同じ時期に公開された映画のパロディがあったり、パソコンの今となってはやたらと遅い読み込み動作だったり、ポケベルだったり、確かに古いなと思っちゃうものばかりが目に映って…。ヤバいですよ、これは2000年代もレトロになるのも時間の問題です。これが歳をとるということなのか…。

とにかくこれで私は『アベンジャーズ エンドゲーム』を迎える準備が整いました。いつでもかかってきてください。

私の予想では、サノスは、猫グース率いる地球上全猫の大群に襲われて「猫は全滅させとくべきだった」と後悔しながら倒されていくと思います(えっ)。

『キャプテン・マーベル』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 79% Audience 62%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 8/10 ★★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 MARVEL

以上、『キャプテン・マーベル』の感想でした。

Captain Marvel (2019) [Japanese Review] 『キャプテン・マーベル』考察・評価レビュー