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実写映画『ジャングル・クルーズ』感想(ネタバレ)…ロック様と滝の裏側に行きたい

ジャングル・クルーズ

あの人気アトラクションを大冒険ファンタジームービーに!…映画『ジャングル・クルーズ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Jungle Cruise
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年7月29日(Disney+でもほぼ同時配信)
監督:ジャウム・コレット=セラ

ジャングル・クルーズ

じゃんぐるくるーず
ジャングル・クルーズ

『ジャングル・クルーズ』あらすじ

アマゾンのジャングルの奥深くに「奇跡の花を手にした者は永遠の命を手にする」という不老不死の伝説があった。行動力と研究心を兼ね備えた植物博士のリリーは、この摩訶不思議な秘密の花を求めて危険に満ちたアマゾンの大自然へ旅立つ。リリーが旅の相棒に選んだのは、現地を知り尽くしたクルーズツアーの船長フランク。しかし、そこには想像を絶するスリルとミステリー、そして大冒険が待っていた。

『ジャングル・クルーズ』感想(ネタバレなし)

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映画の世界でも出航!

ディズニーのテーマパークで一番好きなアトラクションは何ですか?

それぞれの思い出の答えがあると思うのですが、私が子どもの頃に一番好きだったのは「ジャングル・クルーズ」でした。動物が大好きだったというのもありますし、そんなに怖くないので臆病な私でも楽しめる絶好の体験だったのがその大きな理由。登場する動物は“作り物”だし、本物の動物が見たいなら動物園に行けばいいのですけど、「ジャングル・クルーズ」には独自の魅力がありました。自分が大自然を冒険しているような、そんな夢の気分を味あわせてくれます。

そのアトラクション「ジャングル・クルーズ」は、企画の過程も実はエキサイティングです。その裏エピソードは「Disney+」配信のドキュメンタリー・シリーズ『ディズニーパークの裏側 ~進化し続けるアトラクション~』を観るとよくわかります。全く何もない貧相な砂漠地帯にゼロから熱帯のジャングルを作り上げるという無謀なプロジェクト。もともとはウォルト・ディズニーが動物好きで、実際に海外のジャングルに行って探検旅行した経験から着想を得ています(ディズニーのアニメーターと労働問題で揉めていた状況で逃げるようにジャングルに旅行していたというのですから何とも呑気ですが…)。当初は本物の動物を配置することも考えたそうですが、それでは役に立たないことは一目瞭然で、結果、当時としては最先端のアニマトロニクスを活用。さらにアニメーション映画でコミカルなシーンを手がけたクリエイターの助力もあって、ユーモアたっぷりなストーリーも追加され、今の「ジャングル・クルーズ」が完成しました。

この大人気アトラクション「ジャングル・クルーズ」が65年以上の時を経てついに実写映画化。それが本作『ジャングル・クルーズ』です。

ディズニーがパークのアトラクションを映画化するのはこれが初めてではありません。過去にはアトラクション「カリブの海賊」を空前のスケールと個性的なキャラクターで映画化した『パイレーツ・オブ・カリビアン』が大ヒットし、愛されるシリーズとなりました。その成功経験が後押ししているのでしょう。今回はこの「ジャングル・クルーズ」に手を出したのです。まあ、人気で考えれば当然ですね。

俳優陣ですが、「ジャングル・クルーズ」と言えば軽快なトークでゲストを案内する船長が印象的で、「スキッパー」と呼ばれているのですが、映画版におけるスキッパーを演じる最重要な役を「ロック様」こと“ドウェイン・ジョンソン”が熱演。しかも今回は製作にまでクレジットされている熱の入りよう。実は“ドウェイン・ジョンソン”は子どもの頃からアトラクション「ジャングル・クルーズ」の大ファンで、少年時代の頭の中では船案内人(スキッパー)をする妄想を常にしていたのだとか。だから今回はハシャギまくっています。“ドウェイン・ジョンソン”は『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』『センター・オブ・ジ・アース2 神秘の島』など毎度ながら森でも海でも大冒険しているイメージですが、どおりで性に合っているわけですね。

共演は、『メリー・ポピンズ リターンズ』『クワイエット・プレイス』の“エミリー・ブラント”がアクティブでパワフルな研究者になりきっています。ちなみに“エミリー・ブラント”はアトラクションの「ジャングル・クルーズ」にこれまで一度も乗ったことがなく、本作のプレミアイベントで初めて乗ったらしいです。加えて、コメディアンとして活躍する“ジャック・ホワイトホール”がその弟役に。さらに『母が教えてくれたこと』『もう終わりにしよう。』の“ジェシー・プレモンス”が強烈な役柄で登場します。

監督は『ロスト・バケーション』や『トレイン・ミッション』などサスペンス・スリラーならお手の物な“ジャウム・コレット=セラ”です。今回はサメも電車も出てこないけど、まあ、動物と乗り物が重要な映画だし…。

映画『ジャングル・クルーズ』は劇場公開の他、その翌日から「Disney+」でプレミアアクセスとして独占配信中(有料です)。

子ども向けの夏休み映画にぴったりのファンタジーアドベンチャーになっています。テーマパークには行けないけど、映画ならちょっとお手軽では?

