劇場版 ドーラといっしょに大冒険
映画『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Dora and the Lost City of Gold
製作国:アメリカ(2019年)
日本では劇場未公開:2019年にDVDスルー
監督:ジェームズ・ボビン

劇場版 ドーラといっしょに大冒険

あらすじ

両親とともに物心ついた頃からジャングルで過ごしていたドーラ。しかし、都会の学校に進学をすることになり、環境の違いになじめずにいた。そんな時、彼女は何者かに誘拐されてしまう。ドーラがインカの黄金都市へ行くヒントを知っていたであり、同級生も巻き込まれてしまった。彼女は何とか逃げ出し、秘宝捜しの冒険の旅へ出ることになるが…。

『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』感想(ネタバレなし)

知育アニメ、まさかの実写映画化

テレビというものが登場して以降、「知育番組」を観て育った人は多いと思います。

私の幼少時代はNHK教育テレビにどっぷり浸かっていました。あれだけとりあえず見せておけばいいという感じはありましたよね。今はどうなのでしょうか。YouTubeにも知育番組的な動画があるみたいですけど、さすがに幼少期からインターネットを見せるのは抵抗感が…という人の方が多いのかな。

この幼い時期に与えられる情報というのはその後の人格形成にも大きな影響を与えるのは言うまでもなく、知育番組の役割は本当に大事だなと思います。

そんな知育番組が劇場版として映画館公開されることがあります。日本でも『おかあさんといっしょ』の映画が公開されていました。こういう取り組みがあるだけで、幼い子どもたちを映画館という場所に親しませるきっかけになるので、イチ映画ファンとしてはとても嬉しいです(将来、年間100本以上の映画を観る人間に育ってくれるかもだし…)。

たいてい知育番組の劇場版というのは少し時間がボリュームアップしたようなスペシャル版という形式にとどまる程度なのですが、今回紹介する知育番組の劇場版映画は全く違った挑戦をしています。

その作品が本作『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』です。

本作は『ドーラといっしょに大冒険』という幼児向け知育番組の劇場版です。『ドーラといっしょに大冒険』はアメリカのケーブルテレビチャンネル「ニコロデオン」で放映されていたアニメーション番組。内容は元気いっぱいな7歳の女の子「ドーラ」があちこちで大冒険をするというシンプルなもので、その物語の中で視聴者である幼児が言葉を学べるような工夫が仕組まれています。このドーラがラテン系の少女なので、本国アメリカではヒスパニック系移民の英語学習番組として活用されているようです。日本でも放送されたので観た人はいるかもしれません。

観ていない人も想像はつくと思います。よくある知育アニメ番組です。そんな『ドーラといっしょに大冒険』が映画になったわけですが、なんとただの映画化ではなく実写映画化になったのでした。

普通に考えるとそれはかなりキッズ感の強い、下手をしたら“おサムイ”印象になってしまうのではないか…と不安に思うものです。例えば、知育番組とは言えないかもですけど、「プリキュア」を実写映画にしたらきっとアニメの本家「プリキュア」を満足げに楽しんでいた大人たちですら怪訝な顔をすると思います。そもそもアニメーションだからあのフィクションが成立しているという前提がありますし…。

しかしこの『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』。びっくりなことに実写映画化を手際よく成立させて、なんなら批評家も「いいね」と太鼓判を押す良作に仕上げてしまったのです。一体どんな技を使ったのか。それは実際に見てのお楽しみ(感想の後半で)。

監督は『ザ・マペッツ』シリーズや『アリス・イン・ワンダーランド 時間の旅』を手がけた“ジェームズ・ボビン”です。彼はイギリス人なので全然本作と関係ないのですけど、コメディの手腕を期待されたのかな。

俳優陣はまず主役となるドーラがティーンになった姿を演じるのが、『トランスフォーマー 最後の騎士王』『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』『インスタント・ファミリー 本当の家族見つけました』『クリスマスに降る雪は』と近年急上昇中の“イザベラ・モナー”。彼女はラテン系の若手女優として完全に頭ひとつ飛びぬけた躍進を見せていますね。

そして私の中では無視できない、“マイケル・ペーニャ”もそのドーラの父親役で登場。いまだに私は『アベンジャーズ エンドゲーム』の最大の欠点は“マイケル・ペーニャ”の演じるキャラの活躍がなかったことだと思っているわけで、『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』はその不足を補うために観たようなものです、ええ。今作でもやっぱり一発で魅力させるパワーを見せています。

他にも“ダニー・トレホ”“ベニチオ・デル・トロ”が声で出演。わかるかな?

さすがにマイナーすぎると思ったのか日本では劇場未公開でビデオスルーになったのですが、気軽に楽しめるティーンムービーになっているので、子どもでも大人でも鑑賞してみてください。

オススメ度のチェック
ひとり◯(キッズ向けと舐めないで)
友人◯(時間つぶしにどうぞ)
恋人◯(気楽に見れる一作)
キッズ◎(子どもは当然楽しい)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』感想(ネタバレあり)

成長してもドーラは変わらず!

