クリスマスに独りは何度目ですか…映画『ホーム・スイート・ホーム・アローン』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にDisney+で配信
監督:ダン・メイザー
ホーム・スイート・ホーム・アローン
ほーむすいーとほーむあろーん
『ホーム・スイート・ホーム・アローン』あらすじ
休日に一人で家に残されたマックス・マーサーは普段は大勢でごった返している家を自由に満喫していた。しかし、そこに思わぬ侵入者が現れる。それは非常に高額な市場価値のある人形を取り返すという目的で入り込んできたとある夫婦だった。マックスはその侵入者が危険な極悪人だと勘違いし、自分なりの知恵と策略によって罠を仕掛けることで対抗しようとする。そうとは知らずに連中はまんまと敷地に足を踏み入れるが…。
『ホーム・スイート・ホーム・アローン』感想(ネタバレなし)
2021年も「ホーム・アローン」
「お気に入りのクリスマス映画ランキング」を映画ファンの回答で作成すれば、たいていは上位に食い込むであろう定番の映画、それが『ホーム・アローン』です。
『ホーム・アローン』は1990年に公開されたアメリカのコメディ映画で、クリスマス休暇の時期が舞台になっています(アメリカでの劇場公開は11月でしたけど、日本は6月でした)。子だくさんの大家族に生まれたひとりの少年がクリスマス休暇の旅行に家族総出で出発した中、うっかり自分だけ家に取り残されてしまう…そしてあろうことかその家に泥棒まで侵入してきて、少年ひとりで撃退することになる…という物語。でも怖い話ではなくて、その泥棒を少年が悪知恵全開の創意工夫で懲らしめる、痛快なギャグ満載のスラップスティック・コメディです。これが大ウケし、世界中で大ヒットとなりました。
この『ホーム・アローン』の面白さはやはり前述したように、ただのひとりの少年が泥棒をギタンギタンに罠にかけて弄んでいくという展開。それもやりすぎなくらいのオーバーなトラップで、火で焼いたり、電流で痺れさせたり、高いところから落としたり、殺意すら感じる…。というかもう殺し屋になれる…。そんな映画らしい仕掛けの数々が愉快です。
またその一方で、本来はクリスマスは家族みんなで楽しむものというお約束がある中で、あえて独りのクリスマスを思う存分に満喫してやろうという脱規範的な気持ちよさもあって、そこも本作の味だったりします。まあ、最終的には家族の尊さや温かさを実感して終わるのですが…。
そんな『ホーム・アローン』は1作で終わらず、人気ゆえにシリーズ化もされました。
2作目の『ホーム・アローン2』は1992年に公開され、1作目で大ブレイクした主人公を演じる“マコーレー・カルキン”が続投し、今度はニューヨークを舞台に相変わらずのハチャメチャをします。“ドナルド・トランプ”のゲスト出演もありましたね(本人が強引に要望したらしい)。
3作目の『ホーム・アローン3』は1997年に公開され、主人公は1作目と2作目から変更。国際的な機密情報をめぐる話になっていますが、やっていることは同じです。ちなみにこの3作目では主人公の姉役で子役時代の“スカーレット・ヨハンソン”が出演しており、貴重な初々しい姿が見られます。
2002年には4作目の『ホーム・アローン4』も作られましたが、ここにくると「え?そうだったの?」という人も多いはず。なにせこの4作目、テレビ映画です。でも1作目と2作目と話は繋がっており、主人公も同じ(でも俳優は違う)。両親が離婚していたり、ずいぶん家族模様も変わってます。
これでシリーズは落ち着く…ことはなかった。2012年には5作目の『ホーム・アローン5』が登場。こちらもテレビ映画で影は薄いです。しかも、主人公も全然違うので、なんかよく似たパクリに見えなくもないけど、一応はシリーズ正規の一作。
よし、これで今度こそ終わりだな…と思ったら、2021年、『ホーム・アローン』シリーズが帰ってきてしまいました。
でも6作目だけど『ホーム・アローン6』ではありません。タイトルは『ホーム・スイート・ホーム・アローン』です。
気になる主人公ですが、今作はこの子。あの奇想天外なナチス風刺映画『ジョジョ・ラビット』で主人公の愛嬌ある友人の子を演じた”アーチー・イェーツ”です。