オススメ度のチェック

ひとり 3.0:パーク・マニアの人も
友人 3.0:軽めのエンタメを
恋人 3.5:気軽なロマンスを
キッズ 4.0:動物好きな子にも
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ジャングル・クルーズ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):いつものギャグで始まる

1916年。ロンドン王立学会にてマクレガー・ホートンという男が大勢の名だたる学者たちの前で発表をしていました。その内容はアマゾンのジャングルの奥深くに隠されているという「奇跡の花」についてであり、その花は驚くべきヒーリングの効果を秘めているとマクレガーは主張します。たどたどしく。実はこの研究の本来の主役はマクレガーの姉であるリリーです。今、リリーは発表会場の上から弟を心配そうに見つめています。女性は学会に参加できないのでこうするしかありません。マクレガーはいくつものメモを片手に必死に研究を語るも、鋭い質問に答えられるわけもなく…。

リリーはその発表の場からこっそり立ち去り、保管庫に侵入。狙いはアルバート・フォールズ博士が回収してきた「矢じり」であり、これは「奇跡の花」に繋がる手がかりになるはずでした。

ちなみにアルバート・フォールズ博士というのは、アトラクション「ジャングル・クルーズ」を運営する会社の設立者という設定の人物で、世界中のディズニーパークに登場している架空の団体「S.E.A.」のメンバーです。

なんとか矢じりをゲットしたリリー。そしてマクレガーと共にアマゾンのジャングルへ向かうことにします。

一方、その南米ではクルーズ船が大勢の観光客を乗せてジャングルの川を進んでいました。案内人は陽気な大男のフランク船長です。軽快なトークは弾み、あちこちに危険がいっぱいだと観光客を脅します。でも実際は全部フランクが仕組んだものでした。カバっぽく見える何か。これも仕込み。原住民の吹き矢攻撃。これも仕込み。いきなり上から流れてくる滝にしてはしょぼい水流。これも仕込み。

この「滝の裏側です!」というセリフは、アトラクション「ジャングル・クルーズ」のスキッパーによる最も有名な定番ギャグです。

ひと仕事終えたフランクでしたが大切なボートのエンジンがニーロにとられてしまい、稼ぎもほとんど没収。これでは困ると取り返しに鍵を探しに行きます。一方でリリーたちもこの地に到着。偶然にもフランクと遭遇し、ジャングルを探検するためにリリーはフランクを雇うことにします。

しかし、そこに同じく奇跡の花を狙うドイツの貴族のヨアヒム王子が傭兵たちと共に出現。しかも、潜水艦まで繰り出して、出航したばかりのリリーとフランクたちを襲ってきます。

波乱万丈な船旅の始まりとなった一同。この運命共同体なそれぞれはどんな未知の興奮と出会うのか。

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潜水艦が出てくる理由

元のアトラクションはゆったりとした船で移動するだけであり、そんな絶叫系アトラクションではありません。もちろんそれをそのまま映画化しても退屈です。そこで映画『ジャングル・クルーズ』では非常にコッテリした味付けを加えています。

多くの人が連想したのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』『インディ・ジョーンズ』でしょうか。序盤からまさかの潜水艦が登場し、フランクが操るボートと大激闘を繰り広げます。なかなかあり得ない、ボートvs潜水艦。ダイナミックな映像でいきなり迫力満点。これはアトラクションでは無理だ…。

さらにヘビ男、ハチ男、樹木男など、『パイレーツ・オブ・カリビアン』でも見かけたような呪いで異形の姿に変えられた存在が縦横無尽に襲い掛かってくるという、ファンタジー展開にも様変わり。

アトラクションの映画化としてできる限りの盛り合わせにしようという大盤振る舞いが感じられます。

しかし、この映画『ジャングル・クルーズ』の製作で一番に素材になっているのはおそらく『パイレーツ・オブ・カリビアン』ではなく、あの昔の映画でしょう。ひとつはこれは有名ですが『アフリカの女王』(1951年)です。ハンフリー・ボガートとキャサリン・ヘプバーン共演のこの映画は、ドイツ領東アフリカの奥地でボートで川を進んでいく男女を描き、ドイツ軍との戦いや、ロマンスなど本作との類似点はいくらでもあります。実際にアトラクションの「ジャングル・クルーズ」はこの『アフリカの女王』をヒントに作られました。

