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『ウィッシュ』感想(ネタバレ)…ディズニーはいつになったら願いを叶えるの?

ウィッシュ

まだ叶えていない願いがある…映画『ウィッシュ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Wish
製作国:アメリカ(2023年)
日本公開日:2023年12月15日
監督:クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン

ウィッシュ

うぃっしゅ
ウィッシュ

『ウィッシュ』物語 簡単紹介

どんな願いも叶うと言われているロサス王国。魔法を操って国を治めるマグニフィコ王は国民から慕われている。多くの国民は自分の願いをその王に預けていた。しかし、お城で働く17歳のアーシャは、ある秘密を知ってしまう。それでもその状況を打ち明けられるのは子ヤギのバレンティノくらいしかいない。そのとき、空から思わぬ出会いがやってきて、アーシャはみんなの願いのために奮闘する。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『ウィッシュ』の感想です。

『ウィッシュ』感想(ネタバレなし)

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100年ぶんの願いがこもっている

2023年に創立100周年を迎えた「ウォルト・ディズニー・カンパニー」

1923年に誕生し、計62作の長編アニメーション映画を生み出しました。

ディズニーは単なるアニメーション・スタジオというだけでなく、映画界にアニメーションの価値を認めさせた大きな実績があります。今ではアニメーション映画なんて当たり前にありますが、昔はアニメーションというのは子どもじみたコンテンツのようにみなされ、芸術としてそこまで評価されてきませんでした。アカデミー賞にもアニメーション専門の部門はなく、扱いは冷たいもので…。

しかし、1937年に公開されたディズニー初の長編アニメーション映画『白雪姫』から流れは変わりました。映画界にとってアニメーション映画は無視できないものになっていったのです。

それだけでなくディズニーのアニメーションはさまざまなクリエイターに刺激を与え、日本でも手塚治虫などディズニーの影響が色濃い作家はたくさんいます。

皆さんの中にも好きなディズニー長編アニメーション作品がある!」という人もいるはず。ディズニー側も『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』という短編を作るなど、2023年はお祝いムードを全開にだしています。

そんな100年のセレブレーションを飾る2023年最後の1作(62作目)が本作『ウィッシュ』です。

タイトルからしていかにもディズニーのエッセンスである「願い」を全面に打ち出していますが、内容もディズニーらしさで装飾されており、100周年スペシャル映画みたいな趣です。今作はいつもの3DCGではなくて、少し2Dアニメーション風になっているのも過去作を意識してのことでしょう。

『ウィッシュ』はディズニーと言えばやはりこれだと思う人も多いでしょう、ディズニー・プリンセスの系譜となっています。ただし、『ウィッシュ』の主人公は別に王族の人間ではありません。お姫様にもなりません。最近のディズニーは王族設定をあまり気にすることなく、ディズニー・プリンセスを冠することに躊躇いないので、そのへんはいいのでしょうね。

また、ディズニー・プリンセスは作品ごとに舞台がガラっと変わって世界中を旅するような気分を味わえるのが伝統です。『アナと雪の女王』は北欧、『モアナと伝説の海』はポリネシア、『ラーヤと龍の王国』は東南アジア、『ミラベルと魔法だらけの家』はコロンビア…。

今回の『ウィッシュ』は100周年作品ということでどこを舞台にするのかも着目されるのは当然だと思いますし、選出するのも難しそうですが、舞台は「イベリア半島沖の地中海のどこか」という設定になっているそうです。

ここを選んだ理由は、おそらく多様な人種や文化を織り交ぜて描きやすい立地だから…なのだと思います。地中海ならヨーロッパ、アフリカ、中東などの地域が重なり合いますからね。実際、作中でもかなり多彩な人種のキャラクターが入り混じって描かれています。

『ウィッシュ』の主人公であるヒロインのアーシャも有色人種となっており、肌は濃いです。ブラック系の肌のプリンセスとしては『プリンセスと魔法のキス』に続くものとなります。声を演じているのは、『ウエスト・サイド・ストーリー』でアカデミー助演女優賞を受賞した“アリアナ・デボーズ”で、彼女もプエルトリコとアフリカとイタリアの血をひくので、この『ウィッシュ』のレプリゼンテーションを象徴するのにぴったりなキャスティングです。

『ウィッシュ』にて“アリアナ・デボーズ”と声で共演するのは、『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』でも陽気に歌っていた“クリス・パイン”。今作でも歌います。というかこっちのほうが歌ってます。

他にはディズニーではすっかりおなじみの“アラン・テュディック”も声を担当。個人的にはドラマ『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』“ハーベイ・ギーエン”(ハーヴィー・ギレン)がでているのが嬉しい…。

記念すべき『ウィッシュ』を監督するのは、『アナと雪の女王』を大ヒットに導いたベテランの“クリス・バック”。そして共同監督として新人でタイ出身の“ファウン・ヴィーラスンソーン”です。

