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ドラマ『神話クエスト』感想(ネタバレ)…ゲーム作りは良き人間関係作りでもある

神話クエスト

良いゲームを作るなら、良い人間関係を作ろう…「Apple TV+」ドラマシリーズ『神話クエスト』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Mythic Quest
製作国:アメリカ(2020年~)
シーズン1:2020年にApple TV+で配信
シーズン2:2021年にApple TV+で配信
シーズン3:2022年にApple TV+で配信
原案:チャーリー・デイ、ロブ・マクエルヘンニー ほか
恋愛描写

神話クエスト

しんわくえすと
神話クエスト

『神話クエスト』あらすじ

世界的に大人気のマルチプレイオンラインゲーム「神話クエスト」。その開発者のトップに立つクリエイターであるイアンは今日もスタジオを我儘に仕切っている。一方でリード・エンジニアのポピーはそのイアンのビジョンを実現するために必死にプログラム・コードをまとめていた。この他にも「神話クエスト」は大勢のスタッフによって支えられている。その毎日はいつ何が起きるかもわからない波乱万丈だった。

『神話クエスト』感想(ネタバレなし)

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ゲーム業界は絶好調だけど大変だ!

「ファミ通ゲーム白書2022」によれば、2021年の世界のゲーム市場は前年比6.1%増の21.9兆円だったそうで、コロナ禍による巣ごもり需要の影響などから31.6%増と大きく伸びて20兆円の大台に乗った2020年からさらに成長を見せました。スマホのアプリゲームのユーザーばかりが増えているのかと思いきや、PCゲームのユーザーも増加傾向にあるそうで、まだまだゲーム市場は衰える気配がありません。

コロナ禍で大ダメージを受けた映画業界と比べると、ゲームというエンターテインメントの強さが浮き彫りになったのがここ最近なのではないでしょうか。

時代はゲームだ!ということで、ドラマシリーズもゲーム業界を題材にして、ユニークな作品を送り込んできました。

それが本作『神話クエスト』です。

本作は「神話クエスト」という架空のMMORPG(非常に大規模なスケールで、多人数のプレイヤーが同時にプレイ可能なオンラインRPGのこと)を開発している、とあるゲーム・スタジオが舞台になっています。そこでの人間模様がコミカルに描かれていくのが大部分の魅力です。

ドラマ『WeCrashed スタートアップ狂騒曲』やドラマ『ドロップアウト シリコンバレーを騙した女』のように、昨今は実在のIT企業の内幕を描くのが流行りな感じですが、この『神話クエスト』は実在のゲーム会社というわけではないので、そういう覗き見てしまったような欲求は満たしてくれません。

ただ、本作『神話クエスト』はリアリティがないわけではなく、制作に大手ゲーム・スタジオの「Ubisoft」が関与しており、かなり随所に「ゲーム制作あるあるネタ」が満載になっています。

さらにテーマも包括的で、ゲーム業界のホモ・ソーシャルな男社会体質構造を風刺して、男性のクリエイターにありがちな有害なマスキュリニティに踏み込んだかと思えば、そんな業界で圧倒的にマイノリティな女性クリエイターの奮闘を醜態含めて生々しく描いたり、ジェンダー視点も豊富。加えて人種LGBTQも交えながら、ビジネスの世界でのありがちな話題を面白おかしく笑いに変えています。

シリアスな題材もあるのですが、しっかりユーモアに変換してくれるので、なんだかんだで観れてしまう気楽さです。

ゲームに全然詳しくない、ゲームを全くプレイしないという人でも、言ってしまえば「良いコミュニティをどう作るべきか」「どうキャリアを重ねていくか」という、わりと誰でも降りかかるようなテーマを主題にしているので、イージーモードな難易度で触れられるのではないでしょうか。

