また続編再始動です…Netflix映画『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。
製作国:アメリカ(2022年)
日本では劇場未公開:2022年にNetflixで配信
監督:デヴィッド・ブルー・ガルシア
ゴア描写
悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ
あくまのいけにえ れざーふぇいすりたーんず
『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』あらすじ
『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』感想(ネタバレなし)
続編も前日譚もやったけど、もう1回やるぞ!
シリーズものはやっぱりイチからちゃんと観ておかないとわからないよね…と思うものですが、イチからしっかり鑑賞していても混乱してくるくらいに、シリーズものが複雑になりすぎるということはあります。とくに何回も続編やら前日譚やら仕切り直しやらを繰り返していると、もうシリーズとしては雑然としていて説明するのも厄介です。
例えば、「悪魔のいけにえ」シリーズ。このシリーズの第1弾は1974年の『悪魔のいけにえ』(原題は「The Texas Chain Saw Massacre」)で始まりました。当時まだ無名だった“トビー・フーパー”監督作で、アメリカのテキサス州に田舎に帰郷した5人の若い男女が、近隣に住む人皮のマスクを被った大男「レザーフェイス」に襲われて無惨に殺害されていく様子が描かれたショッキング・ホラーです。その殺人描写のあまりの残酷さにちょっとした騒ぎになり、多くの国で上映禁止騒動が一時的に起きたりもしました。ともあれ、マンハントというジャンルの土台を築いたのが『悪魔のいけにえ』でした。
そのスラッシャー映画『悪魔のいけにえ』のカルト的な支持もあって、1986年に『悪魔のいけにえ2』という続編が作られ、1990年には『悪魔のいけにえ3 レザーフェイス逆襲』が公開されます。
そして1994年には物語を一旦リセットして仕切り直し、『悪魔のいけにえ レジェンド・オブ・レザーフェイス』が公開。さらに“マイケル・ベイ”が製作に加わって、リメイクとして『テキサス・チェーンソー』が2003年に始動。その続編、というか物語的には前日譚にあたる『テキサス・チェーンソー ビギニング』が2006年に公開されます。
で、まだ終わりじゃない。2013年には『飛びだす 悪魔のいけにえ レザーフェイス一家の逆襲』という(マヌケな邦題だけども)、1974年の1作目の直接的続編を謳う作品が公開。
さらにさらに、2017年には1974年の1作目の前日譚を描く(というか殺人鬼の幼少期を描く)『レザーフェイス 悪魔のいけにえ』が公開。
なんでしょうね。元の映画は「殺人鬼が若者を殺しまわる」というシンプルさなのに、肝心のシリーズ作品群の構成は複雑極まる…という感じに…。今、説明を書いている私でさえも頭がごちゃごちゃしてきますよ…。
なんでこんなあっちいったりこっちいったりなシリーズ展開になったのかと言えば、おそらく映画化権を1作目の脚本家である“キム・ヘンケル”など個人が保有しており、いろいろな映画会社とそのたびに契約した結果がこの乱雑な映画化の成れの果てなんだと思います。
そして2022年、「悪魔のいけにえ」シリーズに9作目が加わることになりました。それが本作『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』。
この『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』(もう「2022年版の“悪魔のいけにえ”」と呼んだほうがわかりやすい気もする)の立ち位置はというと、1974年の1作目の直接的続編です。「また?」っていう話ですが、またです。
今回は製作と脚本に、あの近年のスラッシャー映画の中では大成功をおさめた『ドント・ブリーズ』を手がけた“フェデ・アルバレス”が関与しています。
監督は“デヴィッド・ブルー・ガルシア”という人で、私は知らなかったのですけど、「Sports Emmy Award for Outstanding Camera Work」などを受賞するなど、撮影面で評価されている人物みたいですね。
俳優陣は、ドラマ『シングル・ペアレンツ』の“サラ・ヤーキン”、『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』で脚光を浴びた“エルシー・フィッシャー”、ドラマ『ヴァイキング 〜海の覇者たち〜』の“モー・ダンフォード”、『ラスト・サマー 〜この夏の先に〜』の“ジェイコブ・ラティモア”、ドラマ『女王ヴィクトリア 愛に生きる』の“ネル・ハドソン”など。
