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ドラマ『セヴェランス』感想(ネタバレ)…Appleはこんな会社じゃないと思うけど

セヴェランス

Appleはこんな会社じゃないよね…「Apple TV+」ドラマシリーズ『セヴェランス』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Severance
製作国:アメリカ(2022年)
シーズン1:2022年にApple TV+で配信
原案:ダン・エリクソン
恋愛描写

セヴェランス

せべらんす
セヴェランス

『セヴェランス』あらすじ

マーク・スカウトはルーモン産業という企業で勤勉に働いていた。いつものオフィスの建物に向かい、いつものエレベーターに乗り、いつものデスクでパソコンに向き合う。同僚たちとの付き合いも悪くはない。そして、マークは真面目な仕事ぶりを認められ、昇進して新人研修を任せられることになる。今日からやってきた新入社員はまだ状況が掴めていないようだった。確かに無理もない。ここは少し特殊だから…。

『セヴェランス』感想(ネタバレなし)

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「Apple TV+」必見のドラマが新たに!

社員のマネジメントに悩んでいる企業は多いのではないでしょうか。離職率の高さをどうしたら減らせるのか? 仕事と家庭を上手く両立して互いに悪影響を与えないようにするには? 最近は社員による企業情報の流出のリスクもありますし、社会人向け講座で講師として登壇した際に「生娘をシャブ漬け戦略」と調子に乗って口走ってしまう常務取締役もいるし…。

はい、そんなお悩みを抱える企業に朗報。最新の技術でそんな煩わしい社員のマネジメントに関するシステムを根本から変えてしまいましょう。これで労働環境は劇的に革新されます。企業側は労働者管理をこれまでにない深度で浸透させることができ、労働者側は職場のストレスを一切プライベートに持ち込まずに済むので快適になります。もう仕事モードと日常モードの切り替えに自ら苦労することはありません。

そんな夢のようなことができるのか? 可能です。

この『セヴェランス』なら…。

ということで今回は「Apple TV+」で2022年にシーズン1が配信され、一部でカルト的に話題になっている傑作ドラマシリーズ『セヴェランス』を紹介します。

本作は…事前のネタバレ無しでどこまで説明すればいいのやら…。とにかく”とある企業”で働く社員を主人公にしています。この企業で社員たちは何をしているのか、それは実は社員本人もよくわかっていません。それでいて社員たちは”ある処置”を施されており…。う~ん、我ながら全然説明になっていない…。

ジャンルは、サイコロジカル・SFスリラーであり、企業職場ディストピアでもある。なかなかにゾっとする物語です。こんなことあり得ないと思うけど、でももしあり得ちゃたら…と考えると怖くなります。いや、技術はないにせよ、こうやって社員をコントロールしたい企業は内心ではたくさん存在するんじゃないか…そうも思ってしまったりも…。

「一体これはどういう裏があるんだ!?」と視聴者を混乱させ、それでいて1話ごとに明かされる衝撃の事実に驚愕し、徐々にミステリアスな全貌が明かされていく。第1話を鑑賞して気に入ったらもう視聴は止まらず全話観てしまうでしょう。それくらいに誘引力のあるスリリングなストーリーが展開されます。

この心理スリラー・ドラマ『セヴェランス』を生み出した原案者は“ダン・エリクソン”という人。あまり聞いたことのない人物だと思いますが、それもそのはずで目立ったキャリアとしてはこの『セヴェランス』が初なんですね。“ダン・エリクソン”がウェスタン・ワシントン大学に通っていた時にこのアイディアを思いつき始め、一時期はオフィスの仕事をしていたこともあり、そこでのルーチンワークな労働の現実を目にしてこのプロットを膨らましていったのだとか。今作『セヴェランス』は非常に評価も高いので、これは新しい秀才クリエイターの誕生ですよ。

また、このドラマ『セヴェランス』の監督&製作総指揮を手がけるのは、『ズーランダー』『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』などで俳優兼監督として活躍するおなじみの“ベン・スティラー”。2013年は『LIFE!』というお仕事映画を制作していましたし、今回はその延長なのか、もっとダーク・コメディなディストピア寄りに傾いたお仕事現場作品のカタチとしてクリエイティブな才能を発揮しています。

“ベン・スティラー”以外にも“イーファ・マッカードル”という北アイルランドの監督が参加しており、こちらも若手のクリエイターとして今後も注目を集めそうです。

俳優陣は、ドラマ『ビッグ・リトル・ライズ』の“アダム・スコット”、ドラマ『YOU 君がすべて』の“ザック・チェリー”、ドラマ『Man Seeking Woman』の“ブリット・ロウワー”、ドラマ『プロット・アゲンスト・アメリカ』の“ジョン・タトゥーロ”、ドラマ『ゴッドファーザー・オブ・ハーレム』の“トラメル・ティルマン”、ドラマ『オルタード・カーボン』の“ディーチェン・ラックマン”、ドラマ『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』の“マイケル・チェルナス”、『ディア・ハンター』の“クリストファー・ウォーケン”、『6才のボクが、大人になるまで。』の“パトリシア・アークエット”など。

