続編は難易度アップ!…映画『ジュマンジ ネクスト・レベル』(ジュマンジ3)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年12月13日
監督:ジェイク・カスダン
ジュマンジ ネクスト・レベル
じゅまんじ ねくすとれべる
『ジュマンジ ネクスト・レベル』あらすじ
ゲーム「ジュマンジ」の命を賭けた冒険をクリアしてから2年。スペンサー、マーサ、フリッジ、ベサニーはそれぞれの進路を歩み、今は大学生になっていた。しかし、スペンサーは、破壊したはずのゲーム「ジュマンジ」をこっそり修理し、再びゲームの中に吸い込まれてしまう。スペンサーを救出するため、残った3人も「ジュマンジ」に参戦するが、壊れたゲームの世界はバグだらけで…。
『ジュマンジ ネクスト・レベル』感想(ネタバレなし)
ジュマンジへまたまたようこそ!
TVゲームの中には自分で任意のタイミングで「難易度」を自由に切り替えられるものがありますけど、「お、そろそろ私も上手くなってきたから難易度を上げちゃおうかな」なんて調子に乗って設定を変更すると途端に全然ダメダメなプレイになり、「自分はなんて自惚れだったのか…」と意気消沈する…。
そんな私のゲームプレイの“あるある”。もうずっと難易度は低くてもいいかな…とか思ってしまいます。
人生の難易度も変更できませんかね…。
御託を並べるのはこのへんにして、今回の映画は「設定? 知ったことか!」な、プレイヤーの気持ちなどまるで考えていない、地獄のような鬼畜ゲーをやらざるを得なくなった子どもたちの物語。それが本作『ジュマンジ ネクスト・レベル』です。
本作は2017年にアメリカで公開された『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』の続編。前作が日本での公開は2018年4月なのでほぼ1年半ぐらいの短期間に続編が提供されることになりました。『ジュマンジ ネクスト・レベル』は日米同時公開(中国や東南アジアではもう一足先に先行公開されている)となりましたので、かなり待遇の良い扱いになっているのがわかります。
それもそのはずで『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』が関係者も驚くほどの大ヒットを記録し、 いきなりソニー・ピクチャーズの看板映画に昇進してしまったという経緯があります。
なぜここまで前作が観客に大ウケしたのかは前作の感想で自分なりに書いているので参考にしてください。
さっきから大前提の基本情報を説明せずに語りだしてしまいましたが、一応、初心者向けに解説しておくと、『ジュマンジ ネクスト・レベル』は「ジュマンジ」の名を冠する映画としては3作目です。原点となる1作目は、1995年に公開された『ジュマンジ』。こちらは子どもたちが「ボードゲーム」を遊び始めると、ボードゲーム内で書かれたことが現実に起こってしまうというファンタジーでした。それを『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』では大胆にアレンジし、まず「TVゲーム」に変更し、子どもたちがゲームの世界の中に入ってしまうという、一種のVRの延長みたいな設定に衣替え。この改変が大成功の決め手でした。
また、ここが少しややこしいですが精神的続編という位置づけの『ザスーラ』という映画も2005年に公開されています(こちらはボードゲームだけど宇宙SF要素)。なのでこれも含めるとシリーズ全体では4作が生み出されたことになります。そう考えると「ジュマンジ4」なのか…?
『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』の際はあまり過去2作は気にしなくていい雰囲気でしたが、『ジュマンジ ネクスト・レベル』では明確に過去のボードゲーム系作品との繋がりを意識したネタも入れてきており、製作陣が本格的にこのシリーズを拡張させようと狙っているのがわかります。
まあ、とは言っても『ジュマンジ』と『ザスーラ』を観ておく必要性は基本は全くないです。知っていれば小ネタに気づけるよ…という程度。
とりあえず前作『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』だけは予習必須。完全に前作ありきのストーリーなので、観ておけばギャグが数倍は面白くなります。
監督は前作に引き続き“ジェイク・カスダン”。もう完全にジュマンジという金鉱脈の眠る未開の地を開拓した男になりましたね。ちなみに“ジェイク・カスダン”の父親は『スター・ウォーズ』シリーズの脚本家でおなじみの“ローレンス・カスダン”。前作と同じく今回もまた『スター・ウォーズ』最新作とぶつかるかたちでの公開となります。ジュマンジは対スター・ウォーズ映画だったのか…。
頭を空っぽにして楽しめる、お気楽エンターテインメントですので、家族でも友人でも恋人でも独りでも自由気ままに鑑賞してください。家庭用ゲーム機もスマホゲーも置いて、今は映画館へGO!
