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『ペット・セメタリー(2019)』感想(ネタバレ)…墓に埋めたいリメイク

ペット・セメタリー

墓に埋めたいリメイク…映画『ペット・セメタリー』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Pet Sematary
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2020年1月17日
監督:ケヴィン・コルシュ、デニス・ウィドマイヤー
動物虐待描写(ペット)

ペット・セメタリー

ぺっとせめたりー
ペット・セメタリー

『ペット・セメタリー』あらすじ

家族ともに閑静な森の中にある家に引っ越しした医師ルイス。その新居の裏にはペット用の共同墓地があった。ある日、飼い猫が事故で死んでしまったため、ルイスは墓地に埋めようとするが、この地域に昔から住んでいる老人に導かれてその先の奥地にある秘密の場所に案内される。不気味な奥深い森に猫を埋葬して、次の日、奇妙なことが起きる…。

『ペット・セメタリー』感想(ネタバレなし)

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映画まで蘇らなくても…

『ペット・セメタリー』のオチの話をしましょう。

え? さすがにダメか。1989年の映画でも? もう30年も前の話だし、いいかなって。この映画はオチこそインパクト大であらゆる意味で話題騒然になったのに。もしあの時代にSNSがあったら絶対にトレンド入りするくらいの大盛り上がりでしたよ。

どこかでも書きましたが、私はスティーブン・キング原作の映画化作品の中で、この1989年の『ペット・セメタリー』が結構大好きなトップ級の一作なのです。

鑑賞済みの人ならおわかりのとおり、スティーブン・キング史上最も残酷で理不尽なストーリーと言っても過言ではありません。それは原作者本人も認めているところです。とくにペットが好きな人、幼い子どもがいる家庭の人には絶対にオススメできません。子どもが生まれたばかりの人に出産祝いでこの映画のDVDでもプレゼントしたら、傷害罪で訴えられても文句言えないレベル。なお、私は胸糞悪い映画が大好きなので大満足なのでした、ええ、サイテーのクソ人間です。

そしてオチです。ネタバレ禁止の配慮に則り、この前半部分では言及しませんが、あのラスト。まあ、というかエンディング曲の問題なのですけど、あれも私は一周回って好きになっています。なんか、配給会社の苦肉の策も窺えて…「ヤバいよ、これ後味悪すぎるよ、あ、じゃあさ、曲でなんとか誤魔化してみる?」…という感じ。結果、カオスな雰囲気がトッピングされちゃったけど…。

そんないろいろな意味で問題作だった1989年のメアリー・ランバート監督の『ペット・セメタリー』がなんとリメイクされることに。誰だ、あれをリメイクしたいって言いだしたの…(え? 続編の『2』?なんのことですか?)。

きっとパラマウントもホラー映画でヒットさせていきたいと思ったのでしょう。でも他に選択肢はなかったのか…。『ペット・セメタリー』好きの私も安易な賛同はできない…。よりによってフランチャイズ化する企画もあるみたいですし…。それ、『ZOOMBIE ズーンビ』みたいにならない?

ま、でもその話はもう終わりです。なにせこの2019年版『ペット・セメタリー』、評価は正直言って低めですからね。さらなる映画シリーズ化はもうない…はず。昨今も勢いがあるホラー映画界隈ですが、作品によって明暗は分かれがちです。

ではこの新しく生まれ変わった『ペット・セメタリー』に価値はないのか。いや、きっとある。そう思いたい(根拠なき願望)。

監督は、キャリアに悩む若い女性が別の覚醒をしていく姿を描いた『セーラ 少女のめざめ』(2014年)の“ケヴィン・コルシュ”“デニス・ウィドマイヤー”のコンビ。

主演は『ファースト・マン』『マッドバウンド 哀しき友情』などで脇で輝きつつ、『ナチス第三の男』では前面で存在感を放つこともできる、“ジェイソン・クラーク”。『エイリアン コヴェナント』の“エイミー・サイメッツ”。本作で鮮烈な印象を残す“ジェテ・ローレンス”も見逃せません。こじんまりとした話なので俳優陣も少なめですね。少なくともほぼオリジナル映画と同じキャラのメンツです。