ゲーム業界を安易に賛美せず(ダメなところは本当に痛烈に突きつける)、でもゲーム業界への希望もさりげなく提示する…とてもバランス感覚のいい作品だと思います。

このドラマ『神話クエスト』を原案で考え出したのが、『フィラデルフィアは今日も晴れ』という長期継続ドラマで有名な“ロブ・マクエルヘンニー”。あの“ライアン・レイノルズ”と一緒にウェールズのサッカークラブ「レクサムFC」のオーナーになったことでも話題の人ですね。なんとなくギャグのスタイルが“ライアン・レイノルズ”と似ているし…。

その“ロブ・マクエルヘンニー”はドラマ『神話クエスト』で主演も務めるほか、エピソード監督や脚本にもガッツリ関与し、ドラマを自分用にカスタマイズしています。

また、注目の出演俳優のひとりが、本作でメイン主人公となっているクリエイターを演じる“シャーロット・ニクダオ”。フィリピン系オーストラリア人の俳優なのですが、本作を観ればきっと好きになるであろうコメディエンヌっぷりを披露。アジア系のコメディエンヌはまだまだ珍しいので、ここからさらに羽ばたいてほしいです。

他にはゲームで声優としてもよく活躍している“アシュリー・バーチ”も出演し、エピソード監督や脚本も少し手がけています。

本作『神話クエスト』は各話が1話あたり約25分程度でとても見やすいので、今からでも多数のシーズンをあっさり視聴し終えるのも難しくありません。

ゲーム好きも、そうでない人も、『神話クエスト』はいつでもあなたのログインをお待ちしています。「Apple TV+」独占配信中です。

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『神話クエスト』を観る前のQ&A

✔『神話クエスト』の見どころ
★笑い満載でゲーム業界をいじる。
★ささやかながら感動するシーンも。
✔『神話クエスト』の欠点
☆ギャグでいじりまくりなので苦手な人もいる。

オススメ度のチェック

ひとり 4.0:気軽に楽しめる
友人 4.0:一緒に笑い合える
恋人 4.0:同性ロマンスあり
キッズ 3.5:やや性的な話題あり
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『神話クエスト』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『神話クエスト』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):ゲーム開発は難易度最大級

発売以来傑作と大絶賛されているMMORPG「神話クエスト(Mythic Quest; MQ)」。しかし、生き馬の目を抜くゲーム業界では気が抜けません。今、このMQの開発スタジオでも最も重大な局面を迎えていました。初の大型拡張コンテンツ「レイヴンズ・バンケット」の発表が間近なのです。

クリエイティブ・ディレクターのイアン・グリムを中心に、エグゼクティブプロデューサーのデヴィッド・ブリトルズビー、リード・エンジニアのポピー・リー、マネタイズ責任者のブラッド・バクシ、そしてヘッドライターのC・W・ロングボトムといった重要メンバーが会議室に集合していました。

「レイヴンズ・バンケット」をローンチ完了だとポピーは自信満々に報告。しかし、イアンはデザインしたアイテムに文句をつけ、地形を変えられるシャベルなんて売れそうにないと吐き捨てます。

そのとき、デヴィッドが会議室に新しいアシスタントのジョーを引き連れてやってきますが、まさに現場は紛糾してました。イアンは発売を延期しそうな雰囲気をだしていたので、デヴィッドは即座に勘弁してくれと懇願しますが、イアンは数日は練って粘ると言ってきます。

一方、若い新人のレイチェルデイナはデバッグルームでテスターをしていました。ゲーム好きのデイナは満足そうですが、レイチェルはそんなデイナに好意を寄せています。

ポピーはブラッドにゲームメディアにシャベルの件をリークすればよいのではと持ちかけますが、「ウンチシューズ」という1000万人フォロワー配信者の14歳の子を取り込めと逆に言われます。

モーションキャプチャールームでイアンはシャベルを武器にしようと自分で動作を実演。プレイヤーの自由を尊重しますが、コンセプトが崩されるポピーは反論。そんないつもの2人の対立にデヴィッドはうんざりし、人事課のキャロルに愚痴ります。