オススメ度のチェック
ひとり | ◯(俳優ファンも大満足) |
友人 | ◎(ワイワイ盛り上がる) |
恋人 | ◯(適度なエンタメで気分上々) |
キッズ | ◎(子どもでも爆笑できる) |
『ジュマンジ ネクスト・レベル』感想(ネタバレあり)
無理ゲーは進化する
ブラントフォード高校の生徒だったスペンサー、フリッジ、マーサ、ベサニーの4人は、不適切な行為への教育的な罰として地下室の掃除をするように言われ、そこにあった「ジュマンジ」というゲーム機に吸い込まれてあり得ない大冒険をしました。
あれから2年。高校を卒業し、それぞれの進路に進んだ4人でしたが、今でも連絡を取り合うほどの仲は良い関係が続いています。しかし、スペンサーだけは今の自分の現実にどこか心の中で寂しさ、もとい刺激の無さを感じていました。
あのジュマンジの世界であれば、筋肉モリモリマッチョマンで大活躍できたのに、今ではすっかりただのバイトに励むだけのボンクラ青年。こんな人間になりたいわけじゃない。現実の方がクソゲーじゃないか…。
これではあの時は良い感じのロマンスが芽生えたマーサにも合わせる顔はない。そんなダウナーな気持ちで祖父エディの家に訪れたスペンサー。夜、ベッドについても頭の中にはあの危険だらけの冒険で感じた快感が忘れられない。そして、ふと思いつき、スペンサーは密かに隠し持っていた、壊したはずのジュマンジのカセットを手にするのでした。
一方、ベサニー、フリッジ、マーサの3人は久々に店で揃って、喜びを素直に分かち合います。もちろん、話題はスペンサーのことにも。さすがに心配になってきたので、彼のいる家へ3人で向かいます。その家にはちょうど祖父エディと彼の友人のマイロがいました。スペンサーはいません。
するとあの「デンデンデン♪」というトラウマになるほどに聞いた音楽が流れてきます。まさか。そのまさかで、修理されたようなあのジュマンジがあるのを発見。状況的にもスペンサーはまたあのゲームの中に吸い込まれたに違いない。そう確信した3人。でもあのガチで命を賭けたゲーム世界に行くのはもうコリゴリ。しかし、意を決して大切な人を救うべく決断することにします。
マーサがコントローラに触っただけでアバター選択画面もなしにいきなり起動。問答無用で飲み込まれてしまいます。しかも、ゲームに前回同様に吸い込まれたのはマーサとフリッジだけで、ベサニーはそのままポツンと取り残されてしまいました。
ゲーム世界のジャングルに降りたつマーサ。今回も格闘に長けたセクシー冒険家「ルビー・ラウンドハウス」の姿になっていることを確認。すると目の前にかつてスペンサーのアバターであった、見慣れた屈強なスキンヘッド男「スモルダー・ブレイブストーン博士」の姿が。ところが、様子がおかしい。なんとそのブレイブストーンの中身はスペンサーではなく、スペンサーの祖父のエディでした。さらに前回はフリッジのアバターであった「ムース・フィンバー」の中身はエディの友人のマイロ。そして当のフリッジは前回はベサニーのアバターであった「シェリー・オベロン教授」になっていました。ベサニーはいません。
明らかに前回とは異なるスタートに大混乱。今回が初のおじいちゃん組は理解が全くできておらず、そもそもTVゲームが何なのかも知識不足状態。ビギナープレイヤーに説明するルビー(マーサ)でしたが、以前も猛威を振るった狂暴カバに食われそうになるムース(マイロ)を間一髪で助けます。その直後、超危険地帯だと力説したオベロン(フリッジ)が大蛇に頭から食われ、リスタート。
この世界ではライフは3つ。3回やられれば本当に死んでしまい、現実には戻れません。
すると、上空を飛行機が飛び、「ウェルカム・トゥ・ジュマンジ!」のいつものセリフとともに、NPCの説明が開始。カットシーンを再び見ながら、今回は前回とストーリーは違うことを認識。でもおじいちゃん組は相変わらずマイペース。そうこうしていると今度は強制的に砂漠に落とされる一同。
胸を叩いてメニューが表示されるので自分たちのステータスを確認すると、ブレイブストーンはいつもどおり「最強&キメ顔」の敵なし。一方、オベロンは弱点に「暑さ」「太陽」「砂」が加わり、すでに砂漠フィールドなので絶賛不利。ムースはまたもや「ケーキ」が弱点ですが、スキルに「言語能力」という意味深なものが。そしてルビーはスキルに「ヌンチャク」が追加されていました。
やることの基本は同じでも、何かが違う。このバグなのか仕様なのか不明な謎ゲーを今度もクリアすることはできるのか…。
お前は誰で、自分は誰?
