メン・イン・ブラック インターナショナル
映画『メン・イン・ブラック インターナショナル』(メンインブラック4)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Men in Black International 
製作国:アメリカ(2019年)
日本公開日:2019年6月14日
監督:F・ゲイリー・グレイ

メン・イン・ブラック インターナショナル

あらすじ

ニューヨークに本部を置く秘密機関「メン・イン・ブラック(MIB)」。ブラックスーツとサングラスに身を包んだ所属エージェントは、地球にいるエイリアンを監視し、取り締まっている。新人エージェントMはロンドン支部に派遣される。エージェントHとチームを組んで世界各地で捜査を開始する中、ある疑惑に対処することになり…。

ネタバレなし感想

ブラックな奴らが帰ってきた

世の中にはいろいろな怪しい噂が無数にあります。

東京の皇居周辺で頻繁に目撃されたドローンは、実は小型の宇宙船で、新元号の記念式典に参加しに来た宇宙からの来賓だとか。北海道の町々に出没するヒグマは、ロシアが密かに開発している強化人間が変身した姿で、スパイ活動をしているとか。

ま、全部、私が今、思いついたことなんですけどね。

でもこういう都市伝説の類は本当に大昔からあって、今も陰謀論があれこれフェイクニュース化したりして新しい火種になったりしていますけど、人間の都市伝説に熱中してしまう心理は変わらないのでしょうね。

そんな有名な都市伝説の中でもUFO絡みのものとして1950年代あたりからまことしやかに噂されている存在がありました。それが「Men in Black」です。UFOや宇宙人を目撃した人の前にどこからともなく現れる黒づくめのスーツ&サングラスの男たちのことで、口外すれば大変なことになるぞと脅迫的圧力をかけて立ち去る…怪しい組織。その話はアメリカ各地で報告され、実際に見たという証言もあります。なんでそんな目立つ格好で現れるんだ…とか、そういうツッコミはなしで。

しかし、今はこの都市伝説はあまり機能していないです。なにせ「Men in Black」といえば映画の『メン・イン・ブラック』を誰しも真っ先に連想しますから。1997年に公開されたSFコメディ映画である『メン・イン・ブラック』はその名のとおりあの都市伝説を元ネタに本当に実在したらという設定で世界観を構築した作品(原作はコミック)。日本を含む世界中でヒットし、主演の“トミー・リー・ジョーンズ”と“ウィル・スミス”のコンビもさらに人気をヒートアップさせました。この映画はシリーズ化し、2002年に『メン・イン・ブラック2』、2012年に『メン・イン・ブラック3』と、少し時間をあけながら3作も作られ、観客を楽しませました。私もこういう“都市伝説は本当だったよ”系の映画が好きなので、とても気軽にエンジョイできて好きです。

そんな『メン・イン・ブラック』シリーズが2019年、ついに4作目の誕生を迎えました。しかも、今回は、あの過去作のコンビから主役は一新し、新コンビのもとでスタートする、リニューアルな続編です。それが本作『メン・イン・ブラック インターナショナル』

主演を演じるのは“クリス・ヘムズワース”“テッサ・トンプソン”。映画ファンならピンとくるとおり、『マイティ・ソー バトルロイヤル』でも息の合った共演をしている二人です(こちらの映画では宇宙人なのに、今作では宇宙人を倒す役というのもシュール)。

“クリス・ヘムズワース”はもともとムキムキマッチョイケメンみたいなキャラをやりがちな典型的な男優という感じでしたが、近年、リブート版『ゴーストバスターズ』あたりから急速にコメディセンスを開花。たぶんこっちの方が性に合っているのでしょうね。『アベンジャーズ エンドゲーム』でも度肝を抜くキャライメージ崩壊をみせ、ノリノリで楽しんでいる姿が印象的。『メン・イン・ブラック インターナショナル』でもそのマスキュリニティ(男らしさ)を自虐する“お笑い”の方向性で暴れまくっています。
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“テッサ・トンプソン”は近年になって大作出演を増やし、一気に目立ち始めた期待の女優。私は2014年の『ディア・ホワイト・ピープル』で彼女の素晴らしさに惚れ惚れしましたが、その後に『クリード』シリーズやMCUでのキャリアアップも見られて、とても大満足。俳優業だけでなく、女性orマイノリティのリーダーとして大きく若者たちを引っ張っていってくれるパワーのある人です。『メン・イン・ブラック インターナショナル』では“テッサ・トンプソン”らしいパワフルなキャラを熱演しています。
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監督は『ストレイト・アウタ・コンプトン』の“F・ゲイリー・グレイ”で、『ワイルド・スピード ICE BREAK 』に続いてまたもやブロックバスター作品でメガホンをとることに。堅実な起用といった感じでしょうか。

『メン・イン・ブラック インターナショナル』はシリーズ4作目なのですが、さすがに期間もあいたし、キャラもチェンジするためか、予算は前作3作目の半分程度と、そこまで挑戦しない企画になっているんですね。それを証明するように、本作の配給は過去作と同じくソニーなのですけど、本作公開から2週間後に『スパイダーマン ファー・フロム・ホーム』を控えており、どう考えてもこっちが本命。まあ、探り探りなシリーズ再始動といった狙いなのか。ぷち炎上気味の吹き替え&宣伝もそういう自信の微妙さゆえかもしれない…。

