3回はその名を呼ばないで…映画『ビートルジュース ビートルジュース』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2024年)
日本公開日:2024年9月27日
監督:ティム・バートン
恋愛描写
びーとるじゅーす びーとるじゅーす
『ビートルジュース ビートルジュース』物語 簡単紹介
『ビートルジュース ビートルジュース』感想(ネタバレなし)
墓から蘇ったティム・バートン
映画で続編が作られることはしょっちゅうですが、やはり続編を作るベストなタイミングというのがあるのかもしれません。
そんなことを思ったのが今回紹介する映画、『ビートルジュース ビートルジュース』です。
1988年に“ティム・バートン”監督が『ビートルジュース』という映画を公開しました。当時、“ティム・バートン”監督はキャリアも初期で、まだディズニーのアニメーターだった時代の1984年に短編作『フランケンウィニー』で業界の注目を集め、1985年の『ピーウィーの大冒険』で長編監督デビュー。そこで満を持して続々と俳優を起用した本格的商業映画へと足を踏み出したのがこの『ビートルジュース』でした。
結果、『ビートルジュース』は特大ヒット。“ティム・バートン”の名を轟かせ、ずば抜けた作家性を持った異色監督としての地位を揺るぎないものにしました。
これだけヒットすれば当然のように続編が検討されるもので、『ビートルジュース』も劇場公開で大好評となってすぐに続編が企画されました。しかし、全然進みませんでした。いろんな人が脚本を書いて、中には「ハワイ」を舞台にしたものだったり、随分とユニークな案も考えられたそうですけど、どれも着手できず…。
有名になった“ティム・バートン”も『ビートルジュース』で主演だった“マイケル・キートン”と一緒に『バットマン』(1989年)&『バットマン・リターンズ』(1992年)のほうに行ってしまい、創造主の不在も影響しました。
また、“ティム・バートン”監督自身はこの長年の間にいろんな大作に起用されるもときに自分のやりたいようにできずに意気消沈することがたびたびあり、おそらく“ティム・バートン”監督の中でも「本当に『ビートルジュース』の続編を作って大丈夫か?」というモチベーションの乱高下があったのだと思います。とくに直近では2019年の実写版『ダンボ』でだいぶ打ちのめされたようで、「もう映画監督、引退したい…」っていうくらいには凹んでいました。
『ビートルジュース』続編企画もその最中も検討中でしたが、“ティム・バートン”監督は地上界から遠ざかり…。
しかし、墓から掘り起こしてくれる存在が現れました。2022年に始まったドラマ『ウェンズデー』です。製作総指揮&エピソード監督を務めたこのドラマシリーズが大成功をおさめ、“ティム・バートン”は復活しました。
こうして蘇生した“ティム・バートン”が満を持して『ビートルジュース』の続編に着手。『ビートルジュース ビートルジュース』の誕生です。36年ぶりの2作目ですね。
物語は前作から続きます。今作でも“マイケル・キートン”演じる奇抜な怖がらせ屋のビートルジュースが大暴れ。それにしても“マイケル・キートン”は『ザ・フラッシュ』でもバットマンを再演したし、時代が巻き戻ってるぞ…。
カムバックするのは“マイケル・キートン”だけでなく、“ウィノナ・ライダー”、“キャサリン・オハラ”も揃っています。
さらに今作で新キャラクターとして若者代表となるのが、『ウェンズデー』の成功の女神となった“ジェナ・オルテガ”。“ティム・バートン”作品には欠かせない俳優になったかな。
他にも、『MEMORY メモリー』の“モニカ・ベルッチ”、『哀れなるものたち』の“ウィレム・デフォー”、『フォルス・ポジティブ』の“ジャスティン・セロー”、大きな役を初めて獲得した新人の”アーサー・コンティ”など。
“ティム・バートン”の世界にどっぷり浸かれる『ビートルジュース ビートルジュース』を観て、“ティム・バートン”と共に生気を吹き込みましょう。
『ビートルジュース ビートルジュース』を観る前のQ&A
A:前作を観ていなくても大きな問題はありません。キャラクターの過去を知りたければ、1作目の『ビートルジュース』を鑑賞すると良いです。
オススメ度のチェック
ひとり | :ホラー苦手でも大丈夫 |
友人 | :気楽なエンタメ |
恋人 | :デートムービーに |
キッズ | :子どもでも楽しい |
