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『CODA コーダ あいのうた』感想(ネタバレ)…あらすじは聴こえなくても

コーダ あいのうた

あらすじは聴こえなくても…映画『コーダ あいのうた』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:CODA
製作国:アメリカ・フランス・カナダ(2021年)
日本公開日:2022年1月21日
監督:シアン・ヘダー
恋愛描写

コーダ あいのうた

こーだ あいのうた
コーダ あいのうた

『コーダ あいのうた』あらすじ

海と一体の港町で両親と兄と暮らす高校生のルビー。彼女は家族の中で1人だけ耳が聞こえる。幼い頃から家族の耳となったルビーは家業の漁業も毎日欠かさずに懸命に朝早くから手伝っていた。新学期、合唱クラブに入部したルビーの歌の才能に気づいた顧問の先生は、都会の名門音楽大学の受験を強く勧めるが、歌声が聞こえない両親に対してルビーの気持ちは躊躇してしまう。それでも歌いたいという衝動は抑えられず…。

『コーダ あいのうた』感想(ネタバレなし)

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リメイクです

私は全く実感ないですが2021年は東京オリンピックが開催されました。しかし、その東京オリンピックに熱狂した人でさえ、その後に開催されたパラリンピックには反応が薄かった人も多いと思います。かなり露骨に熱狂度に差が出るので、これはこれで現実を突きつけられる感じでキツイですね。

しかし、こんなスポーツ大会も存在するのはご存知でしょうか。それが「デフリンピック」です。

デフリンピックとはその名のとおり「デフ(deaf;聴覚障がい者)」の人たちのオリンピック的なスポーツ大会であり、その歴史は古く、最初の開催は1924年。オリンピックと同じように夏季大会と冬季大会があり、世界各地を開催場所にして国際ろう者スポーツ委員会主催のもと4年に1回の頻度で実施されてきました。

けれどもパラリンピックよりも知名度が低いデフリンピック。広い意味では同じ障がい者なのだし、パラリンピックに統一すればいいじゃないかと思うかもしれません。ですが、当事者である人はそう考えていないようです。以下の東京新聞の取材記事を読むと、デフにはデフの人たちの当たり前の世界としてのスタンダード(手話でのコミュニケーションなど)があり、それを損ないたくないので独自性を持てるデフリンピックにこだわっているという背景がわかります。

デフの人たちの世界。それはよく言及されるのですが、聴者にはさっぱり感覚として理解できません。ただ、理解されようがされまいが、そこにデフの人たちの世界が実在するのは紛れもない事実。

今回紹介する映画はそんなデフの人たちの世界を少し覗ける…かもしれない作品です。それが本作『コーダ あいのうた』

まずそもそも本作『コーダ あいのうた』はリメイクとなります。元の映画は2014年に公開されたフランス映画『エール!』です。その作品を英語リメイクし、舞台をアメリカのマサチューセッツ州グロスターに置き換えたのが本作『コーダ あいのうた』。

物語のあらすじは基本的に変わっていません。家族全員が耳の聴こえないデフで、唯一自分だけが耳が聴こえるというひとりの高校生が主人公です。その主人公は実は歌の才能があり、音楽専門の大学に行こうとするも、デフの家族に理解してもらえるだろうか…というのがドラマの主軸です。

この主人公のように、⽿の聴こえない両親に育てられた⼦どものことを「CODA(Children of Deaf Adults)」と呼ぶそうで、それが映画のタイトルになっています。コーダとして育った子は、デフの世界と聴者の世界を両方知っていることになるので、立場が特殊です(通訳として仕事している人も多い)。

また、このコーダは、楽曲や楽章の終わり、また曲中の大きな段落をしめくくる部分という意味でもあり、「結尾部」「結尾句」「終結部」などと呼ばれる音楽用語でもあります。なので本作のタイトルはダブルミーニングなんですね。

そんなリメイク作ながら『コーダ あいのうた』はサンダンス映画祭でお披露目されると絶賛され、入札合戦に突入。結果、Appleが買い上げ、本国では「Apple TV+」で独占配信されることに。ただし、日本では劇場公開されました。賞レースでも健闘を見せており、とくに俳優関連での評価が高いです。

本作の主人公を演じるのは、子役として前から活動し、実は『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』にもちょこっとだけでている(処刑シーンで群衆の中に映るので探してみてください)、最近は『ハイ・ライズ』『ブリムストーン』『ゴーストランドの惨劇』などの映画に出演し、とくにドラマ『ロック&キー』で主演を務めたことで注目も上がっていた“エミリア・ジョーンズ”。イギリス出身ですが、今作『コーダ あいのうた』のブレイクでさらにキャリアに弾みがつきそうですね。

また、本作はデフの家族を演じる俳優についてデフ当事者を起用していることでも特筆されます。そのへんは後半の感想でもっと深掘りしたいと思います。

そして『コーダ あいのうた』を監督したのが、“シアン・ヘダー”です。話題となったドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の脚本家として高評価を受け、『タルーラ 彼女たちの事情』を監督したりもしていました。“シアン・ヘダー”監督は『コーダ あいのうた』の成功によって映画キャリアでも躍進を確実なものにし、勢いにさらに乗っていきそうです。

