アントマン&ワスプ
映画『アントマン&ワスプ』(アントマン2)の感想&レビューです。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Ant-Man and the Wasp 
製作国:アメリカ  
製作年:2018年 
日本公開日:2018年8月31日 
監督:ペイトン・リード 

Plot Summary

アントマンことスコット・ラングは、2年前にアベンジャーズの戦いに参加したことがきっかけで、いまはFBIの監視下に置かれていた。そんなスコットの前に、アントマンのスーツの開発者であるハンク・ピム博士と、博士の娘のホープ・ヴァン・ダインが現れ、ある計画に協力するよう要請される。

ネタバレなし感想

アリは初心者大歓迎

今のアメリカ映画界で、いや世界の映画界で商業的に最も成功しているマーベル。それだけの栄光をおさめれば良くも悪くも注目されるもので、最近は「マーベル・シネマティック・ユニバース」の発展に大いに貢献した監督の降板騒動があったりと、映画製作とは直接関係ない部分でも話題の的でした。そのへんは避けられない宿命みたいなものですから、しょうがないとしか言えない面もあります。ともあれマーベルにせよ小さな映画製作会社にせよ、こういう時は「映画を作る」しかありません。それがクリエーターの唯一の表現手段です。

そんなメランコリックな感情はとりあえず忘れましょう。なぜなら本作『アントマン&ワスプ』のような痛快アクション大作にはふさわしくないのですから。

マーベルのシリーズでも特大級の大事件で観客を驚かせた『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』の次の一作にして、『アントマン』の続編となる本作。
『アベンジャーズ インフィニティ・ウォー』感想(ネタバレ)…私は指パッチンができません
『インフィニティ・ウォー』と物語がどうつながるのか、そのあたりの話はネタバレになるので後半で語るとして、とにかく『アントマン』の続編として楽しみましょう。

個人的に「アントマン」というヒーローは大好きで、日本人との親和性も高いと思っています。なんといったって体が小さくなったり、大きくなったりするのです。日本の由緒正しき特撮の精神を受け継いでいるじゃないですか。さらに私も子どもの時に夢中になった昆虫がキーワードになる世界観。アリと協力して戦うなんて…1作目の『アントマン』をもし私が幼い子どもの頃に観ていたら、絶対に「将来の夢は?」と聞かれたら「アントマン」と即答していたに違いないです。

2作目となる今作は、タイトルのとおり「ワスプ」という新しいヒーローが加わり、バディアクションになりました。ちなみに「Wasp」というのはハチの中でもアシナガバチなど割と細めのハチの仲間を指す英単語です(ハチを意味する英語は他にも「Bee」「Hornet」などあって呼び分けします)。

毎度マーベル映画が公開されるたびに気になる、“過去作はどれを観ておけばいいのか”問題ですが、今作に限って言えば1作目の『アントマン』だけ知っておくのでじゅうぶんだと思います。逆にマーベル映画を一度も観ていない人が本作を観ようとして、事前勉強がてら前作の『インフィニティ・ウォー』にうっかり手を出したら大変なことになりますからね。1作目の『アントマン』で復習はOKです。そういう意味ではマーベル初心者向けです。

おすすめ PiCKUP!
↑『アントマン』…頑張る父親の奮闘ムービーでもありました。

夏休みも終わりですが、ぜひとも子どもと一緒に観てほしい、正真正銘の娯楽作です。

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

マクガフィンのように見えて…

あんな凄惨で重苦しいエンディングを見せた『インフィニティ・ウォー』の次の作品がこんな痛快で明るい感じでいいのだろうかと心配になるくらい、暗い雰囲気ゼロでお送りしてきた本作。この明るさを観客に思う存分に楽しんでもらいたかったから『インフィニティ・ウォー』にアントマンは登場させなかったそうですが、それは確かに正解。サノス…? なにそれ、美味しいの? というすっとぼけをかましたくなるほど、気分爽快でエンジョイできる映画でした。

「マーベル・シネマティック・ユニバース」の凄いところは、超壮大な映画もしっかり作る一方で、こんな『アントマン&ワスプ』のようなスケールの“小さい”(それは物語的な意味で)も同時並行で作ってしまう手数の多さにあります。

本作もシンプルです。敵に大切なものを奪われた。だから取り返す。そして時間内に家に戻る。それだけ。前作『1』と比べても話のスケールは大して変わっていません。

ただ、それでも本作は「マーベル・シネマティック・ユニバース」の一角を担う存在であり、決してオマケ的などうでもいいストーリーというわけでもありません。

例えば、作中で主人公スコットとその仲間たちが必死で様々な敵と奪いあいを繰り広げることになる「量子トンネル」をめぐる諸々のアイテム。これなんて、観客にしてみれば量子トンネル自体の理屈もさっぱり意味不明なので、ただの物語推進の動機となるいわゆる「マクガフィン」に過ぎないともいえます。でも、それはマクガフィンではないことはエンディングで示されるわけです。ここで量子世界と『インフィニティ・ウォー』の話がつながるのかと…。つまり、この科学発明は今後のマーベル作品の展開においても非常に重要なものなのです。

