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『ザ・ディスカバリー』感想(ネタバレ)…死後の世界が実証されたら自殺者が増えちゃった

ザ・ディスカバリー

死後の世界が実証されたら自殺者が増えちゃった…Netflix映画『ザ・ディスカバリー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Discovery
製作国:アメリカ(2017年)
日本では劇場未公開:2017年にNetflixで配信
監督:チャーリー・マクダウェル
ザ・ディスカバリー

ざでぃすかばりー
ザ・ディスカバリー

『ザ・ディスカバリー』物語 簡単紹介

科学者のトマス・ハーバー博士は死後の世界の存在を実証し、世界に衝撃を与えた。今や死後の世界の話は宗教だけのものではない。しかし、それを公表して以来、死後の世界に希望を見出した人たちによる自殺が大流行してしまう。次々と命を絶っていき、この現実から退場していく人たち。それでもなお頑なに研究を続ける父・ハーバーに反発する息子のウィルは、1人の女性と出会うが…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ザ・ディスカバリー』の感想です。

『ザ・ディスカバリー』感想(ネタバレなし)

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“この世”から“あの世”へのアカウント変更

最近、「Mastodon(マストドン)」というSNSが話題になっているらしいですね。一部のTwitterユーザーがMastodonに夢中になっているとか。その理由のひとつに、利用者が増えすぎて荒れたと感じている古株Twitterユーザーが、かつてのTwitterにあった限られた人で楽しむ古き落ち着いた交流を求めてMastodonという新天地に希望を見い出しているという背景もあるみたいです。私なんかTwitterすらろくに使えていないのに…。

このSNS新天地探し現象と同じ理屈なのかは定かではないですが、本作『ザ・ディスカバリー』の世界観設定も共通したものがあるのかもしれません。

本作は、死後の世界の存在が、ある研究者によって実証されたという架空世界のお話し。しかも、この衝撃の発表によって、なんと「オラ、こんな人生は嫌だ!あの世のほうがいい!」という人が続出。自殺者が数百万人を超えるという、とんだディストピア?な世の中になってしまったのだから、さあ大変(ちなみに現在の日本の自殺者数は毎年2万人なので、それと比較すれば凄い数だということがわかるでしょう)。まさに“この世”から“あの世”へのアカウント変更ブームです。

私なんか、死後の世界が証明されたからといって自殺者が増えるか?と考えてしまうのですが(だって、死後の世界が今より良いとは限らないし、もしあの世にレザーフェイスやプレデターがうじゃうじゃいたらどうするんだと)。でも、先に紹介したSNS新天地探し現象じゃないですけど、きっと人間は追い込まれると希望的観測に頼ってしまうのでしょうね。それもわかる気がする。

そんな異色な世界観設定である本作はこれだけでもちょっと「どんな作品だろう?」と興味をひかれるものがあります。

そして、この作品は低予算映画なんですが、意外と俳優陣が豪華なのも注目点です。博士役は“ロバート・レッドフォード”だし、ヒロインは“ルーニー・マーラ”ですよ。ちなみに主人公は最近だと『人生はローリングストーン』にも主演していた“ジェイソン・シーゲル”。こうやってみると、結構渋いキャスティングですね。あんまり若い人は出てきません。

本作の監督の“チャーリー・マクダウェル”は、あの『時計じかけのオレンジ』の“マルコム・マクダウェル”の息子ということで、だから割と俳優が豪華なのかと納得です(“ルーニー・マーラ”と交際してるし)。

ジャンルとしては派手さのないSFミステリードラマといった感じ。「死後の世界が証明された」というSF設定、有名俳優陣、監督…このどれかに興味を持った方はぜひ観賞してみてはどうでしょうか。

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『ザ・ディスカバリー』を観る前のQ&A

Q:『ザ・ディスカバリー』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2017年3月31日から配信中です。
日本語吹き替え あり
山野井仁(ウィル)/ 能登麻美子(アイラ)/ 佐々木敏(ハーバー)/ あんどうさくら(レイシー)/ 岡哲也(トビー)/ 浦山迅(クーパー)/ 新谷真弓(ジャニス) ほか
参照:本編クレジット
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ザ・ディスカバリー』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):死の常識が変わった

今話題のハーバー博士は生放送番組に出演します。

「あなたのディスカバリーの発見を公表したのは危険すぎたのではないですか?」
「私は40年間この研究をしてきました。発見を秘密にできません」
「博士の発見で死後の世界が明らかになりました」
「肉体が死亡すると魂が離れ、新たな次元へと移るのです」
「公表して6か月です。すでに自殺者が100万人を超えています」
「事態を収拾するために出演しているのです」
「自殺者に対してあなたは責任を感じていますか」

そう聞かれた博士は「いいえ」と断言。すると目の前でスタッフのアンディが感謝の言葉を示して自分の頭を撃ち、騒然とします。

死後の世界の存在が公表されてから2年後。自殺者数は400万人に達していました。あのインタビュー以降、博士は公の場に姿を現していません。

ある男性が船に乗っています。するとだらしなく椅子に寝そべる女性に話しかけられます。その女性はアイラというそうで、男はウィル・スティーブンソンだと自己紹介します。

「私は集団自殺を理解できない」とアイラはうんざりな口調で言い、ウィルは脳神経科医でディスカバリーには複雑な気持ちのようです。

港につき、ウィルは5歳の頃に事故に遭って1分間心停止した臨死体験を語り、そこは誰もいないビーチだったと説明します。そんな陰気なウィルを置いて、アイラは車をヒッチハイクして立ち去っていきました。

