感想は2100作品以上! 検索はメニューからどうぞ。

『トロールズ』感想(ネタバレ)…ドリームワークスのSING!DANCE!HUG!なアニメ

トロールズ

ドリームワークスのSING!DANCE!HUG!なアニメ…映画『トロールズ』の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Trolls
製作国:アメリカ(2016年)
日本では劇場未公開:2017年にDVDスルー
監督:マイク・ミッチェル、ウォルト・ドーン
トロールズ

とろーるず
トロールズ

『トロールズ』物語 簡単紹介

歌と踊りとハグが大好きな小さな生き物トロールは森で平和に暮らしていた。みんなで楽しく音楽に包まれて仲がいい。トロールの幸せの源は音楽である。しかし、その音楽好きが問題を招いてしまう。トロールの王の娘であるポピーは、思い切って盛大でド派手なパーティーを行うが、体が大きく凶悪なベルゲンに見つかり、大切な仲間を連れさられてしまう。ベルゲンはトロールを食べることで幸せになれる生き物だった。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『トロールズ』の感想です。

『トロールズ』感想(ネタバレなし)

スポンサーリンク

こちらも歌では負けてない

日本映画市場はアニメが絶好調であり、今年も邦画も洋画もアニメは相変わらず大ヒットを飛ばしていますが、そんななか蚊帳の外に置かれているアニメ制作会社が…。それはドリームワークス・アニメーションです。

『シュレック』でアニメ映画はディズニーとピクサーだけではないことを世界に証明し、旋風を巻き起こしたかつての覇者もなぜか日本では苦境に。最近も『カンフー・パンダ3』が日本ではNetflix配信になってしまい、劇場に縁がありません(追記:『カンフー・パンダ3』が 2017年8月26日に限定で劇場公開されることになりました。やったね、パンダ!)。まあ、黄色い奴のイルミネーション・エンターテインメントという新入りが日本ではウケてるからなぁ…。

最新作でアカデミー賞にもノミネートされた本作『トロールズ』でさえも劇場未公開という悲しい扱いのドリームワークス。見逃すのはもったいないので、ここで紹介します。

本作『トロールズ』もイルミネーション・エンターテインメントの『SING シング』と同じく「歌」を題材にしたストーリーです。往年の名曲を次々とエモーショナルに歌い上げていく…またもやハズれるわけないこの構成。完全にテンプレ化しましたね。

本作はプロデュースの時点で豪華で、アメリカ音楽界のトップミュージシャンである“ジャスティン・ティンバーレイク”が音楽面での総製作指揮をとっています。当然、仕上がる曲は一流であり、メインテーマ曲となる「Can’t Stop the Feeling!」はアカデミー賞歌曲賞にノミネートされました。

他にも誰もが知る名曲のカバーが続々と物語を盛り上げます。

“ジャスティン・ティンバーレイク”は声優として主要キャラクターの声も担当している点にも注目です。また、ヒロインには、これまた歌が得意なことで知られる“アナ・ケンドリック”、さらにはもうひとりのヒロインには“ズーイー・デシャネル”が参加。子ども向けのように見えますが手加減なしの豪華さです。さすがアメリカ。

歌をキーワードにしていても『SING シング』とはその活かし方が全く違うので、新鮮に楽しめると思います。この夏は、家族と一緒に家でのんびり観賞するのはいかがですか。

↓ここからネタバレが含まれます↓

『トロールズ』感想(ネタバレあり)

スポンサーリンク

あらすじ(前半):幸せをどうぞ

昔々、ハッピーフォレストのハッピーツリーに世界一ハッピーな生き物が住んでいました。トロールです。大好きなのは、歌って、踊って、ハグすること。

ある日、トロールは見つかってしまいました。ベルゲンに。ベルゲンは歌いも踊りもハグもしません。ハッピーなトロールを見たベルゲンはそれを欲しくなり、パクンとひとのみ。それで幸せを感じたベルゲンはトロールを食べるお祭り「トロール・フェス」を年に1回開くことに。

今日がその日です。トロール・フェスでテンションがあがる王の息子・グリスル。もうじっとしていられません。王室専属料理人が盛大に準備。いよいよです。

広場の中央にあるツリーへ。「とってきのポピー姫を差し上げます!」と料理人は宣言し、はやくも期待が止まらないグリスル。

しかし、それは偽物でした。トロールはひとりもいません。

トロールたちは地中に洞窟を掘って逃げ出していたのです。ペピー王は全員を無事に逃がすべく体を張ります(服を犠牲にして)。「ベルゲンタウンから離れよう」…こうしてトロールたちはベルゲンの前から姿を消しました。

料理人は責任をとらされ、追放です。グリスルはトロールを食べそこない、失望。そんな彼を見つめる掃除人の女の子が…。

ペピー王は新しい住処を森に作ると宣言。こうして平和が訪れました。

そんな昔話を子どもたちに聞かせるポピー姫。今もトロールたちはハイテンションでシング&ダンス。そんな一堂に慎重派のブランチは飽きれていました。「こんなに騒ぐとベルゲンがくるぞ」といつも説教していてみんなからはウザがられています。「20年は現れていないのに」と信じません。それで女王になれるのかと嫌味を言うブランチ。