ペルーのジャングル。そこは危険とワクワクがいっぱいの冒険しがいのある場所。幼いドーラディエゴはダンボールでできた車で仲良く遊んでいました。ドーラの両親コールエレーナは探検家。日々、この鬱蒼と生い茂るジャングルに眠る伝説を追い求めていました。

今はインカ文明の伝説に語り継がれる都市「パラパタ」の在り処を捜索中。インカ文明というのは、13世紀頃から200年間続いた、今のペルーあたりにあったインカ帝国が培った文明のこと。世界遺産の遺跡「マチュ・ピチュ」は有名ですね。言語はありましたが、文字文化がなかったそうで、わかっていないことも多いのだとか。作中のパラパタは架空ですが、「パイティティ」という黄金都市があり、たぶんそれがモデルのはず。

そんな楽しさに満ち溢れた生活だったのですが、ディエゴは家族と一緒にロサンゼルスに引っ越しすることになり、ドーラは探検仲間を失い、少し寂しげ…。このままドーラの無邪気な冒険心すらも消えていってしまうのか…。

10年後。全然消えていませんでした、冒険心。

16歳になったドーラはいまだにジャングルを縦横無尽に駆け回っていました。伸びたのは身長だけではありません。ゾウに追いかけられても余裕で回避し、たくましさもパワーアップ。もちろん猿のブーツも一緒。

そしてついに両親もパラパタの所在に迫りつつありました。ところが両親はドーラをロサンゼルスの高校に通わせることにしてしまい、ジャングルを離れることに。レイバー(「レイブ」という音楽を楽しむ若者たち。まあ、いわゆるパリピです)に気を付けろとの父の忠告もわかっているようなわかっていないような…。ジャングルしか知らないドーラはひとりで全く未知の世界を探検することに。

飛行機を降りて空港に着いたドーラは大興奮。階段の手すりをすべって登場したドーラを出迎えてくれたのは、10年前に離れてしまっていたディエゴ一家でした。ディエゴもすっかり成長し、背もぐんと伸びましたが、若干顔は不安げ。そんなことも気づかずに久しぶりの再会にテンションが高いドーラ。

ドーラはディエゴ一家の元に下宿。ベッドはしっくりこなかったので庭で寝る彼女は完全に冒険気分。

翌日、初めての高校生活(というか初めての現代文明社会体験)を意気揚々とスタートさせたドーラ。明らかに彼女の隣にいたくなさそうなディエゴと共に登校すると、手荷物検査が行われていました。しかし、ドーラのバッグからは、発煙筒やら無線機やらハンモックやらどう考えても勉強に必要ないものがでるわでるわ…。警備員には呆れられ、初日から周囲の子どもたちの注目の的になります。何もわかっていないドーラ。うんざり顔なディエゴ。

がり勉で若干人を見下しがちなサミーと、オタクでマニアックなランディという、この学校で浮いている二大生徒にも分け隔てなく話しかけるドーラ。それを見てやっぱり嫌な顔のディエゴ。

ダンスパーティーが開催されたときには、ハロウィンでもやらないような太陽の仮装で自信満々に参加し、クジャク、ゾウ、ゴリラと動物ダンスを披露していくドーラ。ドン引きで関わりたくないディエゴ。

もうおわかりのようにドーラとディエゴの間にはかつての無邪気な関係性はなく、その後の育ちの環境のせいで地割れのようなギャップが存在しているのでした。

そんなある日、ドーラたちは課外学習の一環で博物館を訪れることになり、「は~い、班を作ってね~」という一部の生徒が一番聞きたくない言葉が先生の口から飛び出し、案の定、ドーラ、ディエゴ、サミー、ランディの4人が余って仕方なく組むことに。

そしてとんでもない事件が起こり、4人は遠く離れたペルーへと運ばれてしまい…。

フェアなドーラの描かれ方

『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』は、オリジナルとなる元アニメ番組と何が決定的に違うのか。それは一目瞭然ですが、主人公ドーラの年齢が7歳から16歳に上昇していることです。

その理由も察しがつきます。原作どおり6~7歳の子がジャングルで駆け回っているのを実写で再現したら変です。『ジャングル・ブック』ならわかります。そうなってしまったやむにやまれぬ事情がありますから。でもこの本作のドーラは親公認ですから、どうしても幼児虐待臭くなってしまうものです。明らかに子育て環境に向いていません(実際にジャングルで育児をするのは大変という話ならばドキュメンタリー『ジェーン・グドールの軌跡』を参照)。

だからこそティーンになったドーラは学校に連れていかれてしまいます。そのへんは正直、大人の事情な側面です。

じゃあ映画はオリジナルの本質を失い、面白くなくなったのか…と言えばそうではなく…。逆にその事情を上手く活用して新しい面白さに変えていました。

まず本作は前半と後半に分かれます。前半のドーラが学校に行くパートは、典型的な学園青春ドラマであり、状況としては『ミーン・ガールズ』(2004年)などと同じです。

ここで“そう来るか”と思ったのが、ドーラの立ち位置。どうしてもこういうシチュエーションの映画だと、“後進国”的な環境から来た者は笑いものにされ、浮いてしまいます。でもドーラはあくまでロサンゼルスの学校とペルーのジャングルを対等に扱っています。それがよくわかるのが学校の生徒たちを「先住民」と呼ぶこと。ドーラにしてみれば嫌みで言っているのではなく、ありのままを言っているだけ。どちらが優劣かという話ではなく、互いをリスペクトし合う。

