ひつじのショーン UFOフィーバー
映画『ひつじのショーン UFOフィーバー!』(ひつじのショーン2)の感想&考察です。前半はネタバレなし、後半からネタバレありとなっています。

原題:Shaun the Sheep Movie: Farmageddon
製作国:イギリス(2019年)
日本公開日:2019年12月13日
監督:リチャード・フェラン、ウィル・ベッカー

ひつじのショーン UFOフィーバー!

あらすじ

イギリスの片田舎。ある日、突然、UFOがやってきた。田舎町はたちまちUFOフィーバーに沸きあがり、牧場主も宇宙をテーマにしたアミューズメントパークを作って一儲けしようと企む。そのUFOには、物を浮遊させる超能力を持った、ルーラという不思議な生き物が乗っていた。そして、ルーラは牧場で仲間たちとのんびり暮らす羊のショーンの前に現れる。

『ひつじのショーン UFOフィーバー!』感想(ネタバレなし)

眠らせはしない大騒ぎを起こす羊

羊が1匹、羊が2匹…。

眠れないからといってバカ正直に羊を数える人は本当に実在するのだろうか…。ちなみにこの寝つけないときに羊を数えていくやりかたは、英語で羊は「sheep」で睡眠は「sleep」だから、その似ている単語に由来するという説があり、言ってみればただの言葉遊びなんですよね。じゃあ、日本人には全然効果もないわけだ…(いや、英語圏の人に効果があることを保証するわけじゃないですけど)。

また、イングランド北部では伝統的な羊の数え方が羊飼いの間で使われてきた歴史があり、「Yan Tan Tethera」と呼ばれるそうです。羊飼いにとって羊のカウントは日常的に必須の行為だったんですね。確かに地味で眠くなる仕事だったのかもしれません。

しかし、今回紹介する映画の羊たちは、人間を眠くさせたりしません。むしろ、ワクワクとハラハラを人生に与えてくれる賑やかな奴らです。そんな眠気も吹き飛ばす羊たちが大活躍する映画が本作『ひつじのショーン UFOフィーバー!』

本作は、知っている人は重々承知だと思いますが、2007年からイギリスで放送されてきた『ひつじのショーン』というショートアニメのシリーズ作のひとつです。もともと『ウォレスとグルミット』という作品群が1982年から存在し、こちらは人間の発明家とそのペットの犬のコンビが主人公でドタバタ劇を繰り広げるアニメーションでした。『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』といった長編映画も作られ、アカデミー賞の長編アニメ賞を受賞するなど高い評価を得ました。その『ウォレスとグルミット』作品群の中の『ウォレスとグルミット 危機一髪!』(1995年)に登場した羊のショーンというキャラクターはいて、このキャラを主人公にしたスピンオフ的派生作が『ひつじのショーン』です。

『ひつじのショーン』では文字どおり羊たちが主人公で、いわゆる人の言葉として理解できるセリフは基本的には出てきません。つまり、ずっと視覚的な動きだけで楽しませようという工夫が張り巡らされています。だから何歳の子どもでも、どこの国の人でもOKという、とんでもなくターゲット層の広い作品なのが特徴。イギリスの国民的アニメですが、世界にも羽ばたいています。

そして忘れてはならないのは本作はストップモーション・アニメであり、クレイアニメであるということ。今は粘土だけで作ってはいないみたいですけど、粘土っぽいデザインなのは変わらず。

製作しているのは「アードマン・アニメーションズ」と呼ばれるイギリスの会社で、“ニック・パーク”といった素晴らしいクリエイターを輩出してきました。私はこのアードマン・アニメーションズのファンで、すっかり夢中になっている人間のひとり。なんか観ているだけでリラックスできる…。日本での知名度は決して高い方ではないにせよ、2018年に公開された『アーリーマン ダグと仲間のキックオフ!』もしっかり堪能しました。

そんなアードマン・アニメーションズ製作の中でも特別に評価も高い『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』の続編となる『ひつじのショーン UFOフィーバー!』が公開されると聞けば、当然寝ている場合ではありません。なんだかんだで12月公開映画の中では一番楽しみな作品でした。

中身はいつもどおり。愛くるしいキャラたちがハチャメチャしているだけです。でもそこがいい。今度は宇宙SF要素ありですから、スケールは上がってさらに突拍子のなさもパワーアップ。イギリスの羊は宇宙だって平気なのです。

なお、原題の「Shaun the Sheep Movie: Farmageddon」。これはもちろん「farm(農場)」「armageddon(アルマゲドン)」と掛け合わせた造語です。「ファーマゲドン!」とかいう邦題にしてくれても良かったのに…。

一応、映画としては2作目ですが、前作を観ておく必要はありません。原則1話完結の物語がルールですから。でも1作目の『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』から観てくれても…いいんですよ(謎のお誘い)。

アメリカではNetflix配給になっているらしいですけど(2020年1月リリース)、日本では2019年内に劇場公開してくれましたからね。この機会をありがたく思ってドンドン鑑賞しちゃってください。