登場人物は多そうに思えるでしょうし、世界観設定の構造上どうしたって複雑さが増すのですが、見せ方が上手いので案外とキャラクター関係は把握しやすいと思います。むしろそのキャラクター関係を徐々に理解していくあたりが本作の醍醐味でもあるし…。

ドラマ『セヴェランス』のシーズン1は全9話(1話あたり約40~57分)。「Apple TV+」で配信している独占ドラマの中でも必見の一作です。

オススメ度のチェック

ひとり5.0:心理スリラーの傑作
友人4.5:語り合いが弾むスリル
恋人4.5:続きが気になる話題性抜群
キッズ3.5:やや大人向けだけど
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『セヴェランス』予告動画

↓ここからネタバレが含まれます↓

『セヴェランス』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):入社おめでとうございます

「君は誰だ?」という音声が小さなスピーカーから流れてきます。机の上で倒れているひとりの女性が朦朧としつつ起き上がりますが、状況が掴めません。

そのスピーカーの声は何かまごつくような雰囲気を出した後、あらためて「やあ、テーブルの上のきみ。簡単な調査に協力して」「あなたは誰?」と質問してきます。

ここは会議室みたいです。ドアはあるが開かず、窓もなし。長机と椅子だけ。大声をあげても返事なし。

「質問は5つ」とスピーカーの声は続け、「君は誰?」と聞いてきます。思い出せません。「どの州で生まれた?」…わかりません。「州または準州の名をひとつ挙げて」…なんだその変な質問は…「デラウェア」とテキトーに答えます。「イーガン氏の好きな朝食は?」…意味が不明です。「お母さんの瞳の色は?」…これもわからない…というか自分は何者なのかも…。

急にドアが開き、人が立っています。「完璧な結果だ」

時は遡ります。車の中で泣いている男。彼はマーク・スカウトという名で、駐車場に並ぶ車を出て建物へ向かいます。そこが職場です。受付に通し、今度は「分離フロア」と掲示されている部屋へ。ロッカーに上着を入れて所持品をしまい、時計や靴も変えます。スーツ姿になり、ずいぶんと小さいエレベーターに乗ります

そのエレベーターが移動中に何やら雰囲気が変わったようにみえるマーク。それを降りると、先ほどとは打って変わって晴れやかに澄ました顔で廊下を歩きます。やたら広い部屋に到着し、パソコンのある職場の机が4つ中央に密集するだけですが、そのひとつに座ります。そこには同僚のディランがすでにおり、「ピーティは病欠か」と聞いてきます。他の同僚のアーヴも一緒です。ここは「マクロデータ改良部」

そこへミルチックが入ってきて、マークが呼ばれます。また長い廊下を歩き、上司のハーモニー・コベルがいるオフィスに着き、そこには目の前に小さなカメラつきスピーカー。役員会が見ているようです。「ピーティはもう会社にいない」とコベルは言い、マークを部長に昇格させます。

こうしてマークは研修の担当になり、さっそくアーヴと新入社員の対応に追われます。小さいモニター映像を確認し、おぼつかない感じでマニュアルに従い、「君は誰だ?」と声をかけます。序文を飛ばしてしまい、急いで言い直すなど、ぎこちないです。

そして研修が終わり、マークはその相手の女性と直接話します。

「君の名はヘリー・Rだ」「これは新人研修。もうルーモン産業の社員だ。分離(セヴェランス)について困惑しているのはわかります」

ヘリーは混乱していました。急にスピーカーを投げつけて逃げようとするもドアは開きません。

マニュアル抜きで喋ることにしたマーク。自分もここで目覚めた…と。

それでも納得いかないヘリーは「ここから出して」と3回主張し、廊下の先にある外のドアへ通されます。しかし、そのドアを通ると、なぜか元の廊下に戻ってしまいます。

「私、死んでいるの?」「いいや」

そして事情を知るためにビデオを見せられます。そこには自分が映っており、「私はセヴェランスの手術を受けることを選択しました。私の知覚を2つに分けることに同意します。仕事と私生活の記憶が分離されるのです」と揚々と話していました。

これがルーモン産業の職場の日常。もちろん職場を一歩でも出たら自分さえも知らないこと…。

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シーズン1:この職場はやっぱり嫌だ!

