この時代でも変わらないキャンパス・ライフ…ドラマシリーズ『スタートレック:スターフリート・アカデミー』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2026年~)
シーズン1:各サービスで放送・配信
原案:ガイア・ヴィオロ
性描写 恋愛描写
すたーとれっく すたーふりーとあかでみー

『スタートレック スターフリート・アカデミー』物語 簡単紹介
『スタートレック スターフリート・アカデミー』感想(ネタバレなし)
60年目は「スタートレック」の最大の危機に…
2026年は『スタートレック』(スター・トレック)シリーズの誕生60周年という記念すべき年を迎えました。“ジーン・ロッデンベリー”が『宇宙大作戦』の出発点から旅立った1966年。2017年の『スタートレック ディスカバリー』からドラマシリーズが再び活況をみせ、『スタートレック ピカード』(2020年~)、『スタートレック ストレンジ・ニュー・ワールド』(2022年~)と、最近も世界観はどんどん広がりました。


しかし、絶好調の中で誕生60周年を迎えました!とお気楽にはいかない現実もあって…。
その最大の懸案事項は、IPを持つ「パラマウント・スカイダンス・コーポレーション」が権力者とべったり癒着して巨大メディア・コングロマリットとしてかつてないほど力をつけていることです。『スタートレック』の理念とは真逆の状態であり、表現の自由さえ脅かされています。何にでも「ポリコレ(woke)だ!」と文句をつける連中が絡んできてただでさえ鬱陶しいというのに…。
日本はもっと困ったことになりました。「Paramount+」の撤退です。日本では「Paramount+」は独立の動画配信サービスとして展開せず、他社のサービスに付随するチャンネル提供もしくは作品提供をしていただけですが、2026年3月末でその形式の「Paramount+」も解消に(今後は未定)。多くの『スタートレック』シリーズ作も扱われていましたが、それも無くなり…。つまり、日本ではそもそもスタトレが観れない! どうなってるんだ…。
そんな未曽有の『スタートレック』危機の最中に、この最新のドラマシリーズをどういう気持ちで観ればいいんでしょうかね。
ということで本作『スタートレック スターフリート・アカデミー』です。
今作は『スタートレック』初の学園青春モノ!という触れ込みになっていますが、わりといつもの『スタートレック』です。若者多めの顔ぶれではありますけどね。
舞台は32世紀であり、なので『スタートレック ディスカバリー』と一番関連性が深いです。そちらの作品を絶対に観ておくべき…というほどではないですが、知っておくと「あのキャラが!」という出会いがあります。
一応、シリーズ一切未見でも大丈夫ですが、ひとつ知っておくことがあるとすれば、この世界では「大火(The Burn)」という宇宙レベルの一大事件が起きた…ということを押さえておいてください(詳細は『スタートレック ディスカバリー』のシーズン3で描写)。私たちの現実社会に例えるなら、原発が全部一斉に爆発した…ぐらいの桁違いの大災害です。大勢が亡くなり、復興中の世界…。『スタートレック スターフリート・アカデミー』はその世界の未来を担う若者を育てているわけですね。
物語と現実を重ね合わせると、この今こそ『スタートレック スターフリート・アカデミー』の作品性はぴったりなのかもしれません。
『スタートレック スターフリート・アカデミー』を観る前のQ&A
鑑賞の案内チェック
| 基本 | — |
| キッズ | やや性的な描写もあります。 |
『スタートレック スターフリート・アカデミー』予告動画
『スタートレック スターフリート・アカデミー』感想/考察(ネタバレあり)
あらすじ(序盤)
とある星、ひとりの女性が幼い息子のケイレブ・ミルと一緒に星空を見上げ、いつか宇宙船で地球に行けると優しく言い聞かせていました。その母親の表情は心痛そうです。そこへ女性を迎えに来る者が来ます。
通されたのは、ヌース・ブラッカという宇宙海賊の法廷。今から裁判が始まります。惑星連邦の前哨基地で指揮官をしていたナーラ・アーケがこの審問を仕切ります。この悪名高き海賊は、宇宙艦隊の宇宙船を墜落させ、パイロットを殺害した罪に問われていました。当のヌースは挑発的な態度で余裕そうです。
