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ドラマ『マーダーズ・イン・ビルディング』感想(ネタバレ)…犯人当ての謎解きを配信中!

マーダーズ・イン・ビルディング

犯人当ての謎解き過程を配信します?…「Disney+」ドラマシリーズ『マーダーズ・イン・ビルディング』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Only Murders in the Building
製作国:アメリカ(2021年~)
シーズン1:2021年にDisney+で配信(日本)
シーズン2:2022年にDisney+で配信(日本)
原案:スティーヴ・マーティン、ジョン・ホフマン
恋愛描写

マーダーズ・イン・ビルディング

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マーダーズ・イン・ビルディング

『マーダーズ・イン・ビルディング』あらすじ

ニューヨークにある高級アパート「アルコニア」に暮らす3人の住人。叔母の部屋を改装中だというメイベルと、セミリタイアした俳優のチャールズ、売れないミュージカル監督のオリバーは実録犯罪ドキュメンタリーのマニアであるという共通点があった。ある日、アパート内で起きた死亡事件のアマチュア捜査を一緒に始めるのだが、一緒に事件の真相を追っていくうちに、本当の犯人が誰なのか疑心暗鬼に陥っていく。

『マーダーズ・イン・ビルディング』感想(ネタバレなし)

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STARオリジナル!

日本では2020年6月から開始されたディズニーの動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」。しかし、そのオープンは好評とは言えませんでした。

というのも全ての根本的原因は日本の「Disney+」はディズニーと言いつつサービスの土台がドコモにあったためです。実はウォルト・ディズニー・ジャパンとNTTドコモは協業によって2019年3月から「ディズニーデラックス」という別の動画配信サービスを展開しており、今回の日本の「Disney+」はその「ディズニーデラックス」をリネームするような運営になっていました。なのでドコモアカウントと紐づけられ、解約もわかりにくかったり、配信環境も脆弱だったり、最高画質で見られなかったり、欠点が目立つ印象でした。

しかし、そんなユーザーの不満もおさらばできる日が来ました。2021年10月27日、日本の「Disney+」は全面リニューアルし、別物なほどに一新したのです。まず何よりもドコモ基盤ではなくなりました。独立のサービスです。入会も解約も簡単になって、最高画質でも観られるようになりました。

そして変化はこれだけでなく、配信のラインナップもです。今回のリニューアルで新たなに「スター」というブランドが追加。これはもともと買収した20世紀フォックスのコンテンツを扱うものであり、「Disney+」と合体したことで配信作品のボリュームが段違いで増量。

とくに嬉しいのは「Hulu」のオリジナル作品も追加されたことです。「Hulu」はディズニーの傘下なのですが、日本の「Hulu」は日本テレビ傘下なので、アメリカの本家「Hulu」のオリジナル作品が日本の「Hulu」では扱われないという事態が発生していました。今回、本家「Hulu」のオリジナル作品の居場所が日本にできたのは朗報です。個人的にはここが一番喜びたい部分。この場合は「Disney+オリジナル」ではなく「STARオリジナル」と銘打っているようですね。

ということで2021年10月27日から日本の「Disney+」でも本家「Hulu」のオリジナルのドラマシリーズが複数配信開始となったのですが、今回紹介するのはその中のひとつ。

それが本作『マーダーズ・イン・ビルディング』です

『マーダーズ・イン・ビルディング』は配信開始当初から本国で批評家から高評価を獲得していました。気になっていた人も少なくないのではないでしょうか。

物語は、ニューヨークのとあるアパートで遺体が発見され、それが殺人事件ではないかと疑うことで巻き起こるミステリーサスペンスです。よくある「犯人は誰だ?」と推理していくタイプなのですが、『メア・オブ・イーストタウン』みたいにシリアスなトーンではありません。この『マーダーズ・イン・ビルディング』は基本的にはコメディです。

なにせ殺人事件ではないかと疑っていく主人公3人がただの実録犯罪ドキュメンタリー(ポッドキャスト)のマニアというだけであり、要するに素人なのです。この素人3人組が自分の住むアパートで起きた不審死の謎を突き止めるべく、いろいろ嗅ぎまわって騒動を起こしていく…というのが本作の流れ。もちろんアホな行動ばかりではなく、ちゃんと真相を明らかにするオチに着地します(するかな?)。