『ビートルジュース ビートルジュース』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(前半)
リディア・ディーツは「ゴーストハウス」と呼ばれる超常現象トーク番組の司会者として有名でした。スタジオの室内セットで、心霊現象に悩む相談者に落ち着いて向き合います。
しかし、観客席に佇む異様な存在を目にしたようが気がして取り乱し、収録を中断します。それはビートルジュースという人物。死後の世界で「人間怖がらせ屋(バイオ・エクソシスト)」を営み、かつて結婚を迫られた恐ろしい奴です。若い頃にリディアは死者を見ることができるゆえに、このビートルジュースの騒動に巻き込まれたのですが、年月が経過してもそのトラウマを抜け出すことはできていません。
今のリディアはプロデューサーのローリーと恋愛関係にあります。控室でローリーは不安をなだめる薬を見つけ、心配してきます。
そんなとき、リディアはアートギャラリーをやっている継母のデリアから連絡を受け、疎遠だった父チャールズが亡くなったことを知ります。飛行機事故の後にサメに食べられたそうです。
そのリディアのひとり娘であるアストリッドは、有名な母のせいで学校の寮では毎日揶揄われる人生でした。アストリッドはそんな母の霊感を信じておらず、幽霊もオカルトで非科学的だと相手にしていません。フリーク扱いの原因となった母を嫌っていました。
その母がデリアとローリーと共に迎えに来ます。チャールズの葬儀のために地元に帰るのです。
家族はコネチカット州ウィンターリバーに集まり、埋葬は終わります。リディアはアストリッドと距離を詰めようとしますが、溝は埋まりません。
通夜で大勢の前でローリーはリディアにプロポーズし、結婚のプレッシャーに押されてしまい、流されるままに婚姻を検討してしまいます。そんな男に振り回されるだけの母にも嫌気がさしたアストリッドは町を自転車で走り、ハロウィンの準備を楽しむ町を眺めます。
その際、よそ見で自転車が暴走し、ツリーハウスにいたジェレミーという少年と親しくなります。
一方、ビートルジュースはまだ健在で、相変わらず死の世界で営業していました。
ところが、幽霊探偵のウルフ・ジャクソンからビートルジュースの元妻であるドロレスが復活したと知らされます。2人は黒死病の時代に運命的な出会いを果たし、ドロレスの不死への願望のせいで毒殺されそうになり、ビートルジュースはドロレスを封じました。
今や舞い戻ったドロレスは死者の世界で殺人を繰り返すようになり、死者の魂を吸い取って活力を取り戻しつつあります。このままではその影響は生者の世界にも及びます。
そんなことを知らないリディアは、この懐かしの地でビートルジュースの忌まわしい記憶を思い出しつつ、誰にも理解されずに孤立していましたが…。
あなたの好きなティム・バートンの演出は?
ここから『ビートルジュース ビートルジュース』のネタバレありの感想本文です。
『ビートルジュース ビートルジュース』は“ティム・バートン”成分120%で、あの1作目の世界観と完全に切れ目のない空間を思う存分に満喫できました。この2024年にそんなことが起きるなんて想像できませんよ…。
やけにクラシックな映像センスの導入で始まるなと思ったらオカルト番組というオチ。ちゃんと収録風景を余すところなく撮っており、すでにこの時点で「これは作られたエンターテインメントです!だから楽しいんです!」という本作のクリエイティブの核心の所信表明みたいになっています。
このオカルト番組をずっと観ていたいくらいですが、フィクション番組よりもはるかに摩訶不思議な物語が開幕します。
演出としては、父のチャールズが亡くなった経緯を説明するくだりのアニメーションも実に“ティム・バートン”節全開。サメに食われたという理由もしょうもないですし、最後に死者の世界で上半身を盛大に失った状態でテクテク歩いていてデリアと再会するというくだりもダメ押し的に面白いです。
ちなみに、1作目でチャールズを演じた“ジェフリー・ジョーンズ”は2000年に14歳の少年に対する性犯罪で逮捕され、有罪になって全国性犯罪者データベースに登録されている状態とのこと。なので大作に起用するのは厳しいというワケなのですけども、こんなアクロバティックな回避手段を駆使するとは…。まあ、これから他の映画でもそういう背景のある俳優はサメに食い殺されたことにしておけばいいか…。
