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『トゥモロー・ウォー』感想(ネタバレ)…クリス・プラットは未来の地球でも戦う

トゥモロー・ウォー

クリス・プラットは未来の地球でも戦う…映画『トゥモロー・ウォー』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Tomorrow War
製作国:アメリカ(2021年)
日本では劇場未公開:2021年にAmazonで配信
監督:クリス・マッケイ

トゥモロー・ウォー

とぅもろーうぉー
トゥモロー・ウォー

『トゥモロー・ウォー』あらすじ

ある日を境に人類は戦争状態になる。それはこれまでの国と国、思想と思想、人種と人種のような対立ではない。地球の全人類が一丸となって外敵と戦わないといけない。しかも、その戦場は数十年後の未来だった。人類が生き残る唯一の希望は、今、ここにいる兵士や民間人を未来へ送り込み戦いに参加させること。娘のために世界を救うことを決意したダン・フォレスターは、地球の運命を書き換えるために未知へと飛び込む。

『トゥモロー・ウォー』感想(ネタバレなし)

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義父とは反対でいきます

未来に何が待っているかはわからない。でもまさかアーノルド・シュワルツェネッガーが義父になるという未来が到来すると考える人はなかなかいないでしょう。

そんな未来に行き着いちゃった人物。それが”クリス・プラット”です。

コミュニティ・カレッジを中退したり、ホームレス状態になったりと、紆余曲折の不安定な若い時代を過ごしつつ、彼の前に切り開けた道は俳優の人生。しかし、それも展望は見えず、いろいろな作品に端役でも出演しては、地道にキャリアを積み重ねる日々でした。ところが2014年にマーベルシネマティックユニバースの新作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の主役に抜擢され、大ブレイク。さらに『ジュラシック・ワールド』シリーズでも主人公として大活躍。もう宇宙でヤバい奴らと大暴れしたかと思えば、地球では恐竜相手に体を張り、俳優としては充実すぎる絶好調を迎えました。

その”クリス・プラット”には愛するパートナーとの出会いがあり、2019年に婚約を発表したのですが、その相手がなんとアーノルド・シュワルツェネッガーの長女であるキャサリン・シュワルツェネッガー。あのシュワルツェネッガーの義理息子になるなんて”クリス・プラット”のキャラ的にネタみたいですけどホントの話。役柄でも実人生でも話題に事足りる男だ…。

そんなこんなでノリノリな”クリス・プラット”が今度は主演のみならず映画の製作総指揮にまで挑んだ映画が登場しました。それが本作『トゥモロー・ウォー』です。

内容も”クリス・プラット”らしいです。物語は、ある理由で未来の人類のために現在から未来の戦場へと派兵されることになった男を主役にしています。まあ、あれです、『ターミネーター』の真逆ですよね。たぶん”クリス・プラット”としては「俺流のターミネーター」をやりたかったのではないかな、と。

敵は…具体的に言っちゃうとネタバレになるから言わない方がいいのかな。とにかく強い相手です(雑)。

コテコテの戦争SF映画であり、VFXもガンガン投入され、大規模な戦闘があっちこっちでドンパチと繰り広げられます。予算は2億ドル規模の大作級。映像の迫力もありますし、どう考えても映画館向きです。

ところが本作は劇場未公開となり、「Amazonプライムビデオ」での独占配信となっています。そもそももともとはパラマウントが製作していたそうで、2020年12月に劇場公開も予定していましたが、コロナ禍であえなく断念し、Amazonに売却したみたいですね。こういう大作まで映画館での出会いを奪ってしまうのだから、本当にコロナ禍の罪は重い…。

とりあえず気分を持ち直してなるべく大きな画面で『トゥモロー・ウォー』を観ましょう。

”クリス・プラット”以外の俳優陣は、『21ブリッジ』『パーム・スプリングス』の“J・K・シモンズ”、『ザ・プレデター』の“イヴォンヌ・ストラホフスキー”、『スーパーインテリジェンス』の“サム・リチャードソン”、『パージ 大統領令』の“エドウィン・ホッジ”、『ザ・ハント』の“ベティ・ギルピン”など。

監督は『レゴバットマン ザ・ムービー』(2017年)で長編映画の監督デビューをしたばかりの“クリス・マッケイ”。次はこんな実写大作になるとは意外です。

プライム会員ならばそのままAmazonで視聴できるので時間があるときにどうぞ。約138分と2時間超えなので鑑賞時間の確保はちょっと注意ですけどね。

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『トゥモロー・ウォー』を観る前のQ&A

Q:『トゥモロー・ウォー』はいつどこで配信されていますか?
A:Amazonプライムビデオでオリジナル映画として2021年7月2日から配信中です。

オススメ度のチェック

ひとり 3.5:エンタメで気分転換
友人 3.5:暇つぶしにでも
恋人 3.0:家族映画として
キッズ 3.5:敵は結構怖いかも
↓ここからネタバレが含まれます↓

