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『クライム・ゲーム』感想(ネタバレ)…ソダーバーグは突然の事態でも冷静です

クライム・ゲーム

ソダーバーグは突然の事態でも冷静です…映画『クライム・ゲーム』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:No Sudden Move
製作国:アメリカ(2021年)
日本では劇場未公開:2022年に配信スルー
監督:スティーヴン・ソダーバーグ

クライム・ゲーム

くらいむげーむ
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『クライム・ゲーム』あらすじ

1950年代のデトロイト。ある書類を手に入れるためにとりあえず集められた3人の男たち。仕事は簡単に終わるかと思ったが、思わぬトラブルが起きてしまう。書類のありかを知る男の家に押し入り、彼の家族を人質として見張るという容易に片付く任務だったはずが当初の計画が大幅に狂い、互いに疑心暗鬼になりながらも、なんとか事態を有利に進めようとする。その書類をめぐる陰謀には想像以上に多くの者が関わっていて…。

『クライム・ゲーム』感想(ネタバレなし)

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ソダーバーグは冷静だった

2020年、突然のパンデミックは世界を覆い尽くし、映画業界も大混乱しました。トラブルに慣れっこな製作の人たちもさすがに新型コロナウイルスなどという未知の感染症にはあたふたです。何しろ前例がありません。どうやってリスクに向き合えばいいのか、情報を求めて右往左往するばかり…。

しかし、そんな中で、この監督は冷静だったといいます。その人とは“スティーヴン・ソダーバーグ”です。1989年に26歳で初めて監督した長編映画『セックスと嘘とビデオテープ』でカンヌ国際映画祭のパルム・ドールを受賞し、とてつもないキャリアのスタートを切った天才。以降も多作でさまざまな映画を作り続け、2022年現在は59歳ですが、その創作の熱は衰えていません。

そのずっと映画業界に身を捧げてきた“スティーヴン・ソダーバーグ”がなぜコロナ禍でも平静でいられたのか。その理由は2011年に『コンテイジョン』という感染症のパンデミックを描いたスリラー映画を監督した経験があるからでした。当然、この映画を撮る際は徹底的にリサーチ済みで、“スティーヴン・ソダーバーグ”も感染症対策に詳しくなっていました。もしパンデミックが起こるとしたら、それがどう事態を悪化させ、それに対してどんな対策が適切なのか…。しっかりシミュレーションできていたわけです。

ということでコロナ禍においても狼狽える他のスタッフに対して「大丈夫、ワクチンがそのうちできるから」と“スティーヴン・ソダーバーグ”監督は落ち着かせていたとか。創作経験が予想外なところで役に立つ瞬間でしたね。

そんな感染症リテラシー高めの“スティーヴン・ソダーバーグ”監督はコロナ禍でも創作を止めません。2021年はこんな映画を世に送り出しました。

それが本作『クライム・ゲーム』です。

原題は「No Sudden Move」なのですが、邦題は「クライム・ゲーム」という味気のないタイトルになってしまいました。でも中身はソダーバーグ節が詰まっていますよ。

『クライム・ゲーム』はいわゆる「ケイパーもの」ですが「コンゲーム映画」としての側面が濃いです。つまり、詐欺や騙し合いをテーマにした痛快な犯罪サスペンスのことですが、“スティーヴン・ソダーバーグ”監督の『オーシャンズ13』よりはエンタメ色は薄く、どちらかと言えば『さらば、ベルリン』みたいなノワール色が目立つ感じ。

物語は、とあるギャングのひとりが主人公。わりとカネに困っていたその男は、ある人間から犯罪的な仕事を受注。ところがそれは思っているほど簡単なものではなく、色々な陰謀が渦巻いていました。さまざまな人物が関わってくる中で、その駆け引きに勝つのは誰なのか…というあたりがメインの見どころ。

“スティーヴン・ソダーバーグ”監督らしいテキパキと進んでいく展開と、登場人物が次々と現れては予想外のドミノ倒しを起こしたりする緩急あるサスペンスは、監督ファンにとっても「これだね」という感想なんじゃないでしょうか。

俳優陣も地味に見えて実は豪華で、主人公を演じるのは『オーシャンズ13』でも付き合いのある“ドン・チードル”。最近はアーマーつけている姿ばかりの印象ですが、今作では渋くキメています。そして監督とは『トラフィック』などでタッグを組んだ“ベニチオ・デル・トロ”。この2人が本作の主役級です。

他には、『ブラック・ウィドウ』の“デヴィッド・ハーバー”、『ザ・レポート』の“ジョン・ハム”、2022年に亡くなってしまった“レイ・リオッタ”、ドラマ『メディア王 ~華麗なる一族~』の“キーラン・カルキン”、『センター・オブ・ジ・アース』の“ブレンダン・フレイザー”、『クワイエット・プレイス』の“ノア・ジュープ”、『マヤの秘密』の“エイミー・サイメッツ”、『ハイ・フライング・バード 目指せバスケの頂点』の“ビル・デューク”など。

