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『THE GUILTY ギルティ(2021)』感想(ネタバレ)…Netflix;アメリカのリメイク版でも耳を傾ける

THE GUILTY ギルティ

ジェイク・ギレンホール主演でハリウッド・リメイク…Netflix映画『THE GUILTY ギルティ(2021)』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Guilty
製作国:アメリカ(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にNetflixで配信
監督:アントワーン・フークア

児童虐待描写

THE GUILTY ギルティ(2021)

THE GUILTY ギルティ

『THE GUILTY ギルティ(2021)』あらすじ

オペレーターのジョー・ベイラーは今は緊急司令員として勤務する刑事であり、緊急通報を毎日処理する作業に疲弊していた。ときには緊急なのかも怪しい電話もあれば、こちらを怒鳴ってくるだけの人もいる。その仕事はストレスだった。ある朝、緊急通報番号911にかかってきた1本の電話。状況は深刻そうである。命の危険が迫る通報者を助けようとジョーは必死になり、やがて事件は思いもよらない真実にたとり着く。

『THE GUILTY ギルティ(2021)』感想(ネタバレなし)

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あの傑作がハリウッド・リメイク

ヨーロッパやアジアなど非英語圏の映画がハリウッドでリメイクされることはしばしばあります。もちろんリメイクされるくらいですから、人気か、はたまた評価が高いか、そういう映画たちです。

だったらリメイクなんてしないで元のオリジナルを観ればいいのに…と思わなくもないですが、アメリカでは字幕で非英語圏の映画を観るのに慣れていない観客も多いと聞きます。本当なのかは知らないですけど。でも最近は動画配信サービスの影響力もあって非英語圏の映画に触れるアメリカ人が増えているようですし、この字幕アレルギーもかなり薄れているのではないかとも思います。

そうなってくると非英語圏の映画がハリウッドでリメイクされるは少なくなってくるのか。いや、たぶんそうはならないでしょう。現在の映画業界は動画配信サービスの参入もあって熾烈な競争状態。ひとつでも観客の興味を惹く映画を求めているわけで、関心度の高いリメイク企画は今後も重宝されるでしょうね。

私は非英語圏の映画がハリウッドでリメイクされること自体は正直あまり好きじゃなくて、典型的なオリジナル派ではあるのですが、たまにオリジナル以上に面白いものも生まれたりするので無視はできない…。結局、映画会社の策略にハマっていますね…。

今回紹介する映画はオリジナルが絶賛の高評価だったゆえに迷いなくハリウッド・リメイク化が決定し、すぐさま製作に進んだ一作。それが『THE GUILTY ギルティ』です。

オリジナルは2018年のデンマークのスリラー映画『THE GUILTY ギルティ』(原題は「Den skyldige」)であり、これがとにかく批評家から称賛されました。映画批評サイト「Rotten Tomatoes」の批評家スコアでも「98%」を記録し、私もその年のベスト10に入れました。

この映画がスゴイのは演出で、一般的に映画というのは映像・セリフ・音楽などあらゆる要素で物語を楽しませてくれるものですが、この作品は「音」がメインなんですね。主人公は緊急通報に対応するオペレーターで終始その職場である対応室から出ません。ひたすらに通報の音声を聴くだけ。ある時、緊迫感のある通報が寄せられ、主人公はなんとかその通報者を救おうと必死に語りかけて指示を出していく…そういうストーリーです。

そんなのが面白いのか?と思うの無理ないですが、これが実にスリリングで周到に練られた脚本になっており、思わずこちらまで一心同体で全神経を張り詰めて集中していくという、凄まじいサスペンス体験ができます。耳は疲れてきますけど…。映画を観て耳だけが疲労する経験はあまりないですよ。

その『THE GUILTY ギルティ』がハリウッドでリメイクと聞いて「大丈夫?」と思ったのは確かな本音。なにせオリジナルの完成度が高すぎますからね。

でも監督が“アントワーン・フークア”で、主演が“ジェイク・ギレンホール”(ジェイク・ジレンホール)と聞いたら興味が湧いてしまう。ああ、映画ファンの悲しいチョロさ…。

気になるのはオリジナルとどこか変わっているのかという点だと思います。ただそれを鑑賞前の段階で言ってしまうのはネタバレになると思うので…。もしかしたらオリジナルも観たことがない人もいるでしょうし。この作品、とてもネタバレ厳禁な映画ですし、体験としてもそこは大事なところ。ぜひ前情報無しで衝撃を味わってほしいですね。

リメイク版の『THE GUILTY ギルティ』(邦題が同じなのでややこしい…)はNetflixで配信中です(先行で劇場公開もされました)。ながら見みたいなテキトーな鑑賞だと物語の緊迫感に全く入り込めないので、ちゃんと家でじっくり腰を据えて鑑賞できる環境を確保することを強く推奨します。

