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『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』感想(ネタバレ)…世界に愛される理由

劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal

世界に愛される理由は何か…映画『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal 前編』『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal 後編』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

英題:Sailor Moon Eternal
製作国:日本(2021年)
日本公開日:2021年1月8日(前編)2021年2月11日(後編)
監督:今千秋
恋愛描写

劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal

げきじょうばん びしょうじょせんしせーらーむーん えたーなる
劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal

『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』あらすじ

今世紀最大の皆既日食で街がお祭りムードに包まれる中、月野うさぎとちびうさは、不思議なペガサスのエリオスから助けを求められる。時を同じくして、デッド・ムーンサーカスと名乗る謎の集団が街に出現。その狙いは悪夢の化身レムレスをばらまいて「幻の銀水晶」を手に入れ、月と地球を含む宇宙全体を支配することだった。エリオスから「乙女」と呼ばれ、自らを必要としてくれる彼に淡い恋心を抱くちびうさだったが…。

『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』感想(ネタバレなし)

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なぜセーラームーンは世界で愛されたのか?

“武内直子”の漫画をテレビアニメ化して日本で国民的大流行となった『美少女戦士セーラームーン』。1992年から始まったそのアニメは「魔法少女」と「戦士」のジャンルミックスの成功型となり、今でも伝説です。少女向けの作品ですが、大人の女性はもちろん、男性もノンバイナリーも幅広い人たちを魅了しました。

そんな『美少女戦士セーラームーン』は世界中でも愛されています。こういうと「日本のアニメはスゴイ」みたいな雑な論調で片付けられがちなのですが、国威発揚的な自意識過剰は無視して、ここは率直に作品を見つめたうえで「なぜセーラームーンは世界で愛されたのか?」を簡単に整理したいと思います。例えば、「Studybreaks」や「Screenrant」などの海外メディアではこんなふうにその理由を説明していました。

①ディズニープリンセスとのギャップ

『美少女戦士セーラームーン』の主人公は設定上は一応はプリンセスなのですが、当時のディズニープリンセス(例えば1991年の『美女と野獣』)と比べると、とても庶民に身近な存在感。ぐうたらで口が悪いこともあるし、上流階級的な気品さなどもゼロ。こうしたギャップは当時は新鮮でした。

②第3波フェミニズムとのシンクロ

1990年代は第3波フェミニズムの時代であり、女性たちが自ら自分の表現したいことをするのがムーブメントでした。なりたいように変身して戦うセーラームーンたちの姿はまさに第3波フェミニズムに乗るフェミニストの理想のかたちに近いとも言えました。

③女性のエンパワーメント

セーラームーンたちは変身しておしゃれを楽しむわけではありません。敵と戦う「戦士」です。シーンによっては女性差別に対しても毅然と声をあげます。こうしたパワフルな女性像はエンパワーメントを与えるロールモデルとしても最適にフィットしていました。

④女性のシスターフッド

当時、作品内で複数の若い女性たちが描かれるとたいていは争い合う集団として描かれていました。「女の敵は女」という偏見です。一方で、セーラームーンたちは立場や性格の違う女性でも連帯することができるということをハッキリと描いていました。

⑤女性をサポートする男性

女は男に従う者という男尊女卑が当然だった時代。『美少女戦士セーラームーン』の主人公の恋する相手の男性は、主人公である女性を徹底してサポートすることに努め、上に立とうとはしません。こうした男性像は“有害な男らしさ”とは全く異なるもので、魅力がありました。

⑥クィアな表象

『美少女戦士セーラームーン』に登場する「天王はるか」と「海王みちる」は同性愛的なカップルともとれる描写がされており、クィアなキャラクターがほとんど見られなかった当時のアニメーション業界においても画期的な存在でした。


 

こんな感じで『美少女戦士セーラームーン』の新規性が世界の人々に支持されていたということ。もちろんこれらの新規性があっても今となっては古い部分は否めません。でもそのレガシーは次世代の作品(『シーラとプリンセス戦士』や『スティーブン・ユニバース』など)に受け継がれているわけで、やはりその偉業が素晴らしかったのは変わりないでしょう。

あとこれは私が常々思うことなのですが、こういう『美少女戦士セーラームーン』などの世間的に「女性向け」とされる作品は「女性向け」という扱われ方で終わってしまい、それ以上を広げて語ろうとしない傾向があって…(典型的なジャンルにおける女性排除の例)。実際、『美少女戦士セーラームーン』ってものすごくSFです。でも「SF」ジャンルで扱ってくれることは滅多にないじゃないですか。だから『美少女戦士セーラームーン』の切り口はいくらでもまだまだあって、過去の作品で終わってほしくないな、と。

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新アニメは「Eternal」へ!