具体的にどこがオリジナル映画と変わってくるのか。それは無論、観てのお楽しみ。

オリジナル映画を観た人は「へ~、ここでそうくるか~!」と発見を楽しめますし、オリジナル映画未見の人は純粋に物語を新鮮に楽しみながら、「じゃあ過去の映画はどうなっているのだろう?」と興味を抱けると思います(ぜひオリジナル映画のラストのぶったぎりで衝撃を受けてほしいな)。

以下の感想後半では1989年版の『ペット・セメタリー』についてもネタバレしているのでご了承ください。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(元映画も未見ならぜひ)
友人 ◯(ホラー好き同士で)
恋人 △(気分を害するかも)
キッズ △(残酷シーン満載)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ペット・セメタリー』感想(ネタバレあり)

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僕のニャンダフル・ライフ

ボクの名前は「チャーチ」。ウィンストン・チャーチルという偉人の名が由来のネーミングらしいけど、さっぱりボクにはわかりません。良い人だといいなぁ。

あ、ちなみにボクはです。クリード一家に飼われています。父親のルイス、母親のレイチェル、娘のエリー、まだ幼い息子のゲージの4人。悪い人たちではありません。経済力はそこまでではないみたいですけど、ご飯さえくれればボクは満足なので、この人間たちについてあげている…という感じですかね。

クリード一家は引っ越しをすることになりました。理由はなんかいろいろあるみたいです。とりあえずボストンからメーン州ルドローという地域に移り住み、心機一転するらしい。車の中は嫌だけど、ここは我慢をするしかない。

そうしてたどり着いた新居は森の中にある一軒家。室内はかなり広いので、きっと子どもたちが大きくなっても悠々と暮らせるでしょう。ボクのスペースもじゅうぶんあります。まあ、ボクは自由に外に出ていけるのですけど。

さっそく外を探索。周囲は大型車両がやたら猛スピードで走る道路が家の前にあるだけ。危ないですけど、ここで轢かれるようなバカではボクはありません。そばの森に入ると林道があって歩きやすいです。そういえば変な動物の仮面をかぶった子どもたちの一団が歩いていたけど、あれはなんだったのか。ついて行ったら小さな墓地がありました。「PET SEMATARY」と書いてあります。正しい綴りは「PET CEMETERY」だということくらいはボクも知ってますよ。ペット用の共同墓地ですね。人間は死んだ生き物を地面に埋める習性があります。最初は保存食として隠しているのかと思ったけど、どうやら死を追悼する意味があるらしいです。意味不明ですね。

近くに住むジャドという老人も家に来ました。年寄りには良い顔をしておくとメリットがあることが多いのでボクもお利口な猫になりきります。懐いたふりをするのはチョロいものです。

人間に付き合ってばかりもいられない。ボクも猫の友達を見つけるべくちょっと出かけようかな。

車に轢かれました

即死でした。迂闊だった…。よけられると思ったけど、先日食べた飯が腹に残っていたのがマズかった。満腹だと動きが鈍るし…。

ああ、意識が消えていく。ルイスがボクの死体に気づいたようです。あんたとの思い出は、特に何もないかな…。ルイスがボクの死体をとりあえずエリーには隠しておき、夜中にジャドと埋めに行くという話をしています。ボクも埋められるのか。

夜、ルイスは例の共同墓地にボクの死体を埋めようとします。でもジャドがさらに向こうの倒木の山の先へと案内していきます。さっさと埋めてほしいのだけど…。そして到着したやたらと不気味な場所。そこに穴を掘り、ボクの死体を置き、土をかけ、真っ暗に。終わりました、命。はあ、交尾がしたかったなぁ…。

…あれ、生きている

え、復活したの、これ。二度目の人生ってやつ? ご主人への愛が奇跡を与えてくれた? いやでもそんなに愛してないしな…。

なんかでも変です。毛はボサボサで全然治らないし、頭はガンガンするし、それに体も臭う。この悪臭は1週間放置されたネズミを食べちゃったときの臭いに似ているかも。さすがにこの汚さでは嫌われると思ってクローゼットの中に隠れたけど、あっさりルイスに見つかりました。