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『THE GUILTY ギルティ(2021)』を観る前のQ&A

Q:『THE GUILTY ギルティ』はいつどこで配信されていますか?
A:Netflixでオリジナル映画として2021年10月1日から配信中です。
Q:オリジナルの映画とハリウッド・リメイク版、最初に観るならどちらがいいですか?
A:北欧映画の雰囲気が好きならオリジナル版を、監督や俳優が気になるならハリウッド・リメイク版をオススメです。基本はどちらでもいいので、視聴しやすい作品からどうぞ。
鑑賞前の おすすめ PiCKUP!
『THE GUILTY ギルティ』
オリジナルのデンマーク映画。
Amazonで視聴
※上のボタンをタップするとAmazonの『THE GUILTY ギルティ(2018)』商品ページへ移動します。

オススメ度のチェック

ひとり4.0:初見の人にこそ
友人3.5:オススメしたくなる
恋人3.5:ネタばらしをしないで
キッズ3.0:セリフばかりの映画です
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『THE GUILTY ギルティ(2021)』予告動画

ジェイク・ギレンホール主演『THE GUILTY/ギルティ』予告編 – Netflix
↓ここからネタバレが含まれます↓

『THE GUILTY ギルティ(2021)』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):911緊急指令員625です

アメリカのロサンゼルス。911コールセンターは今夜はとくに慌ただしい状況でした。大規模な山火事が発生しており、ハリウッドヒルズはパニック状態になっていたのです。当然ながら緊急通報がひっきりなしに鳴りやまず、夜勤しているオペレーターの仕事による負荷はいつも以上。全員がピリピリしていました。

そんな中、そのコールセンターで働くジョー・ベイラーはトイレで咳き込みながら吸入器を使って落ち着こうとしていました。

デスクに向かいます。通報です。「助けて」「911緊急指令員625です。住所は?」…ジョーのモニターには「ドルー・ナッシュ」という名前と相手の住所が表示されています。「ブライアウッド1304番地?」「違う」「住所は?」「息ができない」「位置情報ではパコイマです」…ジョーはすぐに察しました。「ドラッグを? 種類は?」「スピード」「注射?吸引?」「息ができないんだ」…ジョーは「わかりますが、自分の責任では?」とぶっきらぼうに対応し、「場所は?救急と警察を送ります」と言いますが、相手は「警察はダメだ」と激しく拒絶し、切れてしまいました。

今度はジョーのスマホに電話。キャサリン・ハーバーという人で、ロサンゼルス・タイムスの記者らしく、話を聞かせてほしいとのことでジョーは苛立ちながら無視。

後ろからは上司に「ベイラー」と声を掛けられ、「通話禁止だ」と怒られます。

また通報。「そこまで炎が…」…これには事務的に対応。

また通報。「知事の友人のマシューだ、強盗に遭った」…これはどうやら売春婦にパソコンを奪われたバカな男らしいと判断し、やれやれと呆れつつも盗んだ女の特徴を聞きます。

警察に連絡すると、ロサンゼルス市警通信課のミラーが応対しました。知り合いだったので話が弾みます。ミラーは「明日で解放されるぞ」と励ましてくれ、ジョーは「リックは問題ないか?」と心配そうに訊ねます。

休憩をとるジョー。ジェスに電話します。留守電です。「ペイジが起きてたら話せるか」と音声を残します。

意識がぼーっとしながらデスクに。また通報。

相手は答えません。「エミリー」と表示されています。「お困りですか?」と聞くと「YES」と今にも泣きそうな声で弱々しく返事が。電話先では何かに話しかけている雰囲気です。「話がしたいの」…こっそり通報しているのかと直感でわかったジョーは「武器を?」と聞き、「拉致された?」と質問。答えは「YES」

どうやらそのエミリーという女性は子どもに電話するふりで緊急通報したようです。位置をなんとか聞き出して、警察に接続。「10号線を東に走行中、ダウンタウンの東だ」と指示を出します。

その一方でジェスから電話が来てしまい、気になりつつ、今は仕事に集中。でも切れてしまいました。

航空支援は山火事で無理だそうで、交通警察のロドリゲスに白いバンだと特徴を伝えます。しかし該当する車を発見できません。高速を封鎖できないと言われ、苛立つジョーは大声で怒鳴りちらします。

ふとジョーは思いつきます。あのエミリーの情報の中に緊急連絡先がある…。さっそくそこに電話すると、アビーという6歳の子がでます。オリバーという弟もいるらしく、赤ちゃんだとか。ジョーは優しくなだめます。

