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ドラマ『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』感想(ネタバレ)…スター・ウォーズは拡張する

ボバ・フェット The Book of Boba Fett

スター・ウォーズは拡張する…「Disney+」ドラマシリーズ『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Book of Boba Fett
製作国:アメリカ(2021年)
シーズン1:2021年にDisney+で配信
製作総指揮:ジョン・ファヴロー、デイブ・フィローニ ほか

ボバ・フェット The Book of Boba Fett

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ボバ・フェット The Book of Boba Fett

『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』あらすじ

銀河でもその名が轟く賞金稼ぎだったボバ・フェットは敗北を経験し、新たな再出発によって次の生き方を見い出そうとしていた。傭兵のフェネック・シャンドを相棒にし、惑星タトゥイーンでジャバ・ザ・ハットに代わって一帯を支配しようとする。しかし、そこには富と権力を求めて暗躍する存在が潜んでおり、首尾よく目的どおりにはいかない。ボバ・フェットには大勢の仲間が必要だった。頼れる強力な味方が…。

『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』感想(ネタバレなし)

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ボバ・フェットもついに主役!

今はたくさんの作品が連なる長いシリーズも増えてきました。そうすると、自分の観ていない作品からキャラクターがフラっと登場してくることもあり得るので「なるべく関連作品を観ておかないと!」と気を遣う人もチラホラ見られます。

その気持ちはよくわかるのですが、一方で私は「いきなり見知らぬキャラクターがでてくるという経験も楽しいじゃないか」とも思います。昔だってそういうことは珍しくなかったのです。

例えば『スター・ウォーズ』ボバ・フェット

“ジョージ・ルーカス”が生み出して映画に革命をもたらした『スター・ウォーズ』。魅力的な主役級のキャラクターが目白押しですが、この最初の3部作のうち『エピソード5 帝国の逆襲』で本当にフラっと登場してきたのがボバ・フェットでした。その出番は、ダース・ベイダーが雇った腕利きの賞金稼ぎたちの中のひとり。ただそれだけです。

実はこのボバ・フェットは当初は特別な兵士としてデザインされたもので、ただ部隊として登場させようと考えていたものの予算の都合上で1体分のアーマーしか作れず、しょうがないので賞金稼ぎという設定にした…という裏話があるんだとか(『ボバ・フェットの伝説 アーマーに隠された素顔』を参照)。

その脇役のボバ・フェットでしたがファンの間では「なんだあいつ!?」と注目されたのですが、続く『エピソード6 ジェダイの帰還』でジャバ・ザ・ハットの用心棒として雇われていたボバ・フェットはルーク・スカイウォーカーとハン・ソロと対決。結果、砂漠の大穴に生息する人食い怪物「サルラック」に飲み込まれて姿を消す…という何ともアレなオチで終わったのでした。

ファンにしてみれば「なんだったんだ…あのキャラ…」という感じですが、その説明も全くない存在感がむしろ人気に火をつけ、新作のプリクエルではボバ・フェットの幼少期と父であるジャンゴ・フェットが描かれるなど、優遇された代表的な脇役となりました。

そのボバ・フェットが2019年に始まったシリーズ初の実写ドラマ『マンダロリアン』でまさかの再登場。サルラックに食べられて死んだわけではなかった!…とファンも歓喜。しかもこれまで以上に魅力的なキャラクターの深掘りがなされている!

