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『バレリーナ The World of John Wick』感想(ネタバレ)…火炎放射器が似合う女

バレリーナ The World of John Wick

そんな女になりたい…映画『バレリーナ The World of John Wick』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Ballerina
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年8月22日
監督:レン・ワイズマン
バレリーナ The World of John Wick

ばれりーな ざわーるどおぶじょんうぃっく
『バレリーナ The World of John Wick』のポスター

『バレリーナ The World of John Wick』物語 簡単紹介

「ルスカ・ロマ」という殺し屋を育てる組織でテクニックを磨き、一人前の暗殺者として認められたイヴは、殺伐とした仕事の中で、亡き父親に関する手がかりを掴む。しかし、単身で挑むにはあまりにも得体の知れない強敵であり、さらに殺し屋の世界のルールに背くことにもなってしまう。それでもじっとしていることはできず、決意したイヴは武器を手に取る。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『バレリーナ The World of John Wick』の感想です。

『バレリーナ The World of John Wick』感想(ネタバレなし)

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ジョン・ウィックから“バレリーナ”へ

“キアヌ・リーヴス”がボロボロになりながら懸命にアクションすることでおなじみの『ジョン・ウィック』シリーズ。1作目は2014年に、2作目の『ジョン・ウィック:チャプター2』は2017年に、3作目の『ジョン・ウィック:パラベラム』は2019年に、4作目の『ジョン・ウィック:コンセクエンス』は2023年に劇場公開されました。5作目の予定は現時点では“キアヌ・リーヴス”自身は考えていないようで、一応はこれでひと区切りのようです。

当の“キアヌ・リーヴス”は60歳を迎えても人気絶好調で仕事はどんどん舞い込んでいますし、趣味のオートバイに関するドキュメンタリー『Visionaries』にでたりと充実している様子。

一方で、スタジオ側は『ジョン・ウィック』の世界観を拡張したいようで、2023年にはあの世界で印象的に登場するホテルを舞台にしたドラマ『ザ・コンチネンタル: ジョン・ウィックの世界から』を送り出しました。

そしてさらにスピンオフ初となる映画が2025年に新参します。

それが本作『バレリーナ The World of John Wick』

本作はメインシリーズの3作目の『ジョン・ウィック:パラベラム』でチラっと登場した犯罪組織「ルスカ・ロマ」が主題になっています。この組織でジョン・ウィックは暗殺者として育てられたという背景があるのですが、別に過去編を描くわけでもなく、この組織に所属する若い女性を新しい主人公に据えています

タイトルが「バレリーナ」なのは、この組織が表向きはバレエ団をやっているからで、とくにじっくりバレエダンサーを描いているわけではありません。

ちなみに2023年に『バレリーナ』という殺しをする女を描く韓国映画が公開されており、すっかりこのタイトルは女暗殺者のイメージがこびりついている気がする…。

ともあれ、『ジョン・ウィック』シリーズも新主人公で再始動するのか…という感じですが、世界観を拡張するスピンオフの体制は実は結構見切り発車だったようで…。

というのもドラマ『ザ・コンチネンタル: ジョン・ウィックの世界から』もシリーズの原案者とも言える“チャド・スタエルスキ”にとってはあまりしっくりくるものではなかったそうで、この『バレリーナ The World of John Wick』にいたってはそもそも『ジョン・ウィック』シリーズの世界観作品として当初は企画されてすらいなかったとのこと。

もともと“シェイ・ハッテン”という若手の脚本家が考案したプロットで、『ジョン・ウィック:チャプター2』の予告からインスピレーションを受けて考え出され、初期案ではバレリーナ女性を主人公に、この手のアクションを大袈裟に風刺するような内容だったとか。

しかし、そのプロットが「ライオンズゲート」に気に入られ、“シェイ・ハッテン”は3作目の『ジョン・ウィック:パラベラム』以降からシリーズの脚本に参加するようになります。

肝心の『バレリーナ The World of John Wick』は脚本が何度も手直しされたようで、“エメラルド・フェネル”を含む6人近い人間が関与したらしいですが、結局、クレジットには“シェイ・ハッテン”の名だけ残っています。

監督は『アンダーワールド』『ダイハード4.0』“レン・ワイズマン”…なのですが、ポストプロダクション段階で大幅な再撮影を“チャド・スタエルスキ”の手によって敢行したそうで、こちらも“チャド・スタエルスキ”的に納得いくように手直したっぽいですね。

