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『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』感想(ネタバレ)…シリーズ第5作は座礁中

パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊

シリーズ第5作は座礁中…映画『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Pirates of the Caribbean: Dead Men Tell No Tales
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年7月1日
監督:ヨアヒム・ローニング、エスペン・サンドベリ
パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊

ぱいれーつおぶかりびあん さいごのかいぞく
パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊

『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』物語 簡単紹介

かつてジャック・スパロウと冒険を共にし、今や幽霊船フライング・ダッチマン号の船長として呪われた運命を受け入れて果てしなく生きるウィル・ターナー。その彼には息子のヘンリーがいたが、宿命ゆえにほぼ会えない状態である。策を練るヘンリーは父を救おうと伝説の秘宝「ポセイドンの槍」を探していた。一方で、ジャックに恐ろしい執念で復讐心を燃やす海の死神・サラザールが、魔の三角海域から解き放たれ…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』の感想です。

『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』感想(ネタバレなし)

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5回目の海賊は懐かしいキャラと共に

「海賊(パイレーツ)の夏がやってくる」という宣伝を映画館で聞いて、あれ、いつから海賊は夏の風物詩みたいになったんだろう…と思いましたが、そんなことはどうでもいいのです。

世界的大人気海賊映画にして、“ジョニー・デップ”という俳優の名を日本にも知らしめた「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズの最新作『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』が公開されました。

『パイレーツ・オブ・カリビアン 呪われた海賊たち』(2003年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト』(2006年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン ワールド・エンド』(2007年)、『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』(2011年)と続く、早いもので5作目。日本でもヒットしましたし、テレビでもよく放映しているので、全部観たという人も多いのではないでしょうか。

本作は邦題に「最後」と付いていますが別にシリーズ最終作ではありません(たぶん)。原題は「Dead Men Tell No Tales」で、「死人に口なし」というよく聞くフレーズのあれです。

毎回やってることは同じに見えますが、今作はシリーズ1~3作の主人公とヒロインだったウィル・ターナーとエリザベス・スワンが再登場します(これは宣伝でも触れられているのでネタバレじゃないよね)。というか、この夫婦の息子ヘンリーが今作のジャックのパートナー的存在になります。一体何年経ってるんだという感じですが、まあ、そこはファンタジーですから。ジャックの宿敵バルボッサも相変わらず登場するので、シリーズファンは嬉しいでしょう。4作目の評価が低かったことから、原点回帰を狙っているのかもしれません

新キャラももちろん登場します。とくに悪役サラザールを演じた“ハビエル・バルデム”。この俳優、怖い顔の役がよく映えるのですが、今回も怖い怖い。このシリーズは子どもも観られるようにできている作品ですが、悪役のビジュアルがなかなかに怖いのが特徴。今回も非常に不気味でいい味だしてます。

監督は“ヨアヒム・ローニング”&“エスペン・サンドベリ”という人で、いかだで8000キロの太平洋横断に挑戦した男たちの実話を描いた『コン・ティキ』という作品で、アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされたノルウェー人。

『コン・ティキ』はほとんど海の上で物語が展開し、迫力ある映像のリアルな海洋アドベンチャーでした。この作品ではサメが印象的に登場するシーンがありましたが、なんと本作でもサメが出てきます。しかも、B級サメ映画に出てきそうなゾンビサメ。金をかけたサメの映像は違うなぁと思わせてくれます。

シリーズが大好きな人は満足できること間違いなしの一作です。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):死人に口なし(よく喋る)

あるひとりの少年が、灯台と月が不気味に照らす暗闇の夜の海を、一隻の小さな頼りないボードで進んでいました。遊びに来たわけでもイタズラをしたいわけでもありません。地図を取り出し、ある地点を探します。そしてロープを自分の足に括りつけ、意を決して水中へ。

重りによってどんどんと沈んでいく少年。すると船の上につきます。その朽ち果てた壮大な船は勢いよく海面へ浮上。船体には「フライング・ダッチマン号」と書かれています。

少年は息をし、あたりを見渡します。その背後からやってくる気配。

「お父さん?」「ヘンリー? 何をしている? お母さんのもとへ帰れ」「嫌だ、諦めない。呪いを解く方法がわかった。ポセイドンの槍だよ」

父のウィル・ターナーはヘンリーを抱きしめ、「ただの伝説さ」と語りますが、ヘンリーは「ジャック・スパロウなら見つけ出してくれる」と言い、連れて帰ることを誓います。そしてまた船は沈んでいきます。10年に1度しか陸に上がれない呪いの宿命を背負ったまま…。

9年後。成長したヘンリーは英国軍の船「モナーク号」に乗船していました。今は海賊に襲われている最中で緊迫していますが、ヘンリーは魔の三角海域に入ろうとしていることを艦長に必死に伝えようとします。海の伝説や逸話に詳しいヘンリーでしたが、身分が違う平凡な船員なので誰も真に受けません。結局、牢にぶちこまれるだけ。

その牢で隣にいた男がジャック・スパロウの指名手配書を見るなり、「ジャック・スパロウは死んだよ。セント・マーティン島のどこかに入れられた」と口にします。

船は薄暗い洞窟の中に進行。難破した船の残骸が目の前にありますが、何か変です。すると謎の襲撃者が出現し、交戦状態に。

その襲撃者の正体はスペインの軍艦「サイレントメアリー号」。その艦長である“海の処刑人”アルマンド・サラザールと彼が率いるスペイン海兵の亡霊たちは、ジャック・スパロウにハメられてこんな状況になってしまったのでした。その異様な殺意をぎらつかせるサラザールはヘンリーにジャックへの伝言を託し、彼だけは証人として見逃します。ジャックと彼が持つコンパスが必要だと…。

