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実写映画『トムとジェリー』感想(ネタバレ)…トム&ジェリー&クロエ&ペーニャ

トムとジェリー

またの名をトム&ジェリー&クロエ&ペーニャ、そしてケン・チョン…実写映画『トムとジェリー』(2021年)の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Tom and Jerry
製作国:アメリカ(2021年)
日本公開日:2021年3月19日
監督:ティム・ストーリー

トムとジェリー

トムとジェリー

『トムとジェリー』あらすじ

人で賑わうニューヨークの高級ホテルに引っ越してきたネズミのジェリーと、そんなジェリーを相変わらず追いかける猫のトム。ホテルの新人スタッフのケイラは、世界が注目するセレブカップルのウェディングパーティが任せられるが、トムとジェリーのせいで台無しになってしまう。汚名返上のためタッグを組むことになったトムとジェリーだったが、この2人が揃えばそこにはトラブルがセットでついてくるもので…。

『トムとジェリー』感想(ネタバレなし)

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実写だけどアニメです

1930年代、アメリカではカートゥーン・アニメの競争が激しさを増していました。ミッキーマウスの創造によって一気に天下をとったウォルト・ディズニーのスタジオが絶好調の中、『ポパイ』などでおなじみのフライシャー・スタジオが負けじと奮闘。

この2社のカートゥーン・バトルに参戦したのが当時の映画企業の巨人とも言える「MGM(メトロ・ゴールドウィン・メイヤー)」です。1930年代のMGMはとにかく快進撃を連発しており、スターシステムとビッグマネーを駆使し、大作映画を次々と投入。この時期のMGMの怖いもの知らずっぷりは『Mank マンク』でも窺い知れます。

そのMGMは独自に「MGM カートゥーン・スタジオ」を設立。こちらの業界にも参入しだします。そこで大きな立役者となったのが、“ウィリアム・ハンナ”“ジョセフ・バーベラ”の2人のアニメーター。そして厚遇で迎え入れられたコンビが生み出したのが『トムとジェリー』というアニメーション作品です。

猫のトムとネズミのジェリーがひたすらに追っては逃げのドタバタ劇を繰り広げるというシンプルな構成。ネズミに振り回されるのは当時のディズニーに対するライバル意識の表れなのでしょうか。ともかくこの『トムとジェリー』は瞬く間に大人気となり、アメリカのポピュラーなキャラクターとして大衆に定着します。

日本でも『トムとジェリー』はキャラの絵を見せれば名前くらいは答えられる人も多いのではないでしょうか。知名度は抜群ですね。

その『トムとジェリー』ですが、飼い主だったMGMはすっかり低迷し、アニメスタジオごと権利を「ターナー・ブロードキャスティング・システム」に売却し、そのターナーが今度は「ワーナー」に吸収されていったので、今は『トムとジェリー』の飼育はワーナー・ブラザースが担っています。

そして2021年、この誰もが知るカートゥーンが実写映画化することになりました。それが本作『トムとジェリー』。そのままのタイトルですね。

実写と言っても肝心のトムとジェリーはアニメーションで表現されており、そのアニメーション・キャラクターのトムとジェリーが実写世界の中で、実写の俳優と共存している…というコンセプトです。これまで劇場版はありましたが、いずれもフル・アニメーション映画でした。けれども、今作でもトムとジェリーはしっかりアニメなので大丈夫。キャラクターの雰囲気が崩れているなんてことは一切なく、いつものあの愛嬌たっぷりのトムとジェリーがところ狭しと暴れまくっています。

なんで今のタイミングで実写映画化なんだろうと思ったら、1940年の誕生から80周年だかららしいです(本当はコロナ禍がなければ2020年公開予定だった)。100周年とかの方がキリがいいんじゃないかな…。

ではそのトムとジェリーと共演できた運のいい俳優たちは誰なのか。ヒロインは最近も『ミスエデュケーション』『サスペリア』『グレタ GRETA』と多彩なジャンルで活躍する若手実力派の“クロエ・グレース・モレッツ”。今作では久々にド直球のコメディに舞い戻ってきました。

