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『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』感想(ネタバレ)…続編は新婚生活を描く

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ

続編は新婚生活を描く…映画『ヴェノム2 レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Venom: Let There Be Carnage
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年12月3日
監督:アンディ・サーキス

ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ

べのむ れっとぜあびーかーねいじ
ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』あらすじ

エディの体に寄生した地球外生命体シンビオートのヴェノムは、「人間を食べたい」という食欲制限を強いられて不満を抱えながらも、エディとの共同生活をそれなりに楽しんでいた。そんな中、ジャーナリストとして未解決事件の真相を追うエディは、刑務所で死刑囚クレタス・キャサディと再会する。クレタスは猟奇殺人を繰り返したシリアルキラーで、死刑執行が迫っていた。エディに対し異様な興味を示すクレタスはある行動に出る。

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』感想(ネタバレなし)

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「We are Venom!」第2弾

コロナ禍は多方面に影響を与えまくったものですが、そのひとつが「結婚」です。

新型コロナウイルスの世界的パンデミックが発生した2020年は婚姻の数が大幅に減少。本当にガクっと急減しました。2019年は令和婚ブームなどと呼ばれて少し増えていたのですが、この急転直下ですよ。

まあ、でも今は無理に婚姻関係にならなくてもパートナー関係となることはいくらでもできますし、それぞれの生き方は多様化していますからね。世界を見渡せばすっかり「婚姻」という概念が死後になりつつある気配も感じますし、今後はこういう婚姻の統計は役に立たない部分も増えてくるのかなとは思います。

パートナー関係になるうえで大切なこと、それは何か。経済的な状況? 趣味の理解? 性格の相性? 性的指向? 答えはきっと個人でいろいろあるはず。そして悩みも尽きません。

そんなお悩みを抱えているカップルの皆さん、はい、この映画を観てみませんか。

それが本作『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』です。

本作は2018年に公開されたアメコミ映画『ヴェノム』の続編。記者のエディ・ブロックという男が、シンビオートと呼ばれる地球外生命体に寄生されてしまい、「ヴェノム」という凶悪そうな見た目に変身して暴れまわるという…そんな内容。

え? どこにも結婚要素がない? いや、あるのです。主人公とヒロインの恋愛模様とかではありません。主人公の男とこのヴェノムという地球外生命体がカップルなのです。正式な交際相手ではないですし、恋愛感情はないと思いますが、ほぼ限りなくパートナー関係と同一。そんなカップルありなの?と思うかもしれませんが、いいんです。これでいいんです(気迫)。

そして今作『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は紛れもなく新婚カップルの新婚生活を描く作品になっています。冗談とかではなく。

ということで本作『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は前作で好評だったエディとヴェノムの関係性“萌え”というものをとことん強化した方向性で作り上げており、製作陣はわかっているなという…。むしろそれしか描かれていないとも言えます。今作でも敵は出てくるのですけど、もはやどうでもいい感じですよ。エディとヴェノムの見つめ合いが大事に描かれるだけですから。

監督は前作の“ルーベン・フライシャー”は降りて、俳優&監督業で活躍する“アンディ・サーキス”にバトンタッチ。この監督人選は確かに納得で、なぜなら“アンディ・サーキス”と言えばパフォーマンス・キャプチャが非常に得意なクリエイターです。監督作『モーグリ: ジャングルの伝説』も人間顔動物が印象的でした。今作でもその得意分野がいかんなく発揮されており、ヴェノムが前作の数倍は生き生きと人間らしく愛嬌たっぷりに映像化されています。

主演はおなじみの“トム・ハーディ”。この『ヴェノム』シリーズ、すっかり“トム・ハーディ”の可愛さを堪能できる最高のフルコースになっているなぁ…。本編中ずっと可愛い…。

前作から引き続き、“ミシェル・ウィリアムズ”が登場。ただし、出番はそれほどないです。もう“トム・ハーディ”(エディ)と“トム・ハーディ”(ヴェノム)のカップルばっかりが前に出てくるものだから…。

