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『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』感想(ネタバレ)…ロシアの戦車はなんか強い

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

ロシアの戦車はなんか強い…映画『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』(T34)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:T-34
製作国:ロシア(2019年)
日本公開日:2019年10月25日
監督:アレクセイ・シドロフ

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

T-34 レジェンド・オブ・ウォー

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』あらすじ

第2次世界大戦下、ソ連の新米士官イヴシュキンは初めて出た前線で勇猛果敢な仲間と共に戦車「T-34」を乗りこなし、ナチス・ドイツ軍の強力な戦車中隊を相手に激しい戦いを繰り広げる。それは一進一退の攻防となり、やがて双方ともにズタボロになりながらも、勝敗が決まる。イヴシュキンたちは捕虜になってしまうが、それは戦いの終わりを意味しなかった。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』感想(ネタバレなし)

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ロシアは戦車映画がお好き

戦闘機がドローン化して有人である必要がなくなりつつあり、農業用トラクターでさえもリモートセンシングによって遠隔自動操縦できる技術が開発されている今の時代。当然、戦車にも無人運用の波が押し寄せています。ただ、そもそも戦車自体が今の戦場では実用性がなくなりつつあるせいか、陸上兵器はもっとコンパクトな無人ロボットの方に注力されている側面もあるみたいですが…。

そんな中、2018年に無人戦車を実戦配備したというニュースがありました。そんな戦車を作ったのはどこの国か。「ロシア」です。ロシアの国営企業が開発したその戦車はやたらと武装をガン積みしており、もはや怪獣とでも戦うつもりなのだろうかというレベル。配備地はシリアだと報道されていましたが、シリアにはたぶんモンスターは生息していないと思うので、何をしているのか…。ともかくこの一件からもロシアは戦車好きなんだなと伝わってきます。

その戦車マニアなロシア。2019年にロシアで記録的大ヒットを叩き出した映画も戦車映画でした。それが本作『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』

最終興行収入は40億円を超え、観客動員800万人となり、ロシアで2019年に最も話題になった一作になりました(なお興収だけで言えばロシアの歴代興収ランキングのベスト30にも届いていません。国土は広いですがロシアの映画市場は案外小さいです)。

ロシアのアカデミー賞ともいえる「ゴールデンイーグル賞」でも、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞、主演女優賞、助演男優賞、撮影賞、プロダクションデザイン賞、衣装賞、音響賞、視覚効果賞など多数にノミネートされました。

そんな『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』はそのタイトルのとおり「T-34」という戦車を主役にした単純明快エンターテインメント・ムービーです。「T-34」は第二次世界大戦からソ連で運用されていた戦車で、数も多く汎用的なため、今も現存しているものが多数あります。なのでロシアの戦車が出ている作品であれば、頻繁にこの「T-34」を見かけることが多いです。意外なところだと『アントマン』にも印象的に登場していましたね。

ちなみに「T-34」の「T」はロシア語で戦車を意味する「Танк(タンク)」のこと。英語由来なんですね。

本作は第2次世界大戦を舞台にしている以上、重めの作品なのかなと思ったら予想外に軽いです。ある人は『フューリー』×『大脱走』と表現し、またある人はロシア版『ガールズ&パンツァー』と表現する…。シリアスな戦争史要素を極力排除し、できる限り戦車同士の対決をカッコよく描くことに特化した、なんとも潔い映画なのです。ロシアの戦車がドイツの戦車をぶっ倒します。もうそれだけです。

「T-34」が出てくるロシア映画といえば『ホワイトタイガー ナチス極秘戦車・宿命の砲火』(2012年)がありましたが、あれよりもさらに娯楽性を増しています。残酷なシーンもほぼ出てこないので(死体と拷問の軽めな描写のみ)、普通に子どもでも見れます。戦車が好きならオススメですね。

監督・脚本は“アレクセイ・シドロフ”という人で、結構ロシア国内ではキャリアのある方みたいですが、私は全然知りませんでした。それよりも製作に『ウルガ』『太陽に灼かれて』『12人の怒れる男』の“ニキータ・ミハルコフ”の名があるのが特筆されがちです。まあ、どれくらい関与したのかは知りませんが…。

主人公とヒロインを演じるのは、ロシア産侵略SFモノとしてこちらもロシア国内で大ヒットを記録した『アトラクション 制圧』でも看板俳優を務めた“アレクサンドル・ペトロフ”“イリーナ・ストラシェンバウム”。なんかもうロシアのヒット映画の顔といった感じでしょうか。ちなみに“アレクサンドル・ペトロフ”は2019年は『TECKT』という主演作も高い評価を得ており、ゴールデンイーグル賞では『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』の成果と並んで『TECKT』でも主演男優賞にノミネートしています。

