感想は2100作品以上! 検索はメニューからどうぞ。

『ラスト・ウィッチ・ハンター』感想(ネタバレ)…魔女と虫は焼いて食べるべし

ラスト・ウィッチ・ハンター

魔女と虫は焼いて食べるべし…映画『ラスト・ウィッチ・ハンター』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:The Last Witch Hunter
製作国:アメリカ(2015年)
日本公開日:2016年9月30日
監督:ブレック・アイズナー

ラスト・ウィッチ・ハンター

らすとうぃっちはんたー
ラスト・ウィッチ・ハンター

『ラスト・ウィッチ・ハンター』物語 簡単紹介

魔女の呪いで不死になったコールダーは、中世の時代から800年ものあいだ、魔女ハンターとして戦い続けていた。魔女は異形の魔術であらゆる場所に潜み、惑わすような攻撃を仕掛ける。そんな歴戦のコールダーを、ドーランと呼ばれる神父が見守り続けていたが、36代目ドーランが何者かに殺害される。長年の支援者を失ったコールダーは37代目を継いだ新ドーランとともに謎の犯人を探すが…。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ラスト・ウィッチ・ハンター』の感想です。

『ラスト・ウィッチ・ハンター』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

ファンタスティック・ビーストとスキンヘッドの旅

今年11月に公開される「ハリーポッター」最新作映画『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』は、イギリス美青年俳優のエディ・レッドメインが魔法生物に振り回される物語。

でも、主役はスキンヘッドがいい

なるほど、その需要。承りました。そんなニッチな需要に答えるのが本作『ラスト・ウィッチ・ハンター』です。

主役はあの『ワイルド・スピード』シリーズでおなじみ“ヴィン・ディーゼル”。これ以上のスキンヘッドはいますか。「スキンヘッド」とインターネットで検索すれば、この俳優が出てきますよ(テキトーな発言)。

今回はヴィン・ディーゼルは車を捨て、剣とショットガンを手に、魔女やら魔法使い野郎やら魔法生物やらをぶっ倒していきます。その転職っぷりはすごく新鮮です。映画宣伝ポスターの「魔女狩り一筋800年」というキャッチコピーがまたいいですね。伝統職人みたい。

本作は世界観がとても魅力的です。私たちの知っている普通の現実世界なのですが、アンダーグラウンドではバーテンダーとか資産家とかの中に魔女や魔法使いが紛れて暮らしています。「ハリーポッター」に似ていますけど、それよりダークな感じです。

あとはクリーチャーや魔法の描写が結構作り込まれているのも楽しい。本作は「虫」映画です。虫がいかにも気色悪い感じでたくさん登場します。そのため、本作は日本でのプロモーションとして昆虫料理研究会とコラボしているくらいです。少なくとも本作を観て昆虫を食べたくはならないと思いますが…。

ヴィン・ディーゼルとダークファンタジーと虫。それだけで楽しめるという嗜好の持ち主はぜひ堪能してください。

それにしてもなんでヴィン・ディーゼルがこんな映画を?と思う方もいるかもしれません。実は彼は大のゲームマニア。「ダンジョンズ&ドラゴンズ」という世界で最初のロールプレイングゲームとしてその名も有名なファンタジー・テーブルトークRPGのファンでもあり、とにかくゲーム愛が強い人物。彼自身、「One Race Films」という、明らかにヴィン・ディーゼルの会社だなとわかるネーミングの映画製作会社を持っていますが、当然「ダンジョンズ&ドラゴンズ」系のようなダーク・ファンタジーな世界観の映画を作りたいという思いを強めていました。ここからは若干の想像も入りますが、おそらくさすがに本気で壮大なダーク・ファンタジーを作るともなれば大金がかかる。いくらなんでも『ワイルド・スピード』シリーズがヒットしているとはいえ、いきなり新作でそんな金は出せない。そこで比較的現実感のある中規模なファンタジー作品を企画しようとして、今作にいたったのはないかなと。無論、この映画が世間に受ければ続編だって作ってガンガンシリーズ化していく目論見もあったはずです。いずれは『ワイルド・スピード』シリーズに並ぶブロックバスターとして堂々と展開していくことも…とか。