基本は過去作を鑑賞しておく必要もないので、これが初見という人でも問題なくオススメできるポップコーン・ムービーです。

おすすめ PiCKUP!
↑『メン・イン・ブラック』…シリーズ第1作。
オススメ度のチェック
ひとり◯(シリーズ初見でもOK)
友人◯(気軽に観られるエンタメ)
恋人◯(女性も親しみやすい)
キッズ◯(子どもでも楽しめる)

予告動画






↓ここからネタバレが含まれます↓





ネタバレあり感想

とりあえずエイリアンを倒す

冒頭、いつものシリーズおなじみのあのフォントで開幕。ファンには嬉しい演出ですね。ちなみにこのフォントは過去3作の監督である“バリー・ソネンフェルド”のデビュー作『アダムス・ファミリー』のオープニング・フォントから受け継がれているものです。

こんな風に『メン・イン・ブラック インターナショナル』では、恒例のシリーズ要素をしっかり抜け目なく入れ込んでいるので、ファンの“ここは欲しいよね”という需要にはきっちり答えています。

例えば、MIBが対エイリアン用に装備している「スペースガン」。基本、不必要なまでにオーバーパワーで撃たれた相手の体が体液をまき散らしながら木っ端みじんになるという、ゲーム感覚なバトルスタイルがこのシリーズのお決まり。今作では、車のサイドミラーやホイールからスペースガンがガシャンガシャン飛び出して、子どもが喜びそうな仕掛けがいっぱい。明らかにゴジラでも倒せそうな破壊力抜群のビックなスペースガンも登場し、いよいよ宇宙戦争でもやればいいのではという感じになってきました。エイリアンとの融和を真剣に日夜考える『スター・トレック』とかを嘲笑うかのような“とりあえずぶっ倒す”精神。これぞ『メン・イン・ブラック』。

メカといえば乗り物も今作はバラエティがあって、ハイパードライブ搭載の電車とか、タイトルどおりグローバルなスケールになった舞台に合わせての変化もあり。ここまでくるとセダンの車に乗る理由もほぼなくなってくるのですけど、まあ、いいか。というか、今作は車が普通にカッコいいのは、さすがにダサいのあれかと思ったのか。

このシリーズはこういう大人なのにやっていることは子どもっぽさ満載という部分が大事ですよね。

世界観ルールの説明も最初のシークエンスで済ませてしまうのも手際が良いです。二人組で行動する黒ファッションのスーツ人間がいて、超常現象的なものを見てしまった一般人を「ニューラライザー」という光を放つ装置で記憶を消して、敵対的なエイリアンと戦う。これが基礎。冒頭パートであらゆる観客に説明しきって、あとはお楽しみください的なノリ。

また、過去作を通して、悪役が最初に登場しているのも実はシリーズのお約束(1作目は少しプロローグ的導入があるので登場が遅いけど)。悪役の暗躍と主人公の活躍がどこでどう絡むのか、観客はハラハラしながら楽しめます。本作でも実はスパイだったエイリアンの扮するハイTが最初にちゃんと登場しています。まあ、今回は黒幕を隠しているので、そこに謎解き感があるのですが。でもハイTを演じるのが“リーアム・ニーソン”であるという時点で、あからさまに悪者感が漂ってサスペンスにならないじゃないかとは思いましたけど。だいたい組織のトップは悪役なんですよ。とくにロンドンは(偏見)。

パグのフランクとか、定番のエイリアンも出てきますし(予算の都合なのか、数自体は過去作以上に多くはない気もしますが)、最低限の『メン・イン・ブラック』らしさを満たしているのではないでしょうか。

バディ映画としては…

一方で、新しさの部分では個人的に不満点は多いのも正直な気持ち。

まず本作の大事な要である主役のバディ。確かに“クリス・ヘムズワース”と“テッサ・トンプソン”を組ませる狙いはわかる。強そうに見えてダメダメな男と、きっちり仕事をこなす新米の女。対比も用意されているのも理解できる。スーツ姿もめちゃくちゃカッコいい。

でも過去3作のあのバディに匹敵するかというと、う~ん。

何がダメなのかと考えると、やっぱり凸凹感が乏しいからなのかなと。

過去3作では、“ウィル・スミス”演じる新米のエージェントJはもともと学のないチャラチャラしたやつで、それが意外にエリートやベテラン以上に根性で活躍していくという姿が面白さの源。これだけだといつもの“ウィル・スミス”ギャグ映画になっちゃうのですが、それに“トミー・リー・ジョーンズ”演じるエージェントKという古風なくらいのベテランを加えることで絶妙な化学反応を起こすんですね。コミカルなペアとしても完璧で、ボケとツッコミがしょっちゅう入れ替わったり、とにかく観ていて飽きません。