それが功を奏したのか、ちゃんと『ジョン・ウィック』っぽいトーンとアクションのケレン味になっています。

『バレリーナ The World of John Wick』で主演するのは、もはやハリウッドでは引っ張りだこの“アナ・デ・アルマス”。人気の俳優ですけど、主演作シリーズは持っていないので、これがそうなるといいですが…。

共演は、『アーニャは、きっと来る』“アンジェリカ・ヒューストン”、ドラマ『ウォーキング・デッド』で有名な“ノーマン・リーダス”、ドラマ『宇宙戦争』“ガブリエル・バーン”など。

単独作としてじゅうぶんに満喫できるので、『バレリーナ The World of John Wick』の大暴れをお楽しみください。

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『バレリーナ The World of John Wick』を観る前のQ&A

Q:『バレリーナ The World of John Wick』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくにありませんが、『ジョン・ウィック』シリーズのメインの3作目『ジョン・ウィック パラベラム』までを観ておくと、物語の繋がりを把握できます。
✔『バレリーナ The World of John Wick』の見どころ
★シリーズ恒例のケレン味たっぷりのアクション。
✔『バレリーナ The World of John Wick』の欠点
☆キャラクターのストーリーは新鮮味は薄い。

鑑賞の案内チェック

基本 児童がトラウマを負うシーンがあります。
キッズ 3.0
殺人の描写がたくさんです。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『バレリーナ The World of John Wick』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(前半)

幼いイヴ・マカロは海岸沿いの家でと隠れて暮らしていました。まだ世の中をよく知りませんでしたが、この生活には理由があります。世界は危険に満ち溢れているのです。

夜中、隠密しながら統率のとれた武装部隊が強襲してきます。父はイヴを本棚の後ろに隠し、複数の襲撃者と対峙。しかし、取り押さえられてしまいます。そこに現れたのは暗殺カルト教団の重鎮(チャンセラー)でした。イヴの母はこの教団に所属していて、過去に父がイヴを連れ戻したのでした。今、教団はイヴを取り返そうとここまでの勢力を送り込んできたのです。

イヴがこっそり固唾を飲んで見守る中、父は反撃を試みるも、危機に陥ります。イヴは傍にあった銃を拾って、それを父にナイフをむける相手に撃ちます。父はイヴを連れてこの場から逃げ出そうとします。家は爆破。必死の行動も虚しく、瀕死の重傷を負った父はイヴの前で息絶えます

独り身となったイヴが困り果てていると、ニューヨーク・コンチネンタルのオーナーであるウィンストン・スコットが手を差し伸べてくれました。

イヴの父は「ルスカ・ロマ」という組織に属していた殺し屋であり、イヴが生き残るには自らがこの殺し屋の世界で生存スキルを身に着けるしかありません。

ウィンストンはイヴを「ルスカ・ロマ」を率いるディレクターのもとに案内し、面談させます。そしてここに正式に属し、第2の人生を歩むことになりました。ウィンストンは去り際にコインを渡してくれます。殺し屋になった証です。それがあればコンチネンタルでサービスを受けられます。

イヴはノギから指導を受けます。殺しのテクニックだけではありません。殺すか、守るか、自分で選ぶ日々が始まるのです。

12年後、イヴはキキモラという偽名を使い、暗殺者として秀でた才能を発揮していました。ここでは女であろうとも相手が自分よりはるかに体格のある男を倒さなければいけません。

それがこの弱肉強食の世界のルールです…。

この『バレリーナ The World of John Wick』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/08/23に更新されています。
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火炎放射器に立ち向かうなら…

ここから『バレリーナ The World of John Wick』のネタバレありの感想本文です。

前述したとおり、『バレリーナ The World of John Wick』はもともとは『ジョン・ウィック』フランチャイズの企画として考案されていませんでした。当初の内容では、主人公の若き女殺し屋は、かなりセクシーな描写が多く、シャワーシーンなどヌードもあったらしいです。

『ジョン・ウィック』スピンオフとして軌道修正された完成版を観ると、そんな要素は見当たらないのがすぐにわかります。あえて言うなら序盤の対象者を保護するためにクラブで大暴れする際に、体にフィットしたドレスを着用していて、そのパートだけ多少のセクシーさを漂わしている程度でしょうか。

