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『クルエラ Cruella』感想(ネタバレ)…エマ・ストーンはヴィランも着こなせる

クルエラ

『101匹わんちゃん』のあの悪役を主人公に…映画『クルエラ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Cruella
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年5月27日(Disney+でもほぼ同時配信)
監督:クレイグ・ガレスピー

クルエラ

クルエラ

『クルエラ』あらすじ

母を残酷なかたちで失ったひとりの少女は路頭に迷い、孤独を抱えたまま、大人になる。そんな彼女を導いたのは類まれなる斬新なファッションデザインのセンスと、貪欲なまでのバイタリティ。底辺の世界で生き抜く知恵を教えてくれた仲間とともに、競争の激しいファッション界で存在感を増していく。そして自分の運命を知ってしまったとき、彼女はなりたい自分の姿を見い出す。こうして「クルエラ」は誕生する。

『クルエラ』感想(ネタバレなし)

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ディズニーヴィラン単独実写映画の第2番

日本の動物愛護法が改正されて2021年6月1日に新しく施行されるって、どれくらい国民に認識されているのだろうか…。知っていましたか?

具体的には、生後56日以下の子犬や子猫の販売が原則禁止となるほか、付随してマイクロチップ装着の義務化や業者の飼育数制限なども追加で始まります。どれもペットとなる愛玩動物の健康を守るための措置です。最近ではペットの大蛇が逃げ出してニュースを騒がせたりしましたけど(結局は屋根裏にいた)、基本的にはペットに関しては「終生飼養」が飼い主の責任ですからね。

そんなタイミングでこの映画が公開。本作の主人公は動物愛護法なんて順守するのか…? その映画とは『クルエラ』です。

タイトルのとおり、本作はあのディズニー・アニメーション映画の人気作『101匹わんちゃん』における印象的な悪役「クルエラ・ド・ヴィル」を主人公にした実写映画であり、その若き日を描く前日譚になっています。

『101匹わんちゃん』は犬が主役なわけですけど、犬を除けば多くの観客に記憶に強烈に刻まれるのはやっぱりあのヴィラン…「クルエラ」その人です。やっていることは犬を殺して毛皮にして衣装にするという、どう考えても共感を得づらい最悪の所業を嬉々として実行するような奴です。でも悪役としてディズニーアニメ作品の中でも群を抜いて人気が高いのも事実。

その理由は、ターミネーターのごとくしつこくしつこく執念深い行動にあるのか、インパクト大なファッションを身にまとうポップアイコンとしての存在感にあるのか、耳に残るあのテーマソングのせいなのか。まあ、きっとそれら全部が人気の原動力なんでしょう。とにかくあのクセの強すぎるヴィランの発明は、ディズニーにとっては大成功でした。

クルエラというキャラクターは本当に凄くて、作品の枠を超えて、実際にファッションや音楽などのカルチャーに影響を与えているんですね。「残忍だけど魅力的なパワーを持つ女」の象徴であり、ところによってはフェミニストのロールモデルとして分析する人もいます。確かにキャリアを自立的に成功させているし、女性の雇用にも積極的だし、結婚や育児といった女性のステレオタイプを心底嫌っているし…何よりもフェミニズム的な精神を体現しながら世間からは悪役に設定されていることにこそシンパシーを呼んだりもするわけです。

そんなクルエラならば単独の主人公にした映画が生まれるのも納得です。これまで『101匹わんちゃん』自体も実写映画化され、1996年には『101』、2000年には続編の『102』が公開されています。それら作品でクルエラを演じたのはグレン・クローズでした。『ワンス・アポン・ア・タイム』シリーズや『ディセンダント』でも実写クルエラが登場してきました。

今回の単独実写映画『クルエラ』で主役を演じるのは、『ラ・ラ・ランド』でハリウッドの頂点に上り詰めた“エマ・ストーン”です。ヴィランを演じるのは初めてのようですが、『小悪魔はなぜモテる?!』『女王陛下のお気に入り』のように反骨精神のあるキャラを演じるのは昔から得意ですし、『ゾンビランド』シリーズのように殺伐とした世界観でも様になるルックを持ってますし、クルエラの大役も全く違和感なし。『美女と野獣』でヒロインを演じなくてよかったですね…絶対にクルエラの方がハマり役ですよ。

共演としては、クルエラのライバル役を演じるのが“エマ・トンプソン”で、こっちも負けじと凄いオーラを放っています。さらに『リチャード・ジュエル』の“ポール・ウォルター・ハウザー”もコミカルな世界観にマッチした演技を披露していますし、『シャザム!』の“マーク・ストロング”、『リトル・ジョー』の“エミリー・ビーチャム”、『イエスタデイ』の“ジョエル・フライ”、ドラマ『グッド・プレイス』の“カービー・ハウエル=バプティスト”などバラエティ豊かなキャストが勢揃い。

監督は『ラースと、その彼女』『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』など尖った個性的作品を手がける“クレイグ・ガレスピー”。ディズニーとは『ザ・ブリザード』(2016年)で仕事したばかりですね。

