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『オールド・ガード』感想(ネタバレ)…Netflix;シャーリーズ・セロンはまだ強くなるの!?

オールド・ガード

シャーリーズ・セロンはまだ強くなる!…Netflix映画『オールド・ガード』の感想です。前半パートはネタバレなし、後半パートからネタバレありの構成です。

原題:The Old Guard
製作国:アメリカ(2020年)
日本では劇場未公開:2020年にNetflixで配信
監督:ジーナ・プリンス=バイスウッド
恋愛描写

オールド・ガード

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オールド・ガード

『オールド・ガード』あらすじ

何世紀にも渡り、秘密裏に人類を守り続けてきた謎の特殊部隊。そのメンバーたちは“永遠の命”を持つ不死身の傭兵たちであり、彼らを率いるのは女性兵士アンディ。ある日、緊急任務のために召集された彼らの能力が何者かによって暴かれ、その能力を複製しようと企む謎の組織から狙われることになっていく。絶体絶命のピンチの中、運命は新たな仲間ナイルに託されていく。

『オールド・ガード』感想(ネタバレなし)

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忙しすぎる不死身の女

あるときは元娼婦の連続殺人犯、あるときはセクハラに立ち向かう炭鉱労働者、あるときは反政府の革命戦士、あるときは邪悪な女王、あるときはバツイチこじらせ女、あるときは精神を消耗していく母、あるときは権力者から女性を守るために立ち上がり、あるときは迷える子どもを猿として支え、あるときはアホなノリで国際問題を解決する…。

そう、その人とは…我らが姉御、“シャーリーズ・セロン”です。

南アフリカ共和国出身の女優ですが、今やハリウッドで最も多才に活躍する女性プロデューサーにもなり、どんどん映画を世に送り出しています。最近も『スキャンダル』のような社会派ドラマから、『ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋』のような下ネタありのロマコメまで、本当にギャップの激しいバラエティ豊かなフィールドを行ったり来たり。

すっごい忙しいと思うのですけど、どうやって人生のスケジュールを組み立てているのか…。しかも、2児の母ですからね。“シャーリーズ・セロン”って3人くらい存在しているんじゃないか…。

そんなバイタリティー溢れる“シャーリーズ・セロン”が『アトミック・ブロンド』(2017年)以来、またもアクション主演の座に戻ってきました

それが本作『オールド・ガード』です。

しかも今回の“シャーリーズ・セロン”はひと味違います。なんとデッカイ斧を軽々と振り回して戦うのです。さらに不死身です。繰り返します。不死身です。

え、“シャーリーズ・セロン”を不死身にするなんてオーバースペックすぎやしないか…これ以上、強くしてどうするんだよ…と私も思ったのですが、姐さんの進化に天井はないのです。そっかぁ、デッドプールになっちゃったか…。

『オールド・ガード』はグラフィックノベルの映画化で、“グレッグ・ ルッカ”というライターが生み出しました。彼はアメコミなどを手がけ、アイズナー賞にも幾度と輝いている著名人。本作の映画化の際は脚本も担当し、原作者の直接関与なシナリオが用意されています。

世界観は私たちと同じ現代社会ですが、主人公たちは「オールド・ガード」という不死身の体で大昔から存在してきた特殊な部隊。これまで数多の歴史的事件にも関わってきたどの主人公たちが、大きな陰謀に巻き込まれていくという、想像の10倍くらいはスケールの大きい物語です。

映画製作は『ミッション・インポッシブル』シリーズや『ジェミニマン』、『6アンダーグラウンド』などアクション大作映画を量産している「Skydance」。そして“シャーリーズ・セロン”が設立した映画会社「Denver and Delilah Productions」もガッツリと参加しています。

監督は『リリィ、はちみつ色の秘密』の“ジーナ・プリンス=バイスウッド”。こういうバリバリのアクション映画にタッチするのは初めてだと思いますし、そもそもアクション映画を有色人種の女性が監督すること自体がまだまだ稀ですので、良いキャリアアップになってほしいものです。

