豪華な俳優3人の豪華な無駄遣い…Netflix映画『レッド・ノーティス』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にNetflixで配信
監督:ローソン・マーシャル・サーバー
レッド・ノーティス
れっどのーてぃす
『レッド・ノーティス』あらすじ
クレオパトラの3つの卵の宝石はあらゆる人々の関心を集めてきたが、当然のように泥棒も狙っていた。国際刑事警察機構はその貴重な宝石が今まさに業界で悪名を轟かす詐欺師に目をつけられたという情報を得る。その現場に向かったのはFBI特別捜査官でプロファイリングで相手を分析することに長ける男だった。しかし、その宝石の奪い合いは巧妙な策略で騙すことを得意とする華麗な泥棒に邪魔され、3者の駆け引きが始まる。
『レッド・ノーティス』感想(ネタバレなし)
豪華俳優3名が集ってやることは…盗み
映画はときどき(いや結構頻繁にかもしれないけど)特定の職業の誤解を助長することがあるのですが、そんな映画の描写のせいで本当の仕事の実態を理解されずに困っているであろう職業…そのひとつが「インターポール」でしょう。
インターポール…正式には「国際刑事警察機構」という組織の名称であり、国際犯罪の防止を目的として世界各国の警察機関によって組織された国際組織であり、通称として「INTERPOL」と呼ばれています。
このインターポールは映画では特別な捜査官としてよく描かれることが多く、世界を自由に移動しながら犯罪者を追い詰めていく活躍をすることが多いです。『ルパン三世』の銭形警部だとか。
でもそれは真っ赤な嘘で、実際のインターポールは捜査官(エージェント)が世界を好き勝手に駆け回って犯罪者をその手で捕まえることはありません。インターポールの主な仕事は各国の警察組織との情報共有の橋渡しであり、犯罪者データベースを運用したり、連絡窓口を提供したりしています。要するに地味な仕事であり、エキサイティングなことはほぼないのです。
そんなインターポールは特定の犯罪者もしくは容疑者やその関係者を各国の警察機関に通知(notice)するシステムを持っているのですが、そのターゲットとなる人物は色分けされます。例えば、行方不明者は「黄色」、犯罪関連の人物は「青色」、主要な犯罪者の情報は「緑色」、身元不明の遺体は「黒色」、そして指名手配の要注意人物は「赤色」。
今回の紹介する映画はそのインターポールによる「赤色の通知」にまつわるタイトルがつけられた作品です。それが本作『レッド・ノーティス』。
『レッド・ノーティス』は早い話がケイパーものであり、世界的に悪名が広まっている大泥棒&詐欺師を相手に、その犯罪者を捕まえようとするFBI捜査官やインターポールも巻き込んで、ハチャメチャな財宝探しを痛快に描いていくクライムサスペンス&アクション映画です。
本作の売りは何と言っても豪華な俳優。よく揃えたなという3人が主役。
まず一人目はロック様の愛称で知られ、『ワイルド・スピード スーパーコンボ』や『ジュマンジ ネクスト・レベル』など大作にガンガン出演してどの体躯を暴れさせている“ドウェイン・ジョンソン”。
2人目は『デッドプール』シリーズや『名探偵ピカチュウ』などで今やハリウッド一番のお調子者俳優としてその名を自虐的に轟かせている“ライアン・レイノルズ”。
3人目はハリウッドの流れを大きく変えた『ワンダーウーマン』での大成功によって一挙に有名となり、パワフルな存在感を発揮している“ガル・ガドット”。
このトップクラスのスターが3人も並ぶなんて、その並んでいる光景だけでゴージャスです。偶然かな、3人ともアメコミ映画の出演経験があるんですね(“ドウェイン・ジョンソン”の『ブラック・アダム』はこれから公開予定)。まあ、今回のやることは泥棒なのですけど…。
そんな豪華俳優3名をキャストする贅沢な映画を監督するのが、コメディ映画の人からすっかり大作映画の人にシフトしつつある“ローソン・マーシャル・サーバー”。とくに“ローソン・マーシャル・サーバー”監督が“ドウェイン・ジョンソン”と手を組むのは『セントラル・インテリジェンス』と『スカイスクレイパー』に続き、3度目です。
『レッド・ノーティス』はもともとユニバーサルが配給する予定だったのですが、契約に関する折り合いが悪かったのか、その関係は解消となり、Netflixでのオリジナル映画として配信となりました。
かなり大作っぽい雰囲気が出ており(実際の製作費も高額)、大きいスクリーンで鑑賞するのに適していると思うのですが、日本の大手シネコンのほとんどはNetflixをガン無視しているので劇場公開は叶わず。家でなるべくテレビとかで観るしかないですね。
『レッド・ノーティス』自体は頭が悪くなりそうなアホなノリの作品なので、疲れているときでもテキトーに観られるポップコーン・ムービーとして堪能してください。
『レッド・ノーティス』を観る前のQ&A
A:Netflixでオリジナル映画として2021年11月12日から配信中です。
オススメ度のチェック
ひとり | :気楽におつまみ気分で |
友人 | :暇つぶし感覚で |
恋人 | :エンタメで時間を一緒に |
キッズ | :やや下ネタありだけど |
『レッド・ノーティス』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):卵はどこですか?