脚本は、『アナと雪の女王』を手がけ、現在のディズニーでクリエイティブのトップ(CCO)に立つ“ジェニファー・リー”

『ウィッシュ』は、ディズニー・ファンのためのディズニー・ファンに贈るディズニー・ファンであることを祝福する…ものすごくファンダムに寄った一作ですので、熱心なファンは特別な感慨に浸れるのではないでしょうか。

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『ウィッシュ』を観る前のQ&A

✔『ウィッシュ』の見どころ
★ディズニー・ファン向けに特化している。
✔『ウィッシュ』の欠点
☆新鮮さは薄い。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:ファンであれば
友人 3.5:ディズニー好き同士で
恋人 3.5:気軽なエンタメ
キッズ 4.0:子どもは見やすい
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ウィッシュ』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):星に願いを…

昔々あるところに、魔法を手にしたマグニフィコという男がいました。彼はその魔法の力を使って王となり、妻のアマヤ王妃とともに、とある場所にロサス王国を築き上げます。この王国は魔法で豊かに繁栄し、王は国民たちの願いを聞き入れ、いつしかそれが伝統になっていきました。

このロサス王国内で暮らす17歳のアーシャは、子ヤギのバレンティノと一緒に伸び伸びと生活しており、もうすぐで100歳を迎えるアーシャの祖父サビーノの誕生日を祝おうと張り切っていました。

街へ繰り出すと、王がみんなの願いを聞き入れるセレモニーが近づいているので、盛り上がっています。アーシャの気分も最高潮です。祖父の願い事が叶うかもしれないとワクワクが止まりません。

アーシャの友人であるダリアにも「リラックスして」と言われてしまいます。ダリアの他にも、サイモン、ガーボ、サフィ、ハル、バジーマ、ダリオといった親友に囲まれ、アーシャは充実していました。

そこへアマヤ王妃がやってきて、王が待っていると言われます。王の前に立ったアーシャは恐縮し、頭を下げます。王は堂々としており、魔法の願いの部屋を見せてくれました。そこには無数の願いが球のように浮かんでおり、それぞれの人の想いが込められていました。

アーシャの祖父の願いはインスピレーションで喜びを人々に与えること。しかし、王の口からは予想していなかった言葉が発せられます。その願いは危険だと言い出したのです。しかも、叶えられなかった願いを持ち主に返すつもりは決してないとまで…。

ショックを受けたアーシャが疑問を口にすると、憤怒の形相でアーシャを威嚇する王。そこで議論は終わりです。

パフォーマンスの舞台に戻った王は大衆を盛り上げ、何も知らない人の願いを受け取ります。その間ずっとアーシャは浮かない顔でした。

帰宅し、落ち込む祖父と母の前で、アーシャは口に出そうか迷います。それでも王が願いを脅威として扱っていたことを話すと、祖父はなおも王を頑なに信じているようで、アーシャは必死に訴えるも、その言葉は届きません。

たまらず外へ飛び出すアーシャ。居ても立っても居られず、夜空にひときわ大きく輝く星に想いをぶつけます

その瞬間、眩く光が降り注ぎ、街全体を照らします。みんなうっとりし、王だけは困惑していました。

何が起きたのかと興奮していたアーシャ。ふと目の前に地面あたりを高速で飛び回る黄色い何かがいるのを発見。それは星のようです。とりあえず「スター」と呼ぶことにします。

そのスターが振りまいている粉のようなものを浴びた植物や動物たちは急に人の言葉を喋れるようになり、バレンティノも軽快に会話してきます。

一体何が起こったのかわかりませんが、このスターの力があれば何かを変えられるのかもしれない。アーシャはそう思い立ち、行動を開始します。

ところが王はそれを許すはずもなく…。

この『ウィッシュ』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2023/12/29に更新されています。
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祝いたいのはわかるけど…

ここから『ウィッシュ』のネタバレありの感想本文です。

『ウィッシュ』は100周年スペシャル映画らしい佇まいで、コンセプトとしてやりたいことはよくわかります。

主人公のアーシャはプリンセスというよりは言ってしまえば「ミッキーマウス」的なポジションであり、魔法に憧れてマグニフィコ王の見習いになっているあたりからしても、『ファンタジア』「魔法使いの弟子」の構図そのままです。

そのアーシャがなんやかんやあって、『白雪姫』7人の小人っぽい親友たちに支えられつつ、強欲な王の支配に立ち向かうことになり、それは民衆の蜂起としても描かれます。レジスタンス的な活動が起きるのはこういうディズニー・プリンセスものでは異例ですが、まあ、現代ならばこれくらい当然でしょうか。

結果、王は打倒され、アーシャは正式の魔法の杖を手にし、魔法の良き継承者となります。その姿は『シンデレラ』「フェアリー・ゴッドマザー」にそっくりな出で立ちで、ある意味ではメタな前日譚とも解釈できます。

