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『トロン アレス』感想(ネタバレ)…赤色は視聴に優しくない

トロン アレス

カッコよさにカスタマイズ特化してます…映画『トロン:アレス』の感想&考察です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:Tron: Ares
製作国:アメリカ(2025年)
日本公開日:2025年10月10日
監督:ヨアヒム・ローニング
トロン アレス

とろん あれす
『トロン アレス』のポスター

『トロン アレス』物語 簡単紹介

エンコム社とディリンジャー社は現在のテクノロジー業界において最先端の競争相手であり、最も注目されているのはデジタルの世界にあるものを現実に具現化する技術だった。しかし、現時点ではこの現実化は時間制限があり、この技術的難問を突破することで革命が起きるのは間違いなかった。そんな中、ディリンジャー社は独自のデジタル兵士を駆使し、エンコム社に攻撃を仕掛ける。
この記事は「シネマンドレイク」執筆による『トロン アレス』の感想です。

『トロン アレス』感想(ネタバレなし)

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トロンの3度目の挑戦

映画史上初めて「CGI」を多用した作品のひとつとして歴史に語り継がれ、カルト的な人気を今なお保持している1982年のディズニーの実写映画『トロン』。当時、コンピュータ・グラフィックスは奇異な存在であり、業界からはイカサマ的なものと見下され(監督の“スティーブン・リズバーガー”いわく「コンピュータを使ってチートした」とみなされたとのこと)、アカデミー賞の視覚効果賞からも外されたというのですから、異端児扱いだったことがわかります。

それがどうですか。今や『ゴジラ-1.0』がアカデミー賞の視覚効果賞を獲る時代ですよ。手のひら返しどころじゃないですね。映画芸術科学アカデミーの当時の上層部の面々をCGで再現して『トロン』に謝罪する動画を作らせたい…。

そんな映画史における新たな映像技術の幕開けとなった『トロン』は、2010年に『トロン: レガシー』という続編として帰ってきました。ただ、もうCGIは別に珍しくも何もありません。異端扱いされなくなった代わりに、今度は「よくある普通のCGだな…」と平凡な評価を受け、やっぱりアカデミー賞の視覚効果賞にはノミネートすらされないという…(ちなみにこの年のアカデミー賞の視覚効果賞は『インセプション』でした)。

なんか…可哀想になってきますよね…『トロン』シリーズ…。

そして2025年、シリーズの3作目となる映画が登場しました。私の中では「今度こそアカデミー賞の視覚効果賞にノミネートいけるのか?」ということにしか関心ないです。

それが本作『トロン: アレス』

15年ぶりの新作映画となった本作はリブートとかではなく、ちゃんと前作の『トロン: レガシー』と世界観は共通していますが、新しい主人公を描いており、ここから楽しむことができます。

前作公開直後から続編の構想があったのですが、企画が頓挫し、再開発が始まって今に至るというなかなかに長い道のりでした。

その間に現実のテクノロジーはどんどん進化してしまっていますからね。映画で何を描くのか、その設定からして大変だったと思います。

今作では一応、2025年時点でもまだ見ぬ新技術を題材に、現在の観客が観ても近未来さを持たせていますし、何よりもビジュアルにこだわっています。やっぱり視覚効果賞、欲しいのかな…。

『トロン: アレス』を監督するのは、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』『マレフィセント2』など、すっかりディズニーのブロックバスター・フランチャイズを手がける職人監督になっている“ヨアヒム・ローニング”。最近だと『ヤング・ウーマン・アンド・シー』も良作でしたね。

『トロン: アレス』の主演は、『モービウス』“ジャレッド・レト”。共演には、『パスト ライブス/再会』“グレタ・リー”、ドラマ『ダーマー モンスター:ジェフリー・ダーマーの物語』“エヴァン・ピーターズ”、ドラマ『ザ・エージェンシー』“ジョディ・ターナー=スミス”『Babes』“ハサン・ミンハジ”『グレート・スクープ』“ジリアン・アンダーソン”など。

映画館のスクリーン映えする映像が盛りだくさんなので、大きい画面での鑑賞をオススメします。

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『トロン アレス』を観る前のQ&A

Q:『トロン アレス』を観る前に観たほうがいい作品は?
A:とくに過去作を観ておかなくても問題ないですが、『トロン:レガシー』を鑑賞しておくと世界観がより理解できます。
✔『トロン アレス』の見どころ
★ビジュアルと音楽のカッコよさ。
✔『トロン アレス』の欠点
☆平凡なストーリーとキャラクター。