その夜、これまでで最大のお祭りが開催。歌に踊りにキラキラにライトアップで大盛り上がり。その暗闇に打ちあがる光を目撃したベルゲンの元料理人が…。

突然の地面の揺れ。そこに現れたのは巨大なベルゲン。想像しようともしなかった最悪の事態。天敵に見つかり、一同は硬直。大慌てで逃げますがどんどん捕まってしまいます。

悲しみで困惑するトロールたち。引っ越すしかないとペピー王。ポピーは「捕まった子たちは?」と訴えるも「私はあの頃のようにはいかない」と王様。ブランチに助けを求めるも、彼は「一緒にベルゲンタウンに行こう」という誘いをすぐさま拒絶。ブランチはずっとこの最悪に備えていたようです。10年間は地下で暮らせる貯えがあります。隠れ家にみんなを案内するポピー。

ポピーはひとり旅に出ます。

スクラップブックしか持っていないポピーは外の世界をろくに知りません。しかし、持ち前の明るさで危険をものともせずに前進します。

そこにはベルゲン以外の危険な捕食者がうじゃうじゃいるのですが…。

スポンサーリンク

ドリームワークス集大成

ここまで本格的なミュージカルアニメはドリームワークスも初だと思いますが、難なくこなしていました。20年近いキャリアがあるスタジオは伊達じゃないですね。その道のプロのコーディネートによる新しい挑戦を魅せてくれたわけですが、一方で本作はドリームワークスがこれまで積み上げてきたエッセンスを結集させた集大成的な作品ともいえます。

まず、映像。今やCG映像で単純に驚く人はいない時代ですが、それはつまり世界観を表現するうえで映像技術の応用力が試されるということ。その点、本作は、飽きさせない工夫を感じました。スクラップブックのポップなイラストによる平面的な映像と、小さいトロールと大きなベルゲンや周囲環境との対比によるダイナミックな映像の繰り返しでメリハリがあります。

世界観は、トーマス・ダムのおもちゃ「トロール人形」がモチーフ。日本人には馴染みのないおもちゃですけど、見た目が怖いんですよね。でも、本作ではそこは可愛くなってましたが。おもちゃが題材という意味では『トイ・ストーリー』感がありますが(トロール人形は『トイ・ストーリー』にも登場してました)、内容はあくまでファンタジー。トロールがベルゲンに食べられるというえげつない設定はドリームワークスの『ヒックとドラゴン』を思わせます。

スポンサーリンク

考えたら負けなギャグセンス

ドリームワークスらしさの最大の特徴といえば、ギャグです。それも世界観ガン無視の現代センス全開のギャグを容赦なくぶちこんでくるのがドリームワークス流。本作も炸裂してました。

一番暴走してたのは、グリスル王に恋焦がれる召使いのブリジットがポピーたちの手助けでオシャレに変身するパート。なんだこれ…なんだこれ…でも、幸せそうだからいいか…。

あとは、全く脈絡もなく登場する“ハイタッチ雲野郎”の意味不明さが個人的にツボ。いいです、この考えたら負けな感じが。

スポンサーリンク

多様な価値観を賛歌する

『トロールズ』は、トロールの物語とベルゲンの物語の2つが重なる構成になっていますが、ベルゲン側はシンデレラ的古典ストーリーが下敷きになっています。トロール側にはロマンスはなくあくまでピュアな仲間意識が強調されていましたが、一方で今作のロマンス担当はベルゲンのグリスル王とブリジットの二人。

醜い者同士のロマンスというのは、ドリームワークス・アニメーションを一躍有名にした名作『シュレック』で散々やったことです。そして、本作はそのブラッシュアップ版として良く出来ていました。『シュレック』にあったような“これ見よがし”なメッセージ性は抑えつつも、より普遍的なストーリーになっていたと思います。

とくに幸せの在り方を固定化しない物語の着地が上手いです。ハッピーエンドを描こうとすればどうしてもある一定の幸せの在り方を見せなければいけなくなるもの。「王子との結婚が幸せ」「悪を倒すことが幸せ」とかとか。でも、現代の多様な価値観ではその提示された幸せの在り方が議論を巻き起こすこともあるものです。

ベルゲンたちがトロールを食べること以外で幸せになる方法を見い出していく本作のエンディングは、それぞれの心にある幸せを大切にしなさいという、しごく真っ当な多様性賛歌になっていました。

それにしても『SING シング』の感想でも書きましたが、くどいようですが、この往年の名曲を歌ったミュージカル・アニメのテンプレ、日本でもできないものか。お金のある音楽事務所さん、企画どうでしょう?

『トロールズ』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 75% Audience 67%
IMDb
6.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
スポンサーリンク

関連作品紹介

『トロールズ』の続編の感想記事です。

・『トロールズ2 ミュージック★パワー』

作品ポスター・画像 ©DreamWorks Animation

以上、『トロールズ』の感想でした。

Trolls (2016) [Japanese Review] 『トロールズ』考察・評価レビュー