とにかく明快なド派手映画です。できれば劇場鑑賞を推奨するのは当然。

日本でもロシア映画としては異例のお客さんを集めているようです。日本にも戦車バカはあちらこちらに潜んでいるのでした。

あ、女の子たちは全く出てきません。その代わり、裸の男たちが水遊びするサービスシーンがあります! 基本はそんなノリの映画です。

オススメ度のチェック

ひとり◯(戦車マニア必見)
友人◯(ミリタリー語りを)
恋人△(恋愛要素もあるけど)
キッズ◯(戦車好きっ子に)
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『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』予告動画

T34  レジェンド・オブ・ウォー 予告篇
↓ここからネタバレが含まれます↓

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』感想(ネタバレあり)

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ドイツ敗因:その1「敵は溜め攻撃できる」

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』はわかりやすい3部構成になっています。そのすべてで戦車に乗っている、まさしく戦車づくしの映画です。

冒頭は1941年。二人組の男たちが斧を使って看板を倒す作業中。いつ敵が来るかもわからないので「急げ、ここは危険だぞ」と急かす片方でしたが、そうこうしているうちにドイツの戦車が出現。軽トラックで急いでその場を逃げようとします。進行方向にいた敵の戦車の横を大胆に通り過ぎますが、主砲がゆっくりこちらに向いてきます。しかし、この男、屈しません。なんと「1、2、3、4…」とタイミングを見計らい、ハンドルをとっさに回して砲弾の直撃を除けるのでした。ルパン三世かよ…。

さらに敵もそれに気づいて今度はトラックの進行方向を予測して狙いを定めて偏差砲撃。しかし、男はそれも推測し、急ブレーキで砲撃を回避、無事に逃げおおせました。

はい、こんな感じで「んなわけあるかい!」という超絶テクニックがてんこもりで登場します。まだほんの序の口です。

こんなスーパー戦車回避の偉業をやってみせた主人公のニコライ・イヴシュキン。当然、軍内でも噂になり、そのまま窮地をひっくり返すべく戦車隊のリーダーに任命されます。“隊”と言っても戦車はひとつの「T-34」のみ。それに搭乗するのは、操縦手&軍曹のステパン・ヴァシリョノク、砲手のディミヤン・ヴォルチョク、装填手のセラフィム・イオノフの3名。この計4人で防衛線に向かうという無謀すぎる作戦でした。

とある小さな無人の村で待ち伏せするイヴシュキン戦車チーム。林の奥からゆっくり出てきたのはナチス・ドイツ軍のイェーガー大佐(凄い名前だ)率いる戦車中隊。その数は1、2、3、4、5…戦車の数はかなり多いです。普通は勝てません。瞬殺でやられます。

しかし、イヴシュキンには主人公補正、じゃなかった戦略があるのです。小屋に隠した対戦車砲で相手を陽動。相手の油断を誘い、その横っ面を砲撃。一気に二枚抜きとかしちゃいます。迫撃砲を撃ち込まれ、敵兵が村を進軍し、火炎放射で家を焼いていく中、またも隙を突いて攻撃。主人公の戦車は傷つきながらも動きを止めません。

なんでしょうか、この攻撃力と防御力のバランス調整の不公平さ。ゲームだったらイージーモードです。きっとたぶんイヴシュキンの戦車は「溜め押し攻撃」ができるんだろうな。Bボタンを押しっぱなしにして放すと強い砲撃ができるんですね。それなら納得。

なんだかんだで敵はあと2体。2体の戦車に囲まれ、それでもなおも挫けないイヴシュキン。味方の決死の攻撃で1体の戦車の主砲を大破し、1対1に持ち込みます。互いの砲撃が直撃し、死闘のすえ、両者の戦車は沈黙。互いに戦車から降りて、イヴシュキンはイェーガー大佐に撃たれるのでした。

ここまでだいたい30分。なんとも熱量の詰まりまくった戦車バトル。しかし、この次も戦車です。

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ドイツ敗因:その2「確認不足と舐めプ」

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』の第2部は、あの村での戦車バトルから3年後。イヴシュキンたちは捕虜となり、ナチスの強制収容所にいました。でもイヴシュキンは反抗的態度を全開。

ここで本作最大のツッコミポイントが発動。何を血迷ったのかイェーガー大佐はあの抵抗を示すイヴシュキンに演習だか何だか知りませんけど訓練の練習相手として戦車に乗らせようと考えるんですね。敵意をむき出しにしているイヴシュキンに戦車を与えるとか、舐めプもいいところじゃないか。戦車だけとは言え、それだけでもじゅうぶん凶器だぞ…。戦車だぞ、自転車じゃないんだぞ…。

どうした、イェーガー。疲れているんじゃないのか(心配)。

一応、逃げ出さないように周りに地雷を…とか話していますけど、そういう問題じゃないだろうに。誰か説明してあげて!