夢と魔法の王国の次世代として、家父長制からアーシャのような人物にバトンタッチする…100周年だからこれをやろうという意志が伝わるストーリーでした。

ただ、コンセプトはよくわかるにしても、これでもやっぱり物語の斬新さは薄く、予定調和なところは否めません。こうなんだろうなと鑑賞前に思っていた予想どおりの話が展開するだけで…。「まさかこんな話になるとはね!」みたいな話題性が皆無です。

要するに本作は100周年スペシャル映画という枠には綺麗に収まっているけども、本当にそれだけになってしまっているのが最大の欠点だと思います。

例えば、前述した以外にも本作は過去のディズニー作品のオマージュだらけです。そんなイースターエッグを探すのはディズニー・ファンには楽しいでしょうが、本編の面白さと関係ありません。

全体的に「これまでのディズニーを祝いましょう!」という祝賀会の雰囲気が強く、一方で何も新しいことがないので、後者を期待していた場合はすごく物足りなさが残る作品です。

もちろん、“アリアナ・デボーズ”の歌唱とか、スターのコミカルな可愛さとか、そういうのはあります。でもそれはディズニー作品としては当然のクリアのラインなので…。

これが『塔の上のラプンツェル』(2010年)の次に公開されていた作品だったら、『ウィッシュ』は相当に新しいディズニーを印象付ける映画として語られていたと思うのですよ。有色人種のヒロインだし、恋愛要素もないですし…。

しかし、2023年にこれだとね…。2023年に今のソーシャル・アクティビスト全盛期の若い世代が求めるディズニー作品はこれじゃないよなとは…。『バービー』が大ヒットした2023年ですからね(『バービー』も最先端というほどではないのだけど)。

せっかくの100周年なのにディズニーの悪い保守的な部分が逆に色濃く出てしまった感じさえあります。コンセプト自体や着眼点は悪くないのにこれはもったいないです。

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過去作のほうがよっぽど…

『ウィッシュ』以前のディズニー作品のほうがよっぽど斬新な挑戦をしているんですよね。

例えば、直近なら『ミラベルと魔法だらけの家』は圧倒的な音楽のインパクトを持ち合わせつつ、家族というコミュニティの良いところも悪いところも活写してみせていました。

『ウィッシュ』のアーシャの家族はかなりお行儀よくまとまっており、それ以上の特筆性はそんなにありません。正直、今回みたいな内容なら、別に無理に家族をだす必要もないのに…とすら私は思うけども…。

また、『モアナと伝説の海』では閉鎖的なコミュニティをどうやってその殻をこじ開けるかを描き抜き、『ラーヤと龍の王国』では歴史的に対立し合うコミュニティをどうやってまとめるのかをパワフルなヒロインの先導で描いてみせました。

『ウィッシュ』は王の打倒のためにあの王国の民は案外とあっさり団結してくれます。別に普通の予想として、もっと王の支持派と反対派に分断してひと波乱あるのかと思ったのですが、そんなこともなく…。あの闇堕ちしかけたサイモンの展開ももっと捻りを加えることはできなかったのかと思うし…。

マグニフィコ王の悪役としての凡庸さもイマイチなところです。彼がヴィランなのは鑑賞前から宣伝でわかりきっていた部分ですが、普通のヴィランで退場するものだから…。あそこまでヴィランを押し出すなら、実はさらなる黒幕がいるとかやるのかなとも考えたのに…

マグニフィコ王は結構古典的な悪い奴で、あの王妃相手にDV的な抑圧を平気でしている男でもあり、それをテーマにしていっても良かったと思うのです。アーシャに加えて、アマヤをW主人公にするくらいの押し出しで…。そこを掘り下げてくると新しさもでるだろうに…。

別の面では、『アウルハウス』『ストレンジ・ワールド もうひとつの世界』と昨今のディズニー作品はクィア表象も取り入れ始めている中、『ウィッシュ』は停滞していたのも残念。

いや、本当に、権力体制の打倒とか、異なる者同士の連帯とか、そういう点においても私は現行のディズニー作品で最もプログレッシブなのは『アウルハウス』だと思ってますからね。『ワンス・アポン・ア・スタジオ -100年の思い出-』に『アウルハウス』のキャラクターがでてこないのが悲しかったよ…。

そんなこんなで『ウィッシュ』はディズニーの「100周年スペシャル」の祝賀映画としては100点、未来を担うオリジナリティとしてはマイナス80点くらいで、差し引きで「う~ん…」な気分が虚しく点滅する、そんな作品だったかなというのが私の結論です。

ディズニーにはこれまで願いを叶えてこなかった人の願いを本当に叶えてくれる企業になってほしいです。そうじゃないともう100年も王国は続かないですよ。

『ウィッシュ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 48% Audience 81%
IMDb
5.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
5.0

作品ポスター・画像 (C)2023 Disney. All Rights Reserved.

以上、『ウィッシュ』の感想でした。

Wish (2023) [Japanese Review] 『ウィッシュ』考察・評価レビュー