『ジョジョ・ラビット』では”アーチー・イェーツ”にメロメロになった人が私も含めて続出だったと思いますが、まさか「ホーム・アローン」に抜擢されるとは…。2009年生まれのイギリス出身なのですけど、もはや国とか関係なしにどこでも通用する天性のキュートさを持ってますね。
共演は『アンブレイカブル・キミー・シュミット』の“エリー・ケンパー”、『トムとジェリー』の“ロブ・ディレイニー”、『This Way Up』の“アシュリング・ビー”、『サタデー・ナイト・ライブ』でおなじみの“キーナン・トンプソン”、『トイ・ストーリー4』の“アリー・マキ”など。
なお、この『ホーム・スイート・ホーム・アローン』はリブートみたいに見えますが、1作目と2作目と同じ世界線になっており、あの過去作に登場したあのキャラクターが大人になった姿で登場します。お楽しみに。
監督は、『ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習』の脚本を手がけていた“ダン・メイザー”です。
『ホーム・スイート・ホーム・アローン』は劇場公開されておらず、「Disney+(ディズニープラス)」のオリジナル映画として独占配信中。
クリスマスは家族と過ごす人も独りの人も動画配信サービスは心強い味方です(泥棒を撃退する機能はないけど)。
『ホーム・スイート・ホーム・アローン』を観る前のQ&A
A:Disney+でオリジナル映画として2021年11月12日から配信中です。
オススメ度のチェック
ひとり | :俳優ファンなら |
友人 | :お気楽に |
恋人 | :暇つぶしに |
キッズ | :子ども向けの笑い |
『ホーム・スイート・ホーム・アローン』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):家が消える、家族が消える
クリスマスも近づくある冬。とある売り家を見て回る人たち。オーナーのパムとジェフは我が家を売りに出すつもりでした。ジェフが失業してしまい、パムの稼ぎではこの家を持ち続けるのは不可能になったためです。不動産屋のギャビン・ワシントンが必死に買い手に気に入られようとしています。
その頃、車で母のキャロルと移動していた少年のマックス・マーサーは、トイレに行きたくなったと駄々をこね、母の苦肉の策でオープンハウスの見物客のふりをして用を足すことにします。
ちょうどトイレから出てきたマックスは、家のクローゼットを片付けていたジェフと遭遇。そこにあったのはソーダと変な人形がいっぱいの箱。マックスは気持ち悪がります。そこに母のキャロルも駆け付け、人形がシュナイダーキンダーだと気づきます。なんでもお宝鑑定番組によれば5000ドルと値がついたものがあるとか。
実はパムとジェフは子どものアビーとクリスには家を売るとは言っていませんでした。それでも親の異変に子どもたちは勘づきます。
一方、マックスの家は賑やか。子どもでひしめきあっており、明日の休暇の日本旅行の準備で大人は大忙しです。家がうんざりのマックスは「自分ひとりだけの家だったらいいのに」と不満たらたらで、車の中でひとりの時間を味わい、眠りに…。
ちょうどパムとジェフの家にジェフの弟ハンターが夜中にもかかわらず訪問。妻のメイと子のオリーも一緒。ジェフは何気なくebayを調べるとあの「逆さま少年」人形が20万ドルの値がついていることに驚きます。すぐに箱を探すのですが、逆さま少年だけが見つかりません。まさかあの少年が盗ったのか…。
翌朝、ジェフはマーサー家に寄ります。キャロルは先にもう飛行機で経ったらしく、全員を車に乗せているタイミングでした。慌ただしさでジェフに気づきもせず、家の暗証番号は「1112」で、鍵は玄関のすぐ近くの下に置いていることもバレバレ。全員で出ていってしまいました。
ジェフが窓を覗くと上着の中に人形らしきものがあるのを見つけ、家に入ろうとするも良心の呵責があるので止めます。
しかし、その家には住人がゼロになったわけではありませんでした。マックスはまだ車でぐっすりだったのです。起きて、普段は喧騒で酷い家には誰もいないことに気づき、好き放題に大満喫するマックス。
そして、パムとジェフの方は、大切な思い出のある家を失いたくないと決心し、あの人形を取り返すべく行動を開始しますが…。
相変わらずの殺意しか感じないトラップ
このシリーズの面白さは、ただのひとりの子どもが泥棒をギタンギタンに罠にかけて弄んでいくという展開です。むしろそこが最大にして唯一の見せ場みたいなものです。『ホーム・スイート・ホーム・アローン』でもしっかり用意されており、現代だからちょっとバイオレンスではなくなったとかそういうことも一切なく、相変わらずの殺意しか感じないトラップのオンパレードでした。
ただ、あれですね。私が雪国出身なので、冬場を利用したトラップはフィクション気分で笑えないというか、リアルな怖さを知っているので、ちょっと引きつりますね。例えば、作中でマックスが家に侵入しようと車でやってきたパムとジェフを初手から凍結路面で事故らせるのですが、いやあ、凍結道路の事故は本当に怖いからなぁ…。私もハンドルをとられてヒヤっとしたことは何度も…。ツララ落としとかもしてましたけど、雪の多い地域では屋根からの積雪の落下で毎年人が死んでいるのでね…。みんな、ツララにつられて近づいたらダメだよ…。
まあ、それはさておき、多くのトラップは過去作譲りの破壊力です。炎上させたり、水噴射をしたりと、しっかり冬場を活かした属性攻撃をお見舞い。ビリヤードボールアタック、レゴまきびし、バター階段、顔面針刺し、ダンベルのルームランナーシュートなど、このあたりになってくると重度の障害もしくは負傷、最悪の場合は死亡させる危険がありすぎるのですが、遠慮なし。
激辛スイーツ、メントスコーラみたいな動画配信世代のウケを感じさせる手法もあるかと思えば、あげくにはVRゴーグルですよ。あそこはちょっと無理があるけど…。
警察が信用できない
『ホーム・スイート・ホーム・アローン』は過去作と違って、悪役的なポジションが厳密には存在しません。泥棒に入るあの夫婦もそこまでの悪意がある人間ではなく(バカだけど)、実質、2つの家族のクリスマス・ストーリーになっています。
このあたりはシリーズの面白さを低減させてしまっている感じも否めません。やっぱり悪い奴らをギャフンと言わせてこその爽快感だったりしますからね。『ホーム・スイート・ホーム・アローン』は見ているとちょっと可哀想になってくる…。エンターテインメントらしい勢いの良さもやや弱いし…。
ただ、主人公を演じた”アーチー・イェーツ”は、“マコーレー・カルキン”とはまた異なるクソガキっぽさがでており、そこは良かったかな。優しすぎる人柄ではあるので鬼畜度は少なめに思えるのですけど、当初はそう思っていたら、いざトラップのお見舞いのターンになると、まあそれは容赦なしの残虐さで…。作中で「憎たらしいハリーポッター」と呼ばれていたけど、あれはもう「ヴォルデモート」ですよ。悪の魔法使いか、性悪な妖精か何かだよ。大丈夫かな、あの子…大人になったら『ソウ』シリーズのアイツとかにならないかな…。
そして、忘れてはいけない、あの過去作のあのキャラ。1作目と2作目で主人公のケビンを虐める兄のバズ・マカリスターが警官になった登場。どうやって警官になれたんだ…。作中ではあの一件以来、ケビンに毎年のこの時期に「家に取り残された子どもがいる」というイタズラ通報されているらしいことが判明しますが、案の定まだケビンはクソガキのまま大人になったようです。それにしてもバズを演じる“デヴィン・ラトレイ”、大人になっても存在感がある…。
ちなみに“マコーレー・カルキン”は結局はゲスト主演しなかったのですが、2018年のGoogleの音声アシスタント「Googleアシスタント」のCMで『ホーム・アローン』パロディを披露しているので、それでじゅうぶんかな。
正直、まだやるの?って感じでしたけど、もうこうなったら3年に1回くらいの頻度で制作すればいいんじゃないかな。その際は、せっかくのディズニーなんだし、もっと既存のキャラクターやコンテンツをフル活用して、お祭り映画的な『ホーム・アローン』公式パロディをガンガン投入すればいいと思います。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 18% Audience 17%
IMDb
3.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)Disney ホームスイートホームアローン
以上、『ホーム・スイート・ホーム・アローン』の感想でした。
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