スター・ウォーズの歴史が変わる…「Disney+」ドラマシリーズ『アソーカ』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2023年)
シーズン1:2023年にDisney+で配信
製作総指揮:ジョン・ファヴロー、デイブ・フィローニ ほか
アソーカ
あそーか
『アソーカ』あらすじ
『アソーカ』感想(ネタバレなし)
歴史が変わる瞬間が来たのだろうか
シリーズ、もっと言えばフランチャイズ…それが長く続いていくというのは人気があるからこそなのですが、その宿命として背負うのがマンネリ化です。同じような展開や構図が繰り返されれば、新鮮さや独創性は減退し、惰性で継続しているような状況に陥ってしまいます。
どこかでこの状態を変える起点を作らないといけません。でもそれを作るのはそう簡単ではない。それはクリエイターなら重々よくわかっていること…。
そんな創造性の難題に、この巨大なシリーズもついに答えをだすときが来たのかもしれません。
何の話か、はい、『スター・ウォーズ』です。
“ジョージ・ルーカス”が1977年の『新たなる希望(エピソード4)』から開幕させたこのスペースオペラのシリーズは、旧三部作(1977年~1983年)、新三部作(1999年~2005年)と続いて、一旦は映画としては幕を閉じましたが、2015年からの『フォースの覚醒(エピソード7)』で新たな続三部作が始動しました。
たぶんこの2019年の『スカイウォーカーの夜明け(エピソード9)』で終わった続三部作こそ本来は『スター・ウォーズ』の流れを変える起点になるべき最大のチャンスだったはず。しかし、それはお世辞にも上手くいったとは言えず、なんだか消化不良で漂うだけになってしまいました。
けれども2度目のチャンスが訪れます。2019年からの『マンダロリアン』から始まった一連のドラマシリーズです。
このドラマシリーズは単に『スター・ウォーズ』の世界を横に拡張するだけのスピンオフだと当初は思われていましたが、シリーズが進むにつれ、どうやらそうではない空気が増していきました。
その仕掛け人は“デイブ・フィローニ”。現在、「ルーカスフィルム」における『スター・ウォーズ』のクリエイティブのトップに立つ“デイブ・フィローニ”は、あの“ジョージ・ルーカス”の意思を誰よりも受け継ぎ、この作品を次の世界へと導こうとしていました。
そしてついに『スター・ウォーズ』の歴史が変わる瞬間に立ち会える作品が来た…のかな。
それが本作『アソーカ』。
ドラマ『アソーカ』は『スター・ウォーズ』史において重要な作品となっているので、ぜひとも幅広く視聴をオススメしたくなるのですが、ちょっとそうもいかない理由もあって…。本作、『スター・ウォーズ』映像作品群の中でも最もマニアックな一作だからです。
まず本作を観るうえで『スター・ウォーズ』の世界観をかなり熟知してないとついていけない部分が多いです。しかも主人公の「アソーカ」は2つのアニメシリーズ『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』(2008年~2020年)と『スター・ウォーズ 反乱者たち』(2014年~2018年)で登場したキャラクターで、その世界観と地続きになっています。前述のアニメのエピソード数は膨大なので、これを今から観るのもひと苦労です。
「Disney+(ディズニープラス)」に入っておけば全部鑑賞できるのがせめてもの救いですが…。
でもこの『アソーカ』は本当にエポックメイキングな一作ですよ。女性同士のジェダイの師弟関係が主題になるとか、そういうわりとわかりやすい新しさはもちろん、もっとディープな部分でも「おおっ!」となるような展開に…。まあ、オタクしか驚かないかもですけどね…。
“デイブ・フィローニ”の集大成というか、『スター・ウォーズ』の集大成。ここに到達するからこそ意味があります。
なんにせよ『スター・ウォーズ』はこの『アソーカ』で完全に新しい未来へ舵を切り始めたと言い切っていいでしょう。
あなたも銀河の歴史の大ジャンプの目撃者になってください。
『アソーカ』を観る前のQ&A
A:後にダース・ベイダーとなるアナキン・スカイウォーカー(ルーク・スカイウォーカーの父)のパダワン(弟子)だったジェダイです。そのジェダイとしての成長と運命が描かれるのがアニメ『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』でした。
A:アニメ『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』と『スター・ウォーズ 反乱者たち』、そしてドラマ『マンダロリアン』は鑑賞しておきたいところですが…量が多いです。時間軸としては『マンダロリアン』と同じです。