この痛快なクライムコメディなドラマ『マーダーズ・イン・ビルディング』の原案者となっているのが、コメディアンの“スティーヴ・マーティン”。『サタデー・ナイト・ライブ』で一世を風靡し、『サボテン・ブラザース』などカルト作も生み出し、今やコメディ界の大御所です。“スティーヴ・マーティン”は『マーダーズ・イン・ビルディング』では主人公のひとりを演じており、しかもセミリタイアした身でありながらも役者としての意地だけは持っている俳優という、いかにも“スティーヴ・マーティン”らしい役柄なので、もうファンは大満足です。

そんな“スティーヴ・マーティン”と共演する残り2人の主人公。そのうちひとりが“スティーヴ・マーティン”と付き合いも長い“マーティン・ショート”。声優としても多彩に活動しており、最近だと『ウィロビー家の子どもたち』にもでていました。また一緒のドタバタ劇を見られる日が来るとは。

そして3人目が、俳優&歌手として若者の間で人気の“セレーナ・ゴメス”。ディズニー・チャンネルのオリジナルシリーズ『ウェイバリー通りのウィザードたち』でブレイクし、そもそもがディズニーに見いだされた逸材ということで、久しぶりのディズニーカムバック。約8年ぶりのテレビドラマ復帰作だそうです。そういう意味でも『マーダーズ・イン・ビルディング』の話題性はじゅうぶんでした。

『マーダーズ・イン・ビルディング』は、シーズン1・2は全10話で1話あたり約25~35分程度。とても見やすい時間と中身なので、お気軽に暇つぶし感覚でどうぞ。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:気楽に観られる
友人 3.5:笑いで和やかに
恋人 3.5:観やすい内容です
キッズ 3.5:子どもでもOK
↓ここからネタバレが含まれます↓

『マーダーズ・イン・ビルディング』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):犯人はこの建物の住人?

ニューヨーク、アッパー・ウェストサイドにある「アルコニア」というアパート。そのいつもは平穏で住民が静かに暮らしているこの建物に夜に突入するのは武装警察チーム。騒然とする周囲。一体何が起きたのか。

2カ月前。

チャールズ・ヘイデン・サベージは俳優で昔は「ブラゾス」という刑事ドラマで有名でしたが、今はすっかり過去の人。オリバー・パットナムはやる気はあるものの過去の大失敗以降は全然売れないミュージカル監督で、生活も苦しくなっていました。メイベル・モーラは叔母の部屋を改装するためにやってきたイマドキな若者。

この3人は一見すると全く合わない存在です。でも同じアパート「アルコニア」に住んでいました。好き好んで会話する理由もありません。

3人はたまたまアパートの同じエレベーターに乗り合わせます。すると目の前に電話しているスーツ姿の男が乗ってきます。

「ティム・コノ、Kで。今日も小包が? 間違う理由がわからない。とても重要な物だ。明朝の何時?」

その男はそんな会話を電話でしつつ、青い紐のついた白いゴミ袋を片手に持ってエレベーターを降りました。

3人はそれぞれの自室へ。全く接点がないように見える3人。しかし、実は同じポッドキャストの実録ミステリー番組を見ているという共通点がありました。それぞれが夢中でそれに聴き入り、犯人推理などを楽しみます。

そのとき、警報が鳴り響きます。住人たちは階段をぞろぞろ降りて外へ。チャールズはフードをかぶったタイダイ柄パーカーの人間が上階に登っていくのを見かけました。

そんなこともありつつ、とうとう3人は自分たちの共通の話題に気づきます。「ボーは何をくわえていた?(What is in Bo’s mouth?)」 …このお決まりのポッドキャストの言葉で話が弾む3人。

しかし、アパートに帰ると死体が発見されたらしく大変な騒ぎになっていました。犯罪推理熱が共鳴で高まっていた3人は「状況確認しにいこう」と9階へ。そこで死体を目にすると驚愕。あのエレベーターで出会った電話の男です。自殺する人には見えなかったのになぜ…。動揺する3人を発見したウィリアムズ刑事は「また犯罪ドキュメンタリーマニアか」と呆れ顔。