シャベルを淫乱な妖精が授ける神秘的な武器とするストーリーを考えてくるロングボトムとブラッド。ポピーの失望は増すばかり。

とうとうイアンはデヴィッドに発売延期を頼み始め、対する延期に反対するポピーも譲りません。板挟みになったデヴィッドは決断に迷い、結局はポピーを支持。半ば強行で完成ということにします。

イアンは荒れますが、ポピーも自分は道具でしかない気分だったとぶちまけ、するとイアンも指示するだけの自分に歯痒い気持ちがあると吐露。根負けしたポピーはシャベルのモーションをクールにする案を教え、イアンのシャベル武器プランが採用されます。

ついにその拡張コンテンツをウンチシューズがレビューする日。固唾をのんで見守る開発スタッフ一同。結果は絶賛。とくにシャベルがいいと褒めちぎっており、スタジオは安堵に包まれます。

でもこれで一件落着にはなりません。モントリオールの親会社への対応、インフルエンサーのご機嫌とり、クリエイターの炎上、白人至上主義者のユーザーの対処、ハッキング疑惑、社内労働環境問題…。次から次へとトラブルは連発。

果たしてこのゲームの運営と開発はいつまで続くのか…。

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シーズン1:共依存の腐れ縁

ドラマ『神話クエスト』はカオスな職場コメディとして実に楽しいです。

ゲーム業界の男社会体質への風刺も容赦なく、ネオナチ・ユーザーが問題となった際のテキトーに多様性感をだして倫理委員会を設立したり、はたまた見学に来た女子児童の前で女性エンジニアの少なさを取り繕ったり、ワイルドDとしてストリーマー・デビューしたデイナが女性だからこその批判に晒されやすい境遇だったり、あれこれ盛りだくさん。コミュニティ・マネージャーのスーも地味ながら面白キャラだった…。

そんな中で軸になるのがイアンとポピーの2人です。その2人のドラマを意外にもシリアスに補強するのが第5話の唐突に1993年から始まる過去回ドク&ビーンという男女がゲーム業界を目指して奮闘し、「Dark Quiet Death」で成功を一時は掴むも、散り散りになっていく…。そして、それが今度はイアン&ポピーのターンへと回ってくる。とても印象深いエピソードであり、本作の肝でもありました。

つまり、ゲーム作りとは良い人間関係作りでもあるということ。ドク&ビーンは夫婦になっていましたが、イアン&ポピーはそうなりません。製作者いわくイアン&ポピーは恋愛関係にしないと決めているそうで、これはナイスな判断だと思います(恋愛面はレイチェルとデイナのレズビアン・ロマンスがあるのでOK)。結果的にイアン&ポピーは友情…というか共依存的な腐れ縁のようになりながら、くっついたり離れたりします。

イアンの場合は典型的なトキシック・マスキュリニティで、本人も自嘲しつつ黙殺していましたが、まあ、こういうビジョナリーな男性にありがちなタイプです。シーズン1ではあのウンチシューズが実はイアンの息子のブレンダンであると明かされたり、イアンが父親責任から逃避してゲームに逃げ込んでいることが明かされます(まさしくマスクマン)。

一方で、ポピーは女性でアジア系という、かなりマイノリティとして苦労が多いはずですが、不屈の精神で食らいついています(すごいアグレッシブで良い表象でした)。

そんなポピーを最終話では共同クリエイティブ・ディレクターにするイアン。彼も少しは成長したのかなと思わせて、でもやっぱり喧嘩は続く。これがゲームの醍醐味…なのかな。

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シーズン2:才能は独りでは成り立たない

ドラマ『神話クエスト』のシーズン2…の前に、コロナ禍を挟んだので、ドラマ世界の中でもパンデミックのロックダウンが発生。その様子を描くスペシャル・エピソード2つが挟まれます。この計2話がまた最高で、個人的には『神話クエスト』のベスト・エピソードはこの計2話だと思うくらいです。過酷なときこそ「ふざけ合って支え合う」…大事ですね。