『トゥモロー・ウォー』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(前半):I will be back

2022年12月。ダン・フォレスターはやりがいのある仕事を探していました。家に帰るとパーティの真っ最中で、娘のミューリと妻のエミリーがいて、「ラボの最終選考に残った」とダンは報告します。ダンの父からのクリスマスカードを目にしますが、読むことなく捨ててしまいました。

一旦、家の外へ出たダン。電話で希望の職場先に対して「兵士経験がある」とアピールしますが、民間での実務経験が欠けているのでと断られてしまい、意気消沈。

そのまま家で落ち込みつつ、家族に「俺も何か成し遂げたい」と呟きますが、ミューリは「大丈夫だよ」と逆に励ましてくれました。

すると居間のサッカーの試合を映していたテレビ映像が急に乱れます。そして信じられない光景が。スタジアムに謎の光が出現し、武装した兵士が乱入。そして隊長らしき女性が前に出てきて衝撃的なことを言います。

「我々は30年後の未来から来ました。敵は人間ではなく、11か月後に未来の人類は地球上から消え去る運命です。協力が必要です。共に戦ってください」

1年後。未来の時代へ繋がる転送施設がいくつも建造され、各国の部隊が人類の存亡をかけて送り込まれていました。敵は「ホワイトスパイク」と呼ばれる未知のエイリアン。しかし、帰還したのはわずか。世界はすぐに兵士不足に直面し、民間人を徴兵することになります。兵士の生存率は20%以下。反戦運動も活発化し、世論は真っ二つです。

一方、ダンは高校で科学を教える退屈な仕事をしていました。でも目の前の生徒の方が退屈そうです。未来で全滅するとわかっている以上、学ぶ意味はないと生徒たちは悟っていました。火山に夢中なマーティンだけは除いては…。

そんなダンでしたが、ある日、急に軍の地方支部に召集されます。向かうとシャツを脱ぐように言われ、半裸で椅子に固定され、頭部に装置、さらに腕を機械に突っ込むことに。条件をクリアしたと言われ、「あなたは2030年10月13日東部時間11時23分に死亡します」といきなりの宣告。装置が起動し、腕に転送を可能にするジャンプバンド装置が取り付けられます。「24時間で身辺整理して訓練に参加するように」…ダンの派兵はこうして強制的に決まったのです。

エミリーは引退兵のセラピーをしており、みんなが心に酷いショックを抱えていました。ダンの件を聞き、逃げることを提案し、ツテに頼るように促します。すぐに意味を察したダンは「あんな奴には」と拒絶しますが「娘のためにお願い」と言われ渋々承諾。

向かったのは父・ジェームズのもと。「これを外してやれるのは俺しかいない」と父は言ってのけますが、すぐに口論に発展。ダンは「何十年も耐えた、母さんの葬儀に来なかったな」と刺々しく言い放ち、父は「ベトナム戦争から帰還して自分を制御できずに家を出た。そばにいない方が良かった」と言い訳しますが、ダンは「逃げたんだ、臆病者」と相手にせず。結局、装置を外さず帰り、派兵を受け入れました。

娘のミューリに「1週間くらい留守にする」と打ち明け、「必ず帰ってくる」と約束します。

軍の施設に行き、他の徴兵された人たちと合流。そのほとんどが戦闘経験のない素人です。若い軍の指揮官は説明します。銃の基本的な撃ち方と相手の急所。でもなぜかどういう見た目の敵かを教えてくれません。それを知ってしまうと戦意喪失するからという嬉しくない回答が…。

こうしてダンたちの上空に巨大なワームホールが生成され、いよいよ未来へ向かう瞬間が迫り…。

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愛国心はあるがSF愛はほどほど

『トゥモロー・ウォー』は未来でエイリアンに支配されかけている地球を舞台にしています。それを救うべく未来にタイムワープするというのは前述したとおり『ターミネーター』の真逆。

敵をエイリアンにしているのはやっぱりこのご時世、安易に実在の国家を設定はしづらいからなのか。でも構図としては対国家戦争に近いノリです。1984年の『若き勇者たち』の中年版みたいです。素人ばかりの集団が侵略しようとしている勢力に立ち向かっていくという構成はそっくり。

つまり、とてもアメリカの由緒ある保守的な映画の佇まいですよね。”クリス・プラット”はそもそも保守派な人物で、銃や狩猟が大好きなガンマニアですし、宗教も熱心。その”クリス・プラット”が製作総指揮でこういう映画を作るのは納得です。