では『美少女戦士セーラームーン』は過去のクラシックな作品として終わったのか。確かにアニメシリーズは1997年に終了し、その間にいくつも映画が作られました。

けれども2014年から新しいアニメシリーズが開始されていました。それが『美少女戦士セーラームーンCrystal』というタイトルで、これがちょっと立ち位置が特殊です。まずギャグ要素の強い初代アニメよりも原作漫画を重視しており、やや原作よりのシリアスさと世界観になっています。一方でキャラクターデザインはやはりこれしかないということで初代アニメを尊重しています。他にも主人公の声はおなじみの“三石琴乃”だけど他のキャラクターの声優は一新していたり、定番ソングの「ムーンライト伝説」は流れないなど、何とも言えないバランスの立ち方をしている新作アニメシリーズになりました。

2016年には第3期が放映され、国内の根強い「セーラームーン」ファンを喜ばせましたが、2021年にはついに劇場版が登場。それが本作『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』です。

本作は原作漫画の「デッド・ムーン編」を題材にしており(初代アニメで言うところの『美少女戦士セーラームーンSuperS』に該当)、事実上の第4期です。今回の映画化では『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal 前編』『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal 後編』と前後編構成で公開されました。

ファンにしてみれば本当に久しぶりに劇場で「セーラームーン」に出会える体験となったわけで、21世紀も5分の1が終わっても「セーラームーン」は健在なのかとびっくりです。

実質、同窓会みたいなものなので、昔に戻った気持ちで鑑賞してみては? 当然、新規の人もいつでもどうぞ。

以降は私の『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』の感想が続きます。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:過去に見ていた人もぜひ
友人 3.5:ファン同士で盛り上がる
恋人 3.5:作品が好きなら
キッズ 4.0:新しいファンを
↓ここからネタバレが含まれます↓

『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):月にかわって…

4月。月野うさぎとその仲間たちは十番高校に入学が決まり、うさぎの恋する相手の地場衛は大学の医学部に行くことに。一方で、ネオ・クイーン・セレニティとキング・エンディミオンの娘で30世紀からタイムスリップしてきたちびうさは30世紀に帰ることにしました。

街では今世紀最大の皆既日食の日ということで、大勢が集まって昼間からソワソワと空を見上げていました。

ちなみに現時点での日本で見られる21世紀最大の皆既日食は2009年7月22日でした。次の皆既日食は2035年9月2日です。

別の場所では月野うさぎの大親友である、水野亜美、火野レイ、木野まこと、愛野美奈子も日食を観察しており、それぞれの願いを胸に唱えます。

そのとき、ちびうさとうさぎは鈴の音を聞き、ペガサスが見えた気がします。また、衛は胸に痛みを感じていました。

そして太陽が新月に隠れたとき、日食の中から船が現れたような…デッド・ムーンサーカス団と言っていた感じも…。

とりあえず衛の家にちびうさとうさぎは泊まり、ちびうさは母が話してくれた鏡の話をします。鏡を覗いてはいけないという…。

眠りについたちびうさは夢のような世界でペガサスのエリオスと語り合い、そのエリオスは「エリュシオンを救いたいのです、ゴールデン・クリスタルが必要なのです」と助けを求めていました。「乙女」の力が要るとも…。

不思議な感覚を感じつつも、ちびうさは朝起きてこっそり出ていくと30世紀に戻ろうとします。しかし、時空の鍵が作動せず、ちびうさはペガサスを助けたいと気持ちを思い出し、うさぎたちに告げます。

そんなうさぎたちの目の前に現れたのは、アマゾネス・カルテットという4人組。4人はそれぞれの能力を駆使してうさぎたちを苦しめます。ちびうさとうさぎは年齢と見た目が逆になってしまい、それでもちびうさは自分が乙女ではないと痛感し、自信を失います。そんなちびうさにペガサスのエリオスは「泣かないで」と優しく言葉をかけ、一瞬、人の姿になってみせました。そのエリオスの愛にドキドキするちびうさ。

