ハッピー・デス・デイ
映画『ハッピー・デス・デイ1』(ハッピーデスデイ)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Happy Death Day 
製作国:アメリカ(2017年)
日本公開日:2019年6月28日
監督:クリストファー・ランドン

ハッピー・デス・デイ

あらすじ

遊んでばかりの女子大生のツリーは、誕生日の朝も見知らぬ男のベッドで目を覚ます。慌しく日中を過ごした彼女は、夜になってパーティに繰り出す道すがら、マスク姿の殺人鬼に刺し殺されてしまう。しかし、気がつくと誕生日の朝に戻っており、再び見知らぬ男のベッドの中にいた。その後も同じ一日を何度も繰り返すが…。

ネタバレなし感想

誕生日が繰り返されるのは地獄?

誕生日おめでとうございます!

はい、なぜこんなことを書いたのか、それはもちろん毎日が誰かの誕生日だから。もしかしたらこの記事を読んでくれた人の中に「今日は私の誕生日です」という人物がいるかも…しれない。だからこの突発的な誕生日祝福も誰かにはヒットする…そう半ばヤケクソで思いながら。まあ、無論、誰も読んでいないかもしれないので、その時はただの悲しい独り言です。

誕生日を祝うというのは年をとるにつれ、だんだんとどうでもよくなっていく傾向もあったりします(人それぞれですが)。そもそもなんで誕生日は祝われるのでしょうか。ちなみに世の中には誕生日を祝うという文化が存在しない国も普通にあって、その理由も“自分の誕生した月日の記録をとる”という慣習がないとか、根本的にカレンダー的な暦を気にしないライフスタイルだとか、いろいろです。

ともあれ誕生日くらい必ず休日にするという決まりを作ってほしいなと個人的には思います。そうしたら嬉しいじゃないですか。誕生日に仕事で忙殺されるとか嫌ですものね。ましてや誕生日に不幸な出来事があったら最悪です。もし誕生日に死んでしまったらその日が“命日”なんてことも…。

そして本作『ハッピー・デス・デイ』は、その考えうる最悪中の最悪が誕生日に起こってしまうというホラー映画です。

その最悪とは、誕生日の日の夜に殺人鬼に惨殺されて、加えてなぜかまたその誕生日の朝に時間が巻き戻って、ひたすらに殺人鬼に殺される現象を繰り返すという、地獄のタイムループ。いくら誕生日が好きな人でもこれは嫌だろう…そう断言できる、まさに“ハッピー・デス・デイ”。

こういう自分の死が何度でも繰り返されてしまうタイムループ系のSFは、タイトルを挙げだすとキリがないほど無数にあります。なのでこの設定だけでは何も斬新ではありません。むしろ“またこれか”という気分すら感じるほどです。正直、私も『ハッピー・デス・デイ』という映画のアメリカ公開時の作品情報を知った時は、“どうせよくあるやつだろう”と全然期待も何もしていませんでした。

ところが観てみれば、案外よくできているというか、もちろん大傑作と絶賛するほどの高尚な映画では全くないのですが、エンタメとしてのほどよい“軽さ”が楽しい、“ハッピー”な映画でした。映画館に行って新商品のポップコーンを食べたら予想以上に美味しかった…くらいの幸せ感(わかりにくい例え)。

オチはネタバレできないのは当然ですが、でも本作はオチよりも過程を楽しむ作品です。ホラーですけど、笑えるシーンもたっぷりあり、最終的には爽快感が上になるので、怯えないでください。ホラー映画が苦手な人でもオススメしやすいです。

制作は、『パージ』シリーズや『ゲット・アウト』、『ハロウィン』、『ミスター・ガラス』など新旧さまざまなホラー映画を連発して、近年のハリウッドのホラー映画ブームを牽引している「Blumhouse Productions」。映画本編が始まる前のオープニングクレジットの“会社ロゴ演出が怖い”でおなじみのブラムハウスさんですね。
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監督は“クリストファー・B・ランドン”でこの人は『パラノーマル・アクティビティ』シリーズで複数の続編作品を手がけています。正直、そっちの方はあんまり良い評価を得られていなかったので、『ハッピー・デス・デイ』の方はどうなんだと思いましたが、非常に伸び伸びと自由に映画を作った感じで、『パラノーマル・アクティビティ』シリーズに関わらない方がこの監督、上手いんだなと実感。

俳優陣はほとんど有名クラスの人はおらず、主人公を演じた“ジェシカ・ローテ”は『ラ・ラ・ランド』でヒロインのルームメイト役で登場していましたが、たぶん覚えている人は限りなく少数のはず。でもこの主演作『ハッピー・デス・デイ』でかなりホラー映画ファンに認知されたので、今後も意外な活躍が見られるかもしれませんね。それくらい本作では観客の印象に焼き付く苦闘を見せてくれます。