元の映画を観ている人は展開もわかっていると思いますが、そもそも王道なストーリーなのであまりネタバレも何もないでしょう。それ以上に役者のアンサンブルが素晴らしく、これは物語を知っていようがいまいが、魅力はじゅうぶん味わえると思います。『コーダ あいのうた』はとても爽やかな青春映画ですし、多くの観客の心を揺れ動かせるのではないでしょうか。

オススメ度のチェック

ひとり4.0:爽やかな物語を求めるなら
友人4.0:感動を分かち合いたいなら
恋人4.0:異性愛ロマンスあり
キッズ3.5:下品な話題があるけど
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『コーダ あいのうた』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『コーダ あいのうた』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):私の歌は聴こえなくても

大海原に浮かぶ一隻の漁船。そこから歌声が聞こえてきます。若い女性が軽やかに歌いながら水揚げ作業をしています。でも他の乗船者は無反応で仕事に没頭。すると歌っていた女性は何やらジェスチャーで他の乗船者の男2人に合図を送ります。手話です。この男2人は耳が聴こえないのでした。

高校生のルビーは、家業の漁業も毎日欠かさず手伝っていました。父のフランク、兄のレオ、そして家にいる母のジャッキーは耳が聴こえないので、唯一耳が聴こえるルビーは重宝されています。手話で通訳したり、無線に出たり、やることはいくらでもあります。漁はあまり好調ではなく、経済状態は決して良くはないです。

船が港につき、ルビーはすぐさま自転車で学校に直行。といっても早朝からの漁でクタクタなので疲れて授業中も寝ていることが多いです。

学校が終わると家族が車で迎えに来ていました。音楽をガンガンかけており、人目を引きますが当人は全然気にもしていません。ルビーが学校で変に注目されたくないので音楽を消します。

ルビーは学校でひとつ興味があることがありました。合唱です。家族の前では歌の話を積極的にするわけではないですが、歌うの好きなので学校の合唱団に参加しようとします。その日、講師のミスターVは生徒たちにハッピーバースデーの曲を歌うように命じ、それぞれの歌をその短いフレーズだけで厳しくジャッジしていきます。

次はルビーの番です。しかし、ルビーは緊張で固まってしまい、歌えずに立ち去りました

森でひとり、ハッピーバースデーを歌ってみるルビー。この美声を知る者はいません。

やはり後悔が残るのでもう一度合唱団の先生のもとへ。なんとか合唱団に戻れることになりました。さっそくみんなで歌の練習をしていると先生がルビーを指名してひとりで歌わせます。熱心に指導がなされ、犬みたいに息を!と言い、みんなにやらせる先生。最初は躊躇していたルビーも、勢いに乗って一気に歌い上げます。いつものパワフルな歌声が教室に響きます。先生は褒め、マイルズとルビーを残らせて、「デュエットが必要だ」と2人に練習するように指示。

こうしてデュエット練習まで始まり、ここでも厳しい指導が連続します。

ルビーはマイルズを家に呼び、自主練をしようとしますが、音に対して無頓着な家族のせいで邪魔が入ってしまい、あげくにその出来事が原因で学校でもバカにされ、ルビーは歌唱に集中できなくなります。先生は「感情全開で歌え」と相変わらずの熱血指導。

しかし、ルビーは歌だけで青春を注ぐわけにもいきません。家では家族の通訳で忙しいのです。ただでさえ今は漁師たちが待遇改善を求めて地元で抗議の声をあげており、そこに父と兄も参加しているので通訳は必須。ルビーも必死でその主張を手話で伝えます。

そんなルビーの抱えている忙しさを知らない合唱団の先生は、ルビーにバークリー音楽大学のオーディションを勧めます。それだけの才能の可能性を先生は見い出したということです。これはとても嬉しいですし、またとないチャンスです。

それでもこの件を家族に話すかどうか悩むルビー。そもそも応援してくれるのか、自分の歌の才能を認めてくれるだろうか…。

ついにルビーは家族に打ち明けることにしますが…。

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下品な手話がなんだか察しがつく

『コーダ あいのうた』は前述のとおり、デフの家族である父のフランク、兄のレオ、そして家にいる母のジャッキーを演じる俳優について、それぞれデフ当事者を起用しているのが何よりも重要です。

というのも元の映画である『エール!』はそのあたりが徹底されておらず、かなり批判されていたのでした。

今作でもデフ当事者起用に関しては出資者からの抵抗があったようで、業界の偏見の根強さが窺えます。しかし、最初にキャスティングが決まったジャッキー・ロッシ役の“マーリー・マトリン”(『愛は静けさの中に』などで有名)の「デフ当事者を起用しないなら自分も降板する」という強い姿勢もあり、他のキャストも当事者を採用。“トロイ・コッツァー”“ダニエル・デュラント”も揃って、理想的な座組が結集。これを成り立たせた“シアン・ヘダー”監督の揺るぎないクリエイティブにまず拍手です。