そしてもうひとつ忘れてはならない映画があり、それはディズニー実写映画『海底二万哩』(1954年)です。なぜ『海底二万哩』なのかと言うと、この映画のアートを手がけたのが“ハーパー・ゴフ”であり、実は彼はその後にディズニーテーマパークのコンセプト・アーティストとなり、あのアトラクション「ジャングル・クルーズ」も手がけたのでした。なので、映画の『ジャングル・クルーズ』に潜水艦が出てきたり、摩訶不思議なファンタジー展開が出てくるのも、“ハーパー・ゴフ”の『海底二万哩』に捧げるリスペクトですよね。

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あんな動物こんな動物

でもやっぱり「ジャングル・クルーズ」と言えば動物。映画『ジャングル・クルーズ』でも動物はいっぱい出てきます。

例えば、カワイルカヤドクガエルなど、アマゾン固有の野生動物たちが多彩に登場し、動物好きの子どもには発見するだけでも楽しい映像だと思います。

一方で、アトラクションの方は南米だけでなくアフリカなんかも混ぜた架空のジャングルにしているため、ゾウもキリンもゴリラも何でもありだったのですが、映画ではアマゾンに限定しており、あまり大型の動物を出せないという弱点がありました。唯一の巨大な動物はジャガーですかね。

また、アニマルパニックな要素も薄いです。きっと子どもたち観客に対して見せるものとして、動物に人が襲われる展開までにはしたくなかったのかな(実際のアトラクションもそんな凄惨なことにはならないし)。ピラニアは襲ってきますけどね。

ただ、一番のびっくり動物はどう考えても“ドウェイン・ジョンソン”ですよ。ジャガーを肉体で跳ね返せる奴は普通はいないし(たとえ仕込みでも)、あちこちの場面で「あれ、こいつ、人間離れしてないか?」という驚異のボディを披露してくるのですけど…。リリー、奇跡の花よりもフランクの生命力に学術的好奇心を持つべきなんじゃ…。

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女性と同性愛の探検家の史実

映画『ジャングル・クルーズ』は1916年が舞台です。そんな中で本作には女性の研究者であるリリーと、同性愛者であるマクレガーが登場します。それに対して「この時代にこんな女性や同性愛者が出てくるなんて不自然だ」と文句を言う人もいるかもしれません。しかし、それは無知です。

例えば、「アレクサンダー・フォン・フンボルト」という1700年代後半に南米を探検し、後に「近代地理学の父」と呼ばれるまでになった探検家がいます。彼は同性愛者だったのではないかという説があり、実際に生涯独身ながら男性と交友がよくあったことがわかっています。ゲイの探検家なんて初期から普通にいるんですね。

また、探検や自然学に絡んだ女性研究者も山ほど昔からいます。『アンモナイトの目覚め』で題材になった古生物学者の「メアリー・アニング」、『ジェーン・グドールの軌跡』で取り上げられた動物学者の「ジェーン・グドール」、『ピーターラビット2 バーナバスの誘惑』で映画にもなった生物学に長けた「ビアトリクス・ポター」、さらに文化人類学者として各地をフィールドワークした「マーガレット・ミード」は両性愛者でもありました。女性も研究の世界では普通にいるのです(初期は学会に参加できませんでしたけどね)。

私が思うに、女性やクィアなどのマイノリティの人たちは既存の近代社会では抑圧があって窮屈で、だからこそ外の世界へと冒険に惹かれたのではないかなと。

ただ、この映画『ジャングル・クルーズ』。マクレガーのゲイ描写があまりにも控えめすぎで、そこは気になりますけど(もちろん当時のゲイはそれこそ史実の人物のように明確に同性愛として公然と振舞えなかったのでこれはこれでリアルなんですが)。ジャガーにペロペロされる場面くらいしかない…。これはディズニーに限った話ではなく、同時期公開の映画と『イン・ザ・ハイツ』もそうだったのですが、もう少し大作でもLGBTQをハッキリ描写できるようになるといいのだけどなぁ…。ゲイ表象のあるディズニー実写映画の繋がりだと『美女と野獣』『クルエラ』ときてそんなにまだ進歩してない…。

あと、本作ではスペインの征服者「ロペ・デ・アギレ」を基にした人物が出てくるのですが、侵略の歴史をエンターテインメント化するうえで、まだまだ雑なところは多いなとも思いました。

私の好きなジャングル映画は『凸凹猛獣狩』(1949年)なので、ぜひ“ドウェイン・ジョンソン”と“ジャック・ホワイトホール”の2人で、ゲイ・ロマンスありでリメイクでもしてほしいですね。まあ、あれは本物の動物を使っているから面白いのであって、今の動物福祉的にアウトなんだけど…。

『ジャングル・クルーズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 63% Audience 90%
IMDb
7.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0

作品ポスター・画像 (C)2021 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. ジャングルクルーズ

以上、『ジャングル・クルーズ』の感想でした。

Jungle Cruise (2021) [Japanese Review] 『ジャングル・クルーズ』考察・評価レビュー