とにかく肩の力を抜いて見られるエンタメ・ホラーです。人気の大作も良いですが、こういう映画こそ若い人たちが友達をゾロゾロ連れてワイワイと観に行ってほしいものです。

今日が誕生日という人は絶対に見てね。さもなくば命は…。

オススメ度のチェック
ひとり◯(個人鑑賞でも笑える楽しさ)
友人◎(みんなで盛り上がる)
恋人◎(恋愛要素もあり)
キッズ◯(残酷さはさほどでもない)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

エンドレス・9月18日

9月18日。キャンパスの時計の鐘がゴーンゴーンと鳴る中、目を覚ました女子大生のツリー。しかし、この部屋は男子寮であり、目の前にいるのも見知らぬ男子学生。全然記憶にはないがどうやら昨夜のパーティで飲み過ぎて勢いで“アレ”しちゃったのかもしれない。それでも“やれやれ、私”という感じで手慣れた対応をしていくツリーは、どうやらこういうことはよくあるようで。

ただ、今日は自分の誕生日。そのよく知らない男から鎮静剤をもらい、「ナンパ成功した?」と部屋に入ってきた男を押しのけ、そそくさと外へ。目つきの悪い奴に睨まれ、地球温暖化対策の署名を求める女を無視し、突然のスプリンクラーで慌てる人たちを横目に、寮だかなんかの慣習行為でぶっ倒れる男を見ながら、自分にしつこく好意を寄せてくる男「ティム」をあしらい、手を振ってくるアジア系女をスルーし、女子寮へ帰宅。やたらとうるさい寮長の「ダニエル」の小言を聞きながら、部屋に戻るとルームメイトの「ロリ」が手作りカップケーキをもらうも捨てる。

寮のチャリティを熱弁するダニエルの話をみんなで聞いていると、隣に食事を持ってきて座ったベッキーが叱られます。しかし、「ベッキー」が立ち上がった瞬間に、例の朝に目覚めた部屋の見知らぬ男子学生と衝突。チョコレートミルクがツリーにかかってしまいます。

そして講義に向かうツリーは、実はこの教鞭をとる「グレゴリー教授」とは不倫関係。職場の病院内でもこっそり逢い、単位を恵んでもらう代わりに、自分を差し出すことに抵抗感はゼロ。

そうこうしていると、夜に。一瞬停電する事態も気にすることなく、今夜のパーティに張り切るダニエルも見下しながら、外へ出るツリー。しかし、自分を見つめるベビーマスクをつけた人間がいることには気づきません。そして、トンネルの前に差し掛かると、そこにオルゴールがいかにも怪しい感じで置いてあるのを発見。ドッキリだと思い、周りに声をかけるも、あたりは静か。恐る恐るオルゴールに近づくと、背後に例のベビーマスク人間がひとり。「何か用? 警察、呼ぶよ」と言い放つといなくなりますが、ツリーも立ち去ると、またオルゴールが鳴りだし、上からベビーマスク人間が降りてくる。必死に逃げるも、頭を掴まれ、ナイフが光り、そして…。

9月18日。キャンパスの時計の鐘がゴーンゴーンと鳴る中、目を覚ました女子大生のツリー。しかし、この部屋は男子寮であり、目の前にいるのも見知らぬ男子学生。あれ、デジャブ…。

外へ出ると、そこには見覚えのある光景。目つきの悪い奴、署名を求める女、突然のスプリンクラー、ぶっ倒れる男、ティム、手を振ってくる女…。

夜、外へ出歩くと、やはりそこにはオルゴール。危険を察知し、寮に戻ると自分の誕生日のサプライズパーティが開催されていました。しかし、ここでもツリーがある部屋にいると、後ろからベビーマスク人間が接近。ツリーは殺されます。そして…。

9月18日。キャンパスの時計の鐘がゴーンゴー…いや、もうこれは確実にタイムループしている。そう痛感したツリーはこの異常事態にパニックを起こしながら、奮闘していくのでした。

ハッピー・デス・デイ

純情ビッチは理不尽に怒る

『ハッピー・デス・デイ』は、死のタイムループ系SFという設定自体は手垢のついた腐るほどよく見たジャンルですが、本作をフレッシュにしている斬新なポイントは主人公が「ビッチ」だということです。

そもそもこの手の“殺人鬼が人を殺しまくる”「スラッシャー映画」のお約束として、生き残るのは“童貞”か“処女”であり、真っ先に死ぬのはすぐにセックスするような“リア充(ビッチ)”という暗黙のルールがあります。