しかも無性にイライラしてエリーを引っ掻いてしまいました。普段はこんなことしないのに。食欲も増加して鳥をムシャムシャ食べちゃったりも。どうしたの、ボク…。困ったのでゲージに相談してみたら、「まあ、そういうこともある」と頼もしい言葉をもらいました。「俺は運命を変えてみせる」とも言ってましたよ。あいつ、幼いクセになかなかの覚悟だったな。

ルイスにも不審がられついには遠くの野外に捨てられてしまったボク。トボトボと自力で帰ることにし、やっと家の近くまで来たその時、道路でエリーに見つかります。そこへトコトコと歩いてくるゲージ。あいつも心配してくれたのかな。

しかし、そこへまたもや大型車両がよそ見をしながら走行してきて…。

今度は回避しましたよ。ゲージもルイスに抱えられてセーフでした。エリーは…死んじゃいましたけどね。だってボクには抱えられないし…。

ボクは悪くない。

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リメイク…というか同人誌?

以上は『僕のワンダフル・ライフ』風の前半あらすじの概説でした。まあ、ほとんど同系統の映画だしね(恐ろしい誤解)。

真面目に感想を書こう。でも猫が主役とも言える活躍はしていました。今回のあの猫はしっかりメイクアップしているようです。アニマルトレーナーのもと、まずは猫をあのメイクに慣れさせることから始まり、数か月の準備期間の後の撮影。さりげない登場ですけど大変だったのです。

肝心の物語は、今作の『ペット・セメタリー』、過去版との比較で語るくらいしか書くこともないんですけどね。

前半はほぼ同じ流れになっていますが、例の悲劇が起こる展開から大きな運命分岐点が発生。オリジナル映画版では大型車両に轢かれるのはゲージでしたが、このリメイクではその姉の少女(本作での名はエリー)に変更となりました。

ちゃんとゲージが轢かれると見せかけてのエリーにタンクローリーが横転して突っ込むというシーンになっており、過去作鑑賞者をハラハラさせます。

ただエリーが死ぬのは正直言って宣伝の時点でバレバレでしたけど。明らかに今回の禁断の蘇りはこの少女です!感がプンプンしすぎです。

エリーが死ぬ(そして蘇る)という展開に改変したのはおそらくその方が現実的に動かしやすいからなのでしょう。確かにオリジナル映画ではゲージが幼すぎて、後半の襲ってくる展開も茶番劇っぽさが拭い去れていない感じはありました。

でもゲージの死を回避したのは単に“幼少の子を殺すのはさすがに…”と臆病風に吹かれて躊躇したようにも見えなくもない。だったら二人とも一度に轢き殺されるとかでも良かったですよ、私は(鬼畜)。で、蘇らせるのはひとりだけだ!みたいなジレンマになったら面白いです。

しかし、今作の製作陣が最終的にやりたかったことはラストでハッキリ見えてきます。終盤にさらなる改変があります。それはオリジナル映画のさらにその先を描くような展開。レイチェルはエリーに殺され、ルイスはレイチェルに殺され、家族3人が蘇りゾンビ化。車に残ったゲージのもとに迫り、全員バッドエンディングを想像させての閉幕

まあ、このアレンジも私としては原作の大胆な解釈というよりは、想像の余地があったオリジナル映画の空白をあえてひとつの答えに固定してしまったので、あまり支持しづらいのですが…。過去作の時点でも一家全体にまで悲劇が連鎖することは匂わせていました。なのでそれを映像化してしまった本作はすごく同人誌的なファンムービー感はどうしても強いです。「ウェンディゴ」の設定とか、あの変な動物被り物の子どもたちとか、意味深に登場したわりにはそれまででしたし…。