古代エジプトにおけるプトレマイオス朝のファラオ(女王)であるクレオパトラ7世フィロパトルは、絶世の美女として有名であり、政治家のマルクス・アントニウスを誘惑した逸話も知られています。そんなクレオパトラが残したとされる「3つの卵型の宝石」。希少価値はとてつもないことは容易に想像できるこの財宝は今はどこにあるのか。
1907年にカイロ郊外で2つの卵が発掘され、そのうちのひとつ、第1の卵はローマの国立博物館で展示。第2の卵はオークションで落札されて現在は個人が所有しています。そして、3つ目の卵はいまだに行方不明で誰も在りかを知りません。
ローマ。突如、博物館に警察が押し寄せて封鎖するように指示します。インターポールのダス捜査官と一緒にいるのはFBI行動分析課のハートリー捜査官で、美術犯罪専門のプロファイラーです。国際手配中の美術品泥棒のノーラン・ブースがクレオパトラの卵を狙うと情報を掴んだそうで、情報提供者はビショップという存在だとのこと。職員はそんなのはアート界の都市伝説だと相手にしませんが、一刻も早く卵の安全を確かめます。
卵はまだ健在で、輝きながら展示されていました。しかし、サーモ・センサーを見るハートリーは卵は室温が反映するので赤くなるはずと分析し、画面上で青いことを疑問視し、おもむろに卵にジュースの炭酸をかけるといとも簡単に溶けてしまいました。偽物です。もうすり替えられたのです。
すぐに来訪客の中に逃げる男を発見。追うハートリー。素早い身のこなしの男こそブース本人。警備員を華麗に倒していきます。銃を突きつけるハートリーですが、ブースは口の軽い男で逃げ出します。街中で追いかけっこと言いたいところでしたが まんまと退散されてしまいました。
バリ島。逃げおおせたブースは砂浜の別荘に余裕で到着。でも先客がいました。ソファでくつろぐのはハートリーです。インターポールのダス捜査官の特殊部隊に囲まれます。完全に分析できると豪語するハートリー。ブースは一匹狼でチームでは仕事しない、ハイリスクでスリルを楽しみ、自分を誇示している…。
見事に裏をかかれたブースは連行。卵は別の車に保管します。
またもローマ。ダスがハートリーのもとにやってきて、あの回収した卵は偽物だったと報告。しかも、ハートリーが疑われてしまい、なんでも彼の口座に800万ドルが振り込まれているとか。「俺はやってない」と主張するも信じてくれません。
こうしてハートリーはロシアの雪山の頂上にある鉄壁の刑務所に収容され、あげくにブースと同室でした。
ブースいわく、あの卵を3つ届けると3億ドルが手に入るそうで、第2の卵は首絞め大好きな武器商人ソット・ボーチャが個人所有しているとのこと。
看守長に呼ばれ、険悪な2人は赴くと、目の前にいたのはビショップでした。全ては彼女の仕組んだこと。完全にしてやられました。最後の卵の在りかを知っているブースに聞き出そうとするビショップ。でもブースは喋りません。
一緒にビショップを出し抜こうとハートリーは提案し、ブースの考えた脱獄プランを実行することになりますが…。
これはマクガフィンだ
『レッド・ノーティス』は、何と述べればいいのか…脳内の知能指数に関わる部分が全く活性化しなくなる、もしかしたら老化を早めるんじゃないかと思うほどに、脈絡もないアホな展開の連発。ツッコミ上等とかでもない、わざわざツッコまなくてもいいから(作中でやっておくから)観客はテキトーに観ていてください…を公式で奨励しているようなものです。
まずこの本作の一応の主軸になるクレオパトラの卵。これ自体はほぼどうでもいい代物です。なにせ作中でブースが「これはマクガフィンだ」って言っちゃってますからね。各キャラクターはこのターゲットとする卵に関してそれほどの愛着もないので、ものすごい雑に扱いまくっており、そこも笑いどころではあるのですが…。