さらにサプライズなゲスト枠もいますが、それは観てのお楽しみ。

最近の“スティーヴン・ソダーバーグ”監督作はずっと劇場未公開だったのですが、この『クライム・ゲーム』もビデオスルーになってしまったことはやや残念です。映画館で上映されれば、あのソダーバーグですし、出演者もなかなかの顔触れだし、一定の映画ファンは観に来るだけの訴求力があるのに。

“スティーヴン・ソダーバーグ”監督のノワールなコンゲームを堪能したい人はぜひどうぞ。

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『クライム・ゲーム』を観る前のQ&A

✔『クライム・ゲーム』の見どころ
★豪華な俳優陣による渋い駆け引きに惹きこまれる。
✔『クライム・ゲーム』の欠点
☆物語の展開はやや地味。
作品を観れます!
『クライム・ゲーム』
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オススメ度のチェック

ひとり3.5:監督ファンは注目
友人3.5:俳優ファン同士で
恋人3.5:ロマンス要素は薄め
キッズ3.0:大人のドラマです
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『クライム・ゲーム』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『クライム・ゲーム』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):3時間で済むわけない

1954年のデトロイト。ギャング絡みで出所したばかりだったカーティス(カート)・ゴインズはおカネ欲しさに手頃な仕事を探していました。そんなとき、知り合いのジミーから仕事を仲介してもらいます。会いに来いと言われてやってきましたが、詳しくはわからないとジミーも言います。

案内されたのは路地裏に止まっている車の中。その後部座席に座ると「カートか?」と聞かれ、「あんた誰だ?」と質問すると「ジョーンズだ」と相手は言ってきます。

仕事の内容は、ある会社に務める男を自分のオフィスに行かせてあるものを家まで持ち帰らせること。そいつが帰ってくるまで家族を子守するチームのひとりだと言われます。誰も傷つけない、3時間で済む仕事だと…。

とりあえずそのまま車に乗って移動。次にロナルドという男を乗せます。お互いに警戒しますが、今回の仕事の仲間ということらしいです。

さらに3人目のもとに向かいます。チャーリーという男です。互いに牽制し合いながら部屋で話す3人。カートは「雇い主はフランク・カペリ絡みじゃないと言えるか」と慎重ですが、チャーリーは「イリノイのある組織だとか」と情報通な口ぶり。一方でロナルドとチャーリーはカートがアルドリック・ワトキンスの重要な書類コードブックを持っているという疑いについて密かに会話します。

ある朝、メアリー・ワーツはいつものように家事をしていました。するとそこに覆面で目を覆った謎の3人が押しかけ、「いつもの月曜日と同じように振舞え」と脅してきます。息子のマシューも身動きがとれません。そこに夫のマットと娘が降りてきて、チャーリーは「金庫の書類を俺と取りに行くんだ」と命令。「私は金庫の番号を知らない」とマットは怯えて言いますが、秘書に聞けばいいので連行。チャーリーとマットは車で出ていくのでした。

後はカートとロナルドが残った妻子を見張っています。すると急な女の子の訪問者があり、何事も無く対応するメアリー。早く夫が無事に帰ってくることを祈ります。

そのマットは動転しつつ、出勤。GM(ゼネラルモーターズ)の会計士がマットの職業。秘書ポーラのもとへ行き、「金庫を今すぐ開けたい」と主張します。実はこのポーラとは不倫関係にありましたが、それどころではないので、強引にメモを奪って金庫へ。ところがメル・フォーバートが書類を持って行ったそうで、マズいことになります。

とりあえずテキトーな書類をジョーンズに渡し、チャーリーと帰宅。しかし、チャーリーはマスクもつけずに「家族を全員リビングに移せ!」と怒鳴り、今にも殺害しそうです。何か別の指示を受けているようで、何か怪しいと睨んだカートはチャーリーをその場で撃ち殺してしまいました

騒然とする家内。電話が鳴り、メアリーは電話に出ると「さっき帰ってきた奴と変われ」と言われます。 しょうがないのでカートがでると「ロナルドと家族を殺せ」と指示を受けます。マットいわく金庫が空で他の書類を封筒に入れて渡したとのこと。

カートはその指示に従わず、ロナルドと車で家を出て、途中でフランク・カペリの仲間を見かけ、事態が自分たちの知らぬ間に緊迫していることを察知します。そこでジミーを脅して聞き出すとカペリとワトキンスが関与しているようです。

この誰が黒幕かもわからない状況で、最後に立っていられるのは誰なのか…。

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黒幕に振り回される男たちと、乗りこなす女たち

『クライム・ゲーム』はジャンルとしてはかなり定番のコンゲーム映画であり、ノワールとしてもいかにもな空気を漂わせています。

冒頭の仕事の依頼から怪しさプンプン。ダグ・ジョーンズを演じる“ブレンダン・フレイザー”がもう怖そうですもんね。ちなみに“ブレンダン・フレイザー”、すっかり体型が変わっているなと思いましたけど、これは主演作『The Whale』での役作りの結果らしいです。