登場キャラクターの整理

  • アレス(Ares)
    …ディリンジャー社によってデジタル的に作られた兵士。
  • イヴ・キム(Eve Kim)
    …エンコム社のCEO。
  • ジュリアン・ディリンジャー(Julian Dillinger)
    …ディリンジャー社のCEO。
  • ケヴィン・フリン(Kevin Flynn)
    …エンコム社のかつてのCEO。

鑑賞の案内チェック

基本
キッズ 3.5
子どもでも観れますが、低年齢向けではありません。
↓ここからネタバレが含まれます↓

『トロン アレス』感想/考察(ネタバレあり)

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あらすじ(序盤)

数十年前、まだただのソフトウェア・メーカーにすぎなかった「エンコム社(ENCOM)」でゲームを開発する程度の社員だったケヴィン・フリンは、ひょんなことから「グリッド」と呼ばれるコンピューターの内部の世界に自身が入り込む技術を得ます。そして会社のCEOに上り詰めました。その後、ケヴィンは失踪し、息子のサムが会社を引き継いだものの、サムもまたグリッドの世界での経験の後、どこかに行方をくらましました。

現在、アラスカの寂れた基地に、エンコム社の現CEOのイヴ・キムが足を踏み入れます。まだ電力はあり、コンピューターが稼働。信頼できる部下のセス・フローレスも一緒です。

ここに来たのは、あのケヴィン・フリンと関連があるためで、特別な「永続コード」を探していました。そしてそれを発見します。

今やエンコム社は巨大なテクノロジー企業になっていましたが、グリッドのデジタル世界にあるものを現実に具現化して持ってくる技術が編み出されていました。しかし、大きな問題がひとつ。そのグリッドから転送された物体は、29分間しか現実で存在を維持できないのです。この技術的な難問を突破するのに必要なのは「永続コード」です。

エンコム社と競合している元エンコム社幹部エド・ディリンジャーの孫ジュリアンが率いる「ディリンジャー社(Dillinger Systems)」もこの「29分問題」に直面していました。

ディリンジャー社のジュリアンは、株主たちである投資家や軍人向けのクローズドなイベントで眩い赤いレーザーと共にデジタル世界から攻撃乗用車を出現させ、売り込みます。そこには最新のマスター・コントロール・プログラムで指揮されるデジタル兵士「アレス」もいました。

ジュリアンはアレスを完璧な兵士で、人間ではないので使い捨てにできると「商品」としてアピールします。その最中、アレスは周囲をゆっくり観察し、分析。アレスは雨が降っている外に関心を示します。

プレゼンが終わると、ジュリアンの母であり元CEOのエリザベスは、29分しか持たない現状の問題点について言及しなかったことを指摘。確かにアレスも時間が過ぎ、肉体が崩れ去って、跡形もなく消えてしまいました。

一方で、イヴたちはコードを見つけ、その場でデジタルのネーブルオレンジの木を現実世界に転送することに成功。それは極寒の大地でも青々と葉っぱと実を何時間も持続させました。これは技術的な革命です。

そしてジュリアンはイヴに狙いを定め、攻撃を仕掛けることに…。

この『トロン アレス』のあらすじは「シネマンドレイク」によってオリジナルで書かれました。内容は2025/10/13に更新されています。
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ゲーミングPC風のビジュアル攻め

ここから『トロン アレス』のネタバレありの感想本文です。

『トロン: アレス』、過去作と比べれば格段にパワーアップしたのはやはりビジュアル。確かに今の感覚で観ると、あの初代の『トロン』はレトロな素朴さを感じます。ゲームで言えば、「スーパーファミコン」くらい。それが3作目は「プレイステーション5」ぐらいの進化ですかね。

とにかく今作では「赤」を基調としたエッジのあるデザインがインパクト大です。この「赤」は初代映画から敵側のデザインに採用されていたものですが、ここにきて存在感を引き上げてきました。

まあ、多くの人が思ったことでしょう…。ゲーミングPCみたいだ、と…。

実際、視覚的には見栄えがあります。ライトサイクルで街中をカーチェイスするシーンでの、上空からの赤い通過線。さらにはビルの合間をゆっくり現れるレコグナイザー(漢字の「円」みたいなやつです)の不気味な貫禄。

わざわざ赤色が映えるように、現実のどのシーンも夜に設定しているのが配慮です。逆にこれが昼間だと、赤がすごく浮いてしまって変ですからね…。

グリッドの世界だともっと赤が増え、スピード感が増します。爆走して逃げるシーンはアトラクションになりそうです。

赤なので目がチカチカするのがやや難点ですが、フラッシュはそれほどなかったし、観れないものではないでしょう(ただし苦手な人は本当に視聴しづらい映像でもある)。たぶんこのあたりの赤のバランスは視覚効果クリエイターが調整を重ねたはず。