鑑賞前のおすすめ PiCKUP!
↑『ひつじのショーン バック・トゥ・ザ・ホーム』…映画1作目。大都会で大冒険。
オススメ度のチェック
ひとり◯(作品ファンは必見)
友人◯(気軽に見やすい)
恋人◯(気軽に見やすい)
キッズ◎(小さな子でも楽しめる)

予告動画







↓ここからネタバレが含まれます↓





『ひつじのショーン UFOフィーバー!』感想(ネタバレあり)

未知との遭遇 with 羊

モッシンガムの町。おっさんと犬が夜に不思議な光景を目撃します。空から降ってきた“それ”は明らかに人類の知らない未知との遭遇。そう、UFO…宇宙船のような姿形。ひと気のない森にその宇宙船は着陸し(若干の失敗はあり)、出入口らしきものが開き、中から“誰か”が出てきます。パニックになったおっさんと犬は猛然とダッシュで逃走。途中、ポテトを落としますが、名残惜しく逃げるしかなく…。そんな中、宇宙船から降りてきた“誰か”は地面に落ちた食べ物の前にとまり…。

一方、市街から離れた広々とした農場。今日もショーンを中心とする羊たちは、羊としての“らしさ”など知ってか知らずか好き勝手に遊びまくっていました。フリスビーに興じていると、そのフリスビーはダイレクトに牧羊犬のビッツァーの口の中へ。牧場主はぐうたらしてばかりであり、世話を焼かせる羊たちの監視係を全て任せられているビッツァーは激おこわんわん丸。フリスビー禁止の看板を設置し、キツく忠告。

しかし、それで大人しくするショーンたちではありません。今度はトラクターに乗って遊ぶショーン。はい、この羊、乗り物にも乗れるんです。無論、トラクター禁止の看板が一瞬で設置。それでも次はこれ、お次はあれとショーンたちがどんどんハメを外しては、そのたびにビッツァーによる禁止看板も毎度のように増えるばかり。いたちごっこならぬ、ひつじごっこ。

さすがにやりすぎたのか、畜舎に閉じ込められたショーン一同。それでも挫けないショーンは、夜に脱出。牧場主の家に侵入し、パソコンをいじってピザを3つオーダーするのでした。はい、この羊、ネットも使えるんです。

さっそくバイクで届けられたピザ。出来立てのピザをゲットして大喜びなショーンたち(お前ら、草食動物じゃなかったのか)。ところがビッツァーに即効で没収されてしまいます。でも没収されたのは2つだけ。1個は隠しておいたという作戦勝ち。ビッツァーは主人にピザを届けて食べてもらおうと、ショーンたちは自分が食べようと、ピザの入ったケースを開けると…3つとも中身がない

実はピザ屋の近くはあのUFO不時着地点のそば。ピザを運ぶバイクには例の“誰か”も潜んでいたのでしたが、まだこの時はその存在は知られていません。

翌朝、イマイチ納得のいかないショーンは、地面に点々と落ちている不自然なピザの欠片を発見。それをたどっていくと、納屋で“何か”と遭遇。様子を窺うためにピザを投げると宙に浮かんで取られます。姿を見せたのは青っぽい見たこともない生き物。見つめ合うと、「ルーラ」と声を発し、青く光ります。

なお、このルーラ。公式サイトなどでは「女の子」という説明がされていますが、性別があるかもよくわからないので、とりあえずルーラのままでここでは語っていきます。

他の羊のもとへルーラを紹介するショーン。ルーラは声をコピーするのが得意らしく、他の羊たちのマネをして仲良くなっていきます。すると、ルーラはトラクターに興味を持ち、ショーンと一緒に乗ると、耳が青く光ったかと思ったらエンジンが始動。走りだし、ハチャメチャの大騒ぎに。最後はジャンプ台から飛び出して落下。落ちたことに納得いかないルーラの顔。

ビッツァーは自分のせいにされると覚悟しますが、トラクターが走った痕がミステリーサークルになっていることを見た牧場主はびっくりして、あるアイディアを思いつきます。それは「ファーマゲドン」というUFOテーマパークを作ってひと儲けする作戦。こいつ、牧場の仕事、向いてないな…。

ルーラは自分が不時着のすえにここに来たこととその落下地点がピザ屋の近くだと説明。ショーンはルーラをその宇宙船のところまで届けるために同行することに。

こうしてまたもや町に行くことになったショーンですが、それは町に行くでは済まない展開に…。

ひつじのショーン UFOフィーバー

ルーラにみるキャラクター創作の工夫

『ひつじのショーン UFOフィーバー!』は繰り返しになりますけど、いつもどおりの実家の安心感のような居心地の良さが健在。だから、基本は同じこと。ショーンたち羊があれこれし、ビッツァーが収拾しようとする…。今作もそのままなので、新規性みたいなものはないです。というか、そういうのを期待する映画ではないという話ではありますが。

それよりも相も変わらずアクティブすぎる羊たちと一緒に楽しもうじゃないですか。

羊は「sheep」には「臆病者」とか「従う者」というニュアンスもあるのですが、そのイメージとは真逆の言うことを聞かないアグレッシブな羊たちをキャラクター化したことに本作シリーズのアイデンティティがあります。