さらにルビーを演じる“エミリア・ジョーンズ”も大変だったと思います。なにせ役柄的に手話もできて歌もできて、あげくに漁の作業もマスターしないといけないのですから。結果、アメリカ式手話(ASL)を学び、歌のレッスンを受け、トロール漁船の操作方法を学ぶという超ハードな内容を9か月を費やして成立させており、「頑張った」なんて労いの言葉では片付けられない、とても俳優として真摯に向き合うその意気込みもまた拍手を送りたくなるものです。

そうして生まれた『コーダ あいのうた』。個人的にいいなと思うのは、デフ当事者の家族たちが良くも悪くも自然体で、言ってしまえば下品なこと。一般的に創作物の中で障がい者を描こうとするとどうもピュアで模範的に描かれることが多いです。障がい者であっても人柄が良ければ社会で受け入れてやろう…みたいな上から目線を感じるステレオタイプだと思います。

しかし、この『コーダ あいのうた』はそんなことまるでなく、労働者階級の漁師というあの登場人物の設定がまた良くて、とてもガサツで、言ってしまえば汚らしいコミュニケーションもある環境。そこで生きるデフ当事者の自然体がとてもよく現れていました。こういう下品で卑猥な言葉を手話でこうやって表現するのか…とかむしろ関心しながら観ちゃいましたけどね(なお日本語翻訳ではちょっとマイルドに訳されている気がする。でもフランクのあの手話の動きでなんか察しがつくのが面白い)。手話だから終始無音だけどしっかりうるさい親父っぽさは伝わるという…。

父のあのおならを平然とする姿とか、兄のTinder(出会い系アプリ)にハマっている姿とか、あられもなく美化しないデフの日常に囲まれているルビーの人生。それが冒頭のあの漁船と歌声のシーンだけで観客に一発で訴えてくる演出も良かったです。

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聴者のための感動のストーリーなのか

『コーダ あいのうた』をデフ・コミュニティの人はどんな感想で観るのか。そこはかなり大事なところです。実際、かなりさまざまな反応があるようです。

もちろん好意的な意見もあります。あれほど自然体でありのままに描かれることもなかなかないことなので、その点を何よりも歓迎するというポジティブなコメントも。

一方でネガティブなコメントもあって、それは根本的な映画の設定に関わる部分です。本作では主人公のルビーが歌の才能があり、それをデフの家族には理解してもらえないことで生じる葛藤というのがテーマにあります。でもデフの人はそもそも音楽を理解してくれないのだろうか…というのはもっと考えないといけないことで…。

とくに『コーダ あいのうた』と対極的な作品だなと思うのが『サウンド・オブ・メタル 聞こえるということ』。こちらは「音が聞こえない=音楽から排除される」という前提に対して疑問を投げかけており、かなりデブ当事者の視点が投影されていたのではないかなと思います。

『コーダ あいのうた』はどうしてもルビーに焦点があたるのですが、あくまでルビーの「耳が聴こえる側」という側面ばかりを引っ張るので、ちょっとストーリーラインから見るとデフの立場がおざなりではありますよね。ルビーの足を引っ張るような存在としてデフの人たちが見えなくもない。当然映画自体にそんな意図はないにしても…受け手となる大部分の聴者観客にはそういうイメージを無意識に与えてしまうのではないか。

本作ではルビーについては家族をずっと支えるヤングケアラー的なニュアンスを醸し出しているのですが、でもCODAの人をそういう存在として安直に重ねるのもマズい気がしますし…。別にCODAであることが重荷に直結するわけでもない、CODAはCODAというだけでしょうし…(もちろんCODAの人の中にはいろいろな苦労を経験している人もいると思いますが…)。

たぶんもうちょっと公的なサポートを強調し、ルビーがデフの家族を支えるという印象を弱めるべきでしたし、音楽面も「デフには理解できない音楽」という前提をそれこそひっくり返す展開があっても良かったのだと思います。少し聴者の感動のためのストーリーとして消費された感じはしますね。

ともあれ当事者の起用によるあのキャスティングのアンサンブルは本当に良かったです。今、ハリウッドでも『エターナルズ』でデフのヒーローが登場したり、ドラマ『ホークアイ』でデフの暗殺者が登場したり、かなりエンタメジャンルでも当事者起用が浸透しつつあります。この流れが続けば、デフの世界と聴者の世界の2つの世界の接点はもっと増えて、創作の表現もどんどん広がるのかなと思います。楽しみです。

『コーダ あいのうた』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 96% Audience 93%
IMDb
8.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0
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作品ポスター・画像 (C)2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

以上、『コーダ あいのうた』の感想でした。

CODA (2021) [Japanese Review] 『コーダ あいのうた』考察・評価レビュー