『クルエラ』はディズニーとしては『マレフィセント』に続くヴィラン単独実写映画の系譜になりますが、これを機にまたクルエラの人気はアップしていきそうです。若者ウケも良さそうですし…。

作品のビジュアル発表時は『ジョーカー』と比較されたりもしていましたが、そういうジメっとした陰気な映画ではなく、もっとこう『オーシャンズ8』のようなとてもファッショナブルなエンパワーメント映画なので、そこは勘違いしないように。

なお、一部の人はすっごい気になると思います。それはずばり「犬は酷い目に遭うのか」。これはネタバレにやや抵触するかもしれませんが、鑑賞前の判断において重要なので書いてしまいます。

犬は…元気です! 今作でも愛くるしいです。

オススメ度のチェック

ひとり4.0:俳優ファンは必見
友人4.0:ディズニー好き同士で
恋人4.0:見やすい一作
キッズ4.0:そこまで怖くはない
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『クルエラ』予告動画

映画「クルエラ」特報【悪名高きヴィラン誕生編】
↓ここからネタバレが含まれます↓

『クルエラ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):私の名はクルエラ

エステラは生まれたときから、髪はの分け目がハッキリとついており、その稀有な容姿のせいで周囲から望まない注目を集めていました。それでもエステラは自分を閉じ込めることをしたくありません。学校へ行ってもあえて個性全開。揶揄ってくる男子たちと取っ組み合い、やられてもやり返します。優しくしてくれたのは同級生のアニタくらい。あと拾った犬だけが癒しです。

その問題児っぷりが原因で学校からも見放され、その残忍なアグレッシブさを見かねて母親であるキャサリンはエステラに「クルエラ」とあだ名をつけたりもしました。

ある日、富豪で大物であるバロネス・フォン・ヘルマンの主催するパーティに母と向かいます。バロネスの屋敷の前に車を停め、母は何やら話があるらしく、エステラを車内に置いて行ってしまいます。しかし、じっとしている子ではありません。エステラはケーキを運搬する台に隠れ、こっそり潜入。そこには煌びやかなファッションに身を包んだ女性たちが歩いており、目を奪われます。

けれどもバロネスの忠実な右腕であるジョンに見つかり、3匹のダルメシアンが追いかけてきました。外へ逃げるエステラ。すると母がある人と喋っており、ダルメシアンが勢いよく母を押し倒し、母は崖下へと突き落とされてしまい…。母の死。突然のことでした。

それを目撃したエステラはショックで動揺しつつもその場を逃げるしかできませんでした。母の大切なネックレスが落ちます。

トラックに飛び乗り、ロンドンの街中へ。夜の公園の噴水を前に泣くしかないエステラ。疲れ果ててそこで眠っていると噴水で拾いものをする少年2人と出会います。ホーレスジャスパーです。すぐに警官に追いかけられ、逃げる一同。屋根をつたってたどり着いたのは2人の秘密基地でした。帽子をとって2人に髪を見せるエステラ。

こうしてエステラはここで暮らし始めました。成長した彼女は全ての髪を赤く染めます。3人の生活。それを支えるのはもっぱら盗みです。巧みに衣装で身分を偽り、その場に馴染み、盗む。そしてまたデザインし、盗む。精巧な変装を作成することでファッションスキルを磨いていくエステラ。

誕生日を祝ってくれるホーレスとジャスパー。それだけでなくジャスパーとホレスはデパートの掃除婦の職を彼女にプレゼントしてくれました。採用にあたっては多少のズルはしましたが正規の仕事です。

こうして雇用されることになったエステラ。しかし、思っていた世界とは違いました。懸命にトイレ掃除。働きづめの日々。マネージャーの反応は冷たい。たちまち嫌な気分になり、あげくに酔っぱらって酒を飲みながら仕事。

気が付くとデパートの道路ディスプレイ内で目覚めます。そこに展示していた衣装を自分で勝手に滅茶苦茶にアレンジしていました。

当然、マネージャーは激怒。しかしそこに大物が出現。あのバロネスです。開口一番、「あの外のウィンドウディスプレイは何?」と言ってきます。そしてなんと名刺をくれました。

こうしてエステラはオートクチュールデザインの技能をテストされ、気に入られて傍に置いてもらうことに。一気にキャリアが開けます。

それはまだ運命の序章にすぎず…。

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ファッションで物語る

『クルエラ』の魅力はやはりキャラクター、そしてその魅力を何百倍にも引き上げるゴージャスな衣装デザインです。というかファッションでストーリーを語るくらいにその存在感は重要になっています。

まずクルエラの誕生時から物語は始まりますが、ここで赤ん坊の頃から髪がくっきり白黒ツートンカラー。こんなのありかよと思うかもですが、実際に「白毛症」というのがあってこんな感じの髪色になる人はいるそうです(「poliosis」で検索してください)。