個人的にはもう少しレイチェルのゼルダ絡みのストーリーを活かせたらもっとオリジナリティが出たのにな…とも思います。

もしくはいっそのこと大幅に暴走させるとかね。例えば、街全体がすでにあの墓地の力を利用して蘇った人たちで溢れかえっていた!…的なサプライズ展開にして、後半は全然違うストーリーが勃発していくというのもそれはそれでアリ。私はとにかく鬼畜度を増量してほしい性分。

『ペット・セメタリー』は型が決まっているのでなぞっているだけだと変わり映えがどうしてもしないんですよね。墓地の設定はいくらでも面白くて汎用性があるのだけど…。

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時をかける幼児

俺の名前は「ゲージ」。体は幼いが、頭脳は大人並みに優秀だ。

父親で医者のルイス、母親のレイチェル、そして姉がいる。あと猫もいるが…。とにかく家族で仲良く暮らしており、その生活には何も不満なんてない。

ただ困った問題があった。それは俺の運命の話だ。実は俺はある日に大型車両に轢かれて死ぬことになっていた。なぜわかるのかって? わかるんだ。俺はもうその死を何度も体験している。そのたびにこの家に引っ越してきた日に逆戻りして、また繰り返す。このタイムループから抜け出せないんだ。

回避策を考えてはみた。例えば、道路に行かないという手段だ。しかし、俺は幼い体ゆえになぜかトコトコと道路に引き寄せられるように歩いて行ってしまうのがいつものオチだった。くそ、なんで歩けるようになってしまったんだ!

足をケガしてみるというのもいいかもしれないが、この幼い図体では自傷行為もろくにできない。まるで俺は飛んで火にいる夏の虫のように毎回道路で轢かれて死ぬ。無限ロードキルだ。

しかし、今回、いつもと違う出来事が起きた。猫と会話ができた。

そういえば俺が死ぬ時期が近づくとなぜか飼っている猫の様子が毎度おかしいことになっていた。妙に気性が荒いというか、人間不信な捨て猫のような性質になってしまっているのだ。今まで気にも留めていなかったが、それがカギだったのかもしれない。

とにかく俺は猫と会話をした。なんでも猫も自分の状況に困惑しているようだった。親近感を感じたので優しい言葉をかけておいた。一緒に運命に立ち向かおうとも誓った。その意思は届いたかどうかはわからない。

けれども例の俺が死ぬ日。状況が変わったのである。もちろん恒例のように俺は道路へとテコテコ歩いて行った。ああ、今回も死ぬのか…そう頭で感じながら。しかし、道路には姉と猫の先客がいた。そして俺は車に轢かれそうになった瞬間、父親に抱き上げられ助かったのだ。なぜそんなことが起きたのかはわからない。でも回避した。死の運命を乗り切ったのだ。

…でも姉が死んだ

そう今度は姉が轢かれた。これは予想外だった。家族は悲しみに包まれ、さすがに俺も罪悪感を感じた。母と一緒にボストンに戻ったが、父はまだあの家に残っている。

だが俺はボストンでヴィクター・パスコウという男から真実を知った。それは墓地の恐るべき神秘の力であり、それに憑りつかれた父親の今の危険な状態も。

母親になんとかヤバさを訴えて、母も母で何かを感じ取ったのか、またあの悲惨な家へと舞い戻る。しかし、俺はまたしても幼いボディのせいで何もできず、父に車に閉じ込められてしまった。車を開けることはできない。子どもに優しい安全車両が仇になっている。

そして3人の家族が近づいてくるのが見える。猫もいる。

ああ、もしここで俺が死んだら、またタイムループするのだろうか。そうだとしたらこの呪われた運命を脱する方法はあるのだろうか。

また30年後くらいに俺の物語を映画化してほしい。

『ペット・セメタリー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 57% Audience 34%
IMDb
5.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 4/10 ★★★★

作品ポスター・画像 (C)2018 Paramount Pictures. All Rights Reserved. ペットセメタリー

以上、『ペット・セメタリー』の感想でした。

Pet Sematary (2019) [Japanese Review] 『ペット・セメタリー』考察・評価レビュー