俳優陣は主演の“シャーリーズ・セロン”はもちろんとして、第2の主役となっているのが『ビール・ストリートの恋人たち』で素晴らしい名演を披露した“キキ・レイン”。今作は銃をぶっ放す側ですが、カッコいいです。

他にも『君と歩く世界』の“マティアス・スーナールツ”、実写版『アラジン』でジャファーを演じた“マーワン・ケンザリ”、『皆はこう呼んだ、鋼鉄ジーグ』で印象的な悪役を熱演した“ルカ・マリネッリ”、超実写版『ライオン・キング』で悪役スカーを演じた“キウェテル・イジョフォー”など。なんか顔ぶれに悪役経験者が多いですが、気のせいだろうか、それとも狙っているのだろうか…。

個人的には『スター・ウォーズ 最後のジェダイ』や『ハイ・フォン:ママは元ギャング』でおなじみの“ベロニカ・グゥ”(本名は“ゴー・タイン・バン”)もちょこっと登場し、それでも美味しい役どころなのが嬉しいです。

俳優ファンにせよアクション映画好きにせよ、とりあえず見ておくにこしたことはない一作ではないでしょうか。

『オールド・ガード』はNetflixオリジナル作品として2020年7月10日から配信中です。

オススメ度のチェック

ひとり ◯(俳優ファンは要注目)
友人 ◯(気軽にエンタメ満喫)
恋人 ◯(暇つぶし鑑賞で)
キッズ ◯(直接的な残酷描写は少なめ)
↓ここからネタバレが含まれます↓

『オールド・ガード』感想(ネタバレあり)

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死なない人生にようこそ

モロッコの土色の多い街の路地を歩くサングラス女性。彼女の名はアンディ。そこにバイク男がやってきて、お土産だと本を渡してきます。知り合いのようです。そして、南スーダンの誘拐事件の案件を話題にし、アンディは「同じ人からの依頼は受けない約束なのに…」とボヤきつつも、ある場所に向かいます。

途中、そばで自撮りを撮っている観光客の一団がおり、自分も背景に写り込んでしまっている状態でした。アンディは「撮りましょうか」といかにも親切そうに相手のスマホを受け取り、自分の写った写真をこっそり削除してから、撮影をしてあげました。

アジトのような部屋にたどり着き、仲間らしき男たちと合流。アンディ、ブッカー、ニッキー、ジョーの合わせて4人。ニッキーはアンディにバクラヴァ(デザートの一種で、中央アジアや地中海地域で人気のあるペイストリーのこと)をプレゼント。アンディはそれを食べて、食材をあてていき、どこの地域のものかも推測。それで賭けをして盛り上がる一同。どうやらいつもの恒例のようです。

メンツが揃った後、陰惨な事件のニュースを見たことで「全然救えていない」と自分を悔やむアンディは、とりあえずその例の仕事依頼の話を聞きに行くことにします。

市場にてブッカーが紹介してくれたのはコプリーという男。CIAを辞めて今はフリーらしく、妻は病で2年前に死んだそうで、南スーダンの児童誘拐の一件を説明してきます。なんでもアメリカ政府は動けないのでCIAからの極秘の依頼として回ってきたとか。金額は言い値で払うと言われ、アンディは「終わったら請求する」と言い放ち、仕事に旅立ちます。

4人チームでヘリで向かったのは南スーダンの大地。夜、敵の拠点にて行動開始。スナイパーで見張りを倒し、侵入。慣れた手つきで敵を静かに的確に仕留めていき、チームプレイにも無駄なし。ドアを爆破し、住居に突入。捕らわれているはずの子どもたちを探しますが、影も形もありません

すると突然部屋が明るくなり、銃撃でハチの巣にされる4人。血まみれで無残に倒れて即死します。

「敵は全滅」と撃ってきた相手は確認。しかし、4人はもぞもぞ動き出し、起き上がりました。まるで蘇ったかのように…。

そして困惑する敵をどんどん倒していきます。アンディは独特の形の斧でなぎ倒し、一気に壊滅。子どもなんて最初からいなかったことは明白で、罠でした。痕跡を消すために持ち物を埋める4人。「私たちの秘密を知られてしまった」と動揺し、コプリーを見つけるべく次の行動に出ます。