こういう「最初はマクガフィンだったけど後からとてつもなく重要な存在化する」現象は、「マーベル・シネマティック・ユニバース」ではしょっちゅう起こります。思えばマーベル初期作で登場した、謎のパワーを秘めたアイテムたちがまさかインフィニティ・ストーンとして、あんな恐ろしい結末を招くとは始めは考えもつかなかったですし。

「ここがこうなってああなるのか!」というのをどれだけ楽しめるかが、このシリーズの肝です。まんまと製作陣によって、手のひらの上で踊らされている感じですね。

それはアイテムだけでなくキャラクターもそうで、例えば今作で登場した「ゴースト」という悪役。正直、本作の悪役はイマイチ物足りないというか、どちらかといえば被害者なので「悪」としての倒すべき存在感は乏しいです。ただ、もともと原作では「アイアンマン」シリーズに登場する男性のキャラクターで、それをわざわざ女性にして、原作では重要な存在であるキャラを父親として設定してみせることで、今後も何かあるのでは?とファンに考察材料を与えています。マーベルによる巧みな餌まきですよ。

スコットの娘キャシーが「私がパパのパートナーになりたい」という父親悶絶の一言を口にするシーンがありますが、原作漫画では娘がヒーローになる展開もあるので、全然ありうるのですよね。もしこのシリーズが10年後も続いていたら、この子役が成長してアントマンを引き継いでヒーロー役で登場!なんてことになるかもしれない。胸熱じゃないですか。演じている子役の“アビー・ライダー・フォートソン”ちゃん、頑張って俳優業を続けてくださいね。

アントマン&ワスプ

VFXはアリのように大忙し

映像的には「普通に」楽しいという、ちょっと奥歯に物が挟まるような言い方になってしまいましたが、でも素直に楽しめる映像のオンパレードです。

アクションも、アントマン特有のサイズを自由自在に変えるテクニックが光っています。普通であればただの格闘シーン、ただのカーチェイスシーンになるところを、サイズ変化というトッピングを加えるだけで、ここまで楽しくなるのですから。必要最小限の素材追加で、エンタメを数十倍面白くさせるというのは、思っている以上にクレバーで実はなかなかできないこと。

前作『1』ではファルコンとのクロスオーバー対決が用意されていましたが、今作ではそういういかにもユニバース的な仕掛けは基本的にありません。それでもちゃんと勝負できるという、「ヒーローたくさん出さなくても面白いもの作れますけど?」みたいな、マーベルの余裕のファイティング精神は悔しいですがお見事。

ただ、物語のシンプルさもあって軽い作品と言われがちですが、映像面では全然軽くはありません。目立たないですが全編にわたって凄いことをしています。なによりサイズ変化しまくるので常にVFXの出番。今回は敵の「ゴースト」もユラユラしているので余計に大変。

さらにもはやマーベルでは恒例になった登場人物の回想での若い時の姿のシーン。ここでは「De-aging」と呼ばれる、俳優の姿をVFXで若くする技術がふんだんに発揮されています。普通、登場人物の若い姿を映画に出すときは若い俳優を別に起用します(同時期に上映している『SUNNY 強い気持ち・強い愛』なんかはまさにそれ)。でも、「De-aging」を使えば同じ役者が異なる年齢の自分を演じることが可能になります。今作ではジャネット・ヴァン・ダインを演じた“ミシェル・ファイファー”が若かりし姿で登場。マーベル作品はどうしても時代を超えた演出も多く、この「De-aging」もどんどん駆使され続けるでしょうね。

ほんと、VFXのスタッフの皆さん、お疲れ様です。

次は巨大昆虫パニックで…

本作の監督は1作目に続き“ペイトン・リード”なのですが、詳しい映画ファンなら知っているように、1作目の時は本来監督に抜擢されていたのは“エドガー・ライト”でした。しかし、創造性の違いにより降板。その後釜に座ったのが大作経験が全くないこの“ペイトン・リード”監督。でも、結果は好評。良かったねで終わりました。

そんな流れもあって前作は“エドガー・ライト”の功績も多分に含まれるのでは?と思っていましたし、“ペイトン・リード”監督の実力は不明瞭なまま。今作でまさに真価が試されたわけです。

そして蓋を開けてみれば、ワスプという女性キャラクターとの存在を中心に据えつつ、あくまでヒーローではなく父親であろうとする主人公の物語になっていることで、より“ペイトン・リード”監督の得意な分野に映画が寄ってきている感じでした。“ペイトン・リード”監督は過去作でも『ハニーVS.ダーリン 2年目の駆け引き』や『イエスマン “YES”は人生のパスワード』など、男女の大人のロマンスや家族をテーマにしてきた人です。たぶんやりやすかったのではないかな。

個人的な不満点と言えば、昆虫成分が思ったほど少なめだったこと。量子の方にスポットがあたってアリたちは活躍は少ないかなと。でも、終盤ラストでスコット&ホープ&キャシーで昆虫特撮映画を鑑賞していたのが伏線になって、次回作で地球上であらゆる昆虫が巨大化して暴れまわり大変な事態になる映画を期待しています。サノス? サノスはクマムシに食べられましたよ。

最後に勝つのは殺虫剤を売り込む“マイケル・ペーニャ”ということで、お願いします。

ROTTEN TOMATOES ※
Tomatometer 88% Audience Score 80%
IMDb ※
7.4 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
※2018年9月1日時点

(C)Marvel Studios 2018