対する『メン・イン・ブラック インターナショナル』の“クリス・ヘムズワース”演じるエージェントHと“テッサ・トンプソン”演じるエージェントMは、役割が完全に固定化していて、予定調和で収まるのであんまり面白くはないです。とくにエージェントMが優秀すぎるあまりに、笑いになる欠点が少ないのももったいないポイント。

いや、“女性が普通にエージェントである”という部分でのフェミニズム性を推すかもしれませんが、正直、本作はその点でも表面的すぎる面もあるかなと。そもそも女性エージェントの誕生譚としては、私は1作目の『メン・イン・ブラック』でしっかり描けていたと思うのです。死体解剖を専門する検死官の女性が仕事に不満を抱えている中、MIBに出会っては最後はエージェントになるという、“メン”・イン・ブラックだけど“ウーマン”でもOKなんだというオチ。これでじゅうぶんですよ。まあ、この1作目でMIB入りしたエージェントLは2作目で早々に引退したことがわかるのですが…。

また、個人的な残念ポイントは、理系の描き方ですね。エージェントMことモーリーは、メカに詳しくプログラムも作れる、いわゆる理系女子なわけですが、本当に何でもできるのですよね。

これに関しては私はたびたび文句を言っているのですけど、“理系キャラをチートキャラみたいに描いてほしくない”のです。確かによく理系の人は専門分野について“100%できて当然でしょ?”みたいな目で見られがちなのですけど、実際はそうじゃない。むしろその裏にはおびただしいほどの試行錯誤(トライ&エラー)があるんです。そこを描かないと中身で真実味のある理系キャラにはならないはずだと。その描写を怠ると、ただの都合のいいドラえもんですからね。エージェントMにももっとリアルな理系的な描写がふんだんに欲しかったですね。

あと、すごいどうでもいい話ですが、エージェントMというコードネーム、2作目の時にゲスト出演の“マイケル・ジャクソン”に与えられるやつでしたよね(厳密にはMIBに入りたがっている“マイケル・ジャクソン”がそのコードネームを所望しているシーンがある)。やっぱりMIBには入れなかったんだなぁ…あの人。

メン・イン・ブラック インターナショナル

今さらインターナショナル

キャラだけではない、まだまだ不満はあって、4作目というシリーズの積み重ねがあるわりには世界観が狭いんじゃないかと。

今回は「インターナショナル」というタイトルどおり、世界各地を舞台にします。それはわかるのですけど、このシリーズでそれをやっても…。そもそも宇宙人と相手する作品ですよ。理想的なことを言うなら、こうであってほしかったです。

「今回はインターナショナルに活動するぞ」
「え、つまり海外に行くの? ヨーロッパとか?」
「あ? 何言っているんだ、土星だ」

これくらいのやりとりは必要だし、他の惑星に行ってほしかったなぁ。3作目の時点で月にある刑務所が登場しているのだから、全然ありだと思います。

ストーリー面でいうと、シリーズが常に意識してきたワンダーな体験というSF定番部分も乏しいかな。なにせ元ネタは都市伝説ですから、“そんなことあるのか!”くらいの驚きをあえて平然と見せるのが大事なのですけど、あまりその仕掛けは作らなかったのか。本当はイマドキらしい都市伝説とかもガンガン組み込んでほしかったのですけどね。ラストには、毎度定番の“人間って実はちっぽけな生き物だよ”という知らない世界がまだまだあるというオチも欲しかったですし。

人がそこまで残酷に死なないあたりも、本作の悪趣味度合いを大きく減退させていて、困りどころ。『ヴェノム』といい最近のソニーは残酷なことを描いてはいけない縛りでもあるのか。

全体的に普通の大味SFアクション映画になったなという印象を強く持った人も多いのじゃないでしょうか。本作の脚本をつとめた“アート・マーカム”と“マット・ホロウェイ”は『トランスフォーマー 最後の騎士王』の脚本家でもあって、なんかこう、納得ですよ(多くは語らない)。
『トランスフォーマー 最後の騎士王』感想(ネタバレ)…シリーズ第5作は暴走中
『メン・イン・ブラック』はもともと“バリー・ソネンフェルド”の作家性が色濃く、そこに“スティーヴン・スピルバーグ”のファミリー映画ナイズもトッピングされ、加えて『ビルとテッド』シリーズでおなじみの“エド・ソロモン”のふざけたユーモア漫才のシナリオがあって…そういう完成されたバランス感覚の上に成り立つ映画だったんだなとあたらめて痛感します。

シリーズを他人が引き継ぐって難しいんだなと思うしだい。続編、作る気があるのかな?

突然ですけど、私、ニューラライザーが欲しいんですよね。なぜって、最高の映画体験をした時、記憶を消去して、また新鮮な気持ちでその映画を楽しめるじゃないですか。逆にすごくつまらない映画を観た時も、その退屈なガッカリ感を忘れることができますし…。映画ファンには待望のアイテムです。

はい、では皆さん、今から視力検査をしますよ。ここにあるコレを見てください。

いいですか? 

…ピカッ

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 25% Audience 71%
IMDb
5.5 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 3/10 ★★★

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