とにかく殺人犯はきっとこの建物の中にいる…3人はそう確信します。そして自分たちでこの事件をネタに実録犯罪ポッドキャストを配信してしまおうと思いつきます。タイトルは…「Only Murders in the Building」

こうしてチャールズ、オリバー、メイベルの3人は素人の好奇心でこの事件に首をつっこむことに…。

しかし、実は秘密を隠している者が紛れていて…。

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シーズン1:3人のアンサンブル

『マーダーズ・イン・ビルディング』は主人公3人組のアンサンブルを楽しむ作品なのは間違いないでしょう。

まず“スティーヴ・マーティン”演じるチャールズ。愉快です。明らかに過去の「ブラゾス」の役を引きずっており、普段からその役のセリフの日常会話の中でも使ってくるので、「こいつ、単に現実とフィクションをごちゃごちゃにしているだけではないか…」と心配になってきます。

そんなチャールズの真価(笑いのですけど)が発揮される最終話。真犯人を前に「あ、やっぱりちゃんとしているところはしているんだな」と視聴者を感心させたと思ったらやっぱりダメで…。毒を盛られて、へなへなになりながら廊下を這い、エレベーターに乗っても他の住人に無視され…あのマヌケっぷりなオーバーリアクションはこれぞ“スティーヴ・マーティン”の十八番。その後の車椅子状態での全く良いところなしの扱いといい、最高に楽しませてもらいました。

次は“マーティン・ショート”演じつオリバー。こちらはこちらでポッドキャストで演出がしたいだけの奴であり、案の定で心配になってくる。旧友で出資者のテディ・ディマスに呆れられるのも無理ありません。“マーティン・ショート”はやっぱり“スティーヴ・マーティン”と組ませると楽しいですね。

これだけだと昔ながらのいつものパターンなのですが、ここに“セレーナ・ゴメス”演じるメイベルという3人目の追加によって、『マーダーズ・イン・ビルディング』に新しい3人組の面白さが確立しています。

当然ながらジェネレーション・ギャップもあって噛み合わないことも頻発するのですが、年齢差はあってもフェアな3人組の構図になっているので、どっちかがどっちかに見下されることもない。ここは“スティーヴ・マーティン”の演出の確かさなのかな。もちろん大物相手でも堂々と対等に振舞える“セレーナ・ゴメス”もさすがです。

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シーズン1:真面目でふざけている

『マーダーズ・イン・ビルディング』は、フィクション気分で犯罪推理を趣味にしていた一同がひょんなことからガチの犯罪に直面していくという、まあ、『サボテン・ブラザース』と同様の構造です。ポッドキャストで配信していくとか、そのへんは現代的な仕掛けになっていますけど。

また、ニューヨーカーたちのあの近所を全く知らずに信用もしていない感じとか、作品自体がニューヨーカーを風刺しているあたりも定番で、この部分は批評家ウケが良い理由でもあるんでしょう。自虐的ですね。

ただ、『マーダーズ・イン・ビルディング』がちゃんとしているのはそういう定番ジャンルや構成をなぞりつつ、しっかり現代的アップデートで今の観客の満足に答えるものになっている点です。

例えば、ニューヨークのアパートなので多様な人種が登場するのは当然。今作で謎の死を遂げるティムは日本人という設定(演じているのは日系の“ジュリアン・スィーヒ”)。そんなティムはメイベルとの10歳の頃からの知り合いで、昔は「ハーディ・ボーイズ」というグループで遊んでいました。それに所属していたゾーイが以前に高所からの落下で死亡し、同じく所属していたオスカーが罪に問われてしまうのですが、その犯人はセオ(テディの息子)でろう者(デフ)でもありました。ちなみに演じている“ジェームズ・ケイヴァリー”もデフ当事者です。

また、作中では普通に同性愛カップルも登場し、しっかりティムの恋人を推察する際も異性だけでなく同性も候補に議論されていました。さらに、チャールズのスタントウーマンのサズもクィア感を出しながらの登板ですし…(演じているのはレズビアンの“ジェーン・リンチ”でサプライズ・ゲストでした)。