その気合を感じさせる作品にはなっていると思います。とにかくお前は小学生かと言いたくなるような、ヴィン・ディーゼルの子ども的な(中二病といってもいい)発想がたっぷり詰まった映画です。夢を現実にできる男のすることはやっぱり違うなぁ…。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『ラスト・ウィッチ・ハンター』感想(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(前半):魔女狩りの時間

険しい雪山を歩く集団。彼らは異様な禍々しい樹木が混在する地に辿り着きます。

「我らが大地に呪いをかけたのは魔女の女王。そやつの死こそが我らの救済。その心臓が脈打つ限り女王は息絶えぬ」

慎重に進む一団の前に女王が出現、戦闘態勢に入るも魔術の恐ろしさに大混乱。コールダーは炎の剣を振り回して果敢に怪物と戦います。しかし、娘の幻を見てしまい、その油断を突かれて、一撃を受けます。捨て身の大炎上で渾身の攻撃を振りかざし、魔女の女王の息の根を止めようとしますが、その間際に不死の呪いをかけられ…。

年月が経過。空を飛ぶ航空機。機内のコールダーは魔術の気配を察知します。ひとりの人間に目をつけ、隣に座ります。「魔女ハンター?」「そうだ」

その人は魔女です。古代の呪術道具を取り出し、扱い方がマズいと指南。「まったくお前らは魔女の己の力を知らなすぎる」と呆れているような発言をします。機体は悪天候で激しく揺れ始めますが、コールダーは冷静に呪術道具をいじり、すると天候は回復。機体の揺れも止まりました。

「私を魔術評議会へ?」「いいや」「殺すの?」「命を救ってやる」

現代でも古代の魔術は色あせて半ば忘れられていますが魔女たちは潜んで暮らしていました。戦いの結果、協定ができ、魔女は生存権と自治権を得ました。ただし、人間に対して魔術を使ってはいけません。しかし、中には女王が君臨した暗黒時代の復活を望む者もいます。コールダーは800年もの間「斧と十字架団」に仕え、悪を見張り、平和を守ってきました。

ドーラン神父はコールダーのもとへ。36代目ドーランである彼は長年ずっとコールダーを支えています。ドーランはそろそろ引退を考えているようです。一方、コールダーはこの仕事に満足しているそうで、辞める気はありません。

しかし、36代目ドーランが亡くなったという知らせを聞きます。37代目ドーランがすぐに任命されるも、コールダーとの信頼関係はまだありません。コールダーは36代目ドーランの死に不可解さがあると疑っていました。引退をしようかと語ったその日に死ぬというのは変です。

36代目ドーランの部屋に行き、魔術の痕跡を探します。床に落ちているハエの死体に気づき、魔術を確認。ドーランを殺害したとなれば前代未聞です。しかも、これは「黒魔術(ダーク・マジック)」

コールダーは37代目ドーランを一瞬疑うも、無実。彼は幼い頃に両親を魔女に殺されていたのでした。それ以来、ずっとコールダーを支えたいと思っていました。

こうして魔女狩りが始まります。

スポンサーリンク

ビジネス・ライクなヴィン・ディーゼル

いかがでしたか。スキンヘッドに虫という組み合わせは。なかなかないトッピングだったでしょう。

とにかく「俺の考える現代ダーク・ファンタジーはこれだ!」というヴィン・ディーゼルの執念が詰まっている本作。あらためて思いますが、自分の作りたい映画を趣味全開で作れる彼の立場は凄い。もちろん、ここまで上り詰めるのに苦労したのでしょうけど…。

