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『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』感想(ネタバレ)…いや、そんなわけないです

死霊館 悪魔のせいなら、無罪

死霊館ユニバースに自粛はありません…映画『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Conjuring: The Devil Made Me Do It
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年10月1日
監督:マイケル・チャベス

死霊館 悪魔のせいなら、無罪。

しりょうかん あくまのせいならむざい
死霊館 悪魔のせいなら、無罪

『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』あらすじ

これまで数々の悪霊や怪奇現象に対峙して、その恐怖に苦しむ人々を救ってきた実績がある心霊研究家のウォーレン夫妻。この経験豊かな夫婦は家主を刃物で22回刺して殺害した青年であるアーニー・ジョンソンが、悪魔に取り憑かれていたことを理由に無罪を主張するという事件と向き合っていた。被告人を救うため、姿なき存在を証明するべく立ち上がるが、とてつもなく邪悪な存在に追い詰められていく。

『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』感想(ネタバレなし)

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死霊館ユニバースに自粛はない!

コロナ禍のニューノーマルな時代ではソーシャル・ディスタンスは当たり前(いや、本当に距離をあけてるのか?)。みんなで大勢集まるような行為も自粛する(いや、本当に自粛してるのか?)。仕事はテレワーク(いや、本当にテレワークしてる?)。

でもそんな世間の自粛要請なんて気にしない奴らもいる。「コロナは風邪」派の集団? まあ、その人たちもそうなのですが、そうじゃなくて…はい、悪霊さんたちのことです。

世界中にどれくらいの“悪霊”人口がいるのかは存じ上げませんが、悪霊はさも当たり前のように私たちに密着(というか一体化)、いつ何時でも自粛することなく24時間フル労働してくれます。あ、でもテレワークかもしれない。あいつら、距離という概念をそんなに気にしてないから。

そんな悪霊さんたちが大活躍する定番シリーズの最新作がこのパンデミックの最中にもやってきました。それが本作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』です。

本作は現行のハリウッド・ホラー映画のトップランナーである『死霊館』シリーズの2021年最新作。初心者向けに簡単に説明すると、“ジェームズ・ワン”がシリーズの旗揚げを担い、2013年に1作目の『死霊館』がスタート。それ以降は、スピンオフの『アナベル』シリーズも同時的に展開し、他の別のスピンオフ的な作品も含めて「死霊館」ユニバース(The Conjuring Universe)として世界観を共有する壮大なシリーズに発展しています。

今やマーベル・シネマティック・ユニバースに次いで大成功しているユニバースがこの「死霊館」ユニバースなのです。あらためて考えるとこれは驚きの実績ですよ。

その「死霊館」ユニバースの中でも、1作目の『死霊館』からのメインシリーズがあって、2作目が2016年の『死霊館 エンフィールド事件』、そして3作目が本作『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』です。「死霊館」ユニバース全体としては8作目にあたります。

それにしても邦題、ずいぶんハジけてしまったなぁ…。原題が「The Conjuring: The Devil Made Me Do It」だから翻訳しづらいのはわかるけど…(直訳すると「悪魔が私にそうさせた」)。これなら「死霊館 悪魔で無罪」の方が良かったんじゃないか。

今作も例によって例のごとく、心霊研究家のウォーレン夫妻を主人公にしたホラーストーリーが展開されるわけですが、この本作はアプローチをちょっと変えてきています。ウォーレン夫妻を掘り下げるものになっていたり、最恐の敵がついに登場したり…。さすがに全く同じだとマンネリですからね。なお、おなじみのアナベル人形さんは今回は出番無しでお留守番です(背景にちょっと映るけど)。

監督はこちらも「死霊館」ユニバースの一作である『ラ・ヨローナ 泣く女』(2019年)を手がけた“マイケル・チャベス”。“ジェームズ・ワン”からもかなり気に入られている様子で、シリーズを任せるつもりなのかな。

俳優陣は当然、“ヴェラ・ファーミガ”“パトリック・ウィルソン”の2人は欠かせません。他のキャストは相変わらずそんなに有名ではない俳優を揃えており、観客が先入観無しで楽しめるようになっています。物語のカギを握る、悪霊に憑りつかれて殺人を犯してしまったと主張する若い男を演じるのは、『ぼくたちのチーム』の“ルアイリ・オコナー”。その恋人で事件の謎に深くハマっていく若い女を演じるのは、“サラ・キャサリン・フック”。また、冒頭で悪魔の最初の被害者となる子どもを熱演しているのは、ドラマ『ワンダヴィジョン』でサプライズに登場したあの子を演じた“ジュリアン・ヒリアード”です。