さらにさらにですよ、『マンダロリアン』のシーズン2のエンディングでボバ・フェットを主役にしたドラマが発表されるというサプライズ。ついにここまできたか、ボバ・フェット。ファンの愛がここに結実しました。

ということで本作『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』です。

製作総指揮のメインクリエイターは“ジョン・ファヴロー”“デイブ・フィローニ”のおなじみの面々なのですが、今回は『アリータ バトル・エンジェル』の“ロバート・ロドリゲス”も参加。そのせいかケレン味の強い映像センスが炸裂しており、アクションもマシマシでとにかく気持ちがいいです。

“デイブ・フィローニ”と“ロバート・ロドリゲス”以外のエピソード監督は、『ウォッチメン』の“ステフ・グリーン”、『エージェント・オブ・シールド』の“ケヴィン・タンチャローエン”、『マンダロリアン』で多数の印象的エピソードを手がけた“ブライス・ダラス・ハワード”

ボバ・フェット以外にもあんなキャラクターやこんなキャラクターまで登場。完全にこれまでのあらゆる『スター・ウォーズ』作品を観てきたファンへのご褒美のようになっています。私なんか感無量で幸せパラメーターが満杯になっちゃったですよ。

『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』は全7話。「Disney+」で独占配信中です。

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『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』を観る前のQ&A

Q:『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:実質的には『マンダロリアン』シーズン2.5のようなものなので、『マンダロリアン』のシーズン1とシーズン2は物語の流れとして鑑賞しておきたいところです。

オススメ度のチェック

ひとり 4.5:ファン歓喜の大サービス
友人 4.5:ファン同士の話題が尽きない
恋人 4.0:シリーズ好き同士で
キッズ 4.5:子どもも楽しめる
↓ここからネタバレが含まれます↓

『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』感想(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤):ボバ・フェット物語

惑星タトゥイーンの都市モス・エスパにある宮殿。この場所に君臨して一帯を恐怖で支配していたジャバ・ザ・ハットはもういません。今、この新しい主として椅子に座ったのは、かつて銀河一の賞金稼ぎとしてその名が知れ渡っていたボバ・フェット、そして彼の右腕として相棒になったフェネック・シャンドです。

ボバはさっそく周辺地域の有力者の訪問を受け、歓迎の姿勢を示されます。しかし、それは建前のようなものであり、このタトゥイーンの者たちは新参者であるボバを信用もしていませんでした。

モス・エスパの市長の執事長もやってきますが、その態度は明らかにこちらを小馬鹿にしています。貢物もなくうわべだけの謝罪。市長は完全にボバに従う気はないようです。

このままではさすがにマズいのでボバ自ら街に繰り出し、新たにガモーリアンの2人を引き連れて、サンクチュアリーという名のクラブを訪れます。オーナーのガーザ・フウィップはみかじめ料をこっそり渡してくれます。

タトゥイーンの裏社会を取り仕切るのは大変そうです。しかし、ボバは安易な手段をとりません。

「ジャバは恐怖で支配した、俺は尊敬で支配する」

昔は冷酷な殺しも平気でやったボバがなぜこのような姿勢へと変わったのか。それは死から生還したあの日に遡ります。

まだ帝国が銀河を支配していた頃。ボバはジャバに雇われていましたが、ジェダイたちに敗北し、タトゥイーンの砂漠に棲むサルラックという化け物に丸呑みにされました。しかし、マンダロアのアーマーのおかげで生存。なんとか火炎放射で内部から攻撃し、砂から這い出てくることに成功。けれども力尽きて気を失います。

その意識不明の間にジャワ族にアーマーを奪われてしまい、さらにサンドピープルことタスケン・レイダーの集落に引きずられて捕まってしまいました。

縄を切って脱出しようとするも、タスケン・レイダーの族長と1対1で勝負することになります。しかし、相手は洗練された武術でこちらを圧倒。砂に叩きつけられ、ボバは負けました。

やむを得ずこのタスケン・レイダーの集落で暮らすことになったボバ。2つの太陽が照りつける過酷な環境でも生き延びるタスケン・レイダーの知恵を目にし、ボバは考えを改めます。そして砂漠に出現した巨大な4本の腕を持つクリーチャーを倒してみせ、子どものタスケン・レイダーを救います。これにより、ボバはタスケンレイダーたちから敬意を獲得したのでした。