こういうのをことさら強調せず自然に取り入れられる(偏見を助長する笑いにはしない)。どんなに老齢でも“スティーヴ・マーティン”みたいに時代をわかっている人はかっこいいですよね。

現代的アップデートと言いつつも主軸はアホですよ。ミュージシャンの“スティング”が容疑者候補にあがるとか、もう真面目にやる気ないですからね(犯罪コメディ映画『スティング』とも重ねたギャグ)。他にも最終回を強引にまとめて後で撤回エピソードを配信するとか、何よりも最後の「何か忘れてない?」からのオチ。

結局はティムを殺したのはファゴット奏者のジャンであり、一件落着かと思ったら、今度はアパート住人の中でも性格が悪かった管理人のバニーが死亡しているそばでメイベルが顔面蒼白で動揺していて…。現場に居合わせた3人組は一転して次の事件の容疑者に…。

でもきっと何とかなるでしょう。あの3人組なら…。

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シーズン2:続きを考えるのも大変だ

※シーズン2に関する以下の感想は2022年10月18日に追記されたものです。

『マーダーズ・イン・ビルディング』のシーズン2はもちろんシーズン1ラストの衝撃の展開からの続きです。

管理人のバニー殺害で取り調べを受けることになった3人。とりあえず釈放されるも、重要参考人として、いつ起訴されるやら危ない状況。ウィリアムズ刑事からも嗅ぎまわるなと忠告されてしまいます。

でもこいつらはミステリーオタク。じっとしていられません。またもポッドキャストのネタにしようと画策し始めます。シーズン2って大変だよねという話から、シンダ・カニングがパクリのポッドキャスト「マーダラーズ・イン・ビルディング」を始めたり、エイミー・シューマー(本人)がポッドキャストのドラマシリーズ化の権利を欲しがったり、メタなギャグが増量していました。

けれども、凶器となった編み針ナイフ、狙われた…なぜか自分たちの部屋から見つかってしまい、まるで3人を犯人に仕立て上げようとする策略が迫り、そんな呑気でもいられない。

加えて今シーズンでも過去がテーマになっており、どんどんと3人の過去も掘り下げられ、シーズン1では片付けられなかった人間関係の清算の話にもなっていました。

今回もふざけつつ真面目に…という語り口のバランスが上手かったです。セオが手話で過去との向き合い方をメイベルに教えてくれたり、オリバーは自分の息子のウィルの実の父親はテディだと知ってショックを受けるもそれを認めたり、チャールズは不安定な人間関係しか作れない自分に肯定感を得たり、基本はどれも非常にインクルーシブな着地をします。今回はメイベルに“カーラ・デルヴィーニュ”演じるアリス・バンクスという恋人もできるし…。

最終的に、犯人はクレプス刑事を操っていたポピー・ホワイトでした。彼女の正体はオクラホマの町長の側近だったベッキー・バトラーで、自分の失踪事件をシンダに売り込み、シンダはベッキーは殺されたことにしていました。

推理タイムでは全員での名芝居(?)でベッキーを翻弄し、見事に自白させます。それにしてもシンダのスローモーションが苦手とか、強引に“スティーヴ・マーティン”の得意芸に持っていくあたりが笑ってしまう…。

そして恒例の次回フラグ。1年後、ブロードウェイで監督するオリバーでしたが、そのチャールズもでている初演にて事件が発生。開演早々、主演のベンが倒れてしまい…。というか次の犠牲者枠は“ポール・ラッド”なのか!

シーズン3はこの感じだとアパート外で展開するのかな? でも文字どおりの劇場型殺人なら本作のスタイルで面白さもアップするんじゃないかと期待です。

『マーダーズ・イン・ビルディング』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 100% Audience 94%
S2: Tomatometer 98% Audience 90%
IMDb
8.2 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0

作品ポスター・画像 (C)Disney マーダーズインビルディング

以上、『マーダーズ・イン・ビルディング』の感想でした。

Only Murders in the Building (2021) [Japanese Review] 『マーダーズ・イン・ビルディング』考察・評価レビュー