しかし、アマゾネス・カルテットは強敵で、うさぎたちがセーラー戦士に変身しても歯が立たず…。

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ずっと胸が痛い男、説明が下手なペガサス

新作アニメシリーズは新作と言っても前述したとおり原作重視のリブートなので、新要素はありませんし、現代的なアップデートもないです。完全なる同窓会です。

『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』の前編は同窓会の前半としてはややテンション低め。もともと原作を映画に収めようとしているのでかなりの駆け足だというのもありますが、それにしたって前編の盛り上げは乏しいです。

地場衛なんて終始胸の痛みに耐えていただけでしたからね。サポートどころか足手まといになっていることを悔やんでいる衛。胸が痛いくらいは周囲に告げてもいいのではないだろうか…。新型コロナウイルスに感染しても絶対にひとりでなんとかしようとするタイプですよ…(医学部なのに)。

物語をリードするキーキャラクターであるペガサスのエリオスも、具体的な説明スキルが著しく低いのでモヤモヤします。もっと核心部分をハッキリ言って!

原作重視ゆえのシリアスさもあって、うさぎ以外の4人の心理的葛藤も重かったし…。神社の経営に悩む火野レイなんか、それは10代の子に背負わされるには早すぎますよ…。

個人的には前編のラストのクリフハンガーはもっと絶望感を出しても良かったのになとは思いました。それこそ『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』級に…(まあ、でもその絶望的な苦戦は第5期にお預けかな)。

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ファン待望のサービス名場面

そんなややフラストレーションの溜まる前編を発散するかのように、後編の序盤の外部太陽系戦士が駆け付ける展開はファン待望のサービス名場面。やっぱり冥王せつな(セーラープルート)、天王はるか(セーラーウラヌス)、海王みちる(セーラーネプチューン)、土萠ほたる(セーラーサターン)の人気は高いです。とくに今作で初めて変身シーンが映像化されたセーラーサターン。なんで今まで変身シーンが無かったんだ…という感じでしたが、これで雪辱は晴らしたし、やり残しはない!…はず。リアルでは冥王星が惑星じゃなくなるという出来事もありましたが、セーラープルートには関係ありません!

後編はちびうさのエリオスとの初恋物語も甘酸っぱく綴られ、それでいてアマゾネス・カルテットの真の姿(守護戦士「セーラーカルテット」)を知って自分の未来に自信が持てるようになったりと、次世代ストーリーの希望溢れる後味も心地いいです。

その一方で、主人公のうさぎはいよいよエターナルセーラームーンに開花し、最強がさらに最強性を強めていき…。もともとセーラームーンの世界観はかなりSFで、最終的には不老長寿化して未来を納めるわけですから、世界観も宇宙規模ですし、もうあれですよ、『DUNE デューン 砂の惑星』以上に壮大ですよ。セーラームーンなんてMCUのサノス並みに強いですからね(というかたぶんサノスには勝てる。いや、もう『エターナルズ』のメンバー入りですね)。

なお、このシリーズには喋る猫たち(ルナ、アルテミス、ダイアナ)が登場しますが、私が個人的な趣味として知性ある猫が好きなのもこの『美少女戦士セーラームーン』の影響を多分に受けています。近未来的なコンピュータを操作している猫の図って…いいな(嗜好全開)。

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次はどんな星を見せるのか

こんなようなテキトーな感想ですが『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』は同窓会としては満足です。

気が早いですけど、第5期をやって原作を完全に映像化した後は何かするのだろうか。たぶん私の勝手な推測ですけど、いつかはキャラクターを一新した次世代ストーリーをやる日が来るんじゃないかなと(旧キャラもゲストで出るとしても)。「セーラームーン」のネームバリューはやはり格別ですからね。それにこの壮大なSF世界観の土台があればいくらでも物語は広げられるんですよね。世界を舞台にグローバルになってもいいし、地球を飛び出して宇宙冒険モノになってもいいし…。

個人的な希望としては「セーラームーン」が新時代に進化して、また日本のみならず世界を魅了するくらいの革新性を持って楽しまれるといいなと思っています。「セーラームーン」のレガシーを引き継いでアップデートさせた海外のアニメはいくつも登場しているわけですからね。本家も負けてはいられません。

『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience –%
IMDb
?.? / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0

作品ポスター・画像 (C)武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会 セーラームーン エターナル

以上、『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal 前編』『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal 後編』の感想でした。

Sailor Moon Eternal (2021) [Japanese Review] 『劇場版 美少女戦士セーラームーンEternal』考察・評価レビュー