そしてカート、ロナルド、チャーリーという全く雰囲気の異なる3人が仕事に駆り出されます。観客にとってもこの3人の素性がわからないので、どこまで信用できるかさっぱりです。

とくにチャーリーは“キーラン・カルキン”の飄々としたお調子者みたいな佇まいも相まって、何かかき乱してくれそうでしたが、前半でいきなりの退場。ここでカートが撃つときには撃つ奴だということもわかり、少しカートの評価が上がります。逆にロナルドは顔は“ベニチオ・デル・トロ”なので見た目が怖いってのはありますけど、案外と小心者というか、その場の瞬発的判断力がないですね。

そして黒幕は誰なんだという情報不確かな中で、カートとロナルドはこの駆け引きに上手く乗っかって利益を得ようと画策。ここでもすぐに逃げたりしないあたりのカートの勝負への自信が見て取れます。

黒幕はフランク・カペリか、アルドリック・ワトキンスか、ネイスミスって奴の名も飛び出すし、ジョー・フィニー刑事もまさか絡んでいるのか…。そんな二転三転ありつつ、後半でしれっと登場するのがマイク・ローウェン。演じているのは“マット・デイモン”です。「お前かよ!」って感じですが、まあ、オチとしては楽しいかな。

ただ、この『クライム・ゲーム』で注目してほしいのは男たちよりも女たちかもしれません。本作の女性陣は男以上に駆け引きが上手く、度胸があります。マット・ワーツの妻のメアリーもあの家庭の緊迫した空気の中でここは自分の縄張りだと言わんばかりの主導権を握っていますし、ロナルドと関係を持つフランク・カペリの妻ヴァネッサもきっちり後半は出し抜いてくる名シーンが用意されており、さらにマットと愛人関係にあった秘書のポーラすらもなかなかの強者で肝が据わっていました。こういうコンゲーム映画で、ちゃんと妻や秘書というポジションにいる女性が添え物になっていないというのはいいですね。

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実は日本の映画が元ネタに

『クライム・ゲーム』は40年代・50年代のハリウッドのノワール映画を参考にしているんだろうなと見ている最中は思っていたのですが、あらためて製作者のインタビューを読んでみると、なんとある日本映画がインスピレーションを与えていたことがわかりました。

本作の脚本家は『ビルとテッドの大冒険』でおなじみの“エド・ソロモン”なのですが、「SlashFilm」のインタビューの中で、日本映画の名をだしています。それが『黒の試走車(テストカー)』という、1962年に“増村保造”監督が手がけた作品。これは産業スパイを描いた物語で、自動車業界を巡る企業間の駆け引きをサスペンスフルに映し出しています。

“エド・ソロモン”はこの日本映画を偶然におそらく違法動画か何かでフルで鑑賞したらしいのですが、そんな違法アップロードされた映画動画が海外でインスピレーションのアイディアになっているとは…(違法行為を推奨はしませんよ)。

私もこの『黒の試走車(テストカー)』を見たことがなくて、もちろん違法動画で観るわけにもいきませんのでレンタルショップで探して今回を機に視聴しました。中身は『クライム・ゲーム』とは違うのですが、この自動車業界モノを土台に、アメリカっぽくギャングを絡めていったんだなというのがわかります。

『クライム・ゲーム』の社会背景もエンディングのクレジットどおり事実です。“スティーヴン・ソダーバーグ”監督はあの金庫の書類をマクガフィンでは終わらせません。当時は排ガス対策をしないことで自動車メーカーが結託し、排気システムがすでに完成されていたにもかかわらず、それを隠蔽していたんですね。アメリカ自動車メーカーのビッグスリーと言われる、ゼネラルモーターズ、フォード、クライスラー…そしてそれに並ぶスチュードベーカー…。ギャング以上に自動車企業の方がワルだったという話です。同じくアメリカの自動車業界の暗部を描く『ナイスガイズ!』に似た風刺ですね。

またしても手際のよい“スティーヴン・ソダーバーグ”監督のセンスを感じられた一作でした。

『クライム・ゲーム』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 92% Audience 58%
IMDb
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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関連作品紹介

スティーヴン・ソダーバーグ監督の映画の感想記事です。

・『レット・ゼム・オール・トーク』

・『ザ・ランドロマット パナマ文書流出』

・『ハイ・フライング・バード 目指せバスケの頂点』

作品ポスター・画像 (C)Warner Bros. Japan LLC All rights reserved. クライムゲーム ノーサドンムーブ

以上、『クライム・ゲーム』の感想でした。

No Sudden Move (2021) [Japanese Review] 『クライム・ゲーム』考察・評価レビュー