族長がくれた水を満足そうに飲み干すボバ。彼の第2の人生の始まりです。

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男らしさの脱却を先住民から学ぶ

“デイブ・フィローニ”体制で始まった『スター・ウォーズ』作品群。実写ドラマの『マンダロリアン』、アニメシリーズの『スター・ウォーズ バッド・バッチ』と続いていますが、共通しているのはどれも“男らしさ”と向き合う主軸があるということ。男性的なジャンル(もちろん偏見ですが)として消費されてきた作品の歴史に対する、ある種の『スター・ウォーズ』なりのケジメなんだと私は思います。

『マンダロリアン』では主人公はベイビーヨーダ(グローグー)という赤ん坊と出会ったことで、『スター・ウォーズ バッド・バッチ』では謎のオメガという子どもと出会ったことで、男たちは己を問い直します。

では『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』ではどうなるのか。無様な敗北を味わってアーマーまで身ぐるみ剥がされたボバを新たに導いたのは…タスケン・レイダーでした。

このアイディアにはおそらくボバを演じた“テムエラ・モリソン”のバックグラウンドも影響しているのだと思います。“テムエラ・モリソン”は『エピソード2 クローンの攻撃』でジャンゴ・フェットも演じていましたが、ニュージーランド出身で現地の先住民であるマオリ族の血筋もあります。『マンダロリアン』ではボバが棍棒みたいなの(今作でタスケン・レイダーのガダッフィという伝統的武器だと判明)で戦っていましたが、あの戦闘スタイルも“テムエラ・モリソン”の提案でマオリ族の舞いを取り入れていることが『マンダロリアン』のメイキングで語られていました。

『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』ではタスケン・レイダーを先住民として掘り下げて、その文化に敬意を示し、ボバの新生の出発点とする展開になっているんですね。

思えばこういうスペースオペラはどうしても植民地主義的な思想が滲みやすく、『スター・ウォーズ』でもタスケン・レイダーの扱いはやや差別的でした。プリクエルではアナキンの母に暴力を振るう残酷な集団としてしか描かれませんでしたからね。しかし、『マンダロリアン』以降の“デイブ・フィローニ”体制『スター・ウォーズ』作品群はこうした背景にいた種族に光を当てることが増えました。

『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』のタスケン・レイダーの描写は本当に人間らしさに溢れていますし(第2話のスピーダーバイクの乗り方を教える場面は微笑ましい)、だからこそ彼らの集落が滅ぼされるという第3話の展開はショックです。観客の立場は逆転、タスケン・レイダーに同情できるようになっています。

規範を失った男が新しい生き方を見い出す…という構図を今回も披露した『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』ですが、そこに先住民文化への回帰というまさに今のトレンドも組み込み、ますます現代寓話のSFとしてリアリティが増したのではないでしょうか。

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あの2人の会話に感涙

『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』のタイトルにある「The Book of ~」というのはたぶん聖書の章と同じだと思うので、今作もボバ・フェットの物語だと銘打っていることになります。

しかしながら、今作は想像以上に『スター・ウォーズ』キャラクターの総出演でしたね。

マンドーことディン・ジャリンがでてくることは想定していたのですが、まさかグローグーとの再会まで描いてしまうとは…。というか、マンドーはグローグーに未練タラタラじゃないか…。あの最終話でのグローグーとの再会のちょっと声に喜びが隠せていない感じとかね(絶対にあのヘルメットの中でニヤニヤのデレデレ顔になっているだろうな)。グローグーも可愛いけどマンドーも可愛いという…。

そのマンドーもダークセーバーを駆使できずに苦労したり、あの鍛冶屋のマンダロリアン(アーマラー)と再会して己の立ち位置を問われたり(パパです!ってことでいいんじゃないかな)、今後の『マンダロリアン』シーズン3に繋がる伏線の連発で第5話はいっぱいいっぱいでした。

それにしてもマンドーのレイザー・クレストに代わる次なる乗り物があの幼い頃のアナキン・スカイウォーカーとR2-D2が乗り込んだこともある「N-1 スターファイター」(だった機体;ボロボロ)とは!…凄いファンサービス。ジャワ族の良い仕事っぷりもあって見事に生まれ変わった名機になりました。