どこまで続くのか、心霊業界を独走するウォーレン夫妻の活躍をぜひご覧ください。

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『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』を観る前のQ&A

Q:『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:過去作を観なくても基本的には問題ありません。できれば1作目の『死霊館』を鑑賞しておくと雰囲気は掴めます。
Q:怖いのが苦手でも観れる?
A:1作目の『死霊館』よりは怖くない…かも。シリーズを観てきた人は慣れてきますね。極端にグロテスクだったり、残酷な映像はほぼないです。性描写もないので子どもでも観れると言えば観れますが、今回は殺人事件を扱っているのそこは注意です。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:シリーズ初見でも大丈夫
友人 3.5:気軽なホラーを満喫
恋人 3.5:楽しめる者同士で
キッズ 3.0:怖いのが平気なら
↓ここからネタバレが含まれます↓

『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):無罪になりませんか…

1981年、心霊研究家(悪魔学者)として名を馳せていたロレインエドのウォーレン夫妻はコネチカット州のブルックフィールドを訪れていました。この地域に住むグラツェル家の依頼を受けたのです。この家の8歳の男の子のデヴィッドが悪魔に憑りつかれているようだ…そういう話でした。

ウォーレン夫妻は実際にデヴィッドと家で面会し、確かに悪魔が憑りついていると判断。居間にはデヴィッドの両親であるカールジュディ、姉のデビー、デビーの彼氏であるアルネが揃っており、ひとまず夜も遅いのでデヴィッドはベッドに寝かせます。デヴィッドが部屋に戻った後、ゴードン神父が到着し、さっそく悪魔祓いの儀式の打ち合わせをするつもりでした。

ところが部屋で寝ているはずのデヴィッドはガタガタドンドンという物音に怯え、バスルームに隠れ、突然の血のシャワーに絶叫。みんなが駆け付けると、デヴィッドは暗がりにポツンと立っており、いきなり手に持った割れた鏡の破片を父の足に躊躇いなく突き立てました。

これは一刻を争う事態。もう悪魔は手が付けられないほどに悪化しています。大暴れのデヴィッドを抱え、すぐさまに除霊を開始。体がウネウネとあり得ない方向に曲がりくねり、邪悪な呻き声をあげるデヴィッドに家族は半狂乱になりながらも、ウォーレン夫妻はデヴィッドを今の机に押さえつけます。

しかし、その瞬間、ロレインは謎のイメージが頭の中に広がったのを感じました。でも今はそれを分析している場合ではありません。肝心の神父はポルターガイスト状態で飛んできた皿が頭に当たって気絶。エドはデヴィッドの中の悪魔の攻撃を受けたのか、胸を押さえて苦しんでいます。

そしてなんとか騒ぎは収まります。悪魔は退治できたようです。

それ以降、デヴィッドはすっかり元気に。デビーとアルネはラブラブです。平穏が戻りました。

しかし、アルネの要素が少しおかしい…。自分にしか見えない不気味な人物が見えたり、周囲で異変が続発。やがて不調は悪化し、意識も朦朧としてきます。

気が付くと血まみれで道路を歩いているところを警察に発見されるのでした。実は家主の男を人間とは思えない怪物と勘違いして、メッタ刺しにして殺してしまっていました。

アルネは捕まり、殺人容疑で裁判にかけられます。アルネの弁護を担当する弁護士はウォーレン夫妻にこのままでは有罪は確実と伝えます。そこで2人は「アルネが悪魔に憑りつかれ、本人の意思ではなく悪魔の仕業でアルネが殺人を犯した」ということにして、弁護の時間稼ぎをし、その間に調査することにします。

事件の始まり、グラツェル家のデヴィッドの一件を最初から洗いなおすと、そこには闇深い悪魔の存在が浮き彫りになり…。

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あの子の身体は本当に曲がる

従来の『死霊館』は、家や人に憑りついた悪魔や悪霊を追い払うという、基本的にひとつの住居で完結するオーソドックスなハウス・ホラーでした。もちろん最後の見せ場は身の毛もよだつお祓いの儀式です。

しかし、今回の『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』は同じことを繰り返しません。冒頭10分からすでにクライマックス。デヴィッド少年に憑りついた悪魔を追い出すための大騒ぎが開始されます。この悪魔祓いシーン、やっぱり面白いです。私はこれが一番好きなんだな。デヴィッド少年の暴れっぷりがいいですね。