ウィルにも弟が迎えが来ます。屋敷に到着。そこはディスカバリーに影響を受けた人たちを収容している場所。携帯は禁止。厳重な扉の奥へ入ると、そこには巨大な機械。そして父親、ハーバー博士が横たわっていました。

「今は死んでいる」…その言葉に慌てますが、電気ショックで心肺蘇生します。わざと臨死を試験しているようです。

「これはカルトじゃないか」と不快感を露わにするウィル。目覚めた父が話しかけてきます。「おかえり、ウィル」

「なぜ戻ってきた?」と聞かれ、「止めるために」と答えるウィル。「誤りを認めて発言を撤回してくれ」と懇願しますが、父はやめる気はこれっぽっちもないようです。

困り果てていると、砂浜でアイラを見かけます。彼女はリュックに重りを入れて服を着たまま海に入っていきます。死ぬ気です。慌てて彼女のもとまで泳ぎ、助け出すウィル。

放っておけないのでウィルはアイラを施設で受け入れてくれと弟に密かに頼み込みます。ハーバー博士から質問を受けるアイラ。「魂は脳に存在していると思います」と答えつつ、それを興味深そうに聞いていく博士。「あなたは本当に自殺したい? 死後の世界があるとするなら意思決定に影響すると思う?」「ええ」

アイラは滞在可能になりました。ウィルの母はすでに亡くなっており、それを「父のせいだ」と呟くウィル。しかも、母は自殺したようで、それはディスカバリーの数年前の話だとか。なにやら複雑な事情があるようです。そこに博士がこの研究に執着する理由もあるらしく…。

先発グループの前で発表する博士。「来世を見る装置です」

世界の混乱をよそに、この禁断の研究はさらなるステップに突き進むことになり…。

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命は大事に

ハーバー博士のインタビューから始まる冒頭。インタビュアーの質問に、死ぬと意識の一部が肉体を離れ新次元へ移るのですと持論を展開する博士の目の前で、拳銃自殺を実行する男。この最初の掴みはバッチリだなと、ワクワクです。

やっぱり本作の楽しさは「死後の世界が証明された」というSF設定なので、ディティールがあればあるほどいいですね。各所にある「命は大事に」の役に立たそうな看板とかも雰囲気が出てるし(でも自殺者数をカウントしている意味あるのか?逆効果じゃないの?)。主人公のウィルが「脳腫瘍の患者が喜んでいた」みたいにこの世界観独自のブラック・トークをするのがまた良い感じ。

まあ、でも願わくばもっとトンデモ方向に陰湿さが増した社会を見せてほしかったので、やや描写は物足りなかったのですが。ふと思うのは、この世界だと殺人は増えるのだろうか、減るのだろうか…。そこはしっかり踏み込まないとなぁと思ったり。

そして、肝心のドラマ部分はかなり貧弱で強引な部分が目立っていたなというのが正直な感想。まず、キャラクターの立ち位置というか考え方が曖昧。とくに騒動の発端となった博士。これが典型的なマッド・サイエンティストだったら理解しやすいのですけど、本作の場合、中途半端な行動が多かった気がする。妻への想いが研究の動機なら、もっと感情的に動けばいいのに、ある時はしつこく装置実験を繰り返したり、ある時は無味乾燥に研究を止めてしまったり、よくわからない奴だった…。レイシーの暴走もアイラを殺すためのストーリー上の無理やりな展開に見えました。

一番あれだったのがオチです。装置実験で映し出された映像の正体を探るのが本作の後半のミステリー展開の肝ですが。「人間は死んだ後、自分の人生の別バージョンへ行く」…結局、ループもの…。いや、ループはSFの鉄板ですけど、わざわざこんな世界観を用意してやるのが、ありきたりなループなのかとちょっとがっかりでした。

劇中で「別の場所にいったって全てが変わるわけじゃない。まずここで学ばない限りね」などと現在の世界で生きる大切さを謳っていたのに、これじゃあ台無しじゃないですか。ループしてやり直しがきくなら「別の場所にいって変えられ」放題だし、何より自殺者の行動を肯定して終わっている気もする…。いいのか、これで…。

個人的には凄い死後の世界を見せてくれるのを期待したのですが、残念。

もし凄い死後の世界を見たいなら『ハッピーボイス・キラー』がオススメですね。

とにかく、皆さん、あの世にはレザーフェイスやプレデターがうじゃうじゃいると思って、安易に死を選ぶ前に、頑張って生命力も精神力もMAXに鍛え抜いてから死を迎えましょうね。今の人生はチュートリアル・ステージです。

『ザ・ディスカバリー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 45% Audience 44%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)Endgame Entertainment, Netflix

以上、『ザ・ディスカバリー』の感想でした。

The Discovery (2017) [Japanese Review] 『ザ・ディスカバリー』考察・評価レビュー