ただ、どうだろうか。さすがに今作はスタートダッシュは良いとは言えない気もします。

髭も髪もあるヴィン・ディーゼルっぽくないヴィン・ディーゼルが戦う冒頭での中世の戦い。このシーンが本作で一番派手なんじゃないだろうか…

そう、この映画、ヴィン・ディーゼルが主演なのに、アクションの見せ場が乏しい。武器や魔法はたくさんでてくるのに、予算不足なのかどれも映像の盛り上がりはイマイチ。しかも、なぜかカッコいい車はでてくるけどカーアクションはないという…じゃあ、出すなよと思ってしまいますが、まあ、主役がこのスキンヘッドだったら出さないわけにはいかない。もはやスマホを持ち歩く感覚で、カッコいい車を持ち歩いているような人ですからね。

あとすごくどうでもいいことですけど、終盤で使ってた剣、小さくないですか? ヴィン・ディーゼルの体格に明らかに合ってない気がする…もうワンサイズかツーサイズくらい上じゃないと。途中、ファイヤーソードになって幾分華やかさは増すけど、でもショボい。ただ、このファイヤーソードが最終的な切り札的になる展開は、すごくヴィン・ディーゼルらしい。このアイディアは小学生に匹敵するもの。私も小学生脳だからちょっと面白くなっちゃった…。

それに銃だったり剣だったり武器がころころ変わりますが、結局、魔女はどうやったら倒せるのか謎なまま。火が苦手なようにも見えるし、剣で串刺しにすればOKみたいな描写もある…。でも気にしない。とりあえずカッコよく倒せることが大事。そもそもヴィン・ディーゼル作品は敵に勝つロジックなんて気にしている映画は皆無ではないだろうか。とりあえず頑張る…みたいな精神アタックですからね。

このへんの設定の曖昧さが原因で、コールダーの存在価値がよくわからない。「魔女狩り一筋800年」のコールダーしかできないことを簡潔に示してくれれば…。そんな不満もこの作品にぶつけるのは間違っている気がする。

前述した世界観はせっかく良いのに、残念。アクション、ドラマ、キャラクター、いずれも噛み合ってないです。でも何か悪い気はしない。

私は蝶使いのアイツ(名前は忘れた)とか気に入ったんですけど、あっさり退場しましたね。ビジネスライクに事を進めるヴィン・ディーゼルもいいですが、おそらく観客が期待していたのは、魔女やバケモノを片っ端から豪快なド派手アクションで倒していく姿だと思うのです。それを描いているだけでこの手のジャンル映画のファンによる本作の評価は上がったはずではないでしょうか。剛腕と大剣で魔女を消し炭にかえたのち、さわやかに虫をガブリと食べて「うまい」とキメゼリフを放つ…こうしてれば、昆虫料理の人気にも火が付いた…かもしれない。

本作、当初は続編『ラスト・ウィッチ・ハンター2』の企画もあったみたいですが、アメリカでの興収・批評ともに芳しくなく、お蔵入り。個人的には終わるのはもったいない惜しい作品です。だいたい『ワイルド・スピード』シリーズだって1作目からフルスロットルで絶好調だったわけではないし、ある程度作品数を重ねないと、ヴィン・ディーゼルはアクセル踏めないんですよ。

やっぱりヴィン・ディーゼルは車に乗るしかないのか…。

こうなったらあれです。『ワイルド・スピード』シリーズの最新作でダーク・ファンタジーにしようか。もうあっちのメンバーは普通の敵じゃ満足しないでしょ。化け物と戦うくらいがちょうどいい。モンスター相手に車で突っ込むんです。魔法防御力を引き上げた特殊走行の車とか、異空間転送装置のついたハイパーエンジンとか、時間停止能力のヘッドライトとか、車体分身が可能な残像ドライビングとか。どうしよう、くだらない小学生レベルの妄想ならいくらでもでてくる。

いつか検討してみてください、ヴィン・ディーゼル先生。

『ラスト・ウィッチ・ハンター』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 17% Audience 43%
IMDb
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

(C) 2016 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. ラストウィッチハンター

以上、『ラスト・ウィッチ・ハンター』の感想でした。

The Last Witch Hunter (2015) [Japanese Review] 『ラスト・ウィッチ・ハンター』考察・評価レビュー