それ以降はほぼ『ジョン・ウィック』にて“キアヌ・リーヴス”ではおなじみの黒のスーツスタイルでイヴも統一されています。そのため、女性暗殺者モノとしてはファッションはなかなかに渋くクールです。

“アナ・デ・アルマス”も『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』で似たような殺しもこなすエキスパートをカッコいいアクションとともに演じていましたけど、満を持しての主演作である『バレリーナ The World of John Wick』で思う存分に暴れることができましたね。

シリーズらしいアクションと展開もたっぷりで楽しかったです。

身の回りにあるものをとにかく使いまくっての痛々しいコンバットの連続。そして執拗にうじゃうじゃとでてくる敵。今回はオーストリアのハルシュタット(実在する自治体ですよ)にてその町がカルト信者だらけでみんな手練れで襲ってくるという…いかにもこのシリーズならではの無茶苦茶な設定になっています。ハルシュタットの地元の人はこの映画をどんな気分で鑑賞するんだろうか…。

階段落ちも決めながら(毎回落ちるんですか?)、スタイリッシュな火炎放射器戦という大盤振る舞い。さらに敵の火炎放射器に対し、イヴは消防放水ホースで対決するという、凄いんだかバカなんだかもはやわからない激突をみせてくれます。もう理屈抜きでノリだけで双方が戦っているな…。

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大先輩からのやけに説得力ある転職の勧め

『バレリーナ The World of John Wick』のメインストーリーの主軸はいたって平凡なので、そこは新鮮味はありません。ジョン・ウィックは愛犬を殺されての復讐の始まりだったのに対し、本作のイヴは両親ともども人生をカルトに台無しにされたことへの反撃なので、そこまで変な導入ではないですし…。

そもそもこの世界自体が殺し屋だらけすぎて、あまりあのカルトが際立っていない感じになっているのもややもったいないところ。正直、この世界観の通常の倫理がよくわからない…。

もうちょっとイブのキャラクターに一癖二癖ある要素を追加してほしかったな…とは思いましたけどね。

“アナ・デ・アルマス”ってどうしても世間的にはセクシーな女優として注目されがちですが、私は“アナ・デ・アルマス”が人間的な脆さをさらけ出したりする演技の深みが良いなと常々感じていますし、ユーモアセンスもある人だと思っていますので、そこを活かせる役柄としてもっと今作もコミットできた気もします。

“ノーマン・リーダス”演じるダニエル・パインが中盤で共闘相手になりますけど、個人的には“シャロン・ダンカン=ブルースター”演じる「ルスカ・ロマ」での先輩のノギや、“カタリーナ・サンディノ・モレノ”演じる姉のレナといったキャラクターとの関係を深掘りして、一緒にダブルバトルしていく展開が観たかったなぁ…。

イヴの場合ならひとりで突っ切るのではなく、もっと関係性の描き方で観客を楽しませる方向に持っていってもいいと思います。あのジョン・ウィックにはあまりできないことでしょうし(彼は犬が一番だから)。

最終的には後半の目玉として登場するのはやっぱりアイツ。“キアヌ・リーヴス”のジョン・ウィックです。今回はほとんどアクションしませんが、その代わり、しきりに撤退を促し、去れ去れおじさんと化します。

でもあれだけ大先輩からのやけに説得力ある転職の勧めは他にないですよね。ジョン・ウィックもこの業界の劣悪さを身に染みてわかっているので(この後も酷い目に遭うし…)、言葉に切実さがある…。

そうは言ってもイヴも業界の掟を破ったので、ジョン・ウィックと同じ顛末を辿っていく様子。この業界、もう労働改革はできそうにないな…。

『バレリーナ The World of John Wick』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)
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関連作品紹介

アナ・デ・アルマス出演の映画の感想記事です。

・『ゴーステッド Ghosted』

・『グレイマン』

・『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』

作品ポスター・画像 (C)2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved. ワールド・オブ・ジョンウィック

以上、『バレリーナ The World of John Wick』の感想でした。

Ballerina (2025) [Japanese Review] 『バレリーナ The World of John Wick』考察・評価レビュー
#アメリカ映画2025年 #レンワイズマン #アナデアルマス #ノーマンリーダス #キアヌリーヴス #殺し屋

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シネマンドレイク

ライター(まだ雑草)。LGBTQ+で連帯中。その視点で映画やドラマなどの作品の感想を書くことも。得意なテーマは、映画全般、ジェンダー、セクシュアリティ、自然環境、野生動物など。

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