そして私も大好きなメキシコ系アメリカ人の“マイケル・ペーニャ”。『アントマン』シリーズや『ジェクシー! スマホを変えただけなのに』などコメディ大得意な彼ですが、この『トムとジェリー』でも猫とネズミに負けじと健闘しています。私みたいに“マイケル・ペーニャ”が出ているっていう点で映画に関心を持つ人もいるしね(少数派)。

また、『ハングオーバー』シリーズなどで活躍する韓国系アメリカ人のコメディアンである“ケン・チョン”も登場。まさかの伏兵。

この3人が働くホテルが舞台なのですが、絶対にこのホテル、面白すぎるだろう…。見物するにはいいけど、泊るのは落ち着かないかもしれない…。

監督は2005年の『ファンタスティック・フォー[超能力ユニット]』や2019年のリメイク版の『シャフト』を手がけた“ティム・ストーリー”。脚本は『ブリグズビー・ベア』を手がけた“ケヴィン・コステロ”です。

映画の中身はご想像どおりの日常です。子どもも大人も嫌なことを忘れてスッキリ楽しめるのではないでしょうか。まあ、ホテルで働いている人は他人事にはなれないかもだけど…。

オススメ度のチェック

ひとり3.5:キャラクターが好きなら
友人3.5:趣味の合う同士で
恋人4.0:気楽に観られるエンタメ
キッズ5.0:子どもも大爆笑のギャグ
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『トムとジェリー』予告動画

映画『トムとジェリー』本予告 2021年3月19日(金)公開【ムビチケカード発売中】
↓ここからネタバレが含まれます↓

『トムとジェリー』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):どこでも追いかけっこ

陽気にDJ風にラップを刻む3羽の鳥が街を飛ぶ。ここはニューヨークのマンハッタン。人種のるつぼだかなんだか知りませんが、この街にいるのは人間だけではありません。今日も新しい住人となる動物がやってきました。騒動の気配…。

列車の車両の間でのんびりしているのは猫のトム。夢はミュージシャン。この街で成功を手にしようと意気揚々です。

一方、ネズミのジェリーもこの街にやってきました。目的は理想の家探し。何はともあれ住処は大事です。広大な世界でウロウロしているとジェリーは鳥に捕まり、公園に落下してしまいます。

するとそこで通りすがりの人を前にキーボードでノリノリで演奏するトムを発見。本人はアメイジング・キャットなつもりのようです。トムとジェリーは昔から因縁の相手。さっそくジェリーはちょっかいをかけます。自分が踊り、お金がジェリーのもとにチャリンチャリン。自分の演奏の場を台無しにされ、トムは激怒。その拍子にキーボードは破損。

ジェリーを捕まえようとするが、まんまと逃げられ、必死の追いかけっこに発展。しかし、トムは途中で自転車の女性に激突してしまいます。その女性は会話しようとしますが、車に轢かれるトム。話は強制終了。

その頃、ジェリーはロイヤルゲートホテルに逃げ込みました。トムも入ろうとするものの、ドアマンに追い出されます。安心を手に入れたジェリーは、その豪華な建物を気に入りました。

そこへホテルにやってきた女性がひとり。トムにぶつかったケイラです。彼女もある企みのもと、このホテルを来訪してきました。彼女の場合は職探しです。

ケイラは気の緩そうな顔ですが、悪知恵が武器です。相手がホテルの受付のローラであろうと、イベントマネージャーのテレンスであろうと、堂々と口達者に振舞い、まんまとイベントプランナーとして採用されます。

上手くいきすぎてノリノリのケイラ。ここではとにかく仕事は山ほどあります。毎日大勢のゲストが来ては、パーティも開かれる場所です。やるべきことは無数。

厨房のジャッキー、ドアマンのギャヴィン、ベルスタッフのジョイなどを紹介してもらいつつ、ふとロビーにVIPが到着します。それはこのホテルでウェディングを開く予定になっている富豪のベンプリータです。一緒に凶暴そうな犬のスパイクと猫のトゥーツも同行。猫の扱いが上手いケイラですが、テレンスは動物に嫌われぎみ。