今作の悪役として異彩を放つのが、『スリー・ビルボード』や『ゾンビランド:ダブルタップ』などクセのある役柄なら何でもこなせる“ウディ・ハレルソン”。今回は激しいアクションを披露する…のですが、大半は“ウディ・ハレルソン”演じる悪役がシンビオートに寄生された状態なので、生身の“ウディ・ハレルソン”は割と全然動いていません。撮影風景はどんなのだったんだろう…。

他には『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の“ナオミ・ハリス”、『ナチス第三の男』の“スティーヴン・グレアム”、『いつかはマイ・ベイビー』の“ペギー・ルー”など。

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は本国アメリカでは2021年10月1日に公開され、前作同様に大ヒットを記録してコロナ禍の鬱屈した空気を吹き飛ばしてくれたのですが、なぜか日本では2カ月遅れの12月3日公開。緊急事態宣言がせっかく解除されたのだから一緒に10月に公開すればよかったのに…。

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』はデートムービーにぴったりのラブラブ映画なので「We are Venom!」しましょう。

なお、映画の最後に衝撃のシーンがありますので見逃さずに! 繰り返します、最後のシーンを忘れずに!

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『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を観る前のQ&A

Q:『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:前作の『ヴェノム』は必見です。あと多くは語りませんけど『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』を観ておくと嬉しいことがあります。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:前作のファンは必見
友人 3.5:盛り上がる展開も
恋人 3.5:パートナーを見つめ直す
キッズ 3.5:人は死ぬけど描写は普通
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):喧嘩中です

カリフォルニア州のサンフランシスコでフリーの記者として働いていたエディ・ブロック。しかし、今はひとりで活動はしていません。文字通り一心同体の相棒がいます。それがヴェノムです。

このヴェノムはもともとライフ財団が研究をしていたタール状の地球外生命体「シンビオート」であり、ひょんなことからエディの体に寄生するようになりました。なぜかエディとは相性がいいらしく、頻繁にエディの体を乗っ取っては問題を起こしたりもしたのですが、その凄まじいパワーで陰謀を企む敵を倒したりもしました。

今、エディは難聴のパトリック・マリガン刑事と会話中。ところが人を食べたいという本能が抑えられないヴェノムは隙あらば人間にかぶりつこうとします。それをなんとか食い止めて、リスペクト精神を教え込むエディ。

マリガン刑事はクレタス・キャサディという極悪犯との面会を繋げてくれました。なんでもエディに会いたいそうです。クレタスはこれまで無慈悲に大勢を殺してきた凶悪な男。なんでも昔はフランシス・バリソンという愛する女性がいたそうですが、警察に連れていかれてしまい、そのときの護送車にいたのがマリガン刑事で、フランシスは爆音の金切り声を発生させてマリガン刑事の耳に深刻なダメージを与えました。その際にマリガン刑事は発砲して、フランシスは片眼を怪我。結局、フランシスは特別な施設に監禁されます。

現在、不気味に淡々と喋るクレタスは今もフランシスを愛しているようです。自信過剰なクレタスは自分の犯罪すらも誇っていました。

しかし、家に帰ったエディはヴェノムの能力を借りて、クレタスの犯した事件の犠牲者の場所を突き当て、一躍大手柄となります。これにはクレタスも感情を露わにして激怒。

でもエディとヴェノムの関係は悪化ぎみに。2人の存在を知っている馴染みの店のチェンも心配そうです。夜の街を闊歩していると、いかにも悪い男を発見。しかし、ここでもヴェノムは人を食べるのは直前でやめさせられます。

そのとき、元恋人のアン・ウェイングから電話。食事することになり、ぎこちないエディに脳内でヴェノムのツッコミが入りつつ、アンは手の指輪を見せ、ダン・ルイスと婚約していることを告白。

エディはショックを受け、意気消沈。ヴェノムの手料理も無視です。

そこへクレタスからの手紙。クレタスはエディの秘密に勘づいたようです。彼を噛んだとき、少し残ったヴェノムのシンビオートの一部をペロっと舐めます。

そんなことも露知らず、エディとヴェノムは大喧嘩。ヴェノムはエディの体から離れてそのへんの通りがかりの人に移り、久々にお互いにひとりとなりました。

互いにひとりの時間を満喫しますが、でもどこか寂しさも消えず…。

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「男」よりも上位の存在

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は紛れもなく夫婦映画でした。

確かに最初は夫婦というよりは男友達感が強いです。アンが完全に自分を置いていって他の男と結婚したことを目の当たりにしてあからさまにショックを受けているエディに対しての、あのヴェノムの手料理奉仕ですよ。いいやつだ…。