しかも、そのイヴシュキンたちに与えた新しい「T-34」。戦車内には死体が放置されたままで掃除しろとか言うのですが、ちゃっかり砲弾まである。う~ん、痛恨のミス! このナチス、アホすぎる。ここまでマヌケなナチスは久々に見ました。これはさすがのヒトラーも恥ずかしくて隠れたくなるレベルの醜態ですよ。

通訳係のアーニャという女性もイヴシュキンに手を貸してくれ、完全にバカ丸出しになっているイェーガー。なんか可哀想になってきた…。

普通、脱出モノとなれば、トンネルを掘ったり、車に潜んだり、変装したりするものです。しかし、この『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』はナチス側のあまりの迂闊さというボーナス・サポートがあったおかげで、なんと戦車で逃げることができてしまいます。前代未聞…。

イヴシュキンたちが戦車を初めて動かした際の「白鳥の湖」の演出とか、もはや新手の煽り音楽としての使い方にしかなっていない。

煙幕モクモクの中、演習開始でまさかの砲撃を受け、やっと自分の大失態に気づいたイェーガー。あの茫然とした顔、いたたまれない…。うん、どんまい、誰にだって失敗はあるよ…。

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ドイツ敗因:その3「早く戦車から降りろ」

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』の第3部。余裕で逃げられたイヴシュキンたちはもう精神的には一杯食らわしたので、いい気分。ナチス印がたつ街中を堂々と走行。ビールを飲む一同。この時期にあんなビール、あったのかな…。

この映画、ロシア人によるナチスを小馬鹿にする壮大な映画だったんですね…。レジェンド・オブ・ウォーって感じではないな…。

一緒に逃げだしたアーニャと良い感じのロマンスを芽生えさせつつ、決戦に挑むことにしたイヴシュキンたち。敵はもちろん面目丸つぶれでたぶんもう今さら引くに引けないイェーガー大佐。それは負けフラグだ。そうなんだよ、イェーガーさん。

市街地戦が開始します。狭い街の道路を後退したりと、最初の戦闘以上にフィールドを活かせるかどうかが勝負の分かれ目。迎え撃つ側のドイツが有利なはずですが、相変わらずの強さを誇るイヴシュキンたちは負ける気配なし。もう逃げよう、イェーガーさん…。

相手に戦車まで奪われて、どんどん窮地になっていくナチス。おかしいな、相手は4人なんだけど。帰る? 帰ってもいいよ、イェーガーさん…。

こうなったらと一騎打ちを挑むイェーガー。橋での戦車同士のガチンコ勝負。猛スピードで敵めがけて直進する双方は、互いに砲撃。「T-34」はそれをギリギリで交わし、「III号戦車」はキャタピラーを破壊されてしまい、体当たりのオマケまで受けて、勝負あり。

これだけだと最初の戦いと同じなのですけど、ここは橋の上。戦車の上で手を握る問答をしているうちにイェーガーは戦車ととも落下してしまいました。這ってでも降りれば良かったのに…。という、戦車で戦わない方が良かったかもしれないですけどね。イェーガーさん、戦車、向いてないです。

物語はエンディング。なんかめでたしめでたしです。

とまあ、こんな感じのダイナミックな戦車バトルの詰め合わせだったのですが、スローモーションを多用した爆裂音マシマシな演出は確かに迫力あり。ただ、ちょっと単調さもあるのは、戦車がそもそもバラエティある戦いをできる兵器ではなく、ゆえにそれを最大限に生かそうとするとだいたいあんな感じになるのでしょうね。『ガールズ&パンツァー』で見たような絵が多いのも必然的な収斂進化の賜物なのでしょう。

また戦車内のシーンでは基本は男の顔のアップばかりになるのですが、役者陣がみんな良い顔しているのがいいです。

ソ連軍の「T-34」は本物の車両を使用して、美術や衣装も徹底的にリアルにこだわったという話ですが、逆にそれ以外は全くリアルを気にしていない本作。無論、強制収容所からあんな風に逃げられるわけもなく、実際はとてもたくさんの人が犠牲になっています。映画自体はそこに気に掛けることもないどころか、強制収容所の解放とかにも眼中がありません。本当に戦車と戦うことだけの戦車狂です。

ロシアの映画データベースサイトとかを見ていると、本作への批判ももちろんあります。コミックやゲームのようなリアルの欠如は真っ先にやり玉にあげられる部分です。それもまた避けられない砲弾でしょう。
間違いなく言えるのは娯楽映画としては100点満点だということ。

戦車で戦ったこともないどころか、戦場に行ったこともない人間が「いや~あのシーンはリアリティがあったね~」と舌鼓を打っているのが、戦争エンターテインメントというジャンルのいつもの光景ですからね。お腹いっぱいになれたのならそれで良しなのです。

『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer –% Audience 79%
IMDb
6.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 5/10 ★★★★★

作品ポスター・画像 (C)Mars Media Entertainment, Amedia, Russia One, Trite Studio 2018

以上、『T-34 レジェンド・オブ・ウォー』の感想でした。