真実を知らないままに…。

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あらためて体感する脚本の秀逸さ

リメイク版『THE GUILTY ギルティ』ですが、実のところオリジナル版とほとんど変わっていません。アメリカが舞台になったこと以外の話のプロット、オチも含めて基本は一緒です。

これは当然、オリジナルの脚本が秀逸であり、必要最小限で構成されているのでこれ以上のアレンジのしようがないからだとは思います。あらためて本作のプロットの精密さに感心してしまいますね。

オリジナル版の感想記事でも書いたのですが、本作は一種のSNS時代の風刺にもなっていると思います(そう言えば最近は「Clubhouse」のような音声SNSも話題になりましたね)。情報の洪水の中に身を投げ出して生きる私たちはまさに緊急通報コールセンターで働いているオペレーターと同じ。どうでもいい情報もあれば、深刻な情報もある。でもだんだんとその境もわからなくなり、ただ機械的に情報に接するしかできずに感覚が麻痺していく。序盤のジョーなんてまさにそんな感じで粗雑な態度で仕事していました。

しかし、そんな中でジョーは相手の声を真剣に聞いて寄り添うことの大切さに気付いていく。当初はエミリーが誘拐されていると考え、それを救おうと必死になるのは、ジョーの中にある罪悪感を払拭するためだったのでしょう。ジョーは仲間の同僚と19歳の未成年を警察職務中に撃ち殺してしまっていました。裁判では無罪を訴える気だったようです。エミリーを助けられれば自分の品行方正をアピールするチャンスにもなりますしね。

でもしだいにその自分本位な動機は消えます。エミリーが赤ん坊のオリバーを傷つけたことを知ったジョーは、同じ罪を抱える者同士、互いに寄り添うということに徹します。自分の罪を吐露して“弱さ”を共有しながら…。

相手の顔が見えない音声だけでのコミュニケーションはどうしても自分を強く見せて相手を圧しようとしがちです。けれどもだからこそ相手を思いやる心は欠かせない。

ジョーはエミリーに対するカウンセリングをしていると同時に、自分自身の罪と向き合うことも並行することになり、最後は己の罪を認めて自らで外に語りだす。

良い脚本。やっぱり映画には脚本は大事ですね。

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最大の変更点は…

ではリメイク版『THE GUILTY ギルティ』の最大の変更点は何かと言うと、それはもちろん主演が“ジェイク・ギレンホール”だということ。この部分は大きいです。実際、すごく良い演技をしてますからね、“ジェイク・ギレンホール”。こういう内省的な罪悪感や劣等感を抱えた役をやらせたらピカイチだな…。

他の声だけで出演する俳優には気づいたでしょうか。エミリーを演じるのは『アンダー・ザ・シルバーレイク』の“ライリー・キーオ”。同僚のビル・ミラーを演じるのは“イーサン・ホーク”ですよ。ちなみにナイフを持った女にパソコンを奪われたと愚痴る通報者を演じるのは“ポール・ダノ”で、なんか想像すると笑ってしまう…。

この声だけの俳優は本当にスタジオで声録音だけだったのかな。そう考えると素晴らしい演技力でやっぱりプロってスゴイなと思ってしまいますね。

とくに“ライリー・キーオ”の演技力は超重要ですよね。彼女の演技が万が一リアリティも何もなければこの作品は一気に感情移入も何もできない陳腐なものになってしまうし…。声だけですが主演女優としての堂々たる名演でした。

リメイク版では“アントワーン・フークア”が監督をしたわけですが、この人と言えば、『ザ・シューター 極大射程』『エンド・オブ・ホワイトハウス』『マグニフィセント・セブン』とド派手な映画も撮ります。でも抑制的な演出も上手く、『トレーニング デイ』『イコライザー』『サウスポー』など腹にイチモツを抱えた男が感情を爆発させながら自信と向き合う物語も多いです。なのでこの『THE GUILTY ギルティ』だったと思います。

ちなみに撮影は11日間だったそうですが、“アントワーン・フークア”監督はコロナの濃厚接触者になってしまったらしく、車の中から遠隔で指示を出して撮影に臨んだそうです。そこもちょっと『THE GUILTY ギルティ』っぽいシチュエーションになってる…。

リメイク版では確かにオリジナル版ほどのインパクトは薄れますし、あくまで模倣になってしまうので評価はしづらいです。ちょっと起きる事件もマイルドになっています。あそこは残酷すぎると判断したのかな。それでも元のプロットの素晴らしさと俳優の素晴らしさの掛け算で、リメイクとしてはかなり退屈しない他県を提供してくれました。

『THE GUILTY ギルティ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 71% Audience 55%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0

作品ポスター・画像 (C)Netflix

以上、『THE GUILTY ギルティ(2021)』の感想でした。

The Guilty (2021) [Japanese Review]