その頃、監視カメラで現地の映像を確認するコプリー。横には今と同じ年齢に見える4人が写った写真。その日付は「1864年6月」となっており…。

一方、全く異なる場所、アフガニスタン。若い女性である海兵隊のナイル・フリーマン。命令を受けて捜索する敵の情報を集めるべく、地元の女性たちに話を聞きに行きます。男を探していると写真を見せますが、女性たちは一様に口を閉ざします。すると布に隠れたドアを発見。中にいた男を反射的に撃ちますが、反撃を受け、ナイフで首に切り裂かれ倒れます。

普通であれば即死。ここで戦死して人生は終わったはず。なのにナイルは医療テントで目覚めるのでした。何がどうなっているのか…。

それと同時刻、列車に揺られて移動していたアンディたち4人は、ナイルの存在を感知していました。「もうひとり増えた」と呟き、すぐさま4人で得た情報を交換し合います。「200年も現れなかったのに」と混乱しつつも、その同じ境遇の存在を探すが、裏切ったコプリーを探すか揉めていると、アンディがひとりで出現した存在を見つけに行くことに。

また、ロンドンではメリックという製薬企業のCEOスティーブン・メリックがコザック博士とともに人類の寿命を伸ばす研究のプレゼンテーションをしていました。そこにはコプリーもいて、アンディたち不死身の存在を捕らえようとしているらしく、捕まろと急かします。

ナイルはドイツで精密検査を受けろと命令され、仲間からも疎外。孤独に落ち着かないまま音楽を聴くしかありません。そこへアンディは不意に出現。問答無用で気絶させられ、目覚めると荒れ地を走る車の中。隙を見て逃げだしますが、アンディは背を向けて逃げる彼女を容赦なく射撃。頭部に命中したので即死…のはずが、生き返るナイル。

「こんなの現実じゃない」「あなたは死ねないの」

すでに引き返せない運命が始まっていました。不死身の者たちが辿ってきた歴史が語られます。

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死なないのはそれはそれで怖い

たいていの人がまずこの『オールド・ガード』に期待するのはアクションです。

不死身アクションと言えば『デッドプール』など先行事例はありますが、今作ではそんなおふざけ要素はなく、割とシリアスな世界観になっています。「何やってもどうせ蘇るから平気だもんね~」とはいきません。

この不死身をあえて制約にしているあたりが本作の上手いところだと思います。私も鑑賞前は「不死身だと何でもありでアクションに生きるか死ぬかの緊張感がなくなるのでは?」と心配していましたが、そこは全然問題ありませんでした。

最年長のアンディと盟友だったクインとの壮絶な別れ、そしてクインが経験する生き地獄の溺死ループという衝撃の映像を見せつけられます。これによって「死なないのはそれはそれで怖い」ということを観客に植え付け、捕まったらヤバいと認識させてきます。

で、その後にニッキーとジョーが拘束されてしまうので危機感もたっぷり。ここで披露されるアンディのひとり乱戦。本作は銃でも格闘でもなく、斧という持ち武器があって、それで豪快に相手を倒していくという、どこぞのゲームみたいなコンバットスタイルです。使っている斧のデザインは原作の絵そのまま。

その前にナイルと個人レッスンのようにタイマンするシーンがあり、本作は徐々にアクションを積み重ねて見せていく構成が丁寧でいいですね。ここのナイルもなかなかに良い勝負を見せているのがまたたまらなくクールで、後半への期待を高めてくれます。

そして、後半になるとアンディの不死能力が消えてしまったため、みんなでアンディをかばいながらの戦闘になっていくという、まさかのチーム防衛。まあ、“シャーリーズ・セロン”はこれまでの映画では不死身でなくともやたら強かったので、なんか弱いフリをしているみたいに思わなくもないですが、サスペンスとしては面白いです。