一方、セント・マーティン島ではカリーナ・スミスという若い女性が魔術の使用で処刑を命じられていました。彼女は科学者だと言い、牢から自力で脱出。

カリーナは新しい銀行がお披露目する場へと逃げます。ちょうど金庫が発表されたところでしたが、その厳重な金庫の中にいたのは…泥酔したジャック・スパロウ。

「なぜ俺はここにいる…?」

その瞬間、自分は銀行強盗をしに来たと思い出し、金庫は後ろに引っ張られます。ジャックの仲間が待機してロープと馬車で運ぶ算段でした。まさか建物ごと動いてしまうとは思いもしませんでしたが…。

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船は穴が開いてても浮かぶ

原点回帰を匂わせた『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』ですが、実際の中身はそうでもありませんでした。というか、シリーズ史上最も“らしさ”が薄れた一作になったのではないでしょうか。

私の考える「パイレーツ・オブ・カリビアン」らしさといえば、まず“荒唐無稽なハチャメチャアクション”があります。これについては第5作である本作も、それなりに楽しませてくれます。序盤の建物ごと引っ張って金庫を強奪するシークエンスは、もう船も海も何も関係ないですが、絵としては愉快。メイキングを観ると、本当に町のセットの中で建物を移動させて撮影しているようで、大金使ってアホなことしているなぁと。また、ジャックが処刑されそうになるシーンでの、ジャックがギロチン処刑具ごとグルグル回転して刃が落ちそうになったり戻ったりを繰り返す馬鹿馬鹿しさもいいですね。

ただ、本作は肝心の海戦があまり面白くないです。その理由は船がチートすぎるのだと思います。幽霊船サイレント・メアリー号のあのビジュアル、とてもおどろおどろしく迫力がありますが、もはやどうやって浮いてるんだよと言いたくなる船を超越した別の何かです。『コン・ティキ』では船を浮かべて航海することの難しさをあんなに丁寧に描いてきた、その監督の作品とは思えない…。

そして、瓶に入っていたブラック・パール号も、普通の船とは言えない存在になりつつありました。そんな船同士が戦うと、重力無視のSF映画になってきます。大砲を撃ち込むのもアホらしいです。やっぱり海賊の戦いは、普通に船が海という厳しい環境で激突し、船長が知恵をしぼり、船員たちのチームワークで挑み、相手の船を沈めて勝つ…このセオリーは崩さないでほしいところ。要するに、本作であった回想での若いジャックの活躍、あれがもっと観たかった。“荒唐無稽なハチャメチャアクション”、でも勝つためのロジックはしっかり考えてほしいです。

派手さだけがどんどんインフレし、操船技術や知略よりも摩訶不思議パワーで圧倒する傾向が増していくこのシリーズの将来が心配になる第5作でした。このシリーズ、次回作あたりでは船が空を飛んで空中戦するんじゃないだろうか…。

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頼りない新人二人と欠けた実力者二人

あと「パイレーツ・オブ・カリビアン」らしさとして挙げたいのは“騙し合い”です。ただ、これも残念なことに…。本作の世代交代を象徴するはずのヘンリー・ターナーとカリーナ・スミスの新キャラが活きてこないのが主因な気もします。第1~3作で主人公だった“オーランド・ブルーム”演じるウィル・ターナーは真面目イケメンで、おふざけ変人のジャックとは対称的。加えて、ヒロインの“キーラ・ナイトレイ”演じるエリザベス・スワンは男にも負けない気の強い好戦的女性でした。この強烈な3人だからこそ主人公サイドにすら騙し合いが成立して面白かったのですが、本作にはそれがないです。ヘンリーもカリーナも、やり手なのかもしれないですけど、ジャックと肩を並べるのは無理ですよね。ヘンリーを演じた“ブレントン・スウェイツ”は同じく主演した『キング・オブ・エジプト』でもそうでしたが、軽いキャラになりがちで主人公感が薄いなぁ…。巧妙な騙し合いがないため、本作のジャックは本当に流されるままヘラヘラと主人公補正でトラブルを切り抜けているだけでした。

“カヤ・スコデラリオ”演じるカリーナ・スミスは科学を根差す女性像として良かったのですが、この素っ頓狂な世界観で科学って意味あるのかな…。

なんでこうも“らしくない「パイレーツ・オブ・カリビアン」になってしまったのか。おそらくシリーズを生み出すのに大きく貢献した“テッド・エリオット”“テリー・ロッシオ”の二人の脚本家が外れたことが大きいのかな? この二人は『アラジン』や『シュレック』の脚本を手がけた有名なコンビで、本シリーズでも1作~4作目までずっと脚本に関わってきました。しかし、本作では別の人に。そりゃあ、シリーズのエッセンスが消えるのも当然です。

あとは、“ヨアヒム・ローニング”&“エスペン・サンドベリ”監督はこのシリーズに向いてなかったとしか…。

そういえばシリーズの音楽を手がけてきた“ハンス・ジマー”も本作ではいないのですが、めちゃくちゃ過去の“ハンス・ジマー”音楽鳴りまくりでしたね。もうこの音楽さえかけておけば「パイレーツ」だろ!と言わんばかりの勢いです。まあ、それが真理なのかもしれない…。

完全に座礁しているような気がするこのシリーズ。誰か船を上手く動かせる人は現れるのでしょうか。沈没はしないでね。

『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 29% Audience 61%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2017 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. パイレーツオブカリビアン5 最後の海賊

以上、『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』の感想でした。

Pirates of the Caribbean: Dead Men Tell No Tales (2017) [Japanese Review] 『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』考察・評価レビュー