ただ今回はそこにルーラという、さらに予測のつかないキャラが乱入することで、ショーンすらも振り回される側になっていくという立ち位置の変化も起きます。そこは独特の面白さですね。

とくにそれが一番輝いているのが、スーパーマーケットのパート。すっかり地球の食べ物の虜になってしまったルーラは町に着くなり、吸い寄せられるように食料品の宝庫であるスーパーマーケットへ。なぜかキャンディやらなんやらを食べると超ハイテンションになってしまい、完全に手が付けれず、ショーンも茫然。店内はカオスなことに。映像的なスラップスティックさが最も楽しめるシーンの連続でした。

またルーラのデザインも良いですね。エイリアンとなるとどうしても無機質か気持ちの悪い感じになりがちですが、ちゃんとエイリアンっぽさを残しつつ、この世界観に馴染む愛嬌を全面に出している…このバランス。なんか子犬感があります。これは子どもにも好かれる見た目のキャッチーさ。やっぱりさすがアードマン・アニメーションズ、キャラデザが上手い。

そんな未知の生命体との邂逅。このシリーズはセリフがないので、どうやってコミュニケーションの積み重ねを表現するのかなと思ったら、声マネで押し通していく。この発想もなるほど、と。ちょっと『バンブルビー』に通じるものがあります。あちらも喋れない地球外生命体でしたが、車のオーディオを通して人間とコミュニケーションを行っていってました。二作ともアニメーションによる表情描写と相まって愛おしい掛け合いが表現されていましたね。

宇宙人よりも珍妙ではないですか?

『ひつじのショーン UFOフィーバー!』は前作に引き続き、バレるかバレないかのサスペンスが軸にあります。

ただ前作のように街に行って何事もなく戻ってくるという一本の道筋のある単一ミッションとは違って、この2作目では複数のサスペンスが同時並行的に起こるので、少し複雑化している印象はありますが。

ひとつのサスペンスが、ショーンとルーラが町に行って人間に見つかるか見つからないかのくだり。このパートでは、宇宙人探知省のエージェント・レッドという追っ手がしつこく登場。ただし、その手下である黄色い防護服のハズマッツやキャタピラ・ロボットであるマギンズといい、どこか抜けているのでその捕獲劇は常に予測不可能な騒ぎに展開していきます。基地で初UFO捕獲に湧く一同とか、見ているぶんには可愛いのだけど…。

ちなみに、リアルな話、イギリスには「イギリス宇宙局」という政府組織がウィルトシャーという比較的のどかな場所に設置されています。そこがモチーフになっているのかは謎。たぶん宇宙人探しはしてなさそう…。なお、ミステリー・サークルもイギリス発祥で、「僕たちが作りました」と告白したイギリス人によって一気にブームが冷めたのも有名な話。なので作中のミステリーサークル描写も若干の自虐ネタですね(トラクターで作れてしまっているのですから)。

もうひとつのサスペンスが、モッシーボトムファームでの“ショーンがいないこと”を悟られないようにするという居残り羊たちの作戦パート。まあ、この部分に関してはお約束どおりショーンを模した人形であっさりビッツァーを騙せるのですけど(これは頭に白い羊毛があるのがショーンの特徴であり、それでしか認識していないという、シリーズ恒例のネタです)。

この2つのサスペンスはずっとは続くことはなく、やがて「ルーラ」をいかにして故郷の星に帰すかというハラハラドキドキに集約。建設に従事した羊たちの成果であるテーマパーク(よく作ったなという完成度)が大活躍。

それにしても今作も非常に伏線回収が上手く、序盤でなんとなく登場しただけなのかと思った羊たちのおふざけ行為が全部終盤の展開に活かされていくのは気持ちがいいものです。ラストのオチで、事態をさっぱり呑み込めていない牧場主が宇宙船に紛れ込んで行ってしまうのも、前作の流れと絡む天丼ネタになっていて、良い幕引き。

二足歩行する羊と犬という、エイリアン以上に珍妙な存在がスルーされているという、観客のツッコミポイントがちゃんと用意されているのもお忘れなく。

なお、本作には往年のSF映画のネタが随所に散りばめられています。『2001年宇宙の旅』『エイリアン』『未知との遭遇』『コンタクト』『銀河ヒッチハイク・ガイド』『ウォーリー』などなど。探して見ると楽しいです。

とにかくまたもや心が躍る愉快なアニメーションを作ってくれたアードマン・アニメーションズには感謝しかありません。もう慣れっこになってしまったので驚きも薄くなるのですが、今作もストップモーションで動いているのですからね。どれだけ手間暇をかけたことか。

私も二本足で軽快に街中を歩く羊を見かけたら…そっとしておこう。

ROTTEN TOMATOES
Tomatometer 97% Audience --%
IMDb
7.0 / 10
シネマンドレイクの個人的評価
星 7/10 ★★★★★★★

作品ポスター・画像 (C)2019 Aardman Animations Ltd and Studiocanal SAS. All Rights Reserved.