だから一般的に死のタイムループ系SFで若者主人公だと、その性格も真面目で純真な設定にしがちです(例えば『ビフォア・アイ・フォール』とか)。
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『ハッピー・デス・デイ』の場合はその逆をやっているというか、それを逆手にとってメタ的に扱っているんですね。作中でツリーが殺されるのは最終的な真相にあるように“ある人”に憎まれているからなのですが、ぞんざいに言ってしまえば“ビッチ”だからです。

作中でタイムループから抜け出さずに追い込まれたツリーが、朝にそばにいるカーターに相談して、とりあえず自分に恨みを持つ身近な人の「容疑者候補リスト」を作るくだり。“ビッチ”な日々の言動ゆえに容疑者候補がいっぱいいるのが笑っちゃいます。

“ビッチ”=死ぬキャラ。スラッシャー映画において、殺されるのが普通の扱いだった“ビッチ”。その“ビッチ”そのものをまさに体現するツリーが、“確かに私はビッチだけど、だからって何で死ななければいけないんだ!”と自暴自棄半分な怒りをぶつける…本作はそんな映画です。

その結果見えてくるのは、みんなが“ビッチ”、“ビッチ”と馬鹿にする存在でも、実は結構悩みを抱えているんですよという裏の顔。当たり前と言われればそのとおりなのですが、ツリーだってひとりの若者です。家族との確執もあったりするし、その他の人間関係でも迷うこともある。あと、ことおバカキャラのように扱われがちな“ビッチ”ですが、作中ではツリーは殺人鬼に対抗するために真っ先に籠城したり、正体が判明したときの戦略だったり、かなり賢い側面が発揮されるのも痛快です。また、車で逃走ができた際に警察に呼び止められたとき、別に異常事態なのだから無視して逃げればいいのに、律儀に停車するあたり、真面目ですよね(「逮捕してください!」がなんとも…)。

ツリーはあれです、“純情ビッチ”です。

このヤケクソ感はちょっとサム・ライミ監督の『スペル』の女主人公を思い出しもするような…。

“リア充だって悩んでいる”という作品の根底にあるテーマ性が、図らずとも同時期公開の湯浅政明監督のアニメ映画『きみと、波にのれたら』と被っているのがなんかシュール(180度ジャンルは違いますけど)。

物語の主軸は、作中でも言及がありましたがハロルド・ライミス監督の『恋はデジャ・ブ』(1993年)というタイムループ系SFの定番作と同じ。人間的にダメな主人公がタイムループを経験して少しずつ自分を改め直していく…。タイムループって教育的効果があるんだなぁ…。

まだまだ戦いは終わらない

『ハッピー・デス・デイ』はツリーの“ビッチ”部分のギャグもユーモア満載で楽しいのですが、大学が舞台のキャンパス・ムービーらしい全体的な気の抜けた感じがまた良いですね。

バースデーパーティの最中、ツリーを部屋に誘い、派手演出で踊りだすニックが、爆音で気づかずスマホに夢中のツリーの背後で、ベビーマスクにあっさり殺されるくだりの、言葉にできない“アホ大学生”感。やっぱりアメリカ人って、大学生の時が一番アホなんじゃないか…(日本もか…)。

そういう気の抜けたところも散見されながら、ツリーの予想外のダイナミックなアクションも見られて良い緩急になっています。あの黒幕をあのアクション俳優並みのキックでオーバーに殺すのはスカッとしますしね。

問題の殺人の黒幕がロリだったというオチですが、正直、消去法で考えるとバレバレなのは確かに否めません。でもちゃんとマナーとして序盤ですでに“コイツが犯人です”というフラグを用意していたので、しっかりしていました。序盤、不倫関係のグレゴリー教授に会いに行くくだりでロリに出会った際、「深刻な結果を招く」と忠告されるのがまさにそれ。また、車大爆発シーンでベビーマスクがロリの作るカップケーキと同じロウソクを使用して引火させているのも、決定的なヒントになっています。

ちなみにエンディングはこれ以外のものを考えていたようで、全てが解決した後にグレゴリー教授の妻がツリーを殺す案もあったけど、不評だったので変更したとか…。まあ、それだとタイムループで防ぎようのない死なので、やらない方が良かったと私も思いますが…。

そして本作、好評なこともあってすでに続編がアメリカでは公開済み。さらに日本では一作目から時間をそれほどあけず、その第2弾の『ハッピー・デス・デイ 2U』が公開されます。

頑張れ、“ビッチ”の代表「ツリー」。“ビッチ”に対する偏見はまだまだ立ちはだかっているぞ(そういう戦いだっけ)。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 72% Audience 66%
IMDb
6.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

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↑『恋はデジャ・ブ 』…タイムループ系SFの代表作なので観ていない人はぜひ。
作品ポスター・画像 (C)Universal Pictures