で、第6話ではさらなるサプライズ。なんとR2-D2とルーク・スカイウォーカー、さらにアソーカまで登場。なんだよ全員集合するのかよ!という大盤振る舞い。ルークがグローグーにフォースを教える姿がかつてのヨーダに学んでいた姿に重なるのも感動ものですが、個人的にはルークとアソーカの短い会話に心揺さぶられました。『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』を観ていないとこんな気持ちにならないでしょうけど、アナキンを師とする者と父とする者の邂逅ですよ。感慨深い…。アソーカの方がジェダイとして圧倒的に先輩なんだから、ルークももっとこう…先輩を敬えよ!って思わなくもないですけど…。

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楽しすぎる大集結&大乱闘

この主役級の大集結だけではない『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』。

コミックにでていたウーキー族のグラディエーターであるブラック・クルルサンタンまで登場するとは思わなかったし、敵としてハット双子まで貫禄たっぷりに担がれてくる。『マンダロリアン』からは整備士のペリ・モットーや、保安官のコブ・ヴァンスも合流。

新キャラとしては“ソフィー・サッチャー”演じるドラッシュなどからなるサイボーグの若者グループも加入(バイクのカラーリングから『パワーレンジャー』みたいとネットで言われていて笑ってしまった)。

そしてついにパイク・シンジゲートとの全面戦争。強敵であるスコーペネク・ドロイドの出現に圧倒的不利になる中、そこで形成を逆転したのはランコアでした。「怪獣vsロボット」の街中大バトルを『スター・ウォーズ』で見せてくれる、ありがとう!と感謝しかありません。ランコアのようなクリーチャーにまで愛を向けてくれるのは本当に嬉しいですね(飼育係が“ダニー・トレホ”なのがウケたけど)。

第7話の「大乱闘スマッシュブラザーズ」並みのハチャメチャ感は最高でしたし、グローグーも一番良いところで活躍するし、『スター・ウォーズ』を好きで良かったなと噛みしめる1時間ですよ。

で、ラストはキャド・ベインとの一騎打ち。『スター・ウォーズ クローン・ウォーズ』など“デイブ・フィローニ”作品ではおなじみの最恐の賞金稼ぎであり、早撃ちのガンナーですが、これは本作においてはボバのもうひとつの未来の自分と直面する鏡みたいなものなのでしょう。

そもそもボバの父は暴力でしか生きる道を見い出せなかった(ゆえに滅んだ)人間であり、キャド・ベインも同じ道のままに年老いました。ボバもそうなっていた可能性もあったわけです。でも今のボバは違う。男が一匹狼を気取らなくていい。コミュニティに支えられ、弱さも素直に見せて、敬意で皆をまとめる。ボバとフェネックの2人の男女の対等関係も印象的です。とにかくこういう「男の居場所はあるんだ」という提示をボバはキャド・ベインに見せつけることで“勝つ”のです。

この戦いによって完全にボバは過去の古い“男らしさ”の生き様と決別しましたね。

エンディングでは住民に尊敬を向けられることに気恥しそうにしているボバ。バクタ・タンクでフリータウンの保安官コブ・ヴァンスが治療を受け、どうやらサイボーグ化する様子だったので、彼に統治を任せるのかな。

ボバとフェネックがどんな未来を歩むのか。そしてマンドーとグローグーの父子コンビの銀河育児旅行の行く末…。『スター・ウォーズ』の世界はどんどん拡張しますが、ますます楽しみです。

『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 81% Audience 62%
IMDb
7.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
7.0

作品ポスター・画像 (C)Disney ザ・ブック・オブ・ボバフェット

以上、『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』の感想でした。

The Book of Boba Fett (2021) [Japanese Review] 『ボバ・フェット The Book of Boba Fett』考察・評価レビュー