また本作のティーンなドーラはオリジナルのキャラどおり愛嬌たっぷりなのですが、同時に決してアホ(幼稚)ではありません。それどころか人一倍賢いです。サミーと「熱帯雨林保全」トークをするシーンでそれがわかりやすいですが、双方ともに聡明ですけど、第三者的に知っている人と現場を知っている人の差が出ます。要するに「優秀」のベクトルが違うだけ

映画の作り手が、ドーラの背負う「ラテン文化」「野生の自然」といった要素をないがしろにしていないどころか、極めてナチュラルなフェア精神があることを感じ取れます。

劇場版 ドーラといっしょに大冒険

「学びに来ました」

後半パートになると、今度はペルーのジャングルを舞台に、完全に『インディー・ジョーンズ』シリーズのノリに(実際にパロディになっている)。

ちゃんとジャングルや遺跡のシーンはCGとかではなくセットであり(あの巨大な花のシーンも)、知育番組の映画化とは思えない、本格的なスケール。全くチープではありません。

そんな中で今度はロサンゼルス組が困惑することになり、サミーは鋭いツッコミをしながらも本やネットだけでは知れない現場のリアルを知っていき、ランディはジャングル・パズルだ!とハシャギながらもオタク知識を開花させ、ディエゴもかつてのジャングルに夢中だった自分を取り戻していく。ちょっと『ジュマンジ ウェルカム・トゥ・ジャングル』っぽい、異世界成長ストーリーになっていきます。

しかし、ここでも『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』らしい特徴があって、作中でキッパリ「トレジャーハンター」という職業(職業なのか?)を否定しているんですね。あくまで探検家なんだ、と。

それはもちろんそういう輩はボロクソに言ってしまえばただの「自然破壊者」であり「盗人」に過ぎないからです。それをここまで断言する。もう某トゥームをレイダーするあの人も涙目なストレート忠告ですが、まあ、明確な事実です。反論もできないでしょう。

結論すると、『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』は実写化してもなおしっかり知育番組らしい“教育”の要素を根幹に備えています。多様な文化を尊重しよう、自然を愛そう、と。なによりも“学ぶ”ということの大切さ。現代人に欠けているものですもんね。

変にカッコつけて大人向けにせずに、こうやって芯を維持したまま納得できるバランスに仕上げる…これはサラッとやってのけていますけど実は凄いことなのではないでしょうか。知育アニメ番組の実写映画化としてこれは理想形だと私は大納得しました。

良い子のみんな、幻覚は怖いんだよ!

巧みなバージョンアップを見せる『劇場版 ドーラといっしょに大冒険』ですが、オリジナルの直球なリスペクトもたっぷりです。

まず序盤のオリジナルを実写で完全再現したオープニング・シークエンス。猿のブーツがでてきて、狐のスワイパーがおなじみのセリフを言い、マップ君やバックパックも動き出し、実に楽しげ。一瞬、「え、このノリがずっと続くのか!?」と思いますが、それは空想オチ。

しかし、中盤以降にまさかの幻覚作用でアニメ化展開。もろにオリジナルと同じになっていくというカオスな絵面のぶっこみ(このへんはすごくアメリカっぽいノリですね。子ども向けだからドラッグは出せないけどあの手この手で幻覚を演出するよね、アメリカって…)。

他にも観客を前に話しかける“第4の壁”演出とか、ファンもニッコリできるのも嬉しい。個人的にはラストで娘の自立を泣いて喜ぶ親二人の姿が、今まさに子連れでこの映画を観ているであろう親の感情とシンクロするようで、なんか好きです。

また、本作を成立させたのは役者陣の好演があってこそ。とくにドーラを演じた“イザベラ・モナー”。なんでこんなに上手いんだろう…。下手するとイタイだけのキャラになってしまうのに、そこを絶妙なさじ加減で合わせる演技の調整力。まだ18歳でこれだもんなぁ…。本作は“イザベラ・モナー”の力に相当に頼っていますね。歌とダンスも上手いし。

エンディング曲の「Hooray! We Did It」はリピートして聞きたくなりますね。


子どもも大人もたくさん学べる、素晴らしい映画でした。そして今のハリウッドでこういう映画が作られた成果も、小さな、でも確実に大きな秘宝につながる一歩だと思いました。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 84% Audience 88%
IMDb
6.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

関連作品紹介

“イザベラ・モナー”が出演している映画の感想記事の一覧です。

・『ボーダーライン ソルジャーズ・デイ』


・『クリスマスに降る雪は』

作品ポスター・画像 (C)Nickelodeon Movies, Paramount Pictures