『セヴェランス』は冒頭から「何が起きてるんだ?」と疑問符だらけのシチュエーションの連続で、開始1秒で作品の術中にハマります。

要するに、このルーモン産業の社員は初の入社時に頭にチップを埋め込まれ、「職場」と「私生活」で人格が2つに分けられるのでした。職場人格は「インニー」と呼ばれ、一方の私生活人格は「アウティ」と呼ばれ、双方で同じ肉体ですが互いの記憶を共有していません。あの分離フロアのエレベーターに乗ると人格が自動で切り替わり、自分で制御はできません。文字探知機もあり、職場と私生活で自由に情報を持ち運びもできない、完全な別世界となってしまいます。

本作が心理的にゾっとする怖さを持つのは、これほど極端ではないにせよ、職場と私生活で頭を切り替えるということは多くの人々が意識的もしくは無自覚的にやってしまっているということです。むしろそれが好ましいと推奨されることさえもある。私生活の悩みとかを職場に持ち込まず仕事に専念したい…私生活だけは仕事を忘れて楽しみたい…そういう境界線を作ることは結構大勢が実践しているし、身に覚えもあるでしょう。

しかし、それをこんな得体の知れない技術で半強制的に実行してしまったら…。恐怖のディストピアですよ。分離してしまうことはいかに恐ろしい結果をもたらすか、嫌というほどに見せつけられます。

働くモチベーションもわからなくなってくるし、退職するという判断もしづらくなっていく。一見すると自由を与えているようで、実のところは徹底した管理社会に拘束されることになる。

この本作の舞台となっているルーモン産業。特徴的な建物の外観と駐車場が序盤から映りますが、撮影地はあの「ベル研究所」です。当時のアメリカで最先端の研究ができる場として有名なところでしたが、ここをロケーションに選んでいるのがまた意味深ですね。企業と技術の融合がどれほどおぞましい革新をもたらすのかという警告でもあり…。

マークたちマクロデータ改良部がやっている業務も「パソコンの画面に浮かぶ数字をひたすら仕分ける」というさっぱり何の意味があるかわからない内容なのも不気味。これはこれで「労働」というものを最小構成で突き詰めていった結果の成れの果てみたいな感じに思えますし…。

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シーズン1:次々と発覚する衝撃の事実

史上最悪労働環境で物語が展開する『セヴェランス』。ジャンル的には「多重人格モノ」に近いですが、プロットの構成が巧み。

マークたちは幾度となく反発する新入社員のヘリーとなぜか唐突に消えた昔の同僚のピーティに触発されて、しだいにこのルーモン産業を疑うようになっていきます。そんな中で徐々にこの企業の真実が明らかになっていく…というのが本作の面白さです。

ヘリーの自殺騒動、ピーティの残した意味深な会社の見取り図…いろいろな出来事が疑いを強め、すでに会社に反発し始めている「視覚デザイン部(Optics and Design division; O&D)」の面々と出会ったことでその反抗心は加速。「マクロデータ改良部(Macrodata Refinement division; MDR)」のメンバーの中でも会社に忠誠心のあったアーヴは視覚デザイン部のバートに恋をしつつもその彼がクビになったことで堪忍袋の緒が切れ、マイペースだったディランさえも自分に息子がいたことを偶発的に知ってしまい、居ても立っても居られず…。

そしてついに第8話終盤でセキュリティ・ルームに侵入して時間外接触をこちらの意思で起動。ここからの怒涛の情報発覚が凄まじく、ネタバレ厳禁のサスペンスの最高潮に。

マークは2年前に妻が死んでその喪失感を忘れたくてこのルーモン産業に入社したと理解しますが、妻と映っている写真を見てびっくり。そこにいた妻はルーモン産業でセラピーを担当していたケイシーなのでした。つまり、妻は生きている…? アウティの自分さえも会社に騙されているのか?

さらにこれまでずっと過去が明らかになっていなかったヘリーの正体にも驚き。彼女はこのルーモン産業の現経営者であるイーガン家の娘、ヘレナ・イーガンなのでした。なぜルーモン産業に入社したのか…謎が謎を呼ぶ展開。セヴェランス支持派の議員であるアンジェロ・アルテタとその妻のギャビーと一緒にパーティに参加しており、その事実を受け止めようと必死になる中、職場人格が外で覚醒したヘリーはスピーチでこの人権侵害を訴えようとしますが…。

凄い気になるところでシーズン1は一旦閉幕。まんまとこのドラマに踊らされている…。マークは妹のデヴォンと夫のリッケン、そして反セヴェランス派や医者と協力して「vsルーモン産業」の対立構図を激化させていくのかな…。分離していないコベルの謎、さらにそのコベルさえも理解していない役員会の正体…まだまだ疑問が多すぎる…。

『セヴェランス』のシーズン2を観る前にまたシーズン1を鑑賞しておさらいしないとダメだな…。

『セヴェランス』
ROTTEN TOMATOES
S1: Tomatometer 98% Audience 93%
IMDb
8.7 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
9.0

作品ポスター・画像 (C)Apple

以上、『セヴェランス』の感想でした。

Severance (2022) [Japanese Review] 『セヴェランス』考察・評価レビュー