正直、映像自体の斬新さはほぼなくて、このビジュアルのカッコよさそうな雰囲気だけで押し切った感じはあります

それに加え、今回は「ナイン・インチ・ネイルズ」の音楽で独特の味わいに錯覚させるという荒業を使っています。平凡な映像でもBGMで雰囲気はガラっと変わります。

『トロン: レガシー』のときは、オリジナルの再現をすることにかなりこだわっていたと思いますし、それだけでいっぱいいっぱいだったと思うのです。それに対し、今作『トロン: アレス』はオリジナルの要素はサンプリングしつつ、ビジュアルをより攻めた方向へとカスタマイズさせたのは、これはこれで正解だったのかもしれません。

これによってこのシリーズのデザインの在り方はもう確定したようなものです。

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クールな見た目、でも中身は…

懸念があるとすれば、その問題はテーマです。『トロン: アレス』はそこに応えうるものには達していなかったなというのが個人的な印象…。

カスタマイズして見た目はガチガチにカッコよくなったけども、中身の性能はわりと平凡で、とくに特筆するべき機能もない…そんなパソコンになってしまったような…。

『トロン: アレス』は過去作を引き継いで発展させるかたちで、「デジタル世界のものが現実に具現化する」という新技術を映像化しています。ギャグ的なものではなく、大真面目にです。

現実のテクノロジーの進化を考えると「VR」はもう実現していますし(人によっては見慣れすぎている代物)、「AR」もあります。あとは「デジタルの物質化」ということでしょうか。その近未来像は確かに好奇心をくすぐられます。

しかし、本作はその「デジタル世界のものが現実に具現化する」という新技術が世界をどう変えてしまうのかということをそんなにリアルに細かく設定して問おうとはしていません。だって考えてみれば、こんなテクノロジーが実現するなら、それはもう世界がひっくり返りますよ。既存産業は根底から崩壊し、市場は大混乱に陥ります。

それなのに本作ではこの新技術を「なんかすげぇテクノロジー」で語りを終わらせてしまっているので、それ以上のテーマに深まりません。

今はAIが論争の火種ですが、そこにもあえてなのでしょうけども、踏み込んではいません。そういう意味では非常に逃げ腰のSFのプロットです。

それゆえなのか、『トロン: アレス』は登場する人物たちがどれもみんな凡庸で、面白みに欠けます。

イヴはすっかり善玉のテクノロジー企業の代表であり、家族の要素を持ち出してエモい感じにしてはいますが、とってつけた感じは否めず…。それと対置するように設定されたジュリアンも典型的なIT企業の糞野郎ですが、観ていて楽しいクソさに欠ける…。

今作のヴィランとして立ちはだかるアテナはバックストーリーも何もかも初期化状態なので、戦うハメになっても盛り上がりません。

極めつけは主人公のアレスで、最初からなんだか知りませんけど「善良さ」があるように醸し出し、でも終始よくわからないままに気が付けばエンディングです。これはあれだ、面白くないときの“ジャレッド・レト”だった…。

いや、メソッド演技で撮影裏でもアレスになりきっていたそうなので、“ジャレッド・レト”は楽しかったのかもですが…。

無機質な非人間のキャラクターだからこそ、その細部にいたるまで、世界にどう干渉し作用するのかで「変化」を楽しむ余白が面白くなるのに…この映画にはそれがあまりに無さすぎました。

これだと旧作キャラクターの登場で沸き上がっている場合ではなく、初代オマージュよりも、もっと今作からのキャラクター造形に力を入れてほしかったです。

私は『トロン』は特別な一作だと思うので、このシリーズを連続で作ってほしいとはあまり考えておらず、それこそ『トロン: アレス』の15年後にまた新作が観られればそれでいいかな。

『トロン アレス』
シネマンドレイクの個人的評価
6.0
LGBTQレプリゼンテーション評価
–(未評価)

作品ポスター・画像 (C)2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved. トロン3

以上、『トロン アレス』の感想でした。

Tron: Ares (2025) [Japanese Review] 『トロン アレス』考察・評価レビュー
#アメリカ映画2025年 #続編 #3作目 #ヨアヒムローニング #ジャレッドレト #グレタリー #エヴァンピーターズ #サイバーパンク #AI

SFアクション
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シネマンドレイク

ライター(まだ雑草)。LGBTQ+で連帯中。その視点で映画やドラマなどの作品の感想を書くことも。得意なテーマは、映画全般、ジェンダー、セクシュアリティ、自然環境、野生動物など。

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