日本生まれ、アメリカ育ちの戦隊ヒーローが映画に変身!…映画『パワーレンジャー』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2017年7月15日
監督:ディーン・イズラライト
交通事故描写(車)
ぱわーれんじゃー
『パワーレンジャー』物語 簡単紹介
『パワーレンジャー』感想(ネタバレなし)
懐かしさで胸が満たされる
子どもの頃は「戦隊ヒーロー」シリーズはよく見たものですが、最近は久しく観ていません。そんな中での本作『パワーレンジャー』の公開は、子ども時代を思い出してなんだか懐かしくなります。
本作『パワーレンジャー』のビジュアルを見て、『ゴースト・イン・ザ・シェル』のような日本作品のハリウッド映画化か!と思っている人もいるかもしれませんが、今回はちょっと違います。
本作は、日本の「戦隊ヒーロー」シリーズの影響を受けてアメリカで制作された「パワーレンジャー」シリーズの映画化作品です。いや、“影響を受けて”という表現は不適切かもしれません。なぜなら、当時の「パワーレンジャー」シリーズは「戦隊ヒーロー」シリーズの映像を一部流用してアメリカ向けにアレンジして作られているから。権利上の商業的な「2次創作」という言葉の方が相応しいですね。
この「パワーレンジャー」シリーズを生み出したのは“ハイム・サバン”というエジプト生まれのユダヤ系イスラエル・アメリカ人。彼は実業家で1980年代に日本の「戦隊ヒーロー」シリーズに目をつけ、1991年に東映に輸入企画を持ちかけ、1993年にシリーズ1作目となる『マイティ・モーフィン・パワーレンジャー』がアメリカで放送されました。結果、社会現象になるほどアメリカの子どもたちの間で大ヒット。“ハイム・サバン”は世界有数の大富豪となりました。
なので、日本の「戦隊ヒーロー」シリーズもオモチャを売る前提の企画だったりしますが、こちらの「パワーレンジャー」シリーズもビジネス的な色が強い作品になっています。例えば、本作でも5人の主人公が人種構成がバラけるようになっていますが、幅広い“観客という名の顧客”に見てもらうため昔から行われてきたことです。そういえば本作の劇中にクリスピー・クリーム・ドーナツが印象的なかたちで登場するのですが、このへんも商売魂を感じさせますね(ちゃんと日本でもコラボキャンペーンしてます)。
『パワーレンジャー』の映画化は20年ぶり3作目だそうですが、CGを豪勢に使ったイマドキな作品になってます。
もともとの対象年齢がそうなのでしかたがないのですけど、内容としては近年のアメコミ映画よりも子供向け。でも、大人、とくに「戦隊ヒーロー」シリーズから遠ざかっていた人は無性に懐かしさに襲われて、不思議な感覚に浸れるでしょう。
『パワーレンジャー』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):次のパワーレンジャーは君たちだ
新生代の地球。恐竜が闊歩していたこの時代、謎のアーマースーツを身にまとった存在が瀕死の重傷を負っていました。「ふさわしき者を探しだせ。真の勇者を見つけるのだ」と命尽きる前に自身の持つ5色のアイテム「パワーコイン」に託し…。その最期の役目を果たしたゾードンは邪悪な裏切り者リタ・レパルサを巻き添えにします。全ては「ジオ・クリスタル」を守るために必要なこと…。
現代のアメリカ。海岸沿いにあるエンジェル・グローブという街。そのエンジェル・グローブ高校に通うジェイソン・スコットは、アメリカンフットボールの選手として期待されていましたが、部室に牛を持ち込むというイタズラを大失敗させ、車で派手に暴走。大事故を起こします。
3週間後。事故で選手になる未来は消え、父親も大激怒。今のジェイソンには逆転の道はありそうにないです。
渋々補修クラスに通うことになります。そこではビリー・クランストンがいじめられていました。ジェイソンは「5歳のガキかよ」とそのイジメ野郎にビンタをかまします。
一方、その部屋にいた元チアリーダーのキンバリー・ハートはトレイに仲間に呼び出され、縁を切ることを告げられます。苛立つキンバリーはその場で髪をバッサリ切ります。
大人しくしているのにうんざりなジェイソンはビリーの家にいき、足にある監視用の発信機を外してもらいます。
その後、ビリーに借りができたジェイソンは街外れのひとけのない金鉱で遺跡発掘を手伝うことにします。そこには不登校問題生徒のザック・テイラー、変な行動が多い転校生トリニー・クワンもいました。
夜、この発掘にひとりで夢中なビリーを置いて、ジェイソンは川で泳いでいるキンバリーに遭遇。溺れているのかと思って助けようとしますが、別にそんなことはありませんでした。「こんな街はでようか」と話していると、大爆発音が聞こえます。
ビリーが砂煙からでてきました。ザックやトリニーも駆け付けます。しかし、地響きとともに岩壁が崩壊。5人とも吹き飛びます。
岩の中から現れたのは不思議な巨大物体。人工物のようですが、こんなのは見たことがありません。中を砕くと謎の石がでてきます。それぞれ光る石。それを手にしますが、騒ぎを起こして守衛に見つかるとヤバイので5人は退散します。
ジェイソンはビリーを乗せて久しぶりにまた車を爆走させます。途中でキンバリーとトリニーを乗せ、車はビリーの運転で疾走。さらにザックも飛び乗ってきて、またも5人は揃います。
しかし、列車に激突して車はクラッシュしてしまい…。
いいから変身するんだ!