とりあえずネタバレ無しで言えるのは、『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』も一応は「悪魔のいけにえ」っぽいことしてますよ(雑な感想)。レザーフェイスがでてきたらもう「悪魔のいけにえ」なんですよ。
『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』は劇場公開ではなく、Netflixで独占配信中です。
『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』を観る前のQ&A
A:Netflixでオリジナル映画として2022年2月18日から配信中です。
A:1作目となる『悪魔のいけにえ』(1974年)の鑑賞をオススメします。
A:いわゆるゴアに該当する残酷描写が満載です。苦手な人は目をつむってください。
オススメ度のチェック
ひとり | :1作目ファンなら観ておく? |
友人 | :恐怖映像で盛り上がって |
恋人 | :恋愛とかしている場合じゃない |
キッズ | :凄惨な残酷描写が満載です |
『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』感想(ネタバレあり)
あらすじ(前半):あいつは生きている
テキサスの田舎。ひとりの若い女性が小さな店の記事に目をやっています。そこには「Texas Chainsaw Massacre」と書かれており、1973年の夏に5人の若者が正体不明の殺人鬼に襲われ、その唯一の生存者であるサリー・ハーデスティも口を閉ざしたまま、犯人は人間の皮膚をマスクにしていて謎ゆえに捕まっていない…とあります。
その若い女性は「彼女は生きているの?」と店員に生存者について質問。するとレンジャーになったらしいことを教えられます。店員が行き先を聞いてきたので「ハーロウ」と答えます。店員はよそ者に露骨に無愛想です。
メロディ、その妹のライラ、ダンテ、そのダンテの婚約者のルース…この4人はハーロウに用事があってわざわざ車で遠路はるばるやってきたのでした。店の前で出発しようと車に乗りこもうとしたところ、そこに銃をぶらさけた男が現れます。当たり前のように銃を腰にぶらさげる土地柄に思わず口がでる若者たち。
とりあえず出発です。すると道の途中で保安官に止められ、運転席側にいたダンテが対応します。ダンテが黒人ゆえなのか、それともよそ者ゆえなのか、威圧的な対応をとる白人の保安官2人組。
そんなこともありつつ、ハーロウに到着しました。そこはゴーストタウン状態。4人はここでビジネスを始めるつもりでした。今日は投資家のキャサリンがバイヤーを引き連れてくる予定なのです。
しかし、あの銃ぶら下げ男もそこにいて、彼、リクターが改装業者だと判明。やや気まずいです。
ふと児童養護施設の2階窓に南軍旗がはためいているのを目にし、これは印象が悪いので、2階にあがって旗をとろうとするダンテ。でも手が届きません。
そんなとき、その施設に老齢の女性がひとりいるのに気づきます。50年もここをやっているそうで、お茶を出してくれます。銀行が差し押さえたので退去しないといけないはずと4人は説明しますが、その老齢女性ジニーは「返済は済んだ、ここは私の家だ」と言い、旗についても「ニグロでも差別しない」と言ってのけ、ダンテは気分を悪くします。
そこに2階へ続く階段に大柄な人間が立っているのを目撃。ジニーいわく最後の子だそうです。
そこへ保安官が到着。ジニーを連れ出そうとし、抵抗するジニーは吐き、抱えられて車に乗せられます。ルースはジニーと保安官と車に乗ります。
しかし、病院へ輸送中、車の中でジニーが苦しみだし、死んでしまいました。すると同行していた施設の子だという大柄の人間が急に豹変。その場にいた保安官の手首を折って骨で刺し殺したのです。
惨劇は再び…。
衰えないチェーンソーの達人
『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』は基本はこれまでと同じ。レザーフェイスが出現してみんなを殺す…以上!…という簡潔さ。
今作ではやはりこれは“デヴィッド・ブルー・ガルシア”監督の持ち味なのか、撮影、とくにカメラワークにこだわりを感じました。
序盤の最初の惨劇となる保安官護送車での殺戮。事故後にルースが助手席で目覚めると、車両後方でレザーフェイスさん(何歳なんだろう?)が顔を皮剥ぎに勤しんでいます。これをルースがなるべく身動きせずにサイドミラーだけで確認していて、その見える範囲と見えない範囲の恐怖感というものがすごく煽られる、良いショットでした。