映画自体はジャンルミックス。最初は博物館での追走劇のアクション。でも街中でのカーアクションになるかと思ったらそれは無し。続いて刑務所での脱獄モノに。意味不明な場所にある刑務所ですが、そこでも相変わらずの軽さであまり知的さはゼロでひょいひょいと脱走。お次は『アイズ ワイド シャット』よろしく仮面パーティに潜入し、相手を出し抜きます。そしてラストは『インディ・ジョーンズ』風のパロディも全開でお送りする財宝奪取の大暴れ。カーチィスもあって、ノリだけはいいです(それしかない)。
『アーミー・オブ・シーブズ』みたいにきっちりと盗みのサスペンスを見せようという気は最初からありません。全部が行き当たりばったりで、終盤のどんでん返しも言ったもの勝ちの雑さ。まあ、“ローソン・マーシャル・サーバー”監督は基本はコメディ映画の人だから、たいていはこんな空気です。
ただ、気づいた人もいると思いますが、世界をまたにかけて舞台が移り変わってはいるのですけど、ほとんどがセット撮影なんですね。これはコロナ禍でロケができなかったせいであり、しょうがないと言えばそうなのですが、闘牛場などいろいろな見せ場があるにもかかわらず、どことなくCMっぽいチープさがあったかな…。
やっぱり俺を愛している?
結局、『レッド・ノーティス』の売りはやっぱり豪華な3人の俳優です。このスターにどれほどバカなことをさせられるかで観客の気をひいているようなものです。
今回の“ドウェイン・ジョンソン”はプロファイリング専門で、いつもの屈強な肉体とのミスマッチを素材にしたギャグ。仮面パーティでの潜入といい、単にあの見た目の男に仮面をつけたら面白いというアイディアをそのまま映像にしているだけのテンションで、“ライアン・レイノルズ”だからできるジョークの揶揄いも無数にあって、“ドウェイン・ジョンソン”が遊ばれまくっていた…。
ちなみに今作でも“ドウェイン・ジョンソン”はジャングルに行きましたね。密林が似合いすぎていて完全にホームにしか思えない…。もう『ジャングル・クルーズ』の続編でもいいんじゃないかな…。
一方の“ライアン・レイノルズ”はこちらも相変わらずの持ち前の軽妙さ。独りで何でもできると豪語するわりには“かまってちゃん”であり、うざくねっとりとまとわりつく面倒くささです。たぶん実際にこういう男がいたら本当にストレスでしかないような気がする…。
ただ、今作の“ライアン・レイノルズ”演じるブースはやたらとハートリーへの愛的なものを表明し、引っ付こうとするのですが、これはこれでブロマンス的な構図を逆に狙いすぎな気もしますし、そもそもここまで露骨だとクィア・ベイティングだと思われかねないのでもう少し抑えたほうがいいのではとも思ったり。
そんな中、男2人に挟まれるかたちの“ガル・ガドット”。今回も魅力的でしたが、キャラクターとしてはセクシーな策略家路線の定番であり、そこまで意外性を出せていない感じもありました。こうやってみると同じセクシーさを出しつつも『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の“アナ・デ・アルマス”は上手く独自性を発揮していたんだなと再確認できる…。やっぱり作中内での男性が女性を見る目線の描き方の違いなのかな。
最後は“ライアン・レイノルズ”はハブられつつも、3人の窃盗チームの完成で綺麗に締めていましたけど、インターポール、散々だったな…。
でも一番に酷い目に遭っていたのはまさかの“エド・シーラン”でしたけどね。
“エド・シーラン”を逮捕できるインターポールはフィクションの中だけです。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 40% Audience 92%
IMDb
6.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)Netflix レッドノーティス
以上、『レッド・ノーティス』の感想でした。
Red Notice (2021) [Japanese Review] 『レッド・ノーティス』考察・評価レビュー