「戦隊ヒーロー」シリーズの醍醐味は、ヒーローに変身し、各自がロボに乗り込み、最後はそのロボたちが合体して、悪を倒す…このシンプル・イズ・ベストな王道です。無論、本作もその要素はバッチリあって、無条件でテンションが上がります。「パワーレンジャー」シリーズもアメリカナイズされているとはいえ、この王道は共通。アメコミ映画にはないこの単純さが心地よいです。ちゃんと採石場で格闘する展開を作っているのは、笑っちゃいましたけど。
じゃあ、気分爽快で楽しめたかというと、確かにつべこべ考えずに変身して、ロボで一斉出撃する絵は楽しいです。ただ、欠点ももちろんあります。
まず最大の欠点は、長すぎること。本作は120分あるのですが、主人公5人が変身するまで90分かかります。その間は結構どうでもよい若者のハシャギっぷりと悩める自分探しな問答の繰り返し。このパートで何か一つでも光るオリジナリティ要素があると良いのですが、皆無。せめてコミカルな展開で持たせられればとも思いますが、それもなし。Rotten Tomatoes「0%」ヒーロー映画『マックス・スティール』と同じ臭いです。
たぶん主人公が5人いるからこうなっちゃったのかな。5人いて、しかも同じスタートラインだと、それぞれ5人が同じことを繰り返すことになるので、冗長になるんですね。ビリーが死亡するくだりもいらないし、覚悟を決めるならたき火を囲んで語り合うだけでじゅうぶんじゃないですか。
変身したけれども…
それで満を持しての変身からの大バトル。ゾード(乗り物)を駆使しての怒涛の展開は、誰もが「待ってました!」と手を叩く本作の白眉です。
一方のこの変身後のパートも文句はあって。残り30分では詰め込みまくりになりそうなのに、どうも勢いが持続しない。確かに絵面としてはすごくテンションが上がるのですけど、一時的ですぐに下がる、そしてまたちょっと上がりかけて下がる、この連続…。ロボなどの素材は良く出来ているのに、アクションは地味でしたし。合体してからの決着もあっさりなのはどうなのか。それでいてここでも若者特有の自分語りなシーンが挟まれるので余計に…。素直にド派手に戦ってほしかったです。ただ、ここは逆に戦隊ヒーローっぽい急ぎ足感でもあるのですが、そこはマネしなくても、ね。
一番残念なのは悪役ですね。一言でいえばダサイ。最後はアンパンマンにやられるバイキンマンのように、パシンとされて宇宙の彼方へ行っちゃいましたが、ほんともう面白くないから復活しなくていいと心から願います。最近の今の日本の特撮モノは悪役もクセがあって良かったりするのに…。
子どもか?ティーンか?大人か?
本作『パワーレンジャー』は、大人の私にとっては、懐かしさというノスタルジックの要素では、とても評価したくなる映画でした。イマイチ煮え切らないテンションだったのは、私が大人になってしまったからなのか…。
戦隊モノは子どもにウケればいいんだ!という見方もありますが、確かに日本では戦隊モノは子ども向けです。でも、本作は日本の戦隊モノのターゲットよりも少し年上のややティーン向けに作られています。ここがミスマッチになっているような…。日本の中高生が『パワーレンジャー』を観に来るかな…。日本の戦隊モノのノリで低年齢層の子どもが観たら、前半のパートのティーンドラマはアクビがでるでしょうし…。ここで日本側のマーケティングは頭を悩ますでしょうね。
当然のように続編を匂わせる終わり方でしたが、3部作どころか、5~7作くらい作る気でいるみたいです。権利面から製作を持続させるのは大変そうだけど…。次回は最初からガンガン戦っていけば、さらに魅力的な作品に成長するはず…そんな期待を感じさせますが、どうなるのやら…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 49% Audience 65%
IMDb
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★
作品ポスター・画像 (C)2016 Lions Gate TM & (C)Toei & SCG P.R.
以上、『パワーレンジャー』の感想でした。
Power Rangers (2017) [Japanese Review] 『パワーレンジャー』考察・評価レビュー