スター・トレック BEYOND
原題:Star Trek Beyond
製作国:アメリカ
製作年:2016年
日本公開日:2016年10月21日
監督:ジャスティン・リン

【個人的評価】
 星 6/10 ★★★★★★
 
あらすじ

宇宙の最果てにある未知の領域を探索するジェームズ・T・カーク率いるU.S.S.エンタープライズ号のクルー達。その旅の道中、エンタープライズは物資補給のために宇宙基地ヨークタウンに停泊する。そこから始まるのは、新たな謎の敵との遭遇とクルー達を襲うこれまでにない困難だった。

フロンティアはいつも論争に満ちている

「スター・ウォーズ」シリーズと並ぶ2大SF大作である「スター・トレック」シリーズ。歴史は「スター・ウォーズ」よりも長い作品です。

2009年の『スター・トレック』から始まったシリーズのリブートは、『スター・トレック イントゥ・ダークネス』(2013年)を通過して、本作『スター・トレック BEYOND』で3作目となります。といっても「スター・ウォーズ」と違って3部作ではないですが。


「スター・ウォーズ」より一足先に新作展開に成功しているという意味でも先駆者ですが、昔からのファンはそれどころではないはず。新作だ続編だスピンオフだと展開するのは、ファンしてみれば常に心配の種でもあります。本作でも、心の奥に上手く説明できない暗黒物質が渦巻いていたことでしょう。

なにしろ本作はストーリーと同様に製作面でも「スター・トレック」シリーズがこれまでに経験していない未知の領域をちょっと冒険しています。

リブート2作の監督だった、そして『スター・ウォーズ フォースの覚醒』を成功させた“J・J・エイブラムス”に代わり、本作の監督をまかせられたのは“ジャスティン・リン”。男どもが車をぶっ飛ばしてヤンチャする「ワイルド・スピード」シリーズでおなじみの監督がてがけるということは、当然アクション面が強化されるということです。

このエンタメ成分増量をファンが喜ぶかは賛否両論。「スター・トレック」シリーズの大きなアイデンティティといえば、作品に巧妙に潜在する人種や宗教などの社会問題でしたが、本作はちょっと弱めですから否定意見があるのも理解できます。一応、登場人物のひとりがゲイであるような描写もあったり、それとなくそういう要素も入れてますけど、やっぱりアクションがガンガン目立ってます。

また、監督以外にも火種はあります。脚本をてがけるひとりは、最近だと『マン・アップ!60億分の1のサイテーな恋のはじまり』などで登場のコメディ俳優“サイモン・ペッグ”。自身も「スター・トレック」のファンだと公言する彼は、脚本もして出演もする…こんなのファンが妬みたくなるのも当然です。

まさに「『俺のスター・トレック』はこれだ!論争」の勃発は避けられない。作品自体は、価値観の異なる者どうしの融和を訴えているんですが、作品外の人間模様はそうはなってないのも興味深いものです。まあ、これも作品への愛あってこそですけどね。

マニアックなファンじゃない、そんなの知らないよという一般層の人は何も気にせず宇宙の冒険を楽しむといいと思います。大迫力のアクションもより際立って興奮できる、大画面のスクリーンでの鑑賞がおすすめです。





↓ここからネタバレが含まれます↓




シンクロするストーリーと製作者とファン

ベタだけど“燃える”展開がてんこもりで「楽しかった」というのが私の率直な感想。

破壊されるエンタープライズ号も一気に爆発するのではなく、部分部分が徐々にバラバラになっていくのがわかっているなという感じです。バイク影分身は絵的には楽しい。そして、終盤の「孤立単体の旧時代的存在 vs 大量の新時代的存在」も単純だけどグッとくる。船体でぷちっとつぶすあの場面なんかとくにですが、乗り物シーンの豪快さがインフレしてて「ワイルド」でした。ジャスティン・リン監督の今までにない映像をなんとか見せてやろうという心意気が感じられます。

本作は、「スター・トレック」の象徴であるエンタープライズ号が大破し、クルーがバラバラになってしまう大事件から物語が動き出します。思えば、このリブート「スター・トレック」シリーズも本作3作目にしてチームやファンがバラバラになっていました。J・J・エイブラムスは「スター・ウォーズ」へ行ってしまったし…。ファンもリブートへの想いは各々複雑ですし…。てなわけで、本作の展開は狙ったわけじゃないでしょうけど現実とシンクロしているといえるのではないでしょうか。

でも結局、散り散りになった人たちが集結して一致団結する過程があっさりだったのが残念ではあります。バラバラになったクルーもいつのまにか割と普通に合流してました。もっと大団円を期待してたのに。クルー救出シーンよりも、カークとチェコフがボロボロのエンタープライズ号を文字通りひっくり返すという大技を決めるシーンのほうが派手って…それでいいのか? ちなみにそのシーンは、なんで怪我なくカークとチェコフが切り抜けられたのがさっぱりわからないくらいのメチャクチャ度でした。なんかスポックの負傷がどうでもよくなりましたね。

新規メンバーであるジェイラの立ち位置も、ハマりそうでハマってなかった気もする…。彼女は、後半はスコッティと一緒に船に乗ってるだけで、一番の見せ場アクションがない。演じたソフィア・ブテラは『キングスマン』(2015年)のほうが爽快なアクションをしてましたね。ジェイラはコメディ寄りだったのが意外で面白かったんですけど。

スター・トレック BEYOND

アクション面でのクリフハンガー的演出のオンパレードに反比例するかのように、ドラマ面でのチームのまとまりが事務的な感じ。やっぱりすでにチームが完成されつくしているので、バラバラになっても平然とまとまるだけなのが淡白な原因なのかもしれません。カークもビジネスライクな雰囲気がしましたし…大人になっちゃったんだなと寂しくなりました。

製作者やファンは論争止まらずなのに、作品内の論争の熱は低い。ここもシンクロしても良かったんですよ?