前作の感想で私は「ゲーム的楽しさの映画化に成功している」と評価したのですけど、この正統続編である本作もその成功実績を順当に強化してパワーアップした、非常に手堅い一作でした。
「ゲーム的楽しさの映画化」についてもう少し具体的に話すと、ゲームは本来インタラクティブなものでそここそがプレイヤーの楽しさなのですが、でも映像メインになる映画というコンテンツではそれを反映できません。なので『名探偵ピカチュウ』みたいに、作品愛をひたすらに注ぎ込んでファンサービスに徹するのが常套手段だったります。
でもこの『ジュマンジ』ゲーム2作は、あえて(何でもいいので)ゲームをプレイしたことのある経験者なら“あるある”と頷けるゲーム体験ネタ(ゲームネタではなく体験ネタ)を盛り込むことで、そのゲームのインタラクティブを映画の中に落とし込むことが実現できています。
自分と全然姿の違うアバターにもしなってしまったら…。カットシーンが唐突に挿入されたら…。同じセリフを繰り返すNPCに出会ったら…。与えられたスキルをどうやって活かすか…。ライフ制でどうやってサバイバルするのか…。
ゲームならではの非現実性をガンガンとネタにする姿勢が、ティーンや子どもたちを中心に大ウケした要因でした。
『ジュマンジ ネクスト・レベル』ではさらにそのネタ度が上がり、アバターチェンジが大きなトピックになっています。正直、映像面は前作どおりで特段新しいこともありません。ダチョウ的な狂暴鳥やマンドリル的な狂暴サルの群れが襲ってくるとか、割とワンパターン。でもこのアバターチェンジで観客を飽きさせないようにしているわけです。
「入れ替わってるー!」な展開を頻繁にぶっこむ大盤振る舞い。日本だと性別や年齢での入れ替わりが主で思いつくところですけど、アメリカ映画だとここに人種ネタも加わって、ますますカオスになるのが美味しい部分。
ちゃんと前作の最強キャラであったブレイブストーンが、中身はゲーム初心者のおじいちゃんになったことで絶妙に経験値的には弱体化していたり、結果、ルビーがチームを引っ張るポジションになったり(女性主軸になっている)、そのアバターチェンジでストーリーが新規にセルフアレンジされているのも丁寧です。馬は反則技だったけど…。
つまり、このジュマンジの設定。実に遊びがいがあるんですね。これはもうソニー・ピクチャーズも最高の映画企画ネタを発掘しましたよ。だって、ほら、他の実在のゲームとかも組み込むことだっていくらでもできるんですから。これは無限に世界観を拡張できます。
大変なことになってきた…。
おもしろ演技の裏技祭り
『ジュマンジ ネクスト・レベル』も土台は俳優の珍妙演技のお披露目会みたいなものですので、今回もたっぷり堪能できました。
まずはブレイブストーンを演じた“ドウェイン・ジョンソン”。中身がおじいちゃん状態のときの演技でもそうですが、基本、何をしていても笑えるというズルいポジションなんですよね。駄々洩れるフェロモンたっぷりのキメ顔を連発しつつ、ひたすらに敵をボコる蹴る突き飛ばす。正直、この俳優がリアルにいることが信じられない。マジでゲームキャラクターみたいですもんね。これで『ファイティング・ファミリー』のような真面目な良作映画のプロデュースもできているのですし、何でもできる、本当に弱点なしだな…。
オベロンを演じた“ジャック・ブラック”は、安定のコメディアン芸が達者。今回は中身が黒人青年という、かなり難しそうな役柄なのですが、なんなく面白おかしく演じていました。でも中身が女子な“ジャック・ブラック”の方が、個人的には本人に合っている気がする…。
ムースを演じた“ケヴィン・ハート”は、今回も小物っぽさがいい。一番威勢は良さそうなのに…。今作では動物学に加えて、言語能力もプラスされて、完全にドリトル先生。アカデミックなキャラです(いや、これをアカデミックとは呼ばないか…)。ラクダと話している“ケヴィン・ハート”の絵だけでもシュールだもんなぁ。
ルビーを演じた“カレン・ギラン”。『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズのネビュラ役で有名ですが、あちらは当人の顔が全然わからないくらいに変貌しているので、今作を見ていると「こんな人なんだ」と知れますね。普通に主人公力があるので今後も主役で映画に出てほしいです。
そして、今作で新キャラとして大活躍するフリートフットを演じる“オークワフィナ”。『オーシャンズ8』『クレイジー・リッチ!』と昨今飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進し、『The Farewell』では賞レースに上がるくらいの名演を披露。やっぱりあらためて器用な女優だなと痛感させられる才能でした。あの固定4人メンバーの多才さと普通に互角に渡り合っています。
ティーン組も前作から少し成長して演技経験も積んでいるので、いい育ち具合。スペンサーを演じた“アレックス・ウルフ”は『ヘレディタリー 継承』、ベサニーを演じた“マディソン・アイズマン”は『アナベル 死霊博物館』と、キャリアアップもしているようですし。
“ダニー・デヴィート”と“ダニー・グローヴァー”のおじいちゃん組も言うまでもなく最高でしたが。
そしてラストではオリジナルの『ジュマンジ』1作目よりノラ役の“ビビ・ニューワース”がサプライズ再登場。そうリンクさせてくるのか~。
ますますシリーズの発展の扉を開いた『ジュマンジ ネクスト・レベル』。次はどんなレベルに到達するのか。可能性は無限大。ゲームの難易度も無限大。もうリアルとゲームの区別なんてできなくてもいい?
ROTTEN TOMATOES
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IMDb
7.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
作品ポスター・画像 (C) 2019 Sony Pictures Digital Productions Inc. All rights reserved ジュマンジ ネクストレベル
以上、『ジュマンジ ネクスト・レベル』の感想でした。
Jumanji: The Next Level (2019) [Japanese Review] 『ジュマンジ ネクスト・レベル』考察・評価レビュー