家族を軸に、簡単には絶ち切れない家族愛がアメリカ的なグローバル世界を救うというパターン。そこには直接的な描写はないにせよ、すごく愛国心への喚起があります。

ダンもなぜかやたらと強いですからね。主人公補正と言えばそれまでだけど…。

ちなみに『ターミネーター』はあまり保守的な映画ではないというか、むしろ保守的なアメリカ的存在が襲ってくる話だなと私は思っています。

一方でSF部分はなかなかに雑です。まずなぜ未来の人類はあのエイリアンに勝てないのか、私はずっと観ている間も疑問だったのですが、結局はその答えは提示されず…。確かに凶暴なエイリアンですけど、ちゃんと重火器で倒せるし、チャーリーなんて終盤は電動丸ノコで頭部を切断して倒していましたからね。別に大人になったミューリが模索していた毒物による対抗策を講じなくても、戦車や戦闘機などの重装備で余裕で反撃できるのではないか…。

というか、あの未来もテクノロジーの進み具合がイマイチよくわかりません。さすがに万能殺戮ロボットは出せないにせよ、もう少しハイテクの兵器が出てきてもいいのではないかと思いますし、そっちの方が映像的にも盛り上がる気もするし…。直近で見た『ゴジラvsコング』のオーバーテクノロジーっぷりに私が感化されているだけかもだけど。

どうやって地球がエイリアンに侵略されていったのか、その過程もフワっとしており、精巧なSF的考察を刺激する感じでもなし。『囚われた国家』みたいなタイプの映画ではまるっきりない、ほぼミリタリーSFアクションとしてのジャンルに傾倒するためだけの敵役として用意された「マト」でしかないエイリアンなのでした。『囚われた国家』のエイリアンだったら人類はとてもじゃないけど太刀打ちできないなと実感できるのですけどね。

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エイリアンの仕事っぷりがいい

そんな愛国心喚起だけが先走りがちな『トゥモロー・ウォー』ですが、良かった部分がひとつ。それはエイリアン「ホワイトスパイク」のデザイン。本作はエイリアンの見せ方が上手く、それがあるおかげでクリーチャー好きには既視感のあるストーリーでもずっと見ていられるエンタメ満腹感がありました。

とてもクセのある容姿をしつつ、触手のようなものから棘を射出しての攻撃、翼膜で滑空してヘリすらも迎撃できる機動性、メスを指揮系統にして集団で恐怖感情抜きで次々と襲ってくる群集行動、宇宙船らしきものに潜む怪しい謎の多い生態…。

デザインしたのは『メイズ・ランナー』シリーズや「モンスターバース」シリーズでクリーチャーデザインを担当している「Ken Barthelmey」という人。とても魅力的なクリーチャークリエイターであり、『トゥモロー・ウォー』はその才能が見事に発揮され目立ちました。「Ken Barthelmey」の作品サイトにアクセスすると、たくさんのクリーチャー絵が見られるのでぜひ。

このモンスターまわりの動きがいいというのも本作の良さです。どんなにデザインが良くても、単調な描き方だと台無しになるのですが、本作のホワイトスパイクは襲い掛かり方がなんかこうプロフェッショナル。怖さを刺激する映画的な強襲のノウハウをわかっている巧なクリーチャーだった…。これはあれかな、監督の”クリス・マッケイ”がアニメーション作品出身で、絵コンテがよくできているせいなのかな。

マイアミビーチからのドミニカ共和国、そして石油プラットフォーム海上と、次々とステージが移っていく中でもエイリアンの勢いは止まることなし。なんだかゲームの敵キャラみたいですが、エイリアン自体にそんなに飽きてこないのは演出の技ですね。

終盤での極寒のロシアの凍土氷河でのバトルも手に汗握る見せ場でした。ここでダンと父がタッグを組んで戦うというのもアツいですし(しっかり賢く連携できているのもグッド)、そのラスボスとなるメス・エイリアンのしぶとさもナイスです。自分で腕を食いちぎって毒のまわりを止めるあのエイリアンの根性には敵ながらあっぱれだった…。

個人的な好みで言えば、最後はもっと巨大なクリーチャーが登場して度肝を抜かれるという展開を期待していたのもあったのですけどね。

いくらでも続編が作れそうな世界観ですが、次回があるとしたらせっかくのパラマウント配給なのだし、『クワイエット・プレイス』シリーズとかとクロスオーバーしてもいいんじゃないでしょうか。

『トゥモロー・ウォー』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 53% Audience 80%
IMDb
6.9 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
4.0

作品ポスター・画像 (C)Paramount Pictures トゥモローウォー

以上、『トゥモロー・ウォー』の感想でした。

The Tomorrow War (2021) [Japanese Review] 『トゥモロー・ウォー』考察・評価レビュー