このカップルの対応は絶対に失敗できません。ホテルの評判に大きく関わってきます。しかし、奥に引っ込んだとき、悲鳴のような音が聞こえました。なんと厨房のスタッフがネズミを見たというのです。

そう、そんなこんなでネズミのジェリーはというと、ホテル内で理想のスイートルームを見つけていました。ジェリーはホテルのあちこちで盗んできた品々で部屋をコーディネート。大満足です。

無論、ホテル側は黙っていられません。すぐさまジェリーにネズミ捕獲の使命が与えられます。けれどもバーテンダーのキャメロンと会話中にネズミ用の捕獲トラップが消えているのを発見。これはてごわいと自覚するケイラ。

一方、猫のトムは雨降る街で途方に暮れていました。このまま小さなジェリーにやられまくりでいいのか。それとも無意味な争いはやめるべきなのか。頭の中で悪魔と天使が議論。

そして決めます。絶対にあのネズミを逃がさない。たとえ、雷が落ちようとも…。

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オリジナルをリスペクト

『トムとジェリー』の主役はもちろんトムとジェリー。これまで多くの作品で長年にわたって追いかけっこを続けてきましたが、今作でも相変わらず同じことをしています。

ただ映像作品においては過去の歴史だと迷走したこともありました。戦時中はプロパガンダに加担しましたけど、その後の作品の在り方もいろいろな試行錯誤もチラホラ。

とくに最も大々的に劇場公開された1992年の『トムとジェリーの大冒険』は論争を起こしました。この映画ではトムとジェリーが人の言葉を喋るんですね。基本的にトムとジェリーは言語を話しません。オーバーリアクションを連発するノンストップのスラップスティック・コメディに徹しています。それが会話することになった1992年の『トムとジェリーの大冒険』はやはりネガティブな反応が多く…。

しかも、この1992年の『トムとジェリーの大冒険』はそれだけでなくてミュージカル要素も加わってしまい、ますますオリジナルの雰囲気から離れてしまっていました。

映画だから何かしらのスペシャルなことをしようと考えたのかもしれませんが、結果的に蛇足で終わり、興行的にも大失敗します。

その経験を踏まえているのかは知りませんが、この2021年の『トムとジェリー』は徹頭徹尾オリジナルに準拠しています。生みの親である“ウィリアム・ハンナ”と“ジョセフ・バーベラ”はすでに死去していますが、製作陣はオリジナルのリスペクトを第一に考えたようです。

当然、本作ではトムとジェリーは人の言葉を喋りません。さらには悲鳴、叫び声、あえぎ声、遠吠えなどなどすべてのキャラが発する声をアーカイブ録音から採用しており、完全にかつてのアニメーションを再現してみせています。

なので冒頭からいつもの光景が展開。ずっとスラップスティックな笑いを届けてくれるのは嬉しいです。言葉を出さないからこその演出として、部屋を滅茶苦茶にしたトムがケイラとしっかり対面するシーンで、ここにネズミがいたこと、さらには自分の名前を伝えるというシーンがあり、さすが「トムとジェリー」!というバカバカしさで笑っちゃいました。あんな風に「TOM」って自己紹介する猫、いる?

さらに本作はちゃんと作中に出てくる動物全てをアニメーション・キャラクターにするという丁寧な仕事をしてくれています。なので実写とアニメ双方の世界観を壊さない程度のバランスをとってくれていました。

犬のスパイクとか、トムがメロメロになる猫のトゥーツとか、おなじみの金魚まで、細かくサイドのキャラクターを登場させてくれるのもファンサービスが行き届いていますね。

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猫やネズミと同じく人間も面白い

2021年の実写『トムとジェリー』は人間の俳優陣も良いアシストをしています。

まずはケイラを演じた“クロエ・グレース・モレッツ”。いつもながらオーバーな世界観でも上手くマッチしてくれます。彼女のキャラクターもこの作品らしさを考えたうえで入念にデザインされているのでしょう。

例えば、最初はケイラはジェリーに似たポジションです。言葉巧みにホテルで居場所をゲットする。言葉を話せないジェリーに代わって、言葉によるあくどさのユーモアを見せてくれる担当ですね。『グレタ GRETA』のときはあんなに騙される側だったのに、ここでは狡猾になっちゃって…。