この幼少時代の児童の姿は、『101匹わんちゃん』の原作者である“ドディー・スミス”にも似ている気もします。シングルマザー家庭だし。

そんな“持たざる者”としてロンドンの街中でポツンとサバイバルすることになったクルエラ。彼女が唯一持っているのはファッションデザインの才能のみ。本作のクルエラはまさにこの技能ひとつで成り上がっていくことに。

時代は1970年代。若者文化の発信地として世界に位置づけられていたロンドン。パンク・ロックのムーブメントが活性化し、それは作中でも多くの楽曲が引用されるあたりで雰囲気を掴めます。

しかし、本作のメインは何度も言っているように衣装。クルエラは最初は掃除婦として老舗百貨店で有名なあの「リバティ」で働き始めます。そこはロンドンの流行の集約地帯。クルエラにしてみれば届きそうで届かない場所にいるわけで、餌をお預けにされた犬の気分(実際に四つん這いで仕事してる)。そこからバロネスから名刺をもらい(口にくわえるという犬っぽさ)、今度は自分が他人のためにデザインする側に。

そしてついに自分が自分のためにデザインするという到達点へ。もう4足歩行でもなく他人に首輪をつけられることもない、完全な自立を獲得した瞬間です。そのクルエラを自称してからのファッションの暴れっぷりはまさに痛快。ファンションで敵を殴るアクション映画みたいなものです。

本作の衣装デザイナーを担当したのは、『眺めのいい部屋』(1985年)と『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)でアカデミー衣装デザイン賞を2度獲っており、ノミネートも多数の“ジェニー・ビーヴァン”。『クルエラ』もアカデミー衣装デザイン賞のノミネートは確実でしょうか。

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アンチ・ファミリーなバッド・フェミニスト

一方のクルエラのライバルとなるバロネスの存在感も良かったです。

私は本作にあたり、このヴィランのヴィランはひとつの懸念事項でした。というのも、『マレフィセント』とか『ヴェノム』とかでもそうですけど、ヴィラン映画というのは主人公ヴィランに敵対するヴィランが必要になるわけですが、どうしても主人公ヴィランよりも存在感が劣ってしまうことが多いんですね。

その点、この『クルエラ』のバロネスは強烈でした。“エマ・トンプソン”、さすがです。『レイトナイト 私の素敵なボス』でも見られましたが、キャリアの成功を手にした女性を演じさせたら見事です。

これならばクルエラにとっての確かな好敵手…越えねばならない相手として不足ありません。

今作では実母との歪んだ関係性を描くものでもあり、それは“クレイグ・ガレスピー”監督の『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』と共通のテーマです。アンチ・ファミリー的でもあり、そのポイントで言えば、本作はディズニー映画らしからぬ一線を越えてきたとも思います。

クルエラも恋愛に逸れず、男たちも従属させて、我が道を突き進むという、フェミニストのロールモデルだったかつてのクルエラが公式にてまさにその一歩を踏み出したわけですから。これは今後のディズニー映画史においてもひとつの転換点になるかもしれません。こういうお行儀よくないバッド・フェミニストを描けるかは大事でしょうから。

DCにはハーレイクインが出現しましたが、ディズニーはクルエラを筆頭に今後進んでいくのかな、と。それにしてはちょっと本作だけは拡張性が低いのは気になりますけどね。

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何のためなら犬を殺せるのか問題

ただ、『クルエラ』のルックはいいですが、細部を見ると気になるほつれはいっぱいあります。

とくにこのクルエラが最終的に犬の毛皮を剥ぐことをためらわない女に成長するのか、いささか説得力はないようにも思います。作中でもダルメシアンに母を殺されたとは言え、基本は犬と信頼関係を築いていましたからね。

こうなってくると極論になりますけど「己の野望のために犬を殺せるか」という問いを突き付けないといけないと思うのです。そういうファッショナブルでは誤魔化せない、生き方の本質を問うまではさすがに踏み込めていません。私利私欲では犬は殺せないけど、大義のためなら犬は殺すとか、そんなクルエラだからこその答えを見たかった気分も…(ファミリー映画である以上は厳しいテーマですけどね)。どうなんだろう、今さらサフラジェット的な行動の是非を問うのも変かな…。

あと、本作では当時のロンドンのカルチャーの中におけるクィアなコミュニティも少し描かれています。バロネスに仕えるアーティはゲイを明示していますし、クルエラもクィアな人たちと交流があるように映し出されていました。ただ、それでもやっぱりクィア・アイコンになるにはやや弱いような…。作中で口ひげで男装したりしていましたけど、そもそも異性装を犯罪に利用している点でクィアに馴染まないと思うし、どうもクィアのファッション部分だけを都合よく頂戴した感じもする…。

これだけ人気があれば『クルエラ』はまだまだ続きそうですし、さらなる進化を見せるショーを期待して“待て”の姿勢で大人しくしているしかないですかね。

『クルエラ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 73% Audience 97%
IMDb
7.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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関連作品紹介

ディズニーアニメを実写映画化した作品の感想記事です。

・『ムーラン』

・『わんわん物語』

・『アラジン』

作品ポスター・画像 (C)Disney

以上、『クルエラ』の感想でした。

Cruella (2021) [Japanese Review]