そして続いて児童保護施設でのメロディが隠れながらレザーフェイスの狂気を目撃していくシーン。ここも見える範囲と見えない範囲の恐怖感が絶妙。リクターが八つ裂きにされて床に倒れ、そこでベッドの下に隠れるメロディに気づいて瀕死のまま鍵だけをかろうじて差し出すあたりの演出もいいです。
そこからの床下を逃げ惑いながらのチェーンソーが迫るシーン。今作もレザーフェイスはチェーンソー使いに磨きがかかっていましたね。正直、取り扱いづらいだろうと思うのですけど、もうパワープレイで強引に全部チェーンソーで解決しようとする。
バスでの大虐殺は露悪性が抜群に発揮されており、ここの身体がどんどんあらゆる方向で真っ二つにされて倒されていく人たちの死に様の見せ方の手数の多さが個人的には好きです。
サリーとの対決のシーンでは、なんかフィギュアスケートペアの技みたいなスタイルでサリーをチェーンソーでリフトアップしますからね。まあ、あれは演出過剰でやりすぎな気も…。
ライラ&メロディとの最終対決でもチェーンソーを床でスライディング投げして相手の足を狙うなど、知能技も見せており、ここまでくると知能が低いと見せかけて本当は賢いよね?と思うくらいのノリノリを感じる…。
レザーフェイスさん、チェーンソーでサメを倒すのとかどうですか?…と誘いたくなるなぁ…。
そのプロット、無理がなくないですか?
そんなこんなでゴアを含む映像演出面では楽しめる娯楽作ではあるのですが、『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』は個人的にはプロット面で大きく難がある作品にも思えて…。
まず今作の主人公であるメロディたちは、新規ビジネス事業を始めるためにこのテキサスのハーロウの廃墟となった町の権利を得てやってくるのですが、この設定自体に無理がないか、と。高品質なインフラもないような孤立気味のテキサスの田舎町ですよ。ただでさえテキサスの保守的ど真ん中の土壌を持つこの地ですし、イメージは決して良くない。ここで町を新しく作るっていうのはいくら何でも企画としておかしくないだろうか…。
百歩譲ってカリフォルニアのどこかにテキサスの田舎町を再現してテーマパークにする…というならわかりますよ。その参考のためにハーロウを見学しに来た…とかなら納得もできるけど…。
本作は全体として「イマドキな若者vs保守的な白人コミュニティ」という構図を持たせて、かなり若者を世間知らずの愚かさありで描いているのですが、ちょっとその風刺も空振りしているような…。
そして本作の目玉のひとつが、あの1作目の生存者であるサリー・ハーデスティの再登場です。これは要するに2018年の『ハロウィン』と同じアプローチ、つまり第1作で生存したヒロインの因縁の決着を描くタイプでやろうとしているんだなと…そう私もすぐに察せます。
ところが、今作のサリーは妙にマヌケというか行き当たりばったりで…。勇ましく武装して出陣したわりには出オチなのかというあっけなさでやられるし、あれじゃあこの数十年何をしていたんですかっていう話ですよ。せめて憎きレザーフェイスを倒すために用意周到に準備していた!というカタルシスくらいは欲しかったですね。
ちなみに今作でサリーを演じているのは、1作目でサリーを演じた“マリリン・バーンズ”ではなく(すでに2014年に亡くなっている)、“オルウェン・フエレ”という俳優です。
また、ライラは銃乱射事件のサバイバーで銃への恐怖心を抱えているのが判明しますが、学校での銃乱射事件でトラウマを追った若者が、銃でレザーフェイスを倒して過去を克服する…っていうプロット、やっぱりおかしくないか…。そこは本作最大のツッコミですよ。なんだこの全米ライフル協会が考えたみたいな脚本…。
ラストのやっぱりレザーフェイスは生きていた…からのメロディ首ちょんぱ…そして自動運転でライラだけが絶叫で離れていく…というオチも、じゃあこの続編は何をしたかったんだ!という元も子もない感想しか残らないし…。
これはもう、いろんなマルチバースのレザーフェイスを一挙に集めてスパイダーマンに更生してもらうしかないんじゃないかと、そう思うしかありませんよ…。
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 30% Audience 37%
IMDb
5.1 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
作品ポスター・画像 (C)Legendary Pictures レザーフェイスリターンズ
以上、『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』の感想でした。
Texas Chainsaw Massacre (2022) [Japanese Review] 『悪魔のいけにえ レザーフェイス・リターンズ』考察・評価レビュー