しかし、中盤になるとジェリーを捕まえなければいけない側になり、つまりトムと同じポジションになります。しかもトムを部下にしてしまって、トム&ケイラのコンビネーション。

一方でテレンス演じる“マイケル・ペーニャ”はこちらも真面目だけど上手くいかない不幸キャラがぴったり。意地悪なトゥーツにおちょくられるわ、スパイクに散歩で引っ張られるわ、あげくにカートゥーン大乱闘ハリケーンに巻き込まれて頭ゴーンってなるわ…。でも“マイケル・ペーニャ”ならOKな気がしてくる、この天性の愛嬌。すごくいい…。本作は“マイケル・ペーニャ”成分を100点満点中80点くらいは味わえました。

そして笑いの伏兵にしてキラーコンテンツ、“ケン・チョン”です。本作での出番は少なめで、本音を言えばもっと見たかったけど、終盤の発狂しながらのケーキ殴打は一番の見せ場だったので良しとしようか。

個人的にはベルスタッフのジョイを演じる“パッシー・フェラン”とか、花嫁のプリータを演じる“パラヴィ・シャーダ”とか、もっとドタバタ劇に関与してほしかったのですけどね。

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共存を描くなら…

2021年の実写『トムとジェリー』は単純にストレスゼロで満喫するにはじゅうぶんな材料になるのですが、映画作品としての批評は厳しめになってしまう部分もあります。

実写とアニメの融合と言えば、『ロジャー・ラビット』(1988年)や『スペース・ジャム』(1996年)などすでに先行例がいっぱいあり、今さら珍しくもなんともありません。難易度で言えば、他企業の作品を集結させている『ロジャー・ラビット』の方が明らかにチャレンジングです。

本作『トムとジェリー』は確かにクオリティも高いですし、絵コンテで入念にキャラクターの動きを計算しつつ、俳優と馴染ませるために撮影するのも大変だったでしょう。メイキング動画を見ると、いかに俳優が反応もわからぬキャラクター相手に芝居していたかが窺えます。

トムとジェリー メイキング

しかし、昨今はCGでポストプロダクションとして追加できるわけですし、昔のようにフィルムにアニメーションを重ねていくという難度はありません。なので技術的には新しい挑戦をしていると褒められるほどの前進はないように思います。

あくまで本作はあの人気の「トムとジェリー」にまた会えますよというファンサービスな映画としての立ち位置だけです。

ストーリーもスラップスティックなコメディに専念したゆえに、新鮮さはほぼなし。これだって好意的に受け捉えようとすればいくらでもできますよ。多様な人たちの共存を描いているとか。

でもトムとジェリーですからね。あいつら相手を完全に殺しにかかっているし(でも何をされても死なない)、今回だってあんなハチャメチャなことになったらホテルは最悪廃業の危機ですけど、そのへんはフワっと片付けられていますし。たぶん本作をホテル業に従事する人が見たら、笑えないよ!って思っているかもしれない…。

ニューヨークってそもそもセントラルパークに限らずペットのコントロールは厳しいはずで、規制を守らないといけない街です。真面目に考えるものじゃないかもしれませんが。

あと本作では基本的に割と観光ウケしそうな綺麗なニューヨークばかりを描いているじゃないですか。そうじゃなくてもっと貧困層の多い区画とか、そういう多面性を描いてこその共存なのではないのか。これだとお金を持っている富裕層にとっての都合のいいハッピーエンドで終わっているのではないか。もっとそういう街の上と下をコメディで繋げる存在にトムとジェリーがなってくれると良かったかな、と。

街でネズミを追いかける2足歩行の猫を見かけても、遠くで見ているだけにしましょうね。

『トムとジェリー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 25% Audience 84%
IMDb
5.3 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
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関連作品紹介

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・『ソニック・ザ・ムービー』

・『名探偵ピカチュウ』

・『ピーターラビット』

作品ポスター・画像 (C)2020 Warner Bros. All Rights Reserved. トム・アンド・ジェリー

以上、『トムとジェリー』の感想でした。