オススメ度のチェック
ひとり | :ファンは必見 |
友人 | :ファン同士で語り合う |
恋人 | :一緒にファンになって |
キッズ | :エンタメ満載 |
『アソーカ』感想(ネタバレあり)
あらすじ(序盤):2人は再会する
新共和国軍の護送船に正体不明の船が接近します。ジェダイの古いコードを発信しているようで、ジェダイはほぼ滅んだはずなので訝しく思うも船長は迎えることにします。ブリッジへ向かった船長の前に現れたのは黒いローブをまとった2人。
「騙されないぞ。あなたは偽物だ。帝国のクズが図に乗りすぎたな」と淡々と牽制する船長。スキャンしようとしたその瞬間、隣の人が赤みの強いオレンジ色のライトセーバーで攻撃、フォースの力も駆使し、船長を刺し殺して船へ乗り込んできます。
そして裁判に向けて輸送中だったモーガン・エルズベスをを脱獄させるのでした。「ベイラン」と声をかけられた黒いローブの男。モーガンは「厄介な女が地図を探している。ジェダイだ」と口にし、その名は「アソーカ・タノ」だと語ります。
ところかわってアソーカは崩壊した聖堂のような場所にゆっくりと足を踏み入れていました。2本のライトセーバーを使って地下へ。そこは壁画で囲まれた薄暗い場所。何かを感じながら円柱状のものを回し、封印をといて小さな球体を手に入れます。
ヒュイヤンに連絡するも通信障害。外に出ると体術に長けた戦闘ドロイドが立ちはだかり、百戦錬磨のアソーカは地形を活かしてドロイドを圧倒。自爆プロトコルから逃げるために、船に飛び移り、爆風から退避します。
かつてジェダイ・オーダーに仕えていたヒュンヤンと会話していると通信が入ります。最重要事項の内容のようです。
アソーカは知り合いのヘラ・シンドゥーラ将軍と合流。「例の囚人が逃亡した」と言われます。しかも襲撃者2人のホログラムを見せられ、その2人はライトセーバーを使っていました。
アソーカは遺跡で手に入れた球体の星図の内容がスローン大提督の居場所を示すものだとヘラに説明します。ヘラは「スローンはロザルの戦いで死んだはず」と反論しますが、アソーカは真面目に警戒していました。
「スローンが生きているならエズラも…」とヘラは言いかけますが、確かなことはわかりません。
地図はロックされています。これを開けられそうなのは…。
惑星ロザルでは、かつての英雄エズラ・ブリッジャーを讃えるスピーチが行われていました。サビーヌ・レン中佐を紹介しますが、ここには来ていません。
スピーダーを恐れしらずでかっ飛ばすサビーヌ。帰宅し、エズラのホログラムを再生し、物思いにふけます。そのとき、アソーカの船がサビーヌの家の上空を通っていきました。
久しぶりの再会。2人は意味深に見つめ合い、アソーカが口を開きます。
「エズラが見つかるかもしれない」
運命がまた動き出すことに…。
スター・ウォーズの限界と呪い
ここから『アソーカ』のネタバレありの感想本文です。
ドラマ『アソーカ』は冒頭からあの『スター・ウォーズ』伝統のオープニングクロールから始まるのですが、ある意味、これもこのシリーズを総括するという姿勢の表れなのかな。実際、非常に自己批評性のある作品だなと思いました。
本作は全編にわたって『スター・ウォーズ』の「限界」とも言うべき作品そのものの行き詰まりをあえて物語で強調するような展開が連発します。
例えば、新共和国の残念な体たらく。新共和国がいかに組織的にダメなのかはこれまでのドラマでも描かれており、『マンダロリアン』シリーズ3では共和国内でも非倫理的な統率管理が行われている実態まで描かれていました。『アソーカ』でも第1話の舐め切った態度やスローン復活を軽視する上層部など、緩み切った組織体質が露呈しています。レイアは苦労したんだろうな…。
『スター・ウォーズ』は「共和国が正義で、帝国が悪」みたいなそんな単純な対立軸ではありません。結局、組織というのはどういう政治体制であれ、いずれ腐る。新しい共和国と新しい帝国が誕生して、また戦い合って…それを延々と繰り返す(続三部作はそれをそのままやっちゃったからあれだったのだけども…)。
それはもう嫌だと考えているのがベイラン・スコールであり、あのキャラは一見するとヴィラン側にいますが、案外と体制批判的でアナーキスト志向です。
そしてアソーカも同じように限界を痛感しています。印象的なのが第5話。ベイランに敗北して謎空間でアナキンと再会。そしてパダワン時代に巻き戻り、そこでクローン戦争のあのシチュエーションを追体験します。ここの演出はまるで『1917 命をかけた伝令』みたいな「無限戦争地獄」のようで、ジェダイとはつまり政治に翻弄される駒としての兵士にすぎないのだと再確認させられます。