一方、この審問に巻き込まれたあの女性は貧困ゆえに食事欲しさにあの海賊の手助けをしてしまったのでした。
ヌースは終身刑を宣告され、共犯者とみなされたケイレブの母親も更生キャンプ行きを宣告されます。残される幼いケイレブは連邦の里親に預けられることになります。弁解もできないまま問答無用で母親は引きずられ、ケイレブに「愛してる」を言い残すのがやっとです。
ナーラは残された子であるケイレブの隣に座り、慰めます。しかし、ケイレブは目を離した隙に逃げ出してしまいました。嵐の外へ…。
15年後、ある囚人輸送船が航行中にトラブルが起きます。侵入者が潜り込んでいたのです。警備員を倒して船を乗っ取ったのは21歳の青年となったケイレブでした。母親を探すための大胆な行動。けれども、それは一時の優勢でしかなく、あっという間に捕まってしまいます。
ところかわって、ベイジョー星系でナーラは平穏に暮らしていました。今は職を辞しています。そこへチャールズ・ヴァンス提督がやってきて、宇宙艦隊アカデミーの初代総長に就任してくれないかと彼女を招聘。最初は断るものの、ヴァンスから「ケイレブを逮捕した」と聞かされ、無視できなくなります。
さっそくナーラはケイレブに会いに行きますが、彼は反抗的で怒りをぶつけてきます。ずっと逃亡生活を送りながら、母を奪ったナーラを憎んでいたようです。
なんとか助けたかったナーラは「宇宙艦隊アカデミーに入学しないか」と持ちかけます。さらにケイレブの母親が1年前に脱獄したことを伝え、母を探すのを手伝うとも提案。
ケイレブは渋々同意し、宇宙艦隊アカデミーの拠点ともなる「U.S.S.アテナ」に到着。そこには大勢の学生がそれぞれの野心と夢を胸に集っていました。
ずっと孤独に生きてきたケイレブは、そこでいろいろな同じ士官候補生となる学生に出会います。クリンゴン人のジェイデン・クラーグ、カスキアン人のサム、ダー・シャ人のルーツを持つジェネシス・ライス、カイオニア人のダレム・レイミ…。
こうして若者たちを乗せた船は出発します…。

ここから『スタートレック スターフリート・アカデミー』のネタバレありの感想本文です。
シーズン1:新時代を築く者たち
『スタートレック スターフリート・アカデミー』は舞台が32世紀であり、現時点でシリーズで最も未来を描いている作品のひとつです。つまり、それはどういうことかと言えば、この作品の主役である若者たちは最も進歩的な世界の中で生まれ育ったということです。
それゆえに複雑なルーツを抱えている若者が多く、その背景が各キャラクター・アークを彩っています。
例えば、“ベラ・シェパード”演じる候補生ジェネシス・ライスは地球人とダー・シャ(ダーシャ)のミックスです。ダー・シャは本作で初登場なので詳細はわからないのですけども、宇宙遊牧種族らしく、宇宙船育ちで星に降り立ったのは初らしいジェネシスは、根はしっかりしていますが、まだまだ経験不足。
候補生だけでなく、“ホリー・ハンター”演じるアカデミー学長のナーラ・アーケも地球人とランタナイトのミックス。ハーフでもたぶんそれなりに長寿なのかな? そして、“ジーナ・ヤシャレ”演じる副長のルーラ・ソクはジェムハダーとクリンゴンのミックスですよ。絶対、苦労してるんだろうなと察しのつく血縁だ…。ちなみに私は本作でルーラが一番好きなキャラです。
こんな感じで当然のようにマルチレイシャルだらけなので、「あなたは何人?」と聞くのも野暮ではあるのですが、聞かないとわからないくらいに複雑化しています。惑星連邦の歴史を感じさせますね。相変わらず更衣室に男女区別なしでジェンダーレスが当たり前の世界ですが、種族の区分けももう意味は失いかけています。
そんな中、“カリム・ダイアン”演じるクリンゴンのジェイデン・クラーグは種族の伝統(とくに男らしさ)に圧力を感じながら、ぎこちなくも自分らしさを確立する。ジェイデンのエピソードは良かったですね。クリンゴンはディアスポラ(離散民)になっているみたいで、種族の存亡の点でも心配ですが…。
なお、ジェイデンはボーイフレンドのカイルと、カイオニアのルーツがあるダレム(演じるのは“ジョージ・ホーキンス”)がそこに挟まるかたちで三角関係のゲイ・ロマンスが静かに火花を散らし、こちらの未来も気になるところ。