最後は不死身だからできるオーバーキルなアタックで敵の親玉を粉砕。気持ちのいい爽快感。それにしても今作の敵、小物だったなぁ…。

多少の気になる点はありましたが(例えば不死身の設定について、どこまでの傷なら修復するのか…とか)、突拍子もなさすぎず、かといって地味すぎもしない、最適なバランスに収まっている映画だった気がします。

最近はこういうファンタジー要素の強いアクションはアメコミ映画のせいで派手な映像ばかりを見飽きるほどに眺めてきたので、逆に『オールド・ガード』は新鮮にすら見えてきますね。

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不死は孤独の恐怖に勝てない

『オールド・ガード』は単なるアクション特化型の作品でもなく、壮大な(いや本当にとんでもなく)世界観を内包しつつ、それを全部見せるのではなく、チラ見せしていく感じで徐々にわかっていくのも面白いです。

アンディ率いる組織のメンバーは時代時代ごとに活躍してきたことがわかります。十字軍がどうとか、コプリーが収集した記事によれば長崎と広島の原爆投下に続く第3の投下を止めたことにもなっています。歴史を正しくしようと貢献してきたことについては、それでも犠牲が出ているじゃないかとどうしても思ってしまうので、安易にアンディたちを肯定はできませんけど、設定の掘りがいがあっていいですよね。

アンディの本名は「アンドロマケ」というらしく、これはギリシア神話に登場する女性です。祈りを捧げるナイルに「神はいない。私も信仰されたことがある」と発言していましたし、アンディは正真正銘のこのアンドロマケ本人なのかもしれません。

そんな神に近いアンディがやっているのは人類の導き…というよりは結局は不死という状態が生み出す孤独への対処なのか。そう思わせるようなテーマが本作には多数盛り込まれています。アンディはやっと出会えた同種の不死能力を持つクインを裏切ってしまい、後悔に苛まれます。一方で、ニッキーとジョーは同性愛として親密さを支えにしており、それのおかげで孤独にならずに済んでいます。しかし、割と最近に不死になった(1812年だけど)ブッカーはその孤立の恐怖に耐えられずに、仲間を裏切るという失敗をしてしまいます。
不死と言えども孤独という恐怖には勝てない。でも家族はたとえ血がつながっていなくともいくらでも作れるのだから助け合っていこう…それは不死身の能力よりも強くて貴重な武器。そんな力強いメッセージ。

それは実際に養子を育てている“シャーリーズ・セロン”と、養子として育った“ジーナ・プリンス=バイスウッド”監督だからこそ説得力を持って描けるテーマなんじゃないでしょうか。こうやって考えるとこの二人は抜群の組み合わせですね。

そこにナイルという次世代が現れて継承する。これもリアルでの“シャーリーズ・セロン”の世代交代を感じさせるエピソード展開です(まあ、でも“シャーリーズ・セロン”はまだまだ現役ですけどね)。

いかにも続編がありそうな展開でエンディングを迎え、そもそもプロローグにすぎないような内容だった本作。原作はまだありますし、映画でもドラマシリーズでも何でもいいので続きが見たいものです。繰り返しますけど、私はクインを演じた“ベロニカ・グゥ”の闘志を拝みたいので(待ちきれない人は『ハイ・フォン:ママは元ギャング』を今すぐ見るんだ! Netflixにあるぞ!)。

“シャーリーズ・セロン”は不死身軍団を仲間にしたので、これでジョン・ウィックは不利になりましたね(なぜか戦わす前提)。

『オールド・ガード』
ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 79% Audience 75%
IMDb
6.8 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 6/10 ★★★★★★
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関連作品紹介

シャーリーズ・セロン主演の映画の感想記事の一覧です。

・『アトミック・ブロンド』

・『タリーと私の秘密の時間』

・『スキャンダル』

作品ポスター・画像 (C)Skydance Media, Netflix オールドガード

以上、『オールド・ガード』の感想でした。

The Old Guard (2020) [Japanese Review] 『オールド・ガード』考察・評価レビュー