ちなみに作中ではデヴィッド少年が体を軟体生物のようにグネグネと曲げて家族が震撼するという描写がありますが、あれはVFXとかではなく、スタントの子が本当にやってみせている動作なんだそうです。その凄技を披露した子が“エメラルド・ウルフ”という名の子で、「Emerald Wulf」で検索するとびっくり仰天なポーズを嬉々としてとっている画像がいっぱい出てきます。

だから実際に自分の子どもが突然あんな柔軟の域を超えた動作をするようになっても「悪魔に憑りつかれたんだ!」と勘違いしないようにしないとですね。

そしてそのクライマックスは過ぎ去り、物語はアルネの凶行に。ここで明らかに異様に錯乱している描写もありながら、一方で恋人のデビーが酔っぱらった男に絡まれているのにキレて犯行に至ったと解釈できなくもない余地を残す絶妙な映像バランスになっているのが上手いなと思います。

その後はついにタイトルどおりの裁判へ。今回は裁判劇がメインなのか…と思ったら、裁判シーンは後はほぼ無し。でもそれも無理ないのです。史実では「悪魔のせいで殺人をしてしまいました」という主張は事前に却下されており、裁判の舞台で審議もされていないそうですから。まあ、当然ですよね。心神喪失とかならまだしも悪魔は判断しようがないし…。実際は懲役10~20年が言い渡され、品行方正だったので5年で出られたようです。そういうわけで裁判自体が特別面白いことになったという話でもないので、裁判は映画化に向きません。

なお、事件当初からウォーレン夫妻はこの事件の悪魔性をメディアに吹聴しまくっていたようで、当然ながら一部の人からは話題作りのためのデマカセだったんじゃないかと言われたりもしていました。映画内のウォーレン夫妻と実際のウォーレン夫妻はだいぶ違うのです。

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ウォーレン夫妻はプロなのだろうか…

では『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』はこの後どうなるのかというと、ウォーレン夫妻による謎解きミステリーにジャンルが変わっていきます。探偵みたいなものです(若干憑りつかれているけど)。

ただ、今回も私のような悪魔学の素人から言わせてもらって申し訳ないのですが、このウォーレン夫妻、『アナベル 死霊博物館』もそうだったのですが、プロフェッショナルにしてはイチイチ詰めが甘すぎでは?と思える“うっかり”が多発している気がする…。

だいたい序盤の悪魔祓いもエドが意識を失っていたからしょうがないものの、あんな家族大勢で参加させるなよとか思わなくもない。悪魔祓いは三密厳禁なんだよ!

悪魔に憑りつかれているかどうかの判定も疎かにしているので不安になってきますよね。PCR検査をしないで感染者を大雑把に断定して好き勝手にノーマスクで移動しまくる医者みたいですよ。そりゃあ被害拡大するわけだよ…。

今回は終始不調のエドに代わり、ロレインが大活躍するのですが、そのロレインも霊視でのめり込むと自我を忘れて勝手に行動してしまうので、能力的に難があるというか…。トラブルメーカーにもなっているという…。

絶対にあの助手のドリュー・トーマスの方が頑張っていたんじゃないかと思えてくる。ウォーレン夫妻は彼に多額の報酬を渡すべきだ…。

物語自体は「愛」がテーマになっており、着地は単純です。愛が恐怖に打ち勝つ唯一の道である、そんな感じ。それはデビーとアルネの愛の物語とも共鳴するものになっていますし、カストナー神父の歪んだ愛の結末とは対比されています。

それにしてもあのオカルト信仰者のイスラ、要するにウォーレン夫妻の正反対バージョン。危ないアイテムを収拾管理しているあたりは一緒でも、それを私利私欲に使ってしまうと恐怖と一体化する。今後のシリーズの最恐キャラクターになるのか、それとも今作で終わりなのか。やっぱりウォーレン夫妻のあの収拾部屋、危ないんじゃないか…。

今まで小粒の作品を積み重ねてきた「死霊館」ユニバース。ここでスケールを広げて巨悪との一大決戦をするのか、それとも無難に世代交代という展開でイメージ一新を図るのか。シリーズの命運を左右する分岐点にそろそろ来ているのかもしれません。

あれだけ悪魔が身近に出没するなら、対悪魔耐性を得られるワクチンとか開発しないと無理ですね…。みなさん、ワクチンは打ちましょう。大丈夫、悪魔とかは混入してないですから(たぶん)。

『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 56% Audience 84%
IMDb
6.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
4.0

作品ポスター・画像 (C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved 死霊館 悪魔のせいなら無罪

以上、『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』の感想でした。

The Conjuring: The Devil Made Me Do It (2021) [Japanese Review] 『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』考察・評価レビュー