クィア表象だと、ルーラと、『スタートレック ディスカバリー』より続投のジェット・リノ(演じるのは“ティグ・ノタロ”)も交際が確認され、教官同士の渋みのあるサフィック・カップルもさりげなく心地いいです。
『宇宙大作戦』でヒカル・スールー(カトー/カトウ)役を演じ、自身が同性愛者でもある“ジョージ・タケイ”いわく、「60年代は番組に同性愛者のキャラクターを登場させようと試みたけど、ロッデンベリーは、すでにやった異人種間のキスを描くだけでも打ち切りのリスクがあったため、これ以上の挑戦をやらなかった」らしいですが(Xtra Magazine)、それから60年、ここまでやっときました。
極めつけで面白いのは、“ケリス・ブルックス”演じるサムで、ホログラム種族(フォトニック)のカスキアン人の候補生なんですね。ある種の高次元生命体は『スタートレック』シリーズでは定番ですが、この時代になるとこんなにも有機生命体に寄り添ってくれるなんて…それだけで感動する…(“ロバート・ピカード”演じるドクターもナイス指導者っぷり)。しかも、このサム回である第5話は、まさかの『スタートレック:ディープ・スペース・ナイン』リスペクト回でもあり、フランチャイズ初の黒人の艦長ベンジャミン・シスコをとおして、黒人表象への敬意を表しながら過去と未来を繋げる非常にアツいエピソードでした。
こんな相当に進歩的な話が満載かと思えば、メイン主人公のケイレブ(演じるのは“サンドロ・ロスタ”)は典型的な不良系ハンサムマッチョで、そんな彼がベタゾイドの優等生お嬢様であるタリマ・サダル(演じるのは“ゾーイ・ステイナー”)と恋を咲かせる、すごくベタな少女漫画みたいな関係性もあったり…。
全体を振り返ると、新時代を象徴するオタク・カルチャーたっぷりなキャンパス・ドラマだったと思います。
シーズン1:旧世代の過ちを踏まえて
そんな『スタートレック スターフリート・アカデミー』ですが、青春学園モノとしてただただワイワイやってるだけにはなりません。
第6話は事実上の敗北回であり、ここからはとても重苦しいトーンが前面に出てきます。正直、この語り口はやや鈍重でテンポが悪いなと思うところもあったのですけど、必要な展開であるのは理解できます。
なぜなら「大火(The Burn)」で多くの犠牲者がでたというだけではなく、その災厄は惑星連邦の過失でもあるからです。この『スタートレック スターフリート・アカデミー』は、 旧世代が自らの過ちを認め、新たな世代にバトンを渡すという必須の儀式を主題にしていました。
その旧世代の過ちの象徴としてナーラが背負うのは、ケイレブの母アニシャ(演じるのは“タチアナ・マスラニー”)の件です。あの裁判は便宜上「裁判」と表現しましたが、実際は裁判の体裁すらもないお粗末な審議。こうして貧困の格差も、搾取され虐待される弱者も救えなかった惑星連邦。そんなコミュニティが掲げる理念は偽善じゃないのか…。
今作のヴィランであるヌース・ブラッカ(演じるのは名俳優“ポール・ジアマッティ”)は、いわば極右インフルエンサーみたいな奴で、「連邦イデオロギーが大衆を洗脳している」と調子よく煽って、世界の不信感を逆手にとり、反省と進歩を阻害します。私たちの現実社会で起きている風景と全く同じです。
それに対して、シルビア・ティリーなど新世代寄りのメンターの助けも借りつつ、ケイレブたちはそれでも「この惑星連邦の理念を信じたい」、いや、「自分たちの世代がこの理念を信じられるものにしてみせる」と覚悟を表明する。これはこの現実世界で私たちファンが『スタートレック』を好きでいる理由とも重なると思います。
1960年代の公民権運動や反戦運動の最中に放送されたオリジナルの原点。『スタートレック スターフリート・アカデミー』も激動の時代の船出でしたが、これからも若い世代の信じる理念がこのシリーズの未来を形作るでしょう。
シネマンドレイクの個人的評価
LGBTQレプリゼンテーション評価
△(平凡)
以上、『スタートレック スターフリート・アカデミー』の感想でした。
作品ポスター・画像 (C)CBS Studios スター・トレック スターフリートアカデミー
Star Trek: Starfleet Academy (2026) [Japanese Review] 『スタートレック スターフリート・アカデミー』考察・評価レビュー
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