アソーカはそうしたジェダイ、そしてジェダイ・オーダーの組織としての限界を感じたからこそ、そのコミュニティから身を引いたのですが、ではそのアソーカはどこに行けばいいのか。
アソーカが悩んでいるからこそ、弟子となるサビーヌ・レンも彷徨います。サビーヌはジェダイとマンダロリアンを併せ持っていますが、どちらとも距離をとっているのでアイデンティティが見いだせていません。
一方でスローンはペリディアで虎視眈々と復活の機会を待っていたのですが、スター・デストロイヤーがヌっと登場するシーンはかなり異色。いつもの帝国のテーマ曲も無し。まるで亡霊のように存在し、トルーパーもなんだか不気味…と思ったらまさかのゾンビ状態になるし…。
帝国の残骸がただ役割を果たすためだけに生かされているという、見ようによっては非常に『スター・ウォーズ』という作品の画一的なプロットを皮肉るような演出でした。
『スター・ウォーズ』の世界は呪われている…共和国も帝国もジェダイもみんな、その呪いから抜け出せない…。
長年蚊帳の外にあったエズラ・ブリッジャーがそれでもそんな呪われた世界に戻りたいと発言するのがまたもの悲しくもあるのですが…。
スター・ウォーズの次なる世界
ドラマ『アソーカ』はそんな重い呪いを抱えている『スター・ウォーズ』がどこに行けばいいのか?という、このシリーズの究極の問いに答えようとします。
で、その答え方として、文字どおり、新しいところに行ってみせる本作。でもこれはいつもの宇宙船に乗って新しい星へ…みたいなのとは事情が全然違います。「別の銀河」に行ったのです。
あらためて考えると気づきますが、『スター・ウォーズ』の世界は実はほぼひとつの銀河系で成立していました。銀河から別の銀河へ盛大に航行するみたいな『スター・トレック』ほどの大冒険はしていません。ハイパージャンプ機能はあれど、銀河間移動の技術は普及実用化していなかったんですね。
しかし、本作では魔術と科学の力の融合で「シオンの目」というハイパードライブが実現。さらにアソーカもパーギルの群れに乗って銀河間のハイパーレーンを行き当たりばったりながら実行してみせます。
こうして別の銀河が確かにあることが立証されました。これは世界観を無限大に拡大します。もしかしたら全く別の文明があるかもしれない…フォースの在り方も違っているかもしれない…。少なくとも共和国と帝国のいざこざなんてちっぽけな争いです。
これは突然投入された新要素ではないです。それを自信満々に語り示すのがあの『スター・ウォーズ』の定番とも言える「遠い昔、はるかかなたの銀河系で…(FAR, FAR AWAY)」というフレーズ。ここでこれを伏線回収するというのはファンにとっては熱すぎる展開でしたね。
さらにこの別の銀河という概念を世界観設定的に補強するのが「古代」の話。最近の“デイブ・フィローニ”が手がける作品は『スター・ウォーズ バッド・バッチ』といい、古代の要素がちょこちょことでてきていたのですが、しっかり伏線だったんですね。
古代の魔術を知るナイトシスターといい、出自不明で大昔の技能を引き継ぐヒュイヤンといい、本作は古代と繋がるキャラが本当に多いです。
『スター・ウォーズ』は今後、三つの時代を舞台にした3本の映画を公開する予定で、旧共和国以前のジェダイの黎明期が舞台の映画、新共和国の時代が舞台の映画、『スカイウォーカーの夜明け』の15年後が舞台の映画と説明されています。これらは繋がりがないように思えますが、今回の『アソーカ』を観るとどれも着実に接続していきそうな気がしますね。また、『ファントム・メナス(エピソード1)』の100年前、「ハイ・リパブリック」と呼ばれるジェダイ全盛期の時代が描かれるドラマ『The Acolyte』も2024年に配信予定しており、その内容も無視できません。
まあ、でもまずはアソーカたちのこの先が気になります。ペリディアに残されたアソーカ&サビーヌ&ヒュイヤンはどうなるのか。ベイランとシン・ハティも残されましたが、2人はどんな道を選ぶのか。ヘラと合流したエズラはどうするのか。スローンとその部隊は惑星ダソミアで帝国残党と合流して何をしでかすのか。
たぶん次は『マンダロリアン』シーズン4かな?
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 87% Audience 72%
IMDb
7.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
関連作品紹介
「スター・ウォーズ」のドラマシリーズの感想記事です。
・『キャシアン・アンドー』
・『オビ=ワン・ケノービ』
作品ポスター・画像 (C)Disney
以上、『アソーカ』の感想でした。
Disney (2023) [Japanese Review] 『アソーカ』考察・評価レビュー
#スターウォーズ