ただこのエディとヴェノムは友達なんてものじゃない、もう同棲していて風呂もトイレも一緒の間柄ですからね。そりゃあ、アンが入り込む余地はないよ…。

面白いのはこのヴェノム、ジェンダー・ロールは全然関係がないということ。ヴェノムは「男」ではありませんし、規範的な“男らしさ”も気にしていません。当然、他者に対する反応も同じで、人間を男か女かで見ることもせず、ヴェノムにしてみれば全部が「食べ物」です。

そんなヴェノムに半ばコントロールされているのが序盤のエディです。「sit down!」と命令されて従うしかない姿とか、超高速で絵を描かされたりとか、あらゆる点で自身のプライベートもキャリアも侵食されてしまっています。

これ、もしヴェノムが男性で、エディが女性だったりなど、既存のジェンダーが存在していたら、明らかにただのドメスティックバイオレンス(DV)になってしまいます。全然笑えないでしょう。でもヴェノムだからギャグにできる。この構成を上手く成立させている時点で本作のコメディ映画としては勝ちなんですね。誰も傷つけないユーモアを確立しているのですから。

また、ヴェノムは「男」よりも上位の存在とも解釈できますし、そう見ると既存の男性がそんな存在の登場でいともあっけなく威厳も何もかも失ってしまうという、そんな哀れさも醸し出していて、これはこれでユニークで面白いです。

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夫婦にありがちな…

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』ではそんな新婚生活が始まっているわけですが、早々に亀裂が入ってしまいます。

その原因は「人を食べたい」というヴェノムの欲求にあるのですが、これも解釈によっては面白い捉え方もできます。夫婦間の「合意」の話として…。そういう合意は大切なことです。何でもいいですけど何をするにしてもパートナー同士で合意を適切にとらないと関係は乱れることになるのですから。エディとヴェノムの関係性なんて、片方はヤりたい人でもう片方はヤりたくない人…みたいな構図にも思えなくもない。

ここで独身に戻る両者ですが、ここのヴェノムも超可愛い。仮装クラブで自由を満喫し、でも弱り果て、最後は割とあっさりエディを許しちゃう(「ん~~~~~~~OK!」)。今作のヴェノムは中国語も日本語もこなせる、スーパーキュートな存在感ですよ。なんだ、ダークヒーローはどこへいった…いや、もうダークヒーローではないな…。

対するクレタスとカーネイジは合意不成立で破滅へまっしぐら。あいつらは合意という概念はなさそうだもんなぁ…。

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』は展開がやたらと早いですが(映画時間も短い)、パートナーシップにありがちなドラマはギュっと詰め込んだ一作でした。

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そっちの関係性もついに!

最後はエディとヴェノムの新婚旅行…と思いきや、すっごいサプライズなイベントが発生。『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』のラストで観たあの出来事。それが2人の前で起こっている。

ついにやってきました。マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)との合流のときが。

思えば一時はソニーとマーベル(ディズニー)との特別な提携も解消の危機にあったこともありました。覚えているでしょうか。2019年は危ういという報道もあって、でも交渉の結果、継続が決まったという話も。私はソニーとマーベルの関係性は「セフレ」みたいなものだと思っているのですが、どうやらこの交渉の中ではそれ以上の関係に進展させてみる?という提案があって合意を得たようです。喧嘩してたんじゃないのか…。

つまり、これからはソニーの「世界観(Sony’s Spider-Man Universe)」とマーベルの「世界観(Marvel Cinematic Universe)」もマルチバースによって合体するという、「We are Venom」どころじゃない、「We are Multiverse」ですよ。

ヴェノムがあんなキャラやこんなキャラと一緒に並ぶ世界、楽しみに待ってます。

『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 59% Audience 85%
IMDb
6.6 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)Sony Pictures ヴェノム レットゼアビーカーネイジ

以上、『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の感想でした。

Venom: Let There Be Carnage (2021) [Japanese Review] 『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』考察・評価レビュー