で、シーズン2ですが、肩書は対等になったはずのイアン&ポピー。それでも2人は相も変わらず歩調は合いません。とくにポピーはモデルケースになる存在がいないせいか、だんだんとイアン化してしまい、パワハラ気質が悪化しているのがやるせない…(でもこういう事って実際よくあると思う)。

そしてシーズン2での過去回の主役はロングボトムでした。1972年、若い頃からすでに変わり者だったロングボトムは作家の夢を抱きつつ編集助手として出版会社に入社。ところが同僚は成功する中、自分はアイザック・アシモフにほぼ全部赤入れされるほどのダメさを突きつけられ、それを自分の成果のようにデビュー作として打ち出し、ネビュラ賞をとって…。このエピソードもなんともエグイものでした。本作は基本的にコミカルながら、稀に「才能というものは独りよがりでは成り立たない」という現実を淡々と直視させてくるから怖い…。

次のエピソードでは老齢のロングボトムがかつての同僚男性と和解する光景が優しく描かれ、救いがあって良かったですけど…。

シーズン2の最終話ではついにイアン&ポピーも和解して一緒に新コンテンツを作るかと思いきや、まさかのMQを退社するという重大な決断を…。

今度はイアンは「君のキャンパスと君の筆だ」とポピーに主導権を渡し、いつものラストだけ「良い男」感をだします。まあ、次のシーズンではまた振り出しに戻るんですけどね…。

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シーズン3:「fun」はどこにある?

ドラマ『神話クエスト』のシーズン3。変化の多い始まりです。

まずイアン&ポピーの退社によって実質的にデヴィッドがトップに。本人は滅茶苦茶張り切りますが、やっぱりトップの重圧に耐えられる体質でないのか、見ていて可哀想なだけです。MQの映画化企画もデヴィッドには重すぎる責任でした。デヴィッドは自分の能力を適正に自己評価できずに才能以上に頑張りすぎてしまう男性像の典型例ですよね(頑張るのをやめればもっと楽なのに…)。

今回で予想以上にキャリアアップしたのがキャロルで、ダイバーシティ&インクルージョンの新部署に昇進するも何すればいいのか手探り状態で、ジョーのインサイダー取引の罪を被ったブラッドが仮釈放されたので彼(ポーランド系のインド人)を清掃員として雇用。今回もトークニズムを皮肉ります。中年男性というマイノリティだと粋がるアート部門のフィルが数分で轟沈したり、シーズン3も賑やかです。

一方でロングボトムはまさかの「テルマ&ルイーズ」風な死で退場。最期までパクリしかできないのが宿命なのか…。

で、イアン&ポピーはMQのスタジオの下の階で、新スタジオ「グリムポップ」を始動。でも全然上手くいかないポピーは迷走しまくり。

また、レイチェルはバークレーでライティング講座に通ったかと思えば、マネタイズで活躍したり、こちらも右往左往。そんなポピーとレイチェルを、根っからの保守政治思想育ちのジョーが戦車でケアするのも面白い構図です。

そしてシーズン3の過去回はついにイアン&ポピーの子ども時代。ゲームを通すことで才能を発揮する子どもたちがいる…ここは素直なゲーム賛歌になっていました。それにしても「ファイナルファンタジー9」の攻略サイト、懐かしいな…。

イアンは「女性をサポートする」ということがどうしてもできないでいましたが、またもやラストで「良い男」にジョブチェンジ。まあ、ピザ買ってきただけなんですけどね…。

最終話では、デイナがブラッドとジョーを仲間に加えて自分のスタジオを設立。逆にイアン&ポピーがMQのためのゲーム自作コミュニティを考案して復職すると決定し、新しい波乱の予感で一旦の終了です。

この『神話クエスト』、止め時が見つからないな…。

『神話クエスト』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 90% Audience 87%
S2: Tomatometer 100% Audience 84%
S3: Tomatometer 95% Audience 75%
IMDb
7.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
8.0

作品ポスター・画像 (C)Apple ミシック・クエスト

以上、『神話クエスト』の感想でした。

Mythic Quest (2020) [Japanese Review] 『神話クエスト』考察・評価レビュー