話を戻して映画本編の“ティム・バートン”成分。トリックスターのビートルジュース登場シーンが全部愉快なのは言うまでもありません。教会の結婚式のシーンでフィナーレかと思ったら、リディアの悪夢でおかわりパートまであるし。贅沢な盛り付けでした。
個人的に好きなポイントは、まず「サンドワーム」。私がこのシリーズで一番好きなキャラクターです。今作でも登場してくれましたが、『DUNE デューン 砂の惑星 PART2』と同じ年に揃い踏みとなりましたね。共演したら相性いいと思う…。
お次のお気に入りは、ボブなどの愛称で各自呼ばれている「シュリンカー」。今作でもユーモラスにゾロゾロと歩き回って、目を楽しませてくれます。何でも今回のシュリンカーはフルCGではなく、ちゃんと作り物として実在しており、頭部はアニマトロニクスで遠隔操作できるそうです。私の家にも一体欲しい…。玄関前に立たせて見張りとかさせておくから…。
あと、ビートルジュースの元妻にして今作のヴィランとなるドロレス。初登場時の身体のパーツをひとつひとつカチカチとくっつけて全身を再生させるシーンはゾクゾクワクワクさせてくれますが、あれはもう『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』のサリーを実写にした感じそのまんまですね。
ドロレスのビジュアルで最もおぞましく楽しませてくれる展開がさらにあればよかったのですけども、少し終盤は他のキャラクターにインパクトを奪われてしまいましたね。
逆にインパクトをマイペースで叩き出していたのが、“ウィレム・デフォー”演じるアクションスター引きずるウルフ・ジャクソン。コイツはこのキャラ主役のスピンオフでも余裕でいけそうです。
無理やり交際を迫らないでください
『ビートルジュース ビートルジュース』のメインストーリーについては、正直、前作以上の斬新さはないです。
ビートルジュース自身が成長のない自由奔放な奴なので、おのずとそれ以外のキャラクターにドラマを持たせるしかありません。
そういう縛りがある中、何よりも一番手でストーリーを引っ張るのが”ウィノナ・ライダー”演じるリディア。リディアの物語は早い話が「正当な合意と認められない強引なアプローチはダメですよ」という至極まともな交際の初歩を教示するものです。ふざけまくっている映画ですが、この部分は真っ当です。
冷静に考えると不憫で可哀想なのですけども(エンディングでもしっかりトラウマは残存してるし…)、リディアが安らかに休める日は来るのでしょうか…。
そのリディアの娘であるアストリッドは今作の若者代表。若い視点で本作を映し出し、母譲りの霊感能力も持ち合わせているので、主人公の継承者としても王道ですね。
アストリッドの物語は実は幽霊、しかもサイコパスな殺人鬼であるジェレミーに利用されるという、こちらも母とはまた違ったヤバイ交際相手に遭遇してしまうパターン。親子で似た者同士の人生を辿るのか…。
それにしても“ジェナ・オルテガ”のこのアストリッドの役柄、学校での境遇といい、『ウェンズデー』とほぼほぼ同一だった…。少し人間側に真面目に寄っている感じか…。私としては『ウェンズデー』のほうが“ジェナ・オルテガ”の魅力を引き出しているとは思いましたけども…。
“ジェナ・オルテガ”も出産シーンを経験して、最近は『エイリアン ロムルス』に続いて若手俳優の恐怖の出産が連発している気がします。
『ビートルジュース ビートルジュース』もめでたくこの時期の公開作の中ではヒットし、スタジオはさらなる続編を望んできそうですけど、“ティム・バートン”は自分でわかってます。急かされて焦っても意味ないと。また36年後でもいいですからね(みんな高齢者になってるけど、全員お年寄りになった次作も見てみたい…)。
さて、この感想記事では「ビートルジュース」って何回言ったかな…?
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
作品ポスター・画像 (C)2024 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved ビートルジュース2
以上、『ビートルジュース ビートルジュース』の感想でした。
Beetlejuice Beetlejuice (2024) [Japanese Review] 『ビートルジュース ビートルジュース』考察・評